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第231話
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◆神坂夏菜 視点◆
6日になり始業式で学校が再開する。2週ぶりになるとは言え朝のルーティンは変わらない。休み中だからとだらける事なく生活していた私にはいつも通りの起床に朝の支度をし、出掛ける時間になった。春華は始業式で生徒会役員としての役割があるので眠そうながら起きていて一緒に家を出て、昨晩の内に出発時間を伝えていたのもあり美波も準備ができていて3人で一緒にマンションを出た。
ここまでは二学期と変わらない・・・
「おはよう、みんな」
冬樹がマンションの前で待っていた。
冬休みの間に道路を挟んで反対側の区画に越してきた冬樹も一緒に登校をすると言って事前に出発時間の連絡を取り合っていた。
私だけでなく春華と美波とも当然その事は共有されていたし、冬樹達の家への行き来も何度かしていたものの本当に一緒に登校してくれるのかと半信半疑なところもあり、冬樹と合流するまで3人共冬樹の名前を出していなかった。
「おはようフユ!」
「おはよう冬樹」
「ああ、おはよう」
冬樹の挨拶に対し春華、次いで美波、少し遅れて私が返した。
改めて感じたが冬樹は確実に良い方向へ気持ちが向いているし、美晴さんが付き添って癒やしてくれたからだと思う。それが奏効し私達への対応にも良い影響が出てきているので美晴さんには感謝しかない。
4人で登校し、学校へ着くと玄関で3人と別れ教室へ向かった。二学期の時は冬樹のことがあり雰囲気が険悪なもので私への視線も厳しいものだったがそんなことはなく、さりとてこれから大学受験の本番を迎える時期であることからくる重苦しい緊張感も漂っている。
まだクラスの3分の1程度の生徒しか登校していないものの聞こえてくる会話は受験に関するもので自分も気を引き締めねばと思わせられる。
「神坂さん、おはよう。あけましておめでとう」
「ああ、おはよう。今年もよろしく頼む」
始業時間まで勉強でもしようかと参考書を出したタイミングで五十嵐君が挨拶をしてくれたので返答した。
「うん。ぜひ、お願いするよ。
神坂さんは年末年始は勉強は捗った?」
「そうだな。まぁまぁ捗ったと思う。
ちょうど高校受験を控えた従兄弟が来ていて家の中が受験ムードで染まっていたから家族も協力的でやりやすかった」
「そうなんだ。それにしても、そのイトコって仲が良いの?
いくら受験だからって中学生が冬休みにくるなんてなかなかないんじゃないの?」
「たしかにそうかもしれないが、地方に住んでて受験はうちの高校を受け、合格したらうちに居候する予定なのもあって受験前のお試しというのもある。
まぁ、試すまでもなかったようだが、そもそもの目当てがイメージできてやる気になったから意味はあったかもしれない」
「そうなんだ。入れ違いになるけど、そのイトコが後輩になると良いね」
「ああ、そうだな」
それから少し他愛のない会話を行い、私と仲の良いグループの友人たちが登校してきたのを見ると五十嵐君は自分の席へ戻っていった。
「夏菜ちゃん、あけましておめでとー。今年も卒業してもよろしくね!」
「夏菜、あけおめー」
「かいちょー、おめーことよろー」
「ああ、あけましておめでとう。それと、卒業してからもよろしく頼む」
登校途中で合流したのかまとまってやってきた友人たちから一斉に挨拶をしてくれたので返した。
「ところでさー、かいちょー。いがくんと仲良さそうに話してたねー」
「そうそう、いい感じに見えたよ」
「付き合う?付き合っちゃうの?」
友人たちは受験よりも私と五十嵐くんとの関係が気になるようで、始業のチャイムが鳴るギリギリまでその話で盛り上がられた。
たしかに二学期の怪我の時は誠意ある対応をしてくれたし、そもそも文化祭の準備だって誰よりも率先して真面目に取り組んでいたから好感を持っているのは間違いないが、何でもかんでも色恋に紐付けられるのはなんとも腑に落ちない。
私達は受験生でこれからの2ヶ月が勝負という大事な時なのに浮かれているなど言語道断だ。
それから始業式が行われて何事もなく終わり、続けて生徒会主催の生徒集会が行われた。
二学期の終業式の時はギリギリまで怖気付いていてスピーチでも緊張が見えていた春華も2度目となると慣れたのか中々堂に入ったものになっていた。これなら私が卒業してからも大丈夫だろう。
生徒集会も終わりHRが終わると放課となり帰宅した。
春華達と連絡をして一緒に帰っても良かったが、向こうはクラスメイトと何かあるかもしれないし連絡がないのでそのまま1人で帰った。
今日は金曜日で明日からは土日祝で3連休になるのでまたしばらく冬休みの様なものだが、個人的にはこの1日で気が引き締まったので登校日で良かったと思う。
帰宅すると、幸博がリビングで勉強していた。
幸博も露骨で、私がリビングの扉を開けた時には期待を込めた視線を送ってくるのにそれが春華ではないとわかると陰る。悪い人間ではないのはわかっているので、受験を頑張って無事にこの家に居候できるように頑張れと思う。
「ただいま。春華じゃなくてすまなかった」
「そんなっ・・・ごめん夏菜姉。おかえり」
態度に出ていた自覚があったのだろう。素直に謝るあたりが可愛い弟分だ。
「いいさ。勉強は捗っているか?
