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310.奥殿6

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「ふむ、そういうことですか。
一人に付き一回きりの選択肢ということか。
なるほどなるほど、これはまあ、いと仕方なし。」
顎を右手で撫でながら、剣豪は呟いていた。

誠一は、そんな剣豪をよそに『Continue』を押した。
画面は先ほどと同じように庵と二人を映した。

「今回は失敗ということか。
しかし、まあ、今回の検体では随分、色々と分かった。
良しとするか」

いつの間にか剣豪の左手には分厚い書物あり、開かれていた。
そして、右手に持った羽ペンを走らせていた。

誠一はマウスを動かすとドット絵のキャラクタが動いた。
庵の周りに出口はなかった。
端の方に置かれているPCにキャラをぶつけると、
青色のウインドウが開いた。最下段にshut downの文字が見えたため、
カーソルを合わせて、押した。
PCの画面がブラックアウトして、真っ暗になった。
PCから聞こえていた機械的な音も消えた。
色々と調べたいことも湧き上がっていたが、
本殿に残してきた仲間の状況も気になり、戻ることを剣豪に問いかけた。

「そうですな。戻りましょう。
それとアルフレート様、突然ですが、お暇させて頂きます」
剣豪のこの発言に誠一は驚いたが、本殿での件も考えれば、
如何なる理由があろうとも誠一は共に行動することは出来ないと思っていた。

「そうですね。また、お会いすることもあるでしょう。
その時はよろしくお願いします」
剣豪に対する怒りは腹の底に隠し、上辺だけを取り繕った言葉で対応した。

「太古の神殿に向かうときはご助力いたしましょう。武士に二言なしです」
きりっと決めた剣豪の顔に若干、苛立ちを覚えた誠一だったが、
神殿攻略には欠かせないと判断していたため、にこやかに応じた。

「その際はよろしくお願いします。これから先生はどこへ向かうのですか?」

「大森林の先。魔族領にむかうでござる」

流石に誠一は無理だと思った。
剣豪の攻撃能力が逸脱していることは肌で十分に感じていたが、
受けに回り攻撃を受ければ、途端に劣勢になってしまう。
紙っぺらのような彼の防御力をサポートするメンバーが
必要だと感じた。

「そうそう不安そうな顔して貰っても困るでござるよ。
魔神や魔王に挑戦する訳ではござらぬ」

「別れる前の本稽古だったと言うことですか」
誠一が剣豪に問いかけた。

「さあ、そんなことはどうでもいいでござるよ。
それより糞尿を漏らしたことは墓場まで持っていく故に心配無用」
からからと笑うと昇って来た階段をささっと小走りに下って行った。
誠一はいまだに身体の節々に違和感があり、
剣豪の真意を正すこともできずにゆっくり歩いて階段を下った。

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