可愛くない私に価値はないのでしょう?

青空一夏

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続編 姉妹の明暗 グレイス視点/ベリンダ視点 そのに

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※グレイス視点です。会話のなかの()は音声としては発音されていませんので、グレイスとアーネット子爵夫人の間でも誤解が生じています。勘違いは起こっていても、微笑ましい?(違うかな)グレイスとコンスタンティンです。

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「お帰りなさい、グレイス。サーカスは楽しかったですか? 今日のコンスタンティン様はグレイスをどのように楽しませてくださったのかしら? さぁ、お母様にお話してちょうだい」

 とてもわくわくした眼差しで、ヴェレリアお母様が私の頭を撫でながらにっこりと微笑んだ。

「私はコンスタンティン様といるだけで楽しいので、隣にいてくださるだけで特になにもしてくださらなくて良いのです。ですが、空中ブランコの際に私があまりはらはらしているので、手を握ってくださいました。お蔭でもっとドキドキして、空中ブランコに集中できなかったです」

「あらあら、まぁまぁ。若いって本当になんてかわいらしいのかしらぁ。お母様もそんな時代がありましたよ。ロナルドと肩や手が触れあうだけで嬉しかったわ」

 ヴェレリアお母様が楽しげにお笑いになった。それとこれとは全く別だと思う。ヴェレリアお母様とロナルドお父様は幼い頃から婚約なさっていたと聞いたもの。私とコンスタンティン様はこれから主従の関係になるのだから、あまり距離感をつめてはいけないはずよ。







 まもなくして今度は乗馬のお誘いを正式に受けた。私も一人で乗ることができるのに、自分の馬に乗せてくださるらしい。ヴェレリアお母様も、このような場合はコンスタンティン様にお任せしなさい、とおっしゃった。

(えっ? なんで? コンスタンティン様もヴェレリアお母様も謎なんですけど)

 頭に大きな疑問符が浮かぶ。

「湖までピクニックと聞きましたよ。その日は朝早く起きて、お母様とサンドウィッチを作り、果物やワインなども用意しましょうね。アーネット子爵家の馬車に積めて侍女達に持って行かせます」

「え? そんな大がかりにする必要ってありますか?」

「もちろんよ。コンスタンティン様もきっと楽しみにしていますよ」

(未来の総家政婦長の手料理なんて期待する当主がいるのだろうか? あ、そうか。総家政婦長は確かに料理人やメイド達など使用人達の長でもあるから、料理も完璧でなくてはならないってこと? これは大変だわ。コックにいろいろ教えてもらわなきゃ)

「わかりましたわ、ヴェレリアお母様。これはある意味(私の)テストなのですね? 私がその地位(総家政婦長)に就く為の」

「そうですよ。(コンスタンティン様の)テストですわね。グレイスがその地位(ポールスランド伯爵夫人)につく為の大切な過程です。しっかりと楽しみなさいね」

「はい。(総家政婦長への)夢は絶対に諦めません。いつもコンスタンティン様のお側にいたいですから」

 ヴェレリアお母様は私を抱きしめて何度も頷いた。睫が涙で濡れている。私の決意を応援して感動なさっているのかしら?

「ヴェレリアお母様、私はずっとお母様達のお側にいますわ。これからもずっと一緒にいられるように(総家政婦長として)コンスタンティン様にお願いしてみますわ」

「まぁ、嬉しいわ。もちろんコンスタンティン様ならグレイスのお願いはなんでも聞き入れてくださるでしょう。良いご縁に恵まれて本当に良かったこと。さぁ、ピクニックの献立をコック長と相談しましょう」

 ヴェレリアお母様が、アーネット子爵家の身分は貴族のなかではそれほど高くないけれど、資産はそのへんの伯爵よりもあると胸を反らせた。私には肩身の狭い思いは決してさせないと熱心におっしゃってくださる。

(総家政婦長として、使用人達にバカにされないようにいろいろと協力してくださるということかしら? 心強いわ、さすがヴェレリアお母様ね)

「ヴェレリアお母様。私は皆様のご期待に添えるようにこれからも頑張りますわ」

「えぇ、一緒に頑張りましょうね。これからが本当に楽しみだこと。お母様はますます張り切っちゃうわ」



 


 ピクニック当日、コンスタンティン様は白馬の王子様の如くいらっしゃって、私を後ろから抱きかかえるような形で馬に跨がせた。

(ち、近い。近すぎますけど!)

