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1日目⑤

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アレンは帰宅し、手紙を書いた。

宛先はシーラのお祖母様だ。

幼い頃、俺とシーラは彼女の生き方に憧れ、たくさん影響を受けた。

彼女はやり手の貿易商だった。
あちこちの街へ行き、街と街を繋ぎ、色々な品物、文化を流通させた。

旦那様より、先代よりアクティブな人だった。

医療都市、学術都市、入管都市、ほかにも沢山、…
街から出て遠くの都市まで行って話をしてくれた。
特に中心都市の話は衝撃的だったな。

あの事件の日までは…。

彼女は今は遠く離れた医療都市にいる。
だが、今も彼女はシーラに影響を与えられるはずだ。

シーラの心の傷トラウマになっているのは間違いなくあの事件なんだから。

アレンは一縷の望みを賭けてありったけの想いを込めて手紙をしたためた。

これでダメだったら次の作戦を考えよう。

恋愛経験ほぼゼロだけど…なんとかなるだろう…

※※※

手紙を書き終え、商店街に出かけていった。

商店街の郵便局で手紙を出した。

さて、夕飯に何か買って帰るか…

弁当屋に向かうと途中で飲み屋から出てきたバーニーと会った。
バーニーは両脇に女を抱えていた。

アレンが無視して立ち去ろうとするとバーニーがいきなり大声で言ってきた。


「おい、お前。いい加減にあの女諦めろたら?いつまで執着する気だ。アイツはどう転んでも僕のモノなんだよ」

バーニーは相当酔っ払っているようだった。
まだ日も高いのに…

「うるさいな。そんなの俺の勝手だろ。お前こそ、こんなとこでふらふらと何しているんだ?」

「報われない初恋男に恋多き僕が素敵なアドバイスをしてやってんだ。ありがたく受け取れよ」

両脇の女がクスクス嘲笑っている。
「初恋なのぉ?」
「初心ねぇ。かわいい」

その反応に気を良くしたバーニーがニヤニヤして
「お前ら、からかってやるなよ。あんな面白味もない女に惚れる憐れな男なんだ」

アレンはムカムカが頂点に達し、我慢できず思わず言い返した。

「それこそお前には関係ない。俺のことよりお前自身の今後を考えたほうがいいんじゃないか?俺はお前と違って仕事を任されてるから忙しいんだ」

バーニーはカッとして

「なっ…!大きな顔してられるのも今のうちだぞ!僕が主人になったらお前なんかクビにしてやる!」

「はっ、できるものならしてみろ」

「なっ…!」

背後で騒ぐバーニーを置いてアレンは立ち去った。




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