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224.輜重隊出征13

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「おまえが狸寝入りなんかしているからだろう!
昔から思うけど、演技がヘタクソだぞ。
それにおまえの親父のことなんて、
聞かないから心配すんな。
話したくなったら、話せばいいよ。
とにかく行くぞ」
誠一はヴェルに袖を引かれて、
シエンナのいる部屋に連行された。

「ちょっと、二人とも何してんのよ。
さっさと寝て、疲れをとるべきじゃないの」
シエンナは現れた二人を窘めた。
同室の他の女性たちが値踏みするように
二人を観察していた。

「おっおう、その通りなんだけどさ。
兄貴と姉貴に挨拶しとこうと思って。
アルと二人でもいいけど、一応、シエンナにも
声をかけておこうと思ったんだよ」

「うーん、ロジェさんとキャロリーヌさんかー。
なら私も行かないと」
同室の女性たちはロジェという言葉には
薄い反応だったが、キャロリーヌという言葉には
大いに反応していた。
そして、横合いから口を挟み始めた。
「ちょっと、あんた、キャロリーヌさんと
知り合いなの?」

「ねえ、ちょっと、紹介してよ」

「キャロリーヌ姉様とお会いしたいのですけど、
お願いできます?」

女性たちの予想だにしない反応に誠一とヴェルは、
たじろいていた。
そして、碌に返答することができなかった。

「はいはい、王都に戻れたら、
お願いしてみるから、
一旦、先輩方は落ち着いてください。
それと今日のところはご容赦ください。
到着の挨拶に伺うだけですし、
防衛戦でお疲れだと思いますので」
シエンナの言葉に女性たちは納得したようで、
ひとまずは引き下がったようだった。

3人は歩きながら、先ほどのことを話していた。
「シエンナ、あれ、どういうことだ?
男が群がるのは毎度のことだが、何で女まで?
謎だ、そういう趣味趣向なのか?」

「ったく!ヴェルは!
キャロリーヌさんは、同性の憧れの的なのよ。
まー吟遊詩人の詩による流布が大きなところだけど」

「んんん?そんな詩になるような冒険したかな?」
首をひねるヴェルだった。

「違うって!そう言うのじゃなくて、
キャロリーヌさんの美しさとか服装とかを
讃えた詩よ。
まったくリシェーヌにしろ
キャロリーヌさんにしろ美人は得よね」
拗ねたような表情でぶつくさ愚痴るシエンナであった。

「確かにシエンナは美人って感じじゃないけど」
誠一がごく自然に話すと、シエンナは悲しそうな表情で
うつむいてしまった。
ヴェルは、道を探しているのか周囲を
きょろきょろとしていた。
「シエンナは美人というより可愛い感じだよね。
要するに方向性の問題であって、
シエンナも十分に魅力的だと思う」
誠一は、大学生だった頃は
絶対に言えないだろうことを
こうも冷静に伝えられることに成長を
感じていた。
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