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5-1 テモーネの地獄(テモーネ視点)
(テモーネ視点)
ベルラッテ侯爵家には亡くなった先代の頃より仕えさせていただいている。この由緒あるベルラッテ侯爵家で侍女長として働くことに、私は誇りを持っていた。当然、由緒あるベルラッテ侯爵家侍女長の私も貴族である。ベント伯爵家の次女として生まれ、商才のないお父様はお金こそなかったものの、ベント伯爵家は由緒ある家柄のひとつだった。
ひと昔前の貴族達は家格や爵位できっちり上下関係ができていた。けれど文明が進むにつれてたくさんの業種ができ、時代についていけない貴族達の事業は衰退していった。代わって台頭したのが、小賢しい頭をもつ低位貴族達。男爵家でも金儲けの上手い下品な者達が力を持ち、大きな商会を立ち上げ新商品を開発し新たな業界まで生み出す。家柄が絶対だった時代は終わり、金至上主義がまかり通っていた。
(なんて嘆かわしくて下品なの)
ベルラッテ侯爵家も先代の事業がおもわしくなく、アラディエル様が継いだ時にも良くないのは知っていた。けれどアラディエル様はとても才覚のある方だ。徐々に業績をあげ、この家はかつての繁栄を取り戻す。
(さすが、若様。これからさぞや身分の高い奥方をお迎えになるはず)
そう思っていたのに、嫁いできたのはパイヤ男爵家の一人娘だ。こんな成り上がりの家格の低い女などベルラッテ侯爵家の奥方には少しも相応しくない。パイヤ男爵家自体がつい50年前に下らない手柄をたて、男爵になったばかりの新興貴族だった。私達のような500年以上の歴史をもつ貴族とは格が違うのだ。
しかも父親は平民出身よ。奥方になったカロリーヌの身分は笑ってしまうほど軽い。金儲けが上手いだけの両親から生まれた卑しい子だ。気にくわない。
このカロリーヌの親友はカサンドラ様。こちらはミュール男爵家の次女で、お母様はカミングス伯爵家出身だったはず。カミングス伯爵家といえば、私の実家ベント伯爵家と同じくらい歴史が古い。この方のほうがよほどアラディエル様に相応しいと思った。
そのカサンドラ様はリンドマン男爵家に嫁いでいるけれど、屋敷は手狭なうえに前リンドマン男爵夫妻と同居しているとかで不満たらたらだった。度々、このベルラッテ侯爵家に遊びに来るようになる。金髪に青空を切り取ったかのような綺麗なブルーの瞳。華奢で小柄な可愛い方だ。私はこの方が来ると大歓迎した。
「カサンドラ様のような生粋の貴族がこのベルラッテ侯爵家の奥方になるべきでした。カロリーヌ様では家格も低く、しかも平民混じりの卑しい血筋ですわ。こんな女がベルラッテ侯爵家の子供を産むなんて間違っています」
「ふふふ。だったら協力してよ。アラディエル様の綺麗な顔は私のタイプなのよ。カロリーヌにバレないように、力を貸してほしいの」
「かしこまりました。秘密を共有するのはワクワクします」
カロリーヌが知れば一番傷つくことを手助けするのは楽しい。時効になるくらい何十年か先に、この事実を知って泣き叫ぶ姿を想像したら自然に顔がにやけてしまう。親友と夫に裏切られているのに、親友を信じ込み優しく接する姿はウケる。
「ばかな奥様ね。アラディエル様を寝取られているとも知らず、カサンドラ様の足を揉んでいたわ」
私は部下の侍女達に話しかける。
「あっはははは。もぉーー、笑いを堪えるのに必死でした。こんな滑稽なことってないですよ」
「ふふふふ。可哀想な奥様。でも、平民混じりの奥様に仕えるなんて屈辱ですから、いい気味ですね」
実家が貴族の私達侍女は、満足げに頷きあい思う存分笑った。
メイド達はリアクションが大きめで、手を叩いて笑い転げる。平民のメイド達にとって、カロリーヌは平民混じりだから距離感は近い。余計嫉妬の対象になりやすいのだと思う。
もとからお金持ちで高位貴族の令嬢なら、別世界の雲の上の存在なので嫉妬もわかない。その点、カロリーヌはどの階級の者からも嫉妬されやすい土台があるようだ。
(身の程知らずの成金だもの。陰でもっと笑いものにしてやるわ)
アラディエル様がカロリーヌ様に『色狂いの淫乱』と罵倒した時、私達使用人は心から拍手喝采を旦那様に向けた。それをカサンドラ様に相談している様子もたまらなく面白い。
夫の浮気相手に、『夫が私に冷たいの』と、相談する妻ほど滑稽なものはない。これも使用人一同大爆笑した。
本当に楽しいわ。最近は全く退屈しない♬
