17 / 38
本編
新しい家族
しおりを挟む
「あ、あの!どうしたんですか?」
見知らぬ女性に抱き締められ、更にリヒテル宰相様にも抱き締められたセシリアは困惑していた。
「あぁ、セリナ……セリナ……」
女の人は、お母さんの名前を呼びながら泣き続けていた。
(えっと、私はどうしたら……)
暫くそうしていたら、女の人が落ち着いてきて、私を離してくれた。お母さんと同じ金の瞳が真っ赤に晴れていた。
「ごめんなさいね…13年前に出て行った娘が、10年前に亡くなったと聞かされて…まさか、娘がいるなんて思わなくて…」
リヒテル宰相も、アーシェ様と呼ばれた女の人も私を見つめて瞳を潤ませている。
何が何だか分からない……
「セシリア、君のお母さんは、私達の娘なんだよ」
「え?!」
お母さんが、この方達の娘……?
えっと、じゃぁ、お母さんは帝国の人で、貴族だったって事?
バルディオス様は知ってたのかな??
「え、でも、お母さんは…、旅の人で、平民だって旦那様が……」
「それは、シルヴィアス伯爵の事かな?」
それまで黙っていたアインス陛下が、問い掛けてきたので頷いた。
「お前の父親だったな」
「はい…でも、もう………」
「言わなくても良い、シェイドから話は聞いている。お前を我が国に売ったと…」
「全く、人をなんだと思っているのかしら!……でも、良かったのかも知れないわね。貴方をあそこから引き離せたのだもの」
陛下も皇太后様も、先程まで涙を流してたとは思えないほど、怒りを露わにしていた。
「ええ、そこだけは評価出来ますわね」
「だが、この子が精霊士だと知れ、価値が知られれば奪い返しに来ます………
陛下!!
どうか、この子を我が家に任せては頂けませんか。必ず幸せにしますし、必ず私達の手で守ります!どうか…!娘の最後の頼みを叶えさせては貰えませんか!!」
リヒテル宰相様が、陛下に頭を下げた。
アーシェと呼ばれた女の人も、鑑定士の方も陛下に頭を下げていた。
私は呑気にも、旦那様が私を奪いに来ることは無いんじゃないかなとか考えていた。
「分かっている。石版を見て、お前達に任せると決めていた。お前達に任せることが適任であろう。地位的にもそう簡単に手出しは出来んであろうしな」
「はっ!ありがとうございます。セリオス、聞いていたな。手続きを頼む」
「分かりました。…では、御前失礼します」
鑑定士の方が、陛下や私に頭を下げて謁見室を出て行った。
「あれは、私の息子でセリオスと言います。私の補佐ですが、鑑定士の資格もあるのですよ」
私の疑問を読み取ってくれたのか、リヒテル宰相様が教えてくれた。
「セシリア、この場を借りて紹介しますね。私の妻でアーシェと言います」
「アーシェよ。貴方にとっては祖母になるわ。よろしくね」
リヒテル宰相様の奥様で、わたしの祖母だと女の人は言って、手を差し出してきた。
私が恐る恐る手を差し出すと、優しく包み込むように手を握った。
「セシリアの養子先は決まったな。さて、次の問題だが……」
陛下はそう言って再び石版に目を落とすと、状態異常の項目に目を走らせ……
その間に、リヒテル宰相様は私にペンダントを返し首に付けてくれた。
「虚弱の呪いに、成長妨害……心的外傷…、打撲、衰弱ねぇ……状態異常が多すぎるな」
「一体どんな生活を送ればこんな状態になるの……」
「許せませんね……私達の大切な子を、虐げるなど!」
「アインス、これは、あの国に何かしらのお返しをせねばなりませんね」
ふふっと皇太后様は微笑んだ。
でも、皇太后様の目が笑ってなく、陛下や宰相様達も不敵な笑みを浮かべていた。
「兎に角、まずは打撲や衰弱から癒していくぞ。呪いに関しては、教会に問い合わせて、心的外傷や成長妨害は、少しづつ治していくしかあるまい。皆の者、セシリアの為にも手を貸してもらうぞ」
と締めくくり、この場は解散となった。
そして私は、宰相様とアーシェ様に手を引かれ、皇城を離れたのだった。
見知らぬ女性に抱き締められ、更にリヒテル宰相様にも抱き締められたセシリアは困惑していた。
「あぁ、セリナ……セリナ……」
女の人は、お母さんの名前を呼びながら泣き続けていた。
(えっと、私はどうしたら……)
暫くそうしていたら、女の人が落ち着いてきて、私を離してくれた。お母さんと同じ金の瞳が真っ赤に晴れていた。
「ごめんなさいね…13年前に出て行った娘が、10年前に亡くなったと聞かされて…まさか、娘がいるなんて思わなくて…」
リヒテル宰相も、アーシェ様と呼ばれた女の人も私を見つめて瞳を潤ませている。
何が何だか分からない……
「セシリア、君のお母さんは、私達の娘なんだよ」
「え?!」
お母さんが、この方達の娘……?
