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Side - 12 - 7 - のろいのやいばじけん -

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Side - 12 - 7 - のろいのやいばじけん -


「コナンザ、お茶会はどうだった?」

昨日コナンザはお母様に連れられて王妃様とその友人達が集まるお茶会に参加していたのですが・・・戻ってから様子がおかしいのです。

私のお母様は王妃様とは幼馴染でとても仲が良く、時々お茶会に呼ばれます。

王妃様のお名前はアリシア・エスピル・ローゼリア様、国王陛下と結婚する前のお名前はアリシア・ウンディーネ様、39歳貧乳、金髪の美女で口癖は「あらあらうふふ」、国王陛下を尻に敷いているこのエテルナ大陸陰の最高権力者・・・。

なんでも幼い頃両親に連れて行ってもらったウンディーネ家のパーティで当時上級貴族のご令嬢だった王妃様から声をかけられたのだとか。

「タイが曲がっていてよ」

ここは格調高い上級貴族である王妃様の実家、服装の乱れを注意されたのだと思い、お母様はその場で泣き出してしまったのです。

実はその時お母様の服装はきちんとしていて乱れは無く、小心者の王妃様は気に入った令嬢にそう言って話しかけるきっかけを作っていたのだとか・・・迷惑な人だな王妃様・・・。

慌てた王妃様は自分のお部屋にお母様を連れて行き、誤解を解いて優しく慰めたそうです。

それ以来お母様は王妃様にとても懐き「ごきげんようお姉様」「ごきげんようマリアンヌさん」と呼び合う仲なのです。

「アリアちゃんには会ったの?、元気だった?」

アリアというのは王妃様が飼っている白くて大きな猫っぽい生き物なのです。

「うん・・・」

「お菓子は美味しかった?」

「うん・・・ぐすっ」

やはり様子がおかしいのです・・・。

「・・・私の事、誰かに言われた?」

「そ・・・そんな事ない・・・よ」

あ、視線を逸らして挙動不審に・・・、コナンザは嘘が下手なのです、こんな調子で次期当主が務まるのか・・・お姉ちゃんは心配だぞ・・・。

あまり強く問い詰めると泣き出すので優しく聞いてみると・・・。

どうやら王妃様の友人が連れて来た娘の一人から私の悪口を言われたのだとか。

「王女殿下を守って怪我をした事を盾にして、殿下に纏わり付く卑しい傷物令嬢」

否定しようと思ったけれど、気の弱いコナンザは何も言えず、それが情けなくて自己嫌悪に・・・って感じかな。

「・・・お姉ちゃん、そんな人じゃないのに・・・殿下とも本当に仲がいいのに・・・ぐすっ・・・悔しくて・・・」

「はいはい、もう泣かないで、私は何を言われても平気だから、コナンザも気にしないで」

「・・・でも」

「お姉ちゃんを馬鹿にした奴らはそのうち、「ざまぁ」してやるから今は何もしなくていいよ」

「だ・・・ダメだよ殺しちゃ!、お姉ちゃん捕まっちゃう・・・ぐすっ・・・ひっく・・・」

コナンザの中で「ざまぁ」っていうのは「コンクリ詰めにして沈める」くらいに思われてるのかな?、面白いから訂正しないでおくのです。





こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳です。

さて今日は「呪いの刃事件」についてお話ししましょう、それと私の身体が汚された・・・・ちょっと言い方がえっちでしたね、・・・重傷を負って一生消えない、そして生涯私を苦しめる事になる傷を身体に刻まれた事件についてもお話しするのです。

まずは「呪いの刃事件」について、・・・私が9歳の頃からでしょうか。

魔力量の多い人達が街の中で襲われる事件が頻発したのです、共通しているのは赤い刃物で切られた事、使われた凶器がどれもよく似ているのです。

刺客は相当な手練れなのですが襲われた人達も強かったので殺されてはいないものの傷は負いました、犯人は複数居るようで捕まっても尋問する前に全員自害・・・。

傷を負った直後から被害者の人達は次々と体の痛みを訴えて、傷が深い人達は寝たきりになったり亡くなってしまったり、傷が浅い人達も魔力を使うと激しい痛みに襲われたそうです。

傷は治らずに赤黒くなって残り治療方法は不明、使われた刃物は古代遺物のようなのですが詳細は不明・・・。

それまでは騎士団を中心に大人の被害者が多かったのですが、事件は私が10歳になったばかりの頃、ヴィンス第二王子殿下の婚約者や友人を選ぶ為に開かれた夜会で起きたのです。

