(完結)嫌われ妻は前世を思い出す(全5話)

青空一夏

文字の大きさ
3 / 5

3 別人と疑われて

しおりを挟む
絶対、ディロン様は、タタムさんが嫌いじゃない気がする・・・?

私が、頭のなかで呟くと、

『そんなことはありません!私は、嫌われているんです。『私は5歳も年増なのですから・・・』』

そんな言葉を、頭のなかで多分、本物のタタムさんが呟いた。

「タタムさん!年齢は関係ないよ? タタムさんはディロンさんが好きなんでしょう?」

私が尋ねると沈黙してしまったけれど、乙女心は伝わってきたわ。タタムさんは、私より年上だけど、なんだか可愛い。

でも、その日は、それっきり、タタムさんは話しかけてこなかった。



*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚

ーー翌朝ーー

私は、ディロン様に元気よく挨拶をした。

「おはようございます!」

「あ、うん」

戸惑っているけれど、お返事をしてくれるのはいいことだ。

「あぁ、お腹が空きました。えっと、私もトーストと卵をいただいてよろしいですか?」

ディロン様が食べているお皿を見て、そう尋ねると、私はディロン様の真横に座った。

「タタムが朝食を食べる? 珍しいな。でも、君の席は真向かいだよ」

ディロン様は、その細長いテーブルのちょうど反対側を指さした。

「あんなに遠くに座ったら、ディロン様と話せませんから・・・この席がいいです。今日は、お天気がよくて気持ちの良い日ですねぇーー」

私は、にこにこしてディロン様に言うと、運ばれてきた焼きたてのパンをかじって呟いた。

「美味しい・・・」

ディロン様は、また首を傾げ、厨房からは、感動の声が聞こえてきた。

「うわぉ! 奥様に褒められるなんて、なんて嬉しいんだ!」

「え? すごっく美味しいですよ? この卵もふわふわだし、ベーコンの塩加減もとてもいいわ! やっぱり、西遊マートで特売品のベーコンとは、お味が違うのね」

私が、しきりに感心していると、厨房からいそいそとコックさんが出てきた。

「そうなのですよ! このべーコンは自家製でして・・・・・・」

その長い説明を、私は感心して頷きながら聞いていた。ベーコンの作り方を、教わって少し得をした気分の私は、お返しに茶碗蒸しの作り方を教えてあげた。

「ほぉーー。そのような料理は、初めて聞きました! 早速、作ってみます!」

私は、にっこり微笑み、今日の夕飯に食べられそうな予感がして嬉しくなった。

私が上機嫌で、食事をしていると、ディロン様が気難しげな表情で私の顔をじっと、見つめた。

「タタム! 君は、本当にタタムかい? なにか・・・別人な気がするんだが」

疑わしげな口調で言われて、ドキリとする。タタムさんは、王女様だっけ。料理なんてしたこともないはずだ。

茶碗蒸しなんて、まずいことを言ってしまったかもしれない。

私は、誤魔化したくて、ディロン様のお口の前にフォークに刺したベーコンをさしだした。

「ディロン様、はい、あーーんしてくださいね!」

あれ? なぜ、ディロン様は耳まで赤くなっているのかしら?

私は、なかなか食べようとしないディロン様に、つい強い口調で言っていた。

「せっかく、コックさんが、手間暇かけて作ったベーコンですよ? お口を開けないと、無理にでも食べさせますからね」

ん? なんで、周りにいる次女達まで、真っ赤になっているの?

ディロン様は、私の手に、そっと自分の手を添えて、超絶色っぽい笑みを浮かべた。

「妻の申し出は、喜んで受けよう! 今日は、なるべく早く仕事をかたづけるからね」

フォークの先の香ばしいベーコンをパクッと食べると、ディロン様は私の顔にゆっくりと近づいてきて、唇にそっとキスを落とした。

なんだったの? 今の? 


頭のなかで、タタムさんが、『きゃぁきゃぁ』と声をあげていた。

「なんでしょう? タタムさん?」

私は、タタムさんと脳内会話をして・・・衝撃の事実に・・・侍女達の誰よりも顔を赤くしたのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います

下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。 御都合主義のハッピーエンドです。 元鞘に戻ります。 ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。 小説家になろう様でも投稿しています。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。 ※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡

処理中です...