ところが・・・・・・アラディエル様とカサンドラ様の関係がバレてしまい・・・・・・
ベルラッテ侯爵家には亡くなった先代の頃より仕えさせていただいている。この由緒あるベルラッテ侯爵家で侍女長として働くことに、私は誇りを持っていた。当然、由緒あるベルラッテ侯爵家侍女長の私も貴族である。ベント伯爵家の次女として生まれ、商才のないお父様はお金こそなかったものの、ベント伯爵家は由緒ある家柄のひとつだった。
ひと昔前の貴族達は家格や爵位できっちり上下関係ができていた。けれど文明が進むにつれてたくさんの業種ができ、時代についていけない貴族達の事業は衰退していった。代わって台頭したのが、小賢しい頭をもつ低位貴族達。男爵家でも金儲けの上手い下品な者達が力を持ち、大きな商会を立ち上げ新商品を開発し新たな業界まで生み出す。家柄が絶対だった時代は終わり、金至上主義がまかり通っていた。
(なんて嘆かわしくて下品なの)
ベルラッテ侯爵家も先代の事業がおもわしくなく、アラディエル様が継いだ時にも良くないのは知っていた。けれどアラディエル様はとても才覚のある方だ。徐々に業績をあげ、この家はかつての繁栄を取り戻す。
(さすが、若様。これからさぞや身分の高い奥方をお迎えになるはず)
そう思っていたのに、嫁いできたのはパイヤ男爵家の一人娘だ。こんな成り上がりの家格の低い女などベルラッテ侯爵家の奥方には少しも相応しくない。パイヤ男爵家自体がつい50年前に下らない手柄をたて、男爵になったばかりの新興貴族だった。私達のような500年以上の歴史をもつ貴族とは格が違うのだ。
しかも父親は平民出身よ。奥方になったカロリーヌの身分は笑ってしまうほど軽い。金儲けが上手いだけの両親から生まれた卑しい子だ。気にくわない。
このカロリーヌの親友はカサンドラ様。こちらはミュール男爵家の次女で、お母様はカミングス伯爵家出身だったはず。カミングス伯爵家といえば、私の実家ベント伯爵家と同じくらい歴史が古い。この方のほうがよほどアラディエル様に相応しいと思った。
そのカサンドラ様はリンドマン男爵家に嫁いでいるけれど、屋敷は手狭なうえに前リンドマン男爵夫妻と同居しているとかで不満たらたらだった。度々、このベルラッテ侯爵家に遊びに来るようになる。金髪に青空を切り取ったかのような綺麗なブルーの瞳。華奢で小柄な可愛い方だ。私はこの方が来ると大歓迎した。
「カサンドラ様のような生粋の貴族がこのベルラッテ侯爵家の奥方になるべきでした。カロリーヌ様では家格も低く、しかも平民混じりの卑しい血筋ですわ。こんな女がベルラッテ侯爵家の子供を産むなんて間違っています」
「ふふふ。だったら協力してよ。アラディエル様の綺麗な顔は私のタイプなのよ。カロリーヌにバレないように、力を貸してほしいの」
「かしこまりました。秘密を共有するのはワクワクします」
カロリーヌが知れば一番傷つくことを手助けするのは楽しい。時効になるくらい何十年か先に、この事実を知って泣き叫ぶ姿を想像したら自然に顔がにやけてしまう。親友と夫に裏切られているのに、親友を信じ込み優しく接する姿はウケる。
「ばかな奥様ね。アラディエル様を寝取られているとも知らず、カサンドラ様の足を揉んでいたわ」
私は部下の侍女達に話しかける。
「あっはははは。もぉーー、笑いを堪えるのに必死でした。こんな滑稽なことってないですよ」
「ふふふふ。可哀想な奥様。でも、平民混じりの奥様に仕えるなんて屈辱ですから、いい気味ですね」
実家が貴族の私達侍女は、満足げに頷きあい思う存分笑った。
メイド達はリアクションが大きめで、手を叩いて笑い転げる。平民のメイド達にとって、カロリーヌは平民混じりだから距離感は近い。余計嫉妬の対象になりやすいのだと思う。
もとからお金持ちで高位貴族の令嬢なら、別世界の雲の上の存在なので嫉妬もわかない。その点、カロリーヌはどの階級の者からも嫉妬されやすい土台があるようだ。
(身の程知らずの成金だもの。陰でもっと笑いものにしてやるわ)
アラディエル様がカロリーヌ様に『色狂いの淫乱』と罵倒した時、私達使用人は心から拍手喝采を旦那様に向けた。それをカサンドラ様に相談している様子もたまらなく面白い。
夫の浮気相手に、『夫が私に冷たいの』と、相談する妻ほど滑稽なものはない。これも使用人一同大爆笑した。
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