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2章 屋敷での生活
時は流れて・・・
しおりを挟むティナが寄宿舎に暮らしはじめて二年がたった。三歳だったティナは五歳になる。もっとも、騎士たちはティナの正確な誕生日も年齢も知らないため、何となく拾ったときは三歳だろうとし、拾った日を誕生日にしようとなっていた。
│││││││││││││││││││││
ザワザワ ザワザワ
騎士団はいつにも増して騒がしかった。なんでも、ここ数年で魔物の数が増えたことにより、人間のとある公爵様が、人間の騎士団と獣人の騎士団で同盟を組まないかと提案してきたらしい。これは歴史に残る程のニュースであった。獣人の騎士団の団長は、悩みに悩んだ結果、今の状況が少しでも良くなるならばと同盟を組むことにしたのだ。
そしてティナがどこにいるかというと、その同盟を確固たる物にするために両者が集まった場所に来ているのだ。場違い感が凄いとティナは断ろうとしたのだが、団長にティナは同盟を組むにつれてかけ橋的な存在になると熱弁され、渋々ついて来たのだ。
(うわぁ!人がいっぱいだぁ!)
ティナは基本寄宿舎を拠点にしているので、人間に会うことはほとんどない。少し緊張してしまい、ルイドの後ろに隠れている。目の前では騎士団をまとめるトップが同盟を組んだ証の契約書を作り終えたところだった。ティナはかけ橋として何の役にもたっていなかった・・・。
(お!、小さい子供がいる!私よりちょっと上かな?あれ?あの男の子、私と同じ髪の色だ!隣にいる公爵さまも同じ色だから、もしかして親子なのかな??銀髪ってあまり珍しくないのか。・・・なんか、あの二人懐かしい感じがする。なんでだろ・・・。)
ティナより年上に見える銀髪の少年もティナのことが気になるのかチラチラとこちらをうかがっている。
(話も終わったみたいだし、もう帰るのかな?)
獣人の騎士団長と笑顔で話終えた公爵様は息子なのだろう。さっきの少年をつれて帰ろうとする。
(あっ、帰っちゃう!!)
慌てて顔を見せる。そして少年が足を止め、その口から出た言葉に驚く。
「・・・ティナ?」
少年はすがるような、それでいて期待を込めたような声でそう口にだす。
(あれ?私名前言ってないよね?他の人から聞いた訳じゃ無さそうだし。でも、この人とどこかで・・・)
チリッ!
:::::::::::::::::::::
「にーさま!あそんでください!!」
「ふふっ、しょーがないなぁ。おいで。」
「やったぁ!にーさまだいすき!!」
「ありがとう。僕もだよ。」
「ふふっ。本当に仲がいいのね。」
「はははっ。そうだな。」
そこには、自分だろうか?楽しそうに遊ぶ三歳位の女の子と、八歳位の男の子。それを微笑ましそうに見ている男女が二人。
:::::::::::::::::::::
(今のは、私の小さいときの記憶?あの人たちは私の家族?もしかして、もしかしてこの人は・・・)
「に・・・さま?」
「!ティナ!?本当にティナなの??」
よく見ると自分と同じ髪色の少年は瞳に涙を浮かべ、確認するようにティナに問いかける。
(あぁ。思い出した。私は雨の降る日、倒れた馬車から投げ出されたんだ。)
今まで思い出せなかった記憶が溢れるように甦る。
「はいっ!に、さまっ!!」
ティナもボロボロと涙をこぼしながら伝える。
「・・・まさか!・・・あぁ!ティナ!父さんだよ!!覚えているかい?」
くしゃりと顔を歪ませながらティナと兄と同じ髪色の男性は絞りだすようにティナへ声をかけた。
「は、、い。おぼえています!とーさま!!」
何とか笑おうと泣き笑いのような顔をしたがらそう告げたティナに、二人は優しく、それでいて固くティナを抱きしめた。
「ティ、、ナ!会いたかった!!ずっとっ・・・。」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で何とか思いを伝えようとする兄。
「よかっ、た!!生きていたんだな!ティナ!本当に、よかった・・・。」
と震えながら抱きしめ続ける父。
そんな二人を見て、ティナは暖かい気持ちでいっぱいになり、ティナも泣き続けた。
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