7 / 11
7 アクセルといると嬉しいアーリア
しおりを挟む
「宝石店に持っていけば元通りになりますよ。全く、イェーナ様は酷いことをなさいますね」
「いつも我が儘ばかり言って私達のものでさえ、機嫌が悪いと壊しますからね。修道院に一年ぐらい入って性根をたたきなおしてもらったほうがいいですよ」
アジアとイブはそうつぶやきながら早速、私の為に絨毯の上に広がった真珠を拾いビロードの布袋にいれています。
「なっ、なんですって! あんた達、使用人のくせに私の悪口を言うなんてゆるさないわよ! ムチで打ってやるわ!そこの侍従、アジアとイブにムチを打ちなさい!」
イェーナは興奮して叫んでいますが誰もその命令をきく者はいませんでした。
「はぁ? もうイェーナ様は私達のご主人様ではありませんよ。すぐに使用人にムチを打たそうとするなんて酷い人ですね。それに比べてアーリア様はとてもお優しいですし月の女神様のようにお綺麗です」
アジアはイェーナの方には見向きもしないでせっせと私の真珠だけを拾っていました。イェーナは相当悔しかったのでしょう。私の真珠をひと粒見つけると『なによ! こんなもの!』と言いながら足で踏みつけたのです。
お父様はイェーナに『修道院でひと月ほど躾けてもらえ!』とおっしゃいました。これは、以前にはなかった展開です。
☆彡★彡☆彡
学園ではカールが私につきまといはじめ、同じクラスなのをいいことに学園行事の委員会を一緒にやろうとしたり、歴史の先生の準備係になろうとするのでした。
学園行事の委員会は放課後に遅くまで学校に居残ることもありますし、歴史の授業の係は資料室に置いてあるものを教室に運ぶ仕事です。
どちらも、二人っきりになる機会をつくれる危ない罠だと思いました。イェーナの策略がなくてもこのカールは私に何かしようという企みを実行するのかもしれません。
そこで私はアクセル様に3人の侍女達も護身術の授業に参加させてほしいとお願いしました。
「いいとも。侍女達こそ護身術を習った方がいいかもしれないね。アーリアを守れるように]
学園に連いていけるのは二人の侍女までで、護衛騎士は王族の方でないと連れていくことはできません。ならば、自分と侍女達も鍛えてもらったほうがカールを撃退しやすいはずです。
3人の侍女のなかでも特に体格の大きいアジアが一番に上達が早かったです。
「この身長と体型がコンプレックスだったんですよ。でも、このお陰で私もアーリア様のお役にたてそうで嬉しいです」
素朴な人柄の力持ちのアジアはアクセル様ほどではありませんが、身長がカールよりは高く身体も大柄でした。私は外出時にはアジアを必ず連れていくようにしました。
そんなわけで今日も護身術の練習です。その合間には、アクセル様とのおしゃべりを楽しみます。
「今度ね、王宮で模擬試合があるから皆で見物においでよ。特等席を用意しておくよ」
騎士様同士の腕試しはとても女性には人気があって、見物席はなかなかとれないほどでした。ですが、もちろん副団長様のアクセル様ならば容易なのでしょう。
合間に、アンバー侯爵家の庭園を散歩したりすると必ず優しくエスコートしてくださいます。
「あ、そこは段になっているから気をつけて! ここは滑りやすいからね」
私を心配してくださる様子が可愛く見えてしまいます。身長も高く大きな身体は太っているのではなくて、固い筋肉。なにをしたらこのような立派な身体になるのでしょう?
「あのぅ。その筋肉は女性でもつけられるものですか?」
私が尋ねると呆れた顔で嬉しい答えが返ってきました。
「アーリアは筋肉ムキムキになるつもりなのかい? 何を恐れているのかわからないけれど、そんなことをしなくても、できるだけ私が一緒にいてあげるということでどうかな?」
私はアクセル様の美男子ではないけれど、男らしく精悍な顔立ちや優しくて明るい性格に癒やされていくのでした。
薔薇の花に囲まれてアクセル様と仲良く話をしている様子を、私の侍女3人はにこにこと眺めています。そこへ、エフレイン伯父様がやって来て嬉しそうに極上の笑みを浮かべました。
「エフレイン伯父様は、特別いいことがあったようにご機嫌ですね?」
「あぁ、とてもいいことがあったとも! アーリアがこうして私の屋敷にいて、幸せそうに笑っている様子を見ると安心する。バレリアとは本当に仲が良かったからね。アーリアの父親を悪く言いたくはないが、ウンベルトはずるくて女にだらしないところがあった。もっと良い男を選んで幸せになって欲しかったんだが、恋は盲目だね。バレリアはもう私の意見も無視して、家を飛び出すように嫁に行ってしまった。私は一切援助もしなかったし、アーリアが産まれたときですら会いにも行かなかった。腹を立てていたんだよ。でも、そのうちとても寂しくなってね。なんとか連絡をとりたいと思っていたが、その頃にはバレリアが私をきっと恨んでいるに違いないと思い……私からは連絡できなかった」
私はお母様のお父様に対する恋心をエフレイン伯父様から聞きました。お母様を責める気は私にはありません。お父様をお母様が選ばなければ私もここに存在していないのですから……でも……お父様は確かに女にだらしないかもしれません……あのエイシャとはいつから付き合っていたのでしょうか?……お母様が病床に伏せっている時からでしょうか?……もっと前からでしょうか?……悲しいですね……
「いいかい? アーリアは大事な子だ。どのようなことがあろうとも私が守ってあげるから心配しなくていい。それにこの様子だと味方はさらに増えたようだね?」
「もちろんですよ。私もなにがあっても守りますよ」
アクセル様はエフレイン伯父様の言葉に満面の笑みでうなづきました。
「私達は何もないように、身近でいつもお守りしますわ」
「そうですとも! なにかあっては遅いです! この命に賭けてお守りします」
アジアは、キラキラした瞳で私に忠誠を誓いました。アジアの弟は生まれつき病弱でその治療にはお金が必要でした。私はエフレイン伯父様にお願いして懇意の医者から薬を安く手に入るようにしてもらいました。
そんな私にアジアはいつも感謝の言葉を口にします。私は真面目に一生懸命仕えてくれる侍女に、私ができることをしてあげただけです。当然のことだと思っていましたが、アジアは私を崇拝さえするのでした。
「いつも我が儘ばかり言って私達のものでさえ、機嫌が悪いと壊しますからね。修道院に一年ぐらい入って性根をたたきなおしてもらったほうがいいですよ」
アジアとイブはそうつぶやきながら早速、私の為に絨毯の上に広がった真珠を拾いビロードの布袋にいれています。
「なっ、なんですって! あんた達、使用人のくせに私の悪口を言うなんてゆるさないわよ! ムチで打ってやるわ!そこの侍従、アジアとイブにムチを打ちなさい!」
イェーナは興奮して叫んでいますが誰もその命令をきく者はいませんでした。
「はぁ? もうイェーナ様は私達のご主人様ではありませんよ。すぐに使用人にムチを打たそうとするなんて酷い人ですね。それに比べてアーリア様はとてもお優しいですし月の女神様のようにお綺麗です」
アジアはイェーナの方には見向きもしないでせっせと私の真珠だけを拾っていました。イェーナは相当悔しかったのでしょう。私の真珠をひと粒見つけると『なによ! こんなもの!』と言いながら足で踏みつけたのです。
お父様はイェーナに『修道院でひと月ほど躾けてもらえ!』とおっしゃいました。これは、以前にはなかった展開です。
☆彡★彡☆彡
学園ではカールが私につきまといはじめ、同じクラスなのをいいことに学園行事の委員会を一緒にやろうとしたり、歴史の先生の準備係になろうとするのでした。
学園行事の委員会は放課後に遅くまで学校に居残ることもありますし、歴史の授業の係は資料室に置いてあるものを教室に運ぶ仕事です。
どちらも、二人っきりになる機会をつくれる危ない罠だと思いました。イェーナの策略がなくてもこのカールは私に何かしようという企みを実行するのかもしれません。
そこで私はアクセル様に3人の侍女達も護身術の授業に参加させてほしいとお願いしました。
