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2章 屋敷での生活
つまらなそうな王子
しおりを挟む「僕の名前はアルディオ。君の婚約者だよ。よろしくね?」
目の前に立っていたのはティナと同じくらいの男の子。長い睫毛に縁取られた瞳は空色で、ハニーブロンドの髪が太陽の光を浴びて輝いていた。
ティナが周りに密かに呼ばれている「月の姫」だとしたら、彼はきっと「太陽の王子」だろう。
幼い顔立ちながら、人を惹き付ける美貌をもっている。
(天使みたい。でも、なんて目をしているの?何もかもつまらないとでも言いたそうな、、、。子供のする目じゃない。)
「私はフェルナンド・シウス・ルクシール公爵が娘、ティアーナ・シウス・ルクシールでございます。皇太子殿下。」
ティナは心の中でそう思いつつ、正式な挨拶をし、淑女の礼をする。すると、アルディオは片眉をあげ、「へぇ。」と呟くと
「堅苦しいのはやめよう?僕のことはアルと呼んでくれて構わないよ。君のことはティナと呼んでも?」
「はい。えっと、ではアル様と呼ばせていただきますね?」
「二人の時は様はいらない。」
「え、でも。」
「ほら、早く?」
(アルディオ様は天使なんかじゃない!小悪魔だ!!)
「ア、アルっ!これで良いですか!?」
ティナはクスクスと笑いながら急かすアルディオに真っ赤になり、恥ずかしさのあまり涙目になりながらアルディオを睨んだ。
「っ、うん。あと、今のほうが魅力的だよ?ティナ。」
(この気持ちはなんだろう?心臓がうるさい。何にせよ、退屈しなさそうだな。)
赤くなった顔を冷まそうと、必死に顔を手で扇いでいるティナを見ているアルディオの目は、出会った頃のつまらなそうな目ではなく、子供らしい光を灯した目になっていた。
また、退屈どころか振り回されることになることをアルディオはまだ知らない・・・。
「~~っ」
(良く恥ずかしい言葉を吐けるな!!ほっぺが熱いっ!)
________________
「ぐぬぅ、皇太子殿め、ティナをたぶらかしているだと??許さん!」
「まぁまぁ、そうカッカッするな。アルディオとの婚約だって了承してくれたではないか。」
「俺をベロベロに酔わせてな!あんなの無しだ!!ティナにはずっと家にいて欲しかったのに!」
フェルナンドがすぐティナと別れたのには訳があり、ティナ達の様子を国王と見守る為だったのだ。
また、フェルナンドがティナに婚約のことを話忘れていたのは、賛成では無かったのと、ティナがいつか家を出てしまうという寂しさのあまり、婚約の事を考えないようにしていたかららしい。
そして、フェルナンドと国王は幼なじみで、国王にはティナが行方不明になったことは伝えていた。なので、フェルナンドはティナが見つかった事を報告しに来ていたのだ。そこで、フェルナンドは国王に勧められた酒をティナが帰ってきた嬉しさのあまり、普段は断るのに沢山飲んでしまっていた。
__________________
「そうか、娘が見つかって良かったな?」
「あぁ。」
「凄く可愛い?」
「あぁ。」
「天使みたい?」
「あぁ。」
「どこの娘よりも可愛い?」
「あぁ!」
「息子のアルディオと婚約させてもいい?」
「あぁ!勿論だとも!!」
__________________
・・・そうしてティナとアルディオは婚約することになった。フェルナンドはそんなこと言っていないと言い張ったが、国王はちゃっかり録音しており、婚約は実現されることとなった・・・。
「まぁまぁ、そうカッカッするなよ。・・・アルディオの目に光が戻っていた。あの子は何でもそつなくこなしていたからな。熱中できるものがなく、いつもつまらなそうにしていた。熱中できるものが見つかったようで良かった。」
国王でも、一人の父親ということは変わらない。安心したようにアルディオを見つめる国王の瞳は確かに親の顔をしていた。
「ククッしかし面白かったぞ?ベロベロに酔ってるお前。」
「・・・貴様、1回氷漬けになってみるか?頭が冷えて今よりましになると思うぞ?」
青筋をたてたフェルナンドが国王を追いかけ、辺りが氷だらけになったのだった・・・。
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