ヴィンス第二王子殿下と年齢の近い貴族の子供達が王城に集められた夜会で大勢の刺客が警備を振り切って乱入し次々に襲い掛かったったのです。



子供達のほぼ全てが被害に遭いました。

ヴィンス第二王子殿下も傷を負い、怪我の療養の為、今後は表舞台に立つ事は無いだろうと言われています。

年齢的にその中に居ないといけない筈の私は、「夜会いやだぁ」「人がいっぱいいるの怖い!」と泣いて嫌がり欠席していたので無事でした。

国王陛下は大変お怒りで、全力で捜索するように命令しました。

犯人は・・・実は「ここしかないんじゃね?」っていう国があって・・・ギャラン大陸のデボネア帝国が怪しいのです。

エテルナ大陸の国々は同盟を結んで他の大陸から侵攻された時、報復すると宣言しています。

デボネア帝国はエテルナ大陸に侵攻したいのだけど侵攻すると魔法騎士団によって戦略級大規模破壊魔法を撃たれて帝国が更地になる、だから魔力のある人間を減らして大規模破壊魔法を撃てなくしようとしてるのではないかと。

今すぐには無理だけど、子供達を標的にして工作を続ければ10年、20年後には無力化できるんじゃないか、そう考えている可能性があるらしいのですよ。

でも証拠が無い状態で帝国をプチッてやっちゃうと国際的に悪者はうちの王国になってしまうのでなかなか解決しないようです。

それから間もなく、犯人と思われる武装集団が見つかって潜伏先が騎士団に囲まれ、犯人全員が自害して事件は謎のまま一度は解決したかに見えたのですが・・・。

私も巻き込まれる事になる第二の事件が起きたのです。

夜会での惨劇のすぐ後、私にできた初めてのお友達、リィンちゃんが私も被害に遭ったと思い込み、護衛の静止を振り切って怪我人が沢山倒れている夜会の広間に来てしまったのです。

そこで怪我をしている人達、血を流し痛みに苦しんでいる様子を見て悲鳴をあげて気絶、それ以来毎日酷く怯えるようになりました。

私を心配してくれたのにそんな事になるなんて・・・、私はリィンちゃんの力になりたくてお見舞いに行く事にしたのです。

事件から10日ほど経っていたので、王城はいつものような静けさを取り戻していました。

警備が厳重になっていたのですが、私は今まで何度も遊びに行ってたし、国王陛下の許可を貰ったのでお仕事に行くお父様に連れられてリィンちゃんのお部屋を訪ねる事ができました。

リィンちゃんはまだ怯えていたものの、私の顔を見ると喜んでくれて、一緒にお話をしたり、お庭でお茶をして時間を過ごしていたのですが・・・。

その時に事件が起きたのです。

夜会に続く第二の襲撃は王族を狙ったものでした。

第一の襲撃の侵入経路は商人が利用する通用口だったのに対し、地下の下水道を掘り進め、城内に侵入するというかなり以前から周到に計画されたものだったのです。

後から聞いた話だと第一の襲撃は揺動で実は今回が本命だったらしいのです。

時間を知らせる鐘の音を合図に国王陛下、王妃様、第一王子殿下が襲撃されましたが警備していた騎士様により鎮圧、そして同じ王族であるリィンちゃんも私とお庭でお茶をしている時に襲われました。

最悪だったのは警備している騎士様が交代している最中で、一瞬の隙を突かれた形となったのです。

木の影から飛び出した刺客が赤い刃を振り上げてリィンちゃんに襲い掛かります。

まだリィンちゃんは気付いてなくて、私も恐怖で声が出ません。

刺客がリィンちゃんに刃を振り下ろそうとした時、私は行動を起こしました、リィンちゃんを抱き抱え、刺客から庇ったのです。

私は背中を斬られ、リィンちゃんは悲鳴を上げました、交代の為に引き継ぎをしていた騎士様が気付いたけれど距離が離れています。

刺客は再度刃を振り回して襲い掛かって来たので私はリィンちゃんをテーブルの下に押し込み、盾になったのです。

この時、刃を防ごうとした私の左腕を刺客に5回斬られました、それでも私はテーブルの前から動かず、泣きながら震えるリィンちゃんを隠していたから顔も深く斬られてしまいました。

「ダメ!、リィンちゃん出てこないで!」

テーブルの下のリィンちゃんに覆い被さる形になった私が邪魔なのか、刺客は私の左足を掴んで引き摺り出そうとしました、でも私はテーブルにしがみついて動きません、苛立った刺客に何度も足を刺されました。

