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本編
炎の精霊
しおりを挟む「炎の大精霊ファルク殿とお聞きしました。私はセラフィム帝国皇帝アインス・セラフィムと申します」
『ふん、リア以外の人間など、どうでも良い。リア、剣を貸せ』
「はい、ファルク」
ファルクは、私から剣を受け取ると精霊の力を注いだ。本来なら契約主から魔力を貰えば問題ないんだけど…ここまで弱ると、受け取れない可能性があるんだって。
あれ?
受け取れない……?
受け付けない…?だったかな。
剣から淡い光が漏れ始める。
正確には、剣に埋め込まれた精霊石が淡い光を発している。
ファルクの炎と呼応し、徐々に形を作っていく……力をある程度取り戻した精霊は、私やファルクに頭を下げ感謝を告げると、アインス陛下の元に飛んでいく。
『アインス……私の主』
「貴方が、俺の……?」
『前契約者の名の元、貴方の精霊になりました炎のフランよ。よろしくね』
「陛下、魔力を精霊さんに」
「魔力……?」
「絆を結んだ精霊石に宿る精霊は、契約主の魔力が無ければ死にます」
「っ、分かった」
陛下は、片手を前に魔力を練り始めました。
凝縮された魔力は赤い輝きを放ち、精霊はその輝きに引かれるように傍に行った。
そして、彼の手を取り顔を寄せ魔力を口に含むと、精霊は更に輝きを増す。
『私の主、魔力をありがとう…
小さき精霊士、炎を統べし精霊よ
感謝を……』
感謝を伝えた精霊は、剣に埋め込まれた精霊石に戻って行った。炎となって精霊石に消える直前、振り向き皇帝陛下に一言伝えていくのを忘れなかった。
『私の主、いつでもご用命を』
唖然とした顔で、今起きた事を理解できない人達が沢山いる中、いち早く陛下が正気を取り戻した。
「セシリア、感謝する。貴方とファルク殿のお陰で、俺は代々伝わる剣を失くさずに済んだようだ」
『リア、人間に気を許すなよ。奴らと同類とも限らん』
ファルクは、そう言い残して姿を消した。
「ふっ、ファルク殿は俺達を信用してないようだな」
「す、すみません」
「構わん。事実、俺達はお前の力を利用するのだから」
それから陛下は、玉座にいる女性に目を向けた。私も一緒になって目を向ければ、女性は頷き玉座から降りてくる。
「セシリアさん、このネックレスも見てくれるかしら?」
「はい?」
「夫から貰った大切な物なのだけれど、数年前から姿を見せてくれなくなりましたの」
「触れても大丈夫ですか?」
女性に言われて、触れても大丈夫か確認を取る。勝手に触れて怒られたくはない。シェイラ様やレイディナ様の時は、血が出ても止まることなく鞭で打たれたもの。
女性の許可を貰ってネックレスに触れれば、また私の意識は精霊に引き寄せられた。
『精霊士ね』
『はい、姿を見せてないと聞きました』
『出来ないの…彼女の命を狙う者がいるから、守ることに力を注いでいるから』
『狙われてる?どうして?』
『ディアナを疎ましく思ってる者がいるのよ。彼女を邪魔だと思う者が、害そうとする者が』
『そんな!?』
『彼女に伝えて、姿を見せなくても、私はあなたの事が大好きよって』
その言葉と共に、意識は戻される。
「どうかしら?死んでないのなら、あの子はどうして姿を見せてくれないの?」
「それは……」
ここでは、流石に言えない内容だった。
この方はきっと偉い方だから、狙われてるなんて軽々しく言える内容じゃない。
「それは、言えません。でも、彼女は、貴方様の事が大好きだと伝えて欲しいと」
「そう……」
肩を落とし落ち込む女性に、これ以上なんて言えば良いのでしょうか?
でも、ここで本当の事を言う訳にはいきませんし……
「何があったのよ?」
小声で、シェイドさんが聞いてくれましたが……何も言えずにいると「陛下、ちょっとセシリア嬢と話がしたいのですが」と断りを入れて私を連れ出した。
なぜか、宰相様も一緒です。
「陛下、流石に女性と2人きりは良くありませんので私も同席して参ります」
あっそっか…、不貞があってはいけないってことかな。
「うむ」
別室に案内されて……
「それで、何があったの?」
「……」
「ここには、私たちしかいませんし、防音の魔法が施されていますから外に漏れることはありませんよ」
宰相様の言葉で、固く閉じていた口を開ける。
「精霊さんは、あの方を狙う人がいると言ってました」
「「!!」」
「誰かが命を狙っているため、持てる全ての力を守ることに使用してるそうです」
「精霊様がそう言ったのね」
「はい」
神妙に頷きました。
シェイドさんも宰相様も、分かりましたと頷き私達は謁見の間に移動しました。
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