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6 因果応報 少し残酷 R15 (最終話)
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ꕤ୭*アメリ視点
「やれやれ。上級学園に行ったのはお金の無駄だったようですね。頭にウジが湧いていますもの。ハワード伯爵家がこのような娘を嫁に迎えるというのならお好きにどうぞ。ですがサマセット侯爵家は縁を切りますので。犯罪者の家の者を嫁に迎えるなどおぞましい!」
サマセット侯爵未亡人が吐き捨てるように言った。
「犯罪者? どういうことです?」
ハワード伯爵はおろおろと戸惑いながらも、私の両親に詰め寄った。
「犯罪なんて大げさ過ぎますよ。姪の後見人になってその財産を管理してあげた際、少し損失をだしただけでしてなんのやましいこともありません!」
お父様は必死で取り繕うとしていた。
「ふん! 姪が相続するはずの遺産をねこばばし、貴族学園にも行かさず他家に奉公させておいてやましいことがないとは! 面の皮が厚いにもほどがありますね。もっと言えば、お兄様が都合の良い時期に亡くなるのも不思議ですねぇ。昔のことですからなんの証拠も残ってはいないでしょうが、アーバスノット男爵にとても都合のいい偶然すぎますね?」
「え? そのような話は初めて聞きました。早速家族会議を開き・・・・・・」
ハワード伯爵は途端に顔を青ざめさせた。
――あぁ、私、詰んだわ。私の結婚は絶望的だ。
案の定、ハワード伯爵家からは婚約破棄と慰謝料が請求された。私は従姉妹のお金を不当に奪って上級学園を卒業した悪女と烙印を押された。
そして、お父様には兄殺しの烙印が押された。兄殺しが公に証明されなくても人の噂は止められない。身分が上の2侯爵家に目の敵にされているアーバスノット男爵家の悪評はもう覆ることはない。
私達は社交界にいられなくなり、さらにはクララから不当に使い込んでしまった遺産の返還請求を受けた。こちらは裁判で正式に判決がおりて多大な借金を背負うことになった。
私は上級学園を出たのに、結婚はおろか就職先も見つからなかった。
「あんた、豹獣人の番に危害を加えたって有名だよ。知ってるかい? 番を害された獣人は決して相手を許さないんだ。それに関わった者まで滅ぼされちゃうからな」
ーー嘘・・・・・・そんなに怖いものなんだ・・・・・・
私が唯一働くことができた場所は娼館だけだった。
「さぁ、今日も明るく元気に男性を喜ばせてくださいね。それしか、あなたがたには使い道がないんですから」
娼館のオーナーがニヤニヤしながらムカつく言葉を吐いた。
「オーナー! 娼婦にだって心があるんですよ。酷いと思います!」
思わず意見した私にオーナーが投げつけた言葉は、
「あんたの妹にだって心があったんだよ! 踏みにじったのはお前だろう?」だった。
ꕤ୭*アーバスノット男爵視点
私は兄が大嫌いだった。なにをやらせても天才な兄は気持ちも優しくて私を助手に雇ってくれた。難しいことは全くわからない私は、兄の言うままに手伝っていただけで発明の才能なんて皆無だった。
録音装置とカメラを発明した兄は、褒美に男爵の爵位をもらえることになった。すでに成功していた兄は大金持ちの上に爵位までもらえるのだ。
――差はどんどん開く一方だ。こんなのは不公平だ!