私で良かったら教えてやるぞ」
「ありがとう。でも、大丈夫だから、夏菜姉は自分の勉強をやって」
「わかった。春華が戻ってくるまでに何か躓いたら私に聞くと良い」
自室へ戻り勉強を始めた・・・
・・・しばらくすると春華と美波が私の元へ来た。
「ふたりともおかえり。どうした二人して」
「うんとね。美波ちゃんが話したいことがあるんだって」
「そうか、わかった。幸博に聞かれない方が良いことなんだろ?」
「うん。春華ちゃんと夏菜お姉ちゃん以外には聞かれたくないかな」
「わかった。じゃあ、お茶の用意をして私の部屋で話すか」
お茶の用意をし、態勢が整ったところで美波の話を聞き始めた。
「あのね・・・わたし、鷺ノ宮君と付き合うことにしたの」
「美波ちゃん!?なんで!?」
美波の告白に対して春華が驚きの声を上げたが私も内心では混乱している。美波の身に起きたことを考えれば元凶とも言える男と付き合うというのだ。
「春華ちゃんが驚くのもわかると思うけど、話を聞いてくれないかな?」
美波の話を聞くと先日二之宮凪沙を介して鷺ノ宮と再会していたらしく、その際に深く反省している態度に触れ、更に元々美波へ好意を持っていた事を知り、前向きに考えた結果付き合うことにしたのだという。
たしかに一連の事件の根源である二之宮凪沙すら友人として付き合おうとする美波からしたらあまり関係ないことなのかもしれないし、変に冬樹へ固執して美晴さんとの関係をおかしくするよりは良いことなのかもしれないと考えた。
鷺ノ宮は九州の工場で期間契約の仕事が3月まで残っていて、明日からまた九州へ行くのでその間は遠距離恋愛になるらしいが、それでも密に連絡を取り合う約束をしたと嬉しそうに語っている。また、隠すことではないから近しい人には何かの機会があれば話して良いと言われたが、美波の話をする相手などそう多くはないので美波か春華が先に伝えている相手と話すくらいだろうと思う。
どちらにしても、美波が傷付くことにならなければ良いが・・・
6日になり始業式で学校が再開する。2週ぶりになるとは言え朝のルーティンは変わらない。休み中だからとだらける事なく生活していた私にはいつも通りの起床に朝の支度をし、出掛ける時間になった。春華は始業式で生徒会役員としての役割があるので眠そうながら起きていて一緒に家を出て、昨晩の内に出発時間を伝えていたのもあり美波も準備ができていて3人で一緒にマンションを出た。
ここまでは二学期と変わらない・・・
「おはよう、みんな」
冬樹がマンションの前で待っていた。
冬休みの間に道路を挟んで反対側の区画に越してきた冬樹も一緒に登校をすると言って事前に出発時間の連絡を取り合っていた。
私だけでなく春華と美波とも当然その事は共有されていたし、冬樹達の家への行き来も何度かしていたものの本当に一緒に登校してくれるのかと半信半疑なところもあり、冬樹と合流するまで3人共冬樹の名前を出していなかった。
「おはようフユ!」
「おはよう冬樹」
「ああ、おはよう」
冬樹の挨拶に対し春華、次いで美波、少し遅れて私が返した。
改めて感じたが冬樹は確実に良い方向へ気持ちが向いているし、美晴さんが付き添って癒やしてくれたからだと思う。それが奏効し私達への対応にも良い影響が出てきているので美晴さんには感謝しかない。
4人で登校し、学校へ着くと玄関で3人と別れ教室へ向かった。二学期の時は冬樹のことがあり雰囲気が険悪なもので私への視線も厳しいものだったがそんなことはなく、さりとてこれから大学受験の本番を迎える時期であることからくる重苦しい緊張感も漂っている。
まだクラスの3分の1程度の生徒しか登校していないものの聞こえてくる会話は受験に関するもので自分も気を引き締めねばと思わせられる。
「神坂さん、おはよう。あけましておめでとう」
「ああ、おはよう。今年もよろしく頼む」
始業時間まで勉強でもしようかと参考書を出したタイミングで五十嵐君が挨拶をしてくれたので返答した。
「うん。ぜひ、お願いするよ。
神坂さんは年末年始は勉強は捗った?」
「そうだな。まぁまぁ捗ったと思う。
ちょうど高校受験を控えた従兄弟が来ていて家の中が受験ムードで染まっていたから家族も協力的でやりやすかった」
「そうなんだ。それにしても、そのイトコって仲が良いの?
