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三章
三章ノ肆『第一王子アシム』2
しおりを挟む薬を持って、薄い化粧をして、いつものように行ってきますと祠に挨拶して家を出た。
村で薬を買い取ってもらった私は、お米を買いヒノさんの特性ハチミツ酒を買い帰ろうとする。そうしたら急に村長の息子のテルさんに声をかけられて、コソコソと村長の家に隠れることになってしまった。
「今、村に王子様が来てるらしくて、カイナを探してるらしいんだ」
村長の家から外を覗くと、雅な神輿を担いだ一団が確かにいた。
「あれに王子様が?」
「たぶんね、第一王子のアシム様、例の病の薬を買いにきたそうだよ」
私は王族にはあまりいい印象がないため、その時は絶対にいる事が知られないようにしていた。
「大変です王子の容態が!」
でも、第一王子は急な病状の変化にその場で倒れてしまったと騒ぎになり。
「王子!王子!ええい!貴様ら!王子の容態が芳しくない!誰か!薬師のカイナという者の居場所を教えよ!」
急な展開になっても私は身を隠していた。でも、次に王子の傍付きのような男が言った言葉で私は出ざるを得ない状況になってしまう。
「ええい!あくまで隠すつもりか!王子がここでお亡くなりになられたら!この村の全員の命で償ってもらうぞ!」
「何を……そんなのは横暴ではないですか!」
「うるさい!王族が死ぬことの罪の重さが分からぬ貴様らの愚かさの末路だ!」
村長のダンさんにそう言う王の部下で、王家や大臣の理不尽なやり方は私も身に沁みるほどに理解していて、大切な村の人たちを同じ目には合わせられないと、意を決して名乗り出た。
「私が!……私が、薬師のカイナです」
「カイナ!何故出てきた!」
男は私の傍によって来るとジッと顔を見る。
「王子、彼女が薬師カイナで間違いないと思います」
「そうか、では逃げぬように縄をかけよ」
「いや!痛い!」
私は後ろ手に両手を縛られ、さらに上半身を胸を避けるようにもう一度しっかりと縛られた。
その時、痛いと声を上げると兵士は二ッと笑みを浮かべる。
「およし!カイナちゃんに手を出すのは止めておくれ!」
杖を突いてアリユさんが私を助けるために出てくる。
「アリユさん、大丈夫ですから」
私がそう言っても、アリユさんは歩みを止めない。
「大丈夫なものかい!そんな不安そうな顔して!命の恩人を放っては置けないよ!」
杖を持ち上げると、ふらついてお尻からこけてしまうアリユさんは兵士に怒鳴る。
「老人になにをするんだい!」
「な、何もしてないだろ」
私はアシム王子に騙された。容態急変は芝居で、新しい薬が入っていることから、私がいることを分かっていて小芝居を仕組んだ。
「ふむ、確かにどんな女よりも美しい、口元の紅――」
私を神輿の傍に立たせて、無理やりに唇と唇を合わせようとしてくる王子に私は必死に抵抗した。でも、顔を押さえつけられ無理やりに合わさると、舌が私の口の中に入ってくる。今でもあの時の事は、忘れたいけど憶えていて、屈辱と嫌悪だけの感覚で背筋が凍り付くような体験だった。
「おい、用は済んだ、さっさと帰るぞ」
「は!」
私は神輿の中に乗せられ、汚された想いで外を見ると、村長のダンさんと息子のテルさんが兵士に立ち向かった後であることに気が付いた。二人は、私が唇を奪われた瞬間に王子に殴りかかろうと前に出て、兵士に殴り飛ばされ押さえつけられたのだ。
「村の人に手を出さないで!」
「……ほう、中々に胆が据わっているな」
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