馬車に仕掛けをしたのは私だ。少しだけ怪我をさせようとしただけなんだ。まさか死ぬなんて思わなかった。
兄夫妻が大怪我をして病院に運ばれた際に言われた言葉を思い出す。
「娘のクララを頼む」
兄の助手に過ぎなかった私だが共同開発したふりをして爵位をいただき、兄の遺産で豪遊した。遺産は笑いが止まらないぐらいあり私も妻も娘も、思う存分の贅沢をしたと思う。
その結果、ほとんど使ってアメリの上級学園のお金だけは残った。そうするとこれから貴族学園に通わせなければならないクララが邪魔になってきた。
幸い、クララは自分の立場がわかっていない。私達を実の親と思っていたしアメリを姉と思い懐いていた。その純粋な心を利用した。我ながらとても良い作戦だった。
そして今、私は報いを受けている。兄殺しと公然と批判され、それは裁判で裁かれたわけではないが、裁かれてないからこそより強い制裁を受けている。
「昔のことで証拠はないけれど、きっと優秀な兄を殺したのだろう? 姪から遺産を奪って貴族学園にも行かせなかった悪党だもの。きっと他にも悪いことをたくさんしてきたに決まっている! そういえば数年前に殺人事件があったけれど、それも怪しいなぁ」
「あぁ、アーバスノット男爵家の屋敷の近くで数人殺された事件があった。それもこれもきっとアーバスノット男爵が・・・・・・」
貴族の一人が言い出すと、他の者まで同調し始める。噂は雪だるま式に大きくなり、連続殺人犯並みの凶悪犯に仕立てあげられ男爵家は没落した。
クララに返済する金を作るのに働き先を探す毎日。面接を何回も受けてその度に言われる言葉がこれだ。
「兄殺しだろ? そんなのは雇えないよ! おまけに、他にもたくさん殺したんだろ? 連続殺人犯って言われているくせに」
「私は連続殺人犯なんかじゃないぞぉおおーー! 兄夫妻を殺しただけだ。たった二人しか殺していない。しかも怪我をさせようとしただけなんだ!」
ストレスでつい叫んでしまった私は迂闊だった。
「あぁ、やっぱり殺人犯なんだ。だったら雇うよ! あんたにぴったりの仕事があるよ。高給だから喜べよ」
面接官がニコリと笑って私に言った。
「なんだよ、それは?」
「地雷撤去作業だよ。これは殺人犯しかさせられないからね。今の会話は録音したから逃げられないぞ! 保安局につき出せば兄殺しは死罪だ」
「ちょっと待てよ。今のは独り言だ! 裁判で殺人犯の確定判決はもらっていないぞ。いきなり地雷撤去作業なんて酷すぎる! 私にも人権があるぞ」
「あんたの兄さんは、あんたに殺されたんだろ? 兄の生きる権利をいきなり奪っておいて、自分だけ人権を主張するなんて間違ってるよ!」
――地雷・・・・・・この世界で昔あった戦争に使われた地中に埋める爆発物。それは人間が乗ると爆発するようにできている。
金属探知機で探知しながら地雷の有無を調べる緊張を強いられる過酷な作業。掘る道具は突き棒とシャベル。照りつける太陽の下、30度の気温の中でヘルメットをつけ防具もつけると暑さと息苦しさで気が遠くなる。
掘っている間中、いつ爆発するかという恐怖の連続。作業中に爆発して死ぬ者が少なくないこの作業は、犯罪者か心優しいボランティアしかやらない。
兄さん、私が悪かったよ。こんなことになるなんて思わなかったんだ。神様、お願いだ! 時間を巻き戻してくれよ。そしたら兄さんの馬車に細工なんてしないよ。
私は毎日、神に祈る。しかし、答えてくれる神は一人もいないのだった。助けて・・・・・・
「やれやれ。上級学園に行ったのはお金の無駄だったようですね。頭にウジが湧いていますもの。ハワード伯爵家がこのような娘を嫁に迎えるというのならお好きにどうぞ。ですがサマセット侯爵家は縁を切りますので。犯罪者の家の者を嫁に迎えるなどおぞましい!」
サマセット侯爵未亡人が吐き捨てるように言った。
「犯罪者? どういうことです?」
ハワード伯爵はおろおろと戸惑いながらも、私の両親に詰め寄った。
「犯罪なんて大げさ過ぎますよ。姪の後見人になってその財産を管理してあげた際、少し損失をだしただけでしてなんのやましいこともありません!」
お父様は必死で取り繕うとしていた。
「ふん! 姪が相続するはずの遺産をねこばばし、貴族学園にも行かさず他家に奉公させておいてやましいことがないとは! 面の皮が厚いにもほどがありますね。もっと言えば、お兄様が都合の良い時期に亡くなるのも不思議ですねぇ。昔のことですからなんの証拠も残ってはいないでしょうが、アーバスノット男爵にとても都合のいい偶然すぎますね?」
「え? そのような話は初めて聞きました。早速家族会議を開き・・・・・・」
ハワード伯爵は途端に顔を青ざめさせた。
――あぁ、私、詰んだわ。私の結婚は絶望的だ。
案の定、ハワード伯爵家からは婚約破棄と慰謝料が請求された。私は従姉妹のお金を不当に奪って上級学園を卒業した悪女と烙印を押された。
そして、お父様には兄殺しの烙印が押された。兄殺しが公に証明されなくても人の噂は止められない。身分が上の2侯爵家に目の敵にされているアーバスノット男爵家の悪評はもう覆ることはない。
私達は社交界にいられなくなり、さらにはクララから不当に使い込んでしまった遺産の返還請求を受けた。こちらは裁判で正式に判決がおりて多大な借金を背負うことになった。
私は上級学園を出たのに、結婚はおろか就職先も見つからなかった。
「あんた、豹獣人の番に危害を加えたって有名だよ。知ってるかい? 番を害された獣人は決して相手を許さないんだ。それに関わった者まで滅ぼされちゃうからな」
ーー嘘・・・・・・そんなに怖いものなんだ・・・・・・
私が唯一働くことができた場所は娼館だけだった。
「さぁ、今日も明るく元気に男性を喜ばせてくださいね。それしか、あなたがたには使い道がないんですから」
娼館のオーナーがニヤニヤしながらムカつく言葉を吐いた。
「オーナー! 娼婦にだって心があるんですよ。酷いと思います!」
思わず意見した私にオーナーが投げつけた言葉は、
「あんたの妹にだって心があったんだよ! 踏みにじったのはお前だろう?」だった。
ꕤ୭*アーバスノット男爵視点
私は兄が大嫌いだった。なにをやらせても天才な兄は気持ちも優しくて私を助手に雇ってくれた。難しいことは全くわからない私は、兄の言うままに手伝っていただけで発明の才能なんて皆無だった。
録音装置とカメラを発明した兄は、褒美に男爵の爵位をもらえることになった。すでに成功していた兄は大金持ちの上に爵位までもらえるのだ。
――差はどんどん開く一方だ。こんなのは不公平だ!