えっと、じゃぁ、お母さんは帝国の人で、貴族だったって事?
バルディオス様は知ってたのかな??
「え、でも、お母さんは…、旅の人で、平民だって旦那様が……」
「それは、シルヴィアス伯爵の事かな?」
それまで黙っていたアインス陛下が、問い掛けてきたので頷いた。
「お前の父親だったな」
「はい…でも、もう………」
「言わなくても良い、シェイドから話は聞いている。お前を我が国に売ったと…」
「全く、人をなんだと思っているのかしら!……でも、良かったのかも知れないわね。貴方をあそこから引き離せたのだもの」
陛下も皇太后様も、先程まで涙を流してたとは思えないほど、怒りを露わにしていた。
「ええ、そこだけは評価出来ますわね」
「だが、この子が精霊士だと知れ、価値が知られれば奪い返しに来ます………
陛下!!
どうか、この子を我が家に任せては頂けませんか。必ず幸せにしますし、必ず私達の手で守ります!どうか…!娘の最後の頼みを叶えさせては貰えませんか!!」
リヒテル宰相様が、陛下に頭を下げた。
アーシェと呼ばれた女の人も、鑑定士の方も陛下に頭を下げていた。
私は呑気にも、旦那様が私を奪いに来ることは無いんじゃないかなとか考えていた。
「分かっている。石版を見て、お前達に任せると決めていた。お前達に任せることが適任であろう。地位的にもそう簡単に手出しは出来んであろうしな」
「はっ!ありがとうございます。セリオス、聞いていたな。手続きを頼む」
「分かりました。…では、御前失礼します」
鑑定士の方が、陛下や私に頭を下げて謁見室を出て行った。
「あれは、私の息子でセリオスと言います。私の補佐ですが、鑑定士の資格もあるのですよ」
私の疑問を読み取ってくれたのか、リヒテル宰相様が教えてくれた。
「セシリア、この場を借りて紹介しますね。私の妻でアーシェと言います」
「アーシェよ。貴方にとっては祖母になるわ。よろしくね」
リヒテル宰相様の奥様で、わたしの祖母だと女の人は言って、手を差し出してきた。
私が恐る恐る手を差し出すと、優しく包み込むように手を握った。
「セシリアの養子先は決まったな。さて、次の問題だが……」
陛下はそう言って再び石版に目を落とすと、状態異常の項目に目を走らせ……
その間に、リヒテル宰相様は私にペンダントを返し首に付けてくれた。
「虚弱の呪いに、成長妨害……心的外傷…、打撲、衰弱ねぇ……状態異常が多すぎるな」
「一体どんな生活を送ればこんな状態になるの……」
「許せませんね……私達の大切な子を、虐げるなど!」
「アインス、これは、あの国に何かしらのお返しをせねばなりませんね」
ふふっと皇太后様は微笑んだ。
でも、皇太后様の目が笑ってなく、陛下や宰相様達も不敵な笑みを浮かべていた。
「兎に角、まずは打撲や衰弱から癒していくぞ。呪いに関しては、教会に問い合わせて、心的外傷や成長妨害は、少しづつ治していくしかあるまい。皆の者、セシリアの為にも手を貸してもらうぞ」
と締めくくり、この場は解散となった。
そして私は、宰相様とアーシェ様に手を引かれ、皇城を離れたのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
4,551
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる