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第二部
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ヤトが強制転移から始まりし街の傍に帰還すると、そこにはビージェイとマリシャが待機していた。
「ヤト坊!」
ビージェイは、すぐにヤトに駆け寄って両肩を掴む。
「……大丈夫か?」
「ああ、問題ない、待っていたのか?」
「当たり前だろ、あんなことがあった後だからな、心配したぜ」
「そうか、すまない」
「ん?……何かあったのか?」
「……別に――なんでもない」
ビージェイの後ろに立っているマリシャも、心配そうな顔をして声をかける。
「カイトちゃんは危ないから、先にホームへ返したわ」
「……正しい判断だ、この辺でも稀にレベル40のモンスターが沸くこともある、一人で戦える相手ではないからな」
「ヤト?本当に大丈夫なの……」
手をヤトの顔へと伸ばすマリシャ。
その腕を掴んだヤトは、「大丈夫、問題ない」と言うが、その表情は暗くだがそれ以上声はかけられなかった。
始まりし街へ歩き出すそんな彼の背中を、ビージェイとマリシャは心配そうに見つめた。
カイトのホーム前で2人と別れ、心配して待っていたカイトに出迎えられるヤト。
大丈夫?と尋ねられれば、大丈夫だと答える彼にカイトは違和感を覚えた。
ヤトと分かれたビージェイは、始まりし街のファミリアのギルド本部へと帰る。
マリシャもその後に続く、が2人は互いに椅子に座って溜め息を吐き、その日あったことを思い返す。
「オーダーの奴らの憤りは分かるけどな……だからって、人が人を裁くのは違うだろ」
「――私は……分からない、彼らの憤りは当然だって思うし、人が人を裁くのは決して間違いじゃないと思う」
マリシャの言葉にビージェイは頭を掻く。
「なら、人が人を殺してもいいってのか?」
首を振ったマリシャは、「違うわビージェイ」と否定して言う。
「人が人を裁くのは普通なの、でも、今回はその方法が強引だっただけ」
「方法?ならどうすればよかったんだ?どうなったら今回の件を防げたんだ?」
「……どうして今回みたいなことが起こったのか、その原因を考えてみて――」
「原因……それは、あの捕まっていた連中があんなこと言わなければ、こんなことにはなってなかっただろうな」
「そして、彼らがあんなことを言ったのはどうして?」
マリシャの問いにビージェイは足を揺らす。
「あいつらがあんなことを言った理由?それはBCOから生還できる安堵からかもな」
「そう、つまりは彼らがこのBCOに囚われていなければ今回こんなことは起こらなかった、元をただせばそういうことになるのよ」
「そもそもBCOに囚われていなければ、今回の件は起こらなかったってか……、でも、それは〝たられば〟の問題だろ」
腕をくんだビージェイは、イライラしているのが一目で分かる。
「BCOに囚われなければ、攻略組みが死んでなかったら――そんなのもう起こっちまってることに目を背けているだけじゃねーか、ここに囚われたからこうなったじゃ納得できねぇ!」
「それは……ビージェイが強いからだよ」
マリシャの悲しげな表情にビージェイは、「わりー、別にマリシャに怒鳴ったわけじゃねーんだ」と謝った。
「いいの、分かってるわ――ビージェイは……その、良い人だからね」
そう言ったマリシャに、ビージェイは少し視線を止めて頬を赤く染める。が、すぐに立ち上がり拳を上に上げた。
「ダー!悩むのはなしだ!俺は今やるべきことをやる!がんばってるヤトだけに全てを背負わせやしねー!間違ったこと言うやつには頭殴って説教だ!!」
ビージェイのその言葉に、マリシャは笑顔を浮かべて、「体罰はいかがなものかと思いますが?ギルマス」と言う。
「愛のパンチだよ!殴って分からない奴にはキスしてやる!」
「フフ、それじゃーセクハラになるわよ」
「なら、一緒にスクランブル交差点で通行人に挨拶させてやる!」
「BCOを出れたらね~、多分、通行人の邪魔だって怒られちゃうだろうけど」
マリシャが笑顔で笑っているのを確認したビージェイは、「どうだ、これから夕飯でも、奢るぜ」と言う。
「そうね、ビージェイの奢りで皆で夕飯にしましょうか」
その言葉で、戸の開いた部屋の外からファミリアのギルドメンバーがゾロゾロと現れた。
「……オツイチ――お前らもいたのかよ」
「ビージェイさんの奢りだ~」
「ゴチで~す」
「俺、ビゼンの牛串が食いたいです!」
男たちがそう言うとビージェイは自身の胸を弱弱しく叩いて、「男ビージェイに二言はね~」と言いと、肩をガクっと落とした。
ビージェイとマリシャが、ファミリアのメンバー全員で夕食を食べていた頃、ヤトとカイトも夕飯の準備をしていた。
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