ようやく騎士様が駆け付け、激しく抵抗する刺客の首を切り落としたのです。

うぅ・・・背中が熱い、片目も見えない、腕や足の感覚が無いのです・・・。

そこで私の意識が途切れました。

・・・と思ったのですが、突然身体中に激痛が走り絶叫したのです。

「ぎゃぁぁぁ!、痛ぁい!、背中が!、顔が痛い!、嫌ぁ、痛ぁぁい!」

こんなに大声を出したのは生まれ変わってからは初めてなのです、今日はリィンちゃんの所にお泊まりするからと可愛い白のワンピースを着ていたのですが、その服を真っ赤に染めて転げ回りました、あまりの痛さにお漏らしまでしてしまったのです。

騎士様によって王城の治療室に連れて来られた私は痛みで叫び続けていました、後で聞いた話だと、知らせを受けたお父様も駆け付けて、騎士様とお父様、お医者様が暴れる私を押さえつけ、縄でベッドに縛り付けてようやく治療できたそうです。

そして私は力尽きて意識を失う2日後の朝まで叫び続け、声が枯れて喉から血を吐きながらようやく静かになったのです。

意識を失ってから私は眠り続け、ようやく目が覚めたのは襲われてから7日目でした。

付けられた傷はまだ酷く痛み、ずっと泣き続けていました、でも傷の痛みよりもっと気になることがあるのです、とても気持ち悪いのです!。

傷の所から小さな虫のような、とても気持ちの悪い生き物がうねうねとのたくりながら身体の中に入り込み、暴れるような感覚・・・。

私は襲われてから何も食べず、無意識に膨大な魔力で命を繋ぎ止めていたようなのです、そして魔力が無くなって魔力切れになりそうな、ちょうどその時でした、気持ち悪いものが私の身体の中を・・・内臓や筋肉、血管を食べ始めたのです。

「やぁだぁ!、痛い!、気持ち悪い!、誰かぁ!、・・・・お父様助けて!」

「リゼたん!」

ずっと王城のお部屋で看病してくれていたお母様が私の声に気付いて寝ているベッドに駆け寄って来ました。

「お母様ぁ、魔力が切れたら、虫が!、呪いが私の身体を食べてるの!怖いの!、痛いの!、お願い助けて痛いよぉ」

お医者様が来て暴れる私をベッドに縛り付け、私は再び力尽きて意識を失うまで叫び続けたのです。

でも結果から言うと私は助かりました!、どうやら私の魔力が回復する方が命を維持する為に減る魔力より僅かに速かったようなのです。

ある日、傷の痛みと気持ち悪さに耐えながら自分の身体の中で起きている事を考えたのです、みんなこれを呪いって言ってるけど、本当に呪いなのかな?って。

目に見えないくらい小さな細長い幼虫?、前世で似たものを探すならお魚にいるアニサキスみたいなもの?、それが身体の中で魔力を食べる、魔力を使うと時々身体の中で動いてぞわってする、魔力を食べ尽くしたら人の内臓を食べる、だから身体に凄い痛みが走る、傷口から毎日のように身体の中に入ってきてる感覚があるのに私の身体の中は虫でいっぱいになって溢れたりはしないのです。

「・・・理世のお父さんが持ってたスプラッタ映画のDVDにこういうのあったのです、お父さんかなりマニアックなやつまで持ってたから私は詳しいのです、・・・嫌だなぁお腹の中から成長した虫が「キシャー!」って出て来たら・・・、それか「ひでぶ!」って言いながら爆発して虫を撒き散らすとか?」

虫は・・・って言ってて気持ち悪くなってきたからこれからは「呪い」って言うのです!、虫じゃないのです!、呪いはある程度時間が経ったら身体の中からいなくなるんじゃないかなぁ。

どこに行くんだろう、死んだのが・・・生きてるかもしれないけど・・・私のおしっこや便の中に居るのかなぁ、嫌だなぁ、確認したいなぁ、顕微鏡みたいな道具はこの世界にあるのかなぁ、・・・でも拡大して見たらトラウマになるやつかも、「ぎゃー、こんなのが私の身体の中にいっぱい居るのです!」「見るんじゃなかったのです!」って。

他の人には感染らないのかな?、呪いの赤い刃で切られた人だけ症状が出て、周りの人がどうにかなったって聞かないのです・・・・、でも傷が深くて症状が重い人達は割と早くに亡くなってるし、この世界は死んだら火葬だし、軽傷の人は痛みに耐える毎日を送ってるか私みたいに寝込んでるんだっけ?。

多分私が重症者の中で一番長く生き残ってるのです、成長した虫・・・じゃなかった呪いがお腹を食い破って「キシャー!」ってコンニチハするならもしかして私が一番