「いいとも。侍女達こそ護身術を習った方がいいかもしれないね。アーリアを守れるように]
学園に連いていけるのは二人の侍女までで、護衛騎士は王族の方でないと連れていくことはできません。ならば、自分と侍女達も鍛えてもらったほうがカールを撃退しやすいはずです。
3人の侍女のなかでも特に体格の大きいアジアが一番に上達が早かったです。
「この身長と体型がコンプレックスだったんですよ。でも、このお陰で私もアーリア様のお役にたてそうで嬉しいです」
素朴な人柄の力持ちのアジアはアクセル様ほどではありませんが、身長がカールよりは高く身体も大柄でした。私は外出時にはアジアを必ず連れていくようにしました。
そんなわけで今日も護身術の練習です。その合間には、アクセル様とのおしゃべりを楽しみます。
「今度ね、王宮で模擬試合があるから皆で見物においでよ。特等席を用意しておくよ」
騎士様同士の腕試しはとても女性には人気があって、見物席はなかなかとれないほどでした。ですが、もちろん副団長様のアクセル様ならば容易なのでしょう。
合間に、アンバー侯爵家の庭園を散歩したりすると必ず優しくエスコートしてくださいます。
「あ、そこは段になっているから気をつけて! ここは滑りやすいからね」
私を心配してくださる様子が可愛く見えてしまいます。身長も高く大きな身体は太っているのではなくて、固い筋肉。なにをしたらこのような立派な身体になるのでしょう?
「あのぅ。その筋肉は女性でもつけられるものですか?」
私が尋ねると呆れた顔で嬉しい答えが返ってきました。
「アーリアは筋肉ムキムキになるつもりなのかい? 何を恐れているのかわからないけれど、そんなことをしなくても、できるだけ私が一緒にいてあげるということでどうかな?」
私はアクセル様の美男子ではないけれど、男らしく精悍な顔立ちや優しくて明るい性格に癒やされていくのでした。
薔薇の花に囲まれてアクセル様と仲良く話をしている様子を、私の侍女3人はにこにこと眺めています。そこへ、エフレイン伯父様がやって来て嬉しそうに極上の笑みを浮かべました。
「エフレイン伯父様は、特別いいことがあったようにご機嫌ですね?」
「あぁ、とてもいいことがあったとも! アーリアがこうして私の屋敷にいて、幸せそうに笑っている様子を見ると安心する。バレリアとは本当に仲が良かったからね。アーリアの父親を悪く言いたくはないが、ウンベルトはずるくて女にだらしないところがあった。もっと良い男を選んで幸せになって欲しかったんだが、恋は盲目だね。バレリアはもう私の意見も無視して、家を飛び出すように嫁に行ってしまった。私は一切援助もしなかったし、アーリアが産まれたときですら会いにも行かなかった。腹を立てていたんだよ。でも、そのうちとても寂しくなってね。なんとか連絡をとりたいと思っていたが、その頃にはバレリアが私をきっと恨んでいるに違いないと思い……私からは連絡できなかった」
私はお母様のお父様に対する恋心をエフレイン伯父様から聞きました。お母様を責める気は私にはありません。お父様をお母様が選ばなければ私もここに存在していないのですから……でも……お父様は確かに女にだらしないかもしれません……あのエイシャとはいつから付き合っていたのでしょうか?……お母様が病床に伏せっている時からでしょうか?……もっと前からでしょうか?……悲しいですね……
「いいかい? アーリアは大事な子だ。どのようなことがあろうとも私が守ってあげるから心配しなくていい。それにこの様子だと味方はさらに増えたようだね?」
「もちろんですよ。私もなにがあっても守りますよ」
アクセル様はエフレイン伯父様の言葉に満面の笑みでうなづきました。
「私達は何もないように、身近でいつもお守りしますわ」
「そうですとも! なにかあっては遅いです! この命に賭けてお守りします」
アジアは、キラキラした瞳で私に忠誠を誓いました。アジアの弟は生まれつき病弱でその治療にはお金が必要でした。私はエフレイン伯父様にお願いして懇意の医者から薬を安く手に入るようにしてもらいました。
そんな私にアジアはいつも感謝の言葉を口にします。私は真面目に一生懸命仕えてくれる侍女に、私ができることをしてあげただけです。当然のことだと思っていましたが、アジアは私を崇拝さえするのでした。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
2,259
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる