ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【2年生】

sideコンラッド

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聞いていたことと実際にみたことが違うのはよくあることだ。
素晴らしいと謂れている絵画を観ても、色遣いが綺麗なだけで、心が揺さぶることはなかった。

 
婚約者選びで、歳の近い令嬢を紹介されても、綺麗に着飾っているな位の感想しか出てこない。
両親は異性ではなく同性ならと、令息達を紹介したが、やはり心が動かなかった。


叔父上は、俺と一緒だと思っていた。
俺が叔父上の跡目を継ぐということで、兄上より叔父上と交流をしていた。
父上に似ているけど、剣術をしているせいか体格は叔父上の方が良かった。
無表情だけど、目が優しい。
でも無表情。生い立ちから、人間不信、いや人間嫌いになったと言っていた。
俺は人間嫌いって言うわけではないが、心が動かないだけだと思っていた。
泣くも笑うも好きも嫌いもわからない。



アオイを紹介した時、叔父上の表情がいつもと違っていた。
少し困ったような表情だった。
聞いたら、アオイと喧嘩をしたそうだ。
謝っているが許してくれないそうだ。
あの叔父上が人と関わろうとしていることに驚いた。
そこまでの人物なのかと思い、観察をしてみた。
くるくる変わる表情、豊富な話題で、父上と母上、兄上、ロクサリーヌと話をする。
年齢、性別が違うのにすごいと思った。

兄上とチェスをしていると、アオイはロクサリーヌにリバーシを作り、やり方を教えていた。
兄上も興味が湧いたのか、チェスをやめてロクサリーヌとアオイのリバーシを見ることにした。
ただコマをひっくり返すだけだが、置き方で勝ち負けが決まる。
チェスより簡単だし、奥が深いゲームだった。

算術の時間も紙に表を作り、掛け算の表を作った。
アオイ達の国では、ロクサリーヌの歳の頃には、みんなが覚えるらしい。
『基本の九九を覚えれば、応用がききますよ』なんてことなげに言った。
確かに覚えれば、2桁、3桁の掛け算、割り算が今までの半分以下の時間で解けた。

異世界人は、アオイは凄いと感心していたが、学園に入ってからは本性が出てきたのか、本当に色々とやらかした。
スカートが長くて動きにくいとか、刺繍より剣術がいいとかそんなのは序の口だった。
練武場の外周の走り込みは、騎士科の3年より早く長く走る。
走る姿が綺麗だったが、俺は途中からついていけなくなった。
ライズは負けじと頑張ったらしい。
それからアオイと競争したいというものが続出した。
だから、リレーというものを教えてもらいみんなで競争をした。
このリレーは授業にも取り入れられることになったらしい。
侍女のマリアからは、寮の大浴場で泳ごうとしたので止めたとか。
アオイの初めての刺繍のハンカチを見て俺は大笑いをした。
猫と言っていたが、魔獣より凶悪な何かに見えた。

アオイは毎日何かしらやらかす。
でも、決して人を傷つける行為はしなかった。
走り込みで転んで怪我した人がいれば、すぐに手当をした。傷口を洗い、治癒魔法をかける。
クラスでも貴族だから、平民だからと区別をしなかった。
わからなければ誰かに聞いて、御礼を言う。
アオイも誰かに聞かれたら、丁寧に教える。
身分は王族と同等なのに、偉ぶることはなかった。
『してもらって当たり前でなく、してもらって感謝をした方がお互い気持ちいいじゃないですか。』と。



夏の長期休暇に入る前に、フィリクスから言われた。

「殿下、変わりましたね。」

「それは良い意味か?悪い意味か?」

「良い意味です。」

「なら、アオイのおかげかな?俺がこんなに世話焼きとは知らなかった。」

「私もです。殿下が大声で笑って、怒っているのを見れて良かったです。」

「笑うのはいいが、怒りたくはないんだがな。」

「でも殿下以外すぐに叱る人がいません。ジークハルト殿下まで話を持っていくと時間がかかり過ぎます。」

「だよな。兄上も生徒会もあって忙しい。結局俺が言わないとダメなんだよな。」

「そう言うことです。」

「フィリクスにもライズにも迷惑かけるな。」

「ふっ、そんなことを言われる日がくるとは思いませんでした。アオイ様には感謝ですね。」

「そう、なのか?」

「殿下は人の感情が読み取れない方だと思っていました。侍従や侍女達が先回りして動いていたから、人の気持ちの変化が読み取れなくなったのかもと、王妃様からお聞きしていました。でも、アオイ様と関わってから、少しずつ変わられた。物事が思い通りにならなくてイライラしたり、してもらったことに御礼を言ったり。だいぶ人間味が出てきました。」

「そうか。」

「今までは、こんな他愛もない会話もしませんでしたし。」

「それは確かにしなかったな。」

「だから良い傾向です。」

「そうか。」


アオイによって変わったのは叔父上だけでなく、俺も変わったようだ。
ただ叔父上のように恋心は抱いていない。
恋をしたとしても、振り回されて置いていかれる想像しかつかない。
俺の手には余りまくる。
だから叔父上、俺に牽制しないで欲しい。
寧ろ、労ってもらいたい。








なんだかんだと1年から2年に進級して、2ヶ月が経った。
ユーリウス様とアーリウス様と登校をする。
2人の留学理由は、アオイの勧誘。
カザリスア皇国には神樹はないが、大樹はある。それを神樹に格上げさせたいのだろう。
グランダル領の大樹が神樹になった話を調べたのだろう。というのが父上達の見解だ。
シュバルツバルト領はカザリスア皇国と境目だが、恩恵はリーデンベルクだけだ。カザリスア皇国に恩恵はない。国境にある神樹の恩恵がリーデンベルクだけの理由を探らない限りは、大樹から神樹にはならないだろう。
いつそのことに気づくのやら。
いや気がつかないから、略奪しか頭にないのだろう。
なるべくアオイに近づかせないように、朝の登校も昼食も放課後も別行動をしている。
アオイは見分けがつかないから、間違えたら何を言われるかわからないからって避けてくれているのが有り難い。

今は叔父上の婚約者。そして俺がシュバルツバルト家に養子に入ったら、義母になる人。
間違っても『お義母様』なんて呼ばないが。
叔父上がいない場所だから、俺が守らないといけない。


生徒玄関に入ると、魔法士科のクラスメイトが慌てた様子で俺のところに来た。
アオイが倒れたと。
その生徒にユーリウス様を、他の騎士科生徒にアーリウス様を頼み、魔法士科のクラスに向かう。
教室に入ると、リュシエルがアオイを横抱きにして、シュトローム嬢と口論をしていた。
しかし、この教室は化粧・香水臭い。

「リュシエル!」

「殿下、アオイ様が!」

「気を失っているのか?」

「はい。保健室に連れて行こうとしたのですが、シュトローム嬢が仮病だと喚いて、道を塞ぐのです。」

「何よ、わたくしは、」

「うるさい!だまれ!」

コンラッドの一喝で、煩かった教室はピタリと静かになった。

「リュシエル、アオイは私が保健室に連れて行く。ありがとう。」

リュシエルからアオイを渡してもらい、教室を出た。
途中ライズが代わりますと申し出たが、叔父上が嫌がるからと断った。
それにアオイは思っていた以上に軽かった。
アオイは見た目通り、小さく軽かった。
叔父上がいない場所だから、俺が守らないといけないはずなのに。

この日、初めて【悔しい】と思った。











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