馬車に仕掛けをしたのは私だ。少しだけ怪我をさせようとしただけなんだ。まさか死ぬなんて思わなかった。
兄夫妻が大怪我をして病院に運ばれた際に言われた言葉を思い出す。
「娘のクララを頼む」
兄の助手に過ぎなかった私だが共同開発したふりをして爵位をいただき、兄の遺産で豪遊した。遺産は笑いが止まらないぐらいあり私も妻も娘も、思う存分の贅沢をしたと思う。
その結果、ほとんど使ってアメリの上級学園のお金だけは残った。そうするとこれから貴族学園に通わせなければならないクララが邪魔になってきた。
幸い、クララは自分の立場がわかっていない。私達を実の親と思っていたしアメリを姉と思い懐いていた。その純粋な心を利用した。我ながらとても良い作戦だった。
そして今、私は報いを受けている。兄殺しと公然と批判され、それは裁判で裁かれたわけではないが、裁かれてないからこそより強い制裁を受けている。
「昔のことで証拠はないけれど、きっと優秀な兄を殺したのだろう? 姪から遺産を奪って貴族学園にも行かせなかった悪党だもの。きっと他にも悪いことをたくさんしてきたに決まっている! そういえば数年前に殺人事件があったけれど、それも怪しいなぁ」
「あぁ、アーバスノット男爵家の屋敷の近くで数人殺された事件があった。それもこれもきっとアーバスノット男爵が・・・・・・」
貴族の一人が言い出すと、他の者まで同調し始める。噂は雪だるま式に大きくなり、連続殺人犯並みの凶悪犯に仕立てあげられ男爵家は没落した。
クララに返済する金を作るのに働き先を探す毎日。面接を何回も受けてその度に言われる言葉がこれだ。
「兄殺しだろ? そんなのは雇えないよ! おまけに、他にもたくさん殺したんだろ? 連続殺人犯って言われているくせに」
「私は連続殺人犯なんかじゃないぞぉおおーー! 兄夫妻を殺しただけだ。たった二人しか殺していない。しかも怪我をさせようとしただけなんだ!」
ストレスでつい叫んでしまった私は迂闊だった。
「あぁ、やっぱり殺人犯なんだ。だったら雇うよ! あんたにぴったりの仕事があるよ。高給だから喜べよ」
面接官がニコリと笑って私に言った。
「なんだよ、それは?」
「地雷撤去作業だよ。これは殺人犯しかさせられないからね。今の会話は録音したから逃げられないぞ! 保安局につき出せば兄殺しは死罪だ」
「ちょっと待てよ。今のは独り言だ! 裁判で殺人犯の確定判決はもらっていないぞ。いきなり地雷撤去作業なんて酷すぎる! 私にも人権があるぞ」
「あんたの兄さんは、あんたに殺されたんだろ? 兄の生きる権利をいきなり奪っておいて、自分だけ人権を主張するなんて間違ってるよ!」
――地雷・・・・・・この世界で昔あった戦争に使われた地中に埋める爆発物。それは人間が乗ると爆発するようにできている。
金属探知機で探知しながら地雷の有無を調べる緊張を強いられる過酷な作業。掘る道具は突き棒とシャベル。照りつける太陽の下、30度の気温の中でヘルメットをつけ防具もつけると暑さと息苦しさで気が遠くなる。
掘っている間中、いつ爆発するかという恐怖の連続。作業中に爆発して死ぬ者が少なくないこの作業は、犯罪者か心優しいボランティアしかやらない。
兄さん、私が悪かったよ。こんなことになるなんて思わなかったんだ。神様、お願いだ! 時間を巻き戻してくれよ。そしたら兄さんの馬車に細工なんてしないよ。
私は毎日、神に祈る。しかし、答えてくれる神は一人もいないのだった。助けて・・・・・・
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