いくら受験だからって中学生が冬休みにくるなんてなかなかないんじゃないの?」
「たしかにそうかもしれないが、地方に住んでて受験はうちの高校を受け、合格したらうちに居候する予定なのもあって受験前のお試しというのもある。
まぁ、試すまでもなかったようだが、そもそもの目当てがイメージできてやる気になったから意味はあったかもしれない」
「そうなんだ。入れ違いになるけど、そのイトコが後輩になると良いね」
「ああ、そうだな」
それから少し他愛のない会話を行い、私と仲の良いグループの友人たちが登校してきたのを見ると五十嵐君は自分の席へ戻っていった。
「夏菜ちゃん、あけましておめでとー。今年も卒業してもよろしくね!」
「夏菜、あけおめー」
「かいちょー、おめーことよろー」
「ああ、あけましておめでとう。それと、卒業してからもよろしく頼む」
登校途中で合流したのかまとまってやってきた友人たちから一斉に挨拶をしてくれたので返した。
「ところでさー、かいちょー。いがくんと仲良さそうに話してたねー」
「そうそう、いい感じに見えたよ」
「付き合う?付き合っちゃうの?」
友人たちは受験よりも私と五十嵐くんとの関係が気になるようで、始業のチャイムが鳴るギリギリまでその話で盛り上がられた。
たしかに二学期の怪我の時は誠意ある対応をしてくれたし、そもそも文化祭の準備だって誰よりも率先して真面目に取り組んでいたから好感を持っているのは間違いないが、何でもかんでも色恋に紐付けられるのはなんとも腑に落ちない。
私達は受験生でこれからの2ヶ月が勝負という大事な時なのに浮かれているなど言語道断だ。
それから始業式が行われて何事もなく終わり、続けて生徒会主催の生徒集会が行われた。
二学期の終業式の時はギリギリまで怖気付いていてスピーチでも緊張が見えていた春華も2度目となると慣れたのか中々堂に入ったものになっていた。これなら私が卒業してからも大丈夫だろう。
生徒集会も終わりHRが終わると放課となり帰宅した。
春華達と連絡をして一緒に帰っても良かったが、向こうはクラスメイトと何かあるかもしれないし連絡がないのでそのまま1人で帰った。
今日は金曜日で明日からは土日祝で3連休になるのでまたしばらく冬休みの様なものだが、個人的にはこの1日で気が引き締まったので登校日で良かったと思う。
帰宅すると、幸博がリビングで勉強していた。
幸博も露骨で、私がリビングの扉を開けた時には期待を込めた視線を送ってくるのにそれが春華ではないとわかると陰る。悪い人間ではないのはわかっているので、受験を頑張って無事にこの家に居候できるように頑張れと思う。
「ただいま。春華じゃなくてすまなかった」
「そんなっ・・・ごめん夏菜姉。おかえり」
態度に出ていた自覚があったのだろう。素直に謝るあたりが可愛い弟分だ。
「いいさ。勉強は捗っているか?
私で良かったら教えてやるぞ」
「ありがとう。でも、大丈夫だから、夏菜姉は自分の勉強をやって」
「わかった。春華が戻ってくるまでに何か躓いたら私に聞くと良い」
自室へ戻り勉強を始めた・・・
・・・しばらくすると春華と美波が私の元へ来た。
「ふたりともおかえり。どうした二人して」
「うんとね。美波ちゃんが話したいことがあるんだって」
「そうか、わかった。幸博に聞かれない方が良いことなんだろ?」
「うん。春華ちゃんと夏菜お姉ちゃん以外には聞かれたくないかな」
「わかった。じゃあ、お茶の用意をして私の部屋で話すか」
お茶の用意をし、態勢が整ったところで美波の話を聞き始めた。
「あのね・・・わたし、鷺ノ宮君と付き合うことにしたの」
「美波ちゃん!?なんで!?」
美波の告白に対して春華が驚きの声を上げたが私も内心では混乱している。美波の身に起きたことを考えれば元凶とも言える男と付き合うというのだ。
「春華ちゃんが驚くのもわかると思うけど、話を聞いてくれないかな?」
美波の話を聞くと先日二之宮凪沙を介して鷺ノ宮と再会していたらしく、その際に深く反省している態度に触れ、更に元々美波へ好意を持っていた事を知り、前向きに考えた結果付き合うことにしたのだという。
たしかに一連の事件の根源である二之宮凪沙すら友人として付き合おうとする美波からしたらあまり関係ないことなのかもしれないし、変に冬樹へ固執して美晴さんとの関係をおかしくするよりは良いことなのかもしれないと考えた。
鷺ノ宮は九州の工場で期間契約の仕事が3月まで残っていて、明日からまた九州へ行くのでその間は遠距離恋愛になるらしいが、それでも密に連絡を取り合う約束をしたと嬉しそうに語っている。また、隠すことではないから近しい人には何かの機会があれば話して良いと言われたが、美波の話をする相手などそう多くはないので美波か春華が先に伝えている相手と話すくらいだろうと思う。
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