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582.狩猟祭7

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「ふーむ、己の至らなさを
手持ちの武具せいにするのは如何かと」
眠そうな目を擦りながら、ふらふらと歩いて
誠一の側に現れた剣豪であった。

「ふむふむ、レア度というくだらない概念に
囚われず比較するならば、
実力伯仲しているのはキャロリーヌのみでござるか。
パーティの熟練度でもどうやら向こうが圧倒的に上でござるな。
さてさて、アルフレート様、ここの危機を
どうやって回避いたします?」
他人事のようにへらへらと笑っている剣豪であった。

剣豪の登場で目に見えて『赤薔薇の園』の一団が
動揺しているように誠一には見えた。
剣豪の雰囲気を察するに加勢する気は
まるでないようであった。
とろんとした目は彼女たちを品定めしているようでもあった。
膠着したこの状況で誠一は出来る限りの情報を集めようとした。
「シエンナ、魔術を詠唱するふりをして、
彼女達に関して知る限りのことを話して」

「えっ了解。
『赤薔薇の園』、先生と同じSランクの冒険者チームよ。
クラン『莉々』の最強戦力にして、多くの貴族や有力者の
支持を集めているわ。
各個人のレア度は恐らく全員、SR以上で
能力の上限まで到達しているって噂。
それと女神の強烈な庇護受けていて、強力な神具を扱えるわ。
最近はあまり聞かないけど迷宮や遺跡の探索を主にしていて、
上級の遺跡を幾つか攻略した実績があるわ」

向こうの暗殺者にはシエンナが魔術の詠唱でなく、
会話をしていることが察せられたようであったが、
距離を詰めて攻撃に転じてくることはなかった。
誠一はシエンナの話に耳を傾けながら、
ログインしていることを祈りながら千晴に話しかけた。

『千晴さん、莉々というHNか名前に
心当たりはありませんか?』

『アルフレート・フォン・エスターライヒ狩猟祭は、
まだ開催中なんですか?』

いくつか質問を千晴に投げかけたが、反応はなかった。
青空より見られているような気がしたが、
どうやら誠一は自分の勘違いだったのだろうと思った。

誠一は、もう一度、青空を見上げた。

ログインしたままでどこかに出かけたか、
仕事中の休憩が終わって、ログアウトし忘れたかと
誠一は判断して、改めて敵に目を向けた。
 
何故だが分からないが、向こうでも僧侶の莉々視が
青空に向けて祈りを捧げていた。
他のメンバーは邪魔が入らないように
彼女を護るように囲っていた。

「アル、恐らくあの祈りは、
六神の一柱である全知の神サピエンツの僧侶よ。
今、この時、神より啓示が下されているのかしら」

「僕らの神様とは違って、まめだな。
6神の教団に属しているってことは、神殿に啓示を伝えれば、
神の言葉として扱われるってことだね。めんどうだな」
誠一は嘆息しながらも何故『アルフレート狩猟祭』が
どこかの6神の教団から開示されなかったのか疑問に思った。
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