 斜め後ろを振り返ろうとすると、すぐにコンスタンティン様の胸に頭が当たってしまう。ちらりと見上げると、またまた蕩けるような甘い笑顔。

(こ、これって・・・・・・心臓がもたないんですけど・・・・・・どうしよう、どうしよう。静まれ、私の心臓。このままの体勢でいたら完璧に気を失う自信がある)

「こ、この体勢って緊張するのですが。もっと違う乗り方ってありませんか?」

「だったらわたしの後ろに移動するかい? 落ちると危ないからしっかりとわたしに抱きついていて。・・・・・・さぁ、もっとぎゅっと腕をわたしの腰にまわすんだ」

(今度は後ろに乗せていただいたけれど、無理、無理、無理。コンスタンティン様の背中にぴったりとくっつくなんて、ヴェレリアお母様、助けて!)

 私達が出かける様子をにこにこと眺めているヴェレリアお母様はありえないことをおっしゃる。

「もっとしっかりコンスタンティン様に抱きついていないと馬上では安定しませんよ。馬から落ちたら大怪我をします。最悪首の骨を折って亡くなった方もいるほどです」


「そうね。コンスタンティンに思いっきり抱きつきなさい。落ちたら大怪我をしますからね。もっとぴったり身体をコンスタンティンの背に押しつけましょう」

 いつのまにかポールスランド伯爵夫人までがいらっしゃって、大胆なことをおっしゃった。

 わたしが必死になって抱きつくと、コンスタンティン様は満足そうに私の腕を撫でた。

(ひっ。耐えるのよ、グレイス。これはなんでもないことよ。大好きなコンスタンティン様と身体を密着して馬に乗るけれど平常心を保つのは、きっと総家政婦長になる為の大事な試練なのよ)

「さぁ、行くよ、グレイス。ゆっくり歩かせるから心配しないで」

 コクリと頷いてコンスタンティン様の背中にしがみついた。

「うん、いいね。これからは馬車じゃなくてこのように移動しよう。グレイスが私をずっと抱きしめてくれるように」

(・・・・・・神様、私の心臓が耐えられません・・・・・・)





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※ちょこっとベリンダ視点。こちらは不穏な流れです。


「くっそ。なぜ俺がこんな貧乏暮らしをしなきゃならないんだ? フィントン男爵家に生まれて貧乏とは無縁だったはずなのに」

 デリクは毎日同じ事しか言わない。私だって文句だけ言って隅っこで腐っていたい。でも、誰かが働かないと生活はできない。

 私は無言で仕事に行く支度をし部屋を出ようとした。そのタイミングで、デリクは私を引き寄せて抱こうとする。吐き気が出るほど今は嫌いな男に抱かれるなんてまっぴらだ。全力で拒んだらまた私を殴ろうとした。

「もう、うんざりよ。だったらひと思いに殺してよ。もう、私だってこんな世界で生きていたくないわよ」

 泣きながら叫んで、デリクの拳が私の顔に迫ってきたと思ったら・・・・・・

「よぉーー、デリク。貸した金を返せよ。お前にはもうずいぶん貸している」

 ボロアパートの扉を足で蹴り破って人相の悪い男が乱入してきた。私は慌てて部屋の隅でうずくまる。怖くてたまらない。

「金がねぇから払えねーよ」

「そうかい。だったら身体で払ってもらおうか。あんた、奥さんか? 旦那はもらっていくぜ。こんなクズだと漁に出してもたいして魚は捕ってこられねーーだろうけど、金は前払いだからあんたにも少しばかりやるぜ。これでもっとまともなところに引っ越せよ」

 渡されたのは今の私にとっては大金の100万ダラだった。

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