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わたくしと妹の母は国王陛下の長女で王太子殿下の妹だ。
父であるアーテル公爵を見初めた王女だった母が自分に甘い父王に強請って無理矢理降嫁して、わたくし達双子の姉妹が生まれたのだ。
アーテル公爵家には義兄シオンもいる。義兄とはいえ、わたくしより二ヶ月年上なだけだが。
シオンは親戚のプラティヌム子爵家の一人息子だったが、八年前、彼の実父が不正をして取り潰された際、子供に罪はないとか何とか尤もらしい事を抜かして、父であるアーテル公爵が養子として引き取ったのだ。
けれど、アーテル公爵家を継ぐのは嫡子の長女であるわたくしと結婚し婿入りするはずだった第二王子だ。
第二王子だから王にはなれない。それを抜きにしても容姿以外取り柄がない馬鹿だ。こんな馬鹿を国王にしようなんて、まともな人間なら考えない。
それでも一応王子だから公爵位を与えようと同い年のアーテル公爵家の嫡子の長女であるわたくしと婚約させたのだ。
とはいっても、二代続けて王家の不良物件を押し付けられたアーテル公爵家は、たまったものではない。
ともかく建前上は馬鹿王子がアーテル公爵令嬢であるわたくしと結婚して婿となり将来のアーテル公爵になるはずだった。
けれど、わたくしの物を何でも欲しがる妹が馬鹿王子との婚約を望み、馬鹿王子のほうも愛想がなく自分のする事に何でもダメ出しするわたくしより可愛らしく自分を全肯定する妹を好ましく思い婚約者を替える事を提案した。
父であるアーテル公爵は家族に無関心だったし、母は自分に厳しかった姑(わたくしの祖母)に似たわたくしを厭い自分に似た妹だけを可愛がっている。
妹の望み、馬鹿王子の提案は、すぐに了承された。
アーテル公爵家を継ぐのは、わたくしではなく馬鹿王子と脳内花畑の妹になったのだ。
愛していないどころか嫌いな婚約者を取られたのはどうでもいいが(というか、むしろ感謝しているけど)馬鹿な当主が家を継いで、とばっちりを食うのは領民だ。貴族として生まれた義務や責任感から、それだけは許せない。
わたくしの唯一の懸念に気づいて義兄シオンが言ってくれた。
「アーテル公爵家の事は私や有能な部下達に任せて貴女は好きなように生きればいい」と。
アーテル公爵家を実質牛耳っているのは怜悧で美しい義兄シオンだ。
シオンがいれば、あの馬鹿王子と脳内花畑の妹が公爵や公爵夫人になっても何の問題もない。
それでも、シオンを、これ以上アーテル公爵家に、あの男に縛りつけたくない。
そんなわたくしをシオンが言葉を尽くして説得してきたので、結局、婚約者の入れ替えを了承した。
その際に、完全に家族に見切りをつけたわたくしは、高等部卒業後、家族と縁を切り貴族籍を抜ける念書を書いた。
家族と縁を切り貴族籍を抜ける決意ができたのは、今年から貴族平民問わず女性でも文官になれる試験を実施する事が公表されたからだ。その試験を受けようと思ったのだ。
家族から愛されなくてもアーテル公爵家に生まれたお陰で恵まれた生活ができた。それに付随する義務と責任はアーテル公爵家ではなく国に貢献する事で果たそうと決めたのだ。
父であるアーテル公爵を見初めた王女だった母が自分に甘い父王に強請って無理矢理降嫁して、わたくし達双子の姉妹が生まれたのだ。
アーテル公爵家には義兄シオンもいる。義兄とはいえ、わたくしより二ヶ月年上なだけだが。
シオンは親戚のプラティヌム子爵家の一人息子だったが、八年前、彼の実父が不正をして取り潰された際、子供に罪はないとか何とか尤もらしい事を抜かして、父であるアーテル公爵が養子として引き取ったのだ。
けれど、アーテル公爵家を継ぐのは嫡子の長女であるわたくしと結婚し婿入りするはずだった第二王子だ。
第二王子だから王にはなれない。それを抜きにしても容姿以外取り柄がない馬鹿だ。こんな馬鹿を国王にしようなんて、まともな人間なら考えない。
それでも一応王子だから公爵位を与えようと同い年のアーテル公爵家の嫡子の長女であるわたくしと婚約させたのだ。
とはいっても、二代続けて王家の不良物件を押し付けられたアーテル公爵家は、たまったものではない。
ともかく建前上は馬鹿王子がアーテル公爵令嬢であるわたくしと結婚して婿となり将来のアーテル公爵になるはずだった。
けれど、わたくしの物を何でも欲しがる妹が馬鹿王子との婚約を望み、馬鹿王子のほうも愛想がなく自分のする事に何でもダメ出しするわたくしより可愛らしく自分を全肯定する妹を好ましく思い婚約者を替える事を提案した。
父であるアーテル公爵は家族に無関心だったし、母は自分に厳しかった姑(わたくしの祖母)に似たわたくしを厭い自分に似た妹だけを可愛がっている。
妹の望み、馬鹿王子の提案は、すぐに了承された。
アーテル公爵家を継ぐのは、わたくしではなく馬鹿王子と脳内花畑の妹になったのだ。
愛していないどころか嫌いな婚約者を取られたのはどうでもいいが(というか、むしろ感謝しているけど)馬鹿な当主が家を継いで、とばっちりを食うのは領民だ。貴族として生まれた義務や責任感から、それだけは許せない。
わたくしの唯一の懸念に気づいて義兄シオンが言ってくれた。
「アーテル公爵家の事は私や有能な部下達に任せて貴女は好きなように生きればいい」と。
アーテル公爵家を実質牛耳っているのは怜悧で美しい義兄シオンだ。
シオンがいれば、あの馬鹿王子と脳内花畑の妹が公爵や公爵夫人になっても何の問題もない。
それでも、シオンを、これ以上アーテル公爵家に、あの男に縛りつけたくない。
そんなわたくしをシオンが言葉を尽くして説得してきたので、結局、婚約者の入れ替えを了承した。
その際に、完全に家族に見切りをつけたわたくしは、高等部卒業後、家族と縁を切り貴族籍を抜ける念書を書いた。
家族と縁を切り貴族籍を抜ける決意ができたのは、今年から貴族平民問わず女性でも文官になれる試験を実施する事が公表されたからだ。その試験を受けようと思ったのだ。
家族から愛されなくてもアーテル公爵家に生まれたお陰で恵まれた生活ができた。それに付随する義務と責任はアーテル公爵家ではなく国に貢献する事で果たそうと決めたのだ。
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