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311.奥殿7
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階段を下りきって本殿に到着した誠一は、悲鳴を上げていた。
「痛い痛い、ちょっ、痛い」
その悲鳴が聞こえないのか、シエンナとキャロリーヌ泣きながら
力いっぱい誠一を抱きしめていた。
ロジェはそれを温かい目で見守っていた。
ヴェルもほっとしたような表情であった。
サリナは笑おうとしたが、痛みから、苦笑いのようになっていた。
少し離れたところにいる烏天狗の黒い瞳に誠一が映っていた。
叫び疲れた誠一と泣き疲れたシエンナとキャロリーヌが
ぐったりしているところにロジェが話しかけた。
「オニヤ殿から言付けを受けた。
彼のことは信頼に足るかどうかはわからないが、
これを渡してくれとの事だった。
渡されたら、彼は脱兎の如く走り去っていったよ」
その時のことを誠一が詳しく聞くと、
ロジェが小袋を渡されると剣豪は走り去り、
一同、呆気に取られていたとのことだった。
誠一は小袋に右手を入れると、突然、さまざまな情報が頭に入って来た。
「これは、小さいけど、アイテムボックスだ」
頭に浮かび上がるのはアイテムボックスに
収納されているアイテムのことであった。
かなりの量の金貨から希少な魔石までさまざまであった。
ふと訓練指南書と書かれた巻物が頭の脳裏をよぎった。
取り出して紐を解くとここにいるメンバーだけでなく、
ラムデールやファブリッツィオの訓練に関してまで記載されていた。
途中を端折って、最後の方を誠一は読んだ。
『信じるも信じないも己自身の決める事、己の選択肢を信じて進みなされ』
巻物は剣豪の生国の文字で書かれていた。
古い仮名と漢字の組み合わせであり、完全ではないが、
誠一にはそれを何とか読むことができた。
誠一は巻物を閉じて、巻物の内容を話した。
各々、懐疑的ではあったが、頷いていた。
誠一が皆を見回すといつの間にか烏天狗が近くにいた。
「継承の儀が終わったのだな。
貴殿は男性故に巫女と呼ぶには些かおかしい。
山の主と称して貰う。それで主殿は如何するのか?」
烏天狗の問いに誠一は答えた。
「この地を去る。必要な時にまた、訪れる。
それまで、清浄に保ってくれ。無論、奥殿もです」
烏天狗は嘴を下げた。恐らく頷いたのであろう。
「奥殿のことは他言無用。主殿の心に閉まっておくがよかろう。
話せば、啓示への反発など些細な苦しみと思えるほどの神罰が下るであろう。
虚ろなる神、気儘なる神を束ねる主神の神通力に抗えるものなし」
誠一には秘匿すべき範囲がいまいちわからなかった。
それよりこの世界に干渉する管理者たちが
主神と称していることに笑ってしまった。
会社ではマネジャーにすり潰されるように
使われる雇われの社員たちがゲーム内で管理職のように
振舞っている様に滑稽さを感じていた。
ふと誠一はこの世界に召喚された時のことを思い出していた。
確かヴェルトール王国の女王であったナージャは、
主神と言わずに管理者と言っていたはず。
世界の真実に迫っている者や主神と接触している者は、
神がどのような存在か気付いており、
ゲームを管理している管理者の存在を知っているようであった。
思考がこの世界のことに囚われていたが、かぶりを振って、
この神殿から出て旅を続けることを誠一は皆に改めて提案した。
「痛い痛い、ちょっ、痛い」
その悲鳴が聞こえないのか、シエンナとキャロリーヌ泣きながら
力いっぱい誠一を抱きしめていた。
ロジェはそれを温かい目で見守っていた。
ヴェルもほっとしたような表情であった。
サリナは笑おうとしたが、痛みから、苦笑いのようになっていた。
少し離れたところにいる烏天狗の黒い瞳に誠一が映っていた。
叫び疲れた誠一と泣き疲れたシエンナとキャロリーヌが
ぐったりしているところにロジェが話しかけた。
「オニヤ殿から言付けを受けた。
彼のことは信頼に足るかどうかはわからないが、
これを渡してくれとの事だった。
渡されたら、彼は脱兎の如く走り去っていったよ」
その時のことを誠一が詳しく聞くと、
ロジェが小袋を渡されると剣豪は走り去り、
一同、呆気に取られていたとのことだった。
誠一は小袋に右手を入れると、突然、さまざまな情報が頭に入って来た。
「これは、小さいけど、アイテムボックスだ」
頭に浮かび上がるのはアイテムボックスに
収納されているアイテムのことであった。
かなりの量の金貨から希少な魔石までさまざまであった。
ふと訓練指南書と書かれた巻物が頭の脳裏をよぎった。
取り出して紐を解くとここにいるメンバーだけでなく、
ラムデールやファブリッツィオの訓練に関してまで記載されていた。
途中を端折って、最後の方を誠一は読んだ。
『信じるも信じないも己自身の決める事、己の選択肢を信じて進みなされ』
巻物は剣豪の生国の文字で書かれていた。
古い仮名と漢字の組み合わせであり、完全ではないが、
誠一にはそれを何とか読むことができた。
誠一は巻物を閉じて、巻物の内容を話した。
各々、懐疑的ではあったが、頷いていた。
誠一が皆を見回すといつの間にか烏天狗が近くにいた。
「継承の儀が終わったのだな。
貴殿は男性故に巫女と呼ぶには些かおかしい。
山の主と称して貰う。それで主殿は如何するのか?」
烏天狗の問いに誠一は答えた。
「この地を去る。必要な時にまた、訪れる。
それまで、清浄に保ってくれ。無論、奥殿もです」
烏天狗は嘴を下げた。恐らく頷いたのであろう。
「奥殿のことは他言無用。主殿の心に閉まっておくがよかろう。
話せば、啓示への反発など些細な苦しみと思えるほどの神罰が下るであろう。
虚ろなる神、気儘なる神を束ねる主神の神通力に抗えるものなし」
誠一には秘匿すべき範囲がいまいちわからなかった。
それよりこの世界に干渉する管理者たちが
主神と称していることに笑ってしまった。
会社ではマネジャーにすり潰されるように
使われる雇われの社員たちがゲーム内で管理職のように
振舞っている様に滑稽さを感じていた。
ふと誠一はこの世界に召喚された時のことを思い出していた。
確かヴェルトール王国の女王であったナージャは、
主神と言わずに管理者と言っていたはず。
世界の真実に迫っている者や主神と接触している者は、
神がどのような存在か気付いており、
ゲームを管理している管理者の存在を知っているようであった。
思考がこの世界のことに囚われていたが、かぶりを振って、
この神殿から出て旅を続けることを誠一は皆に改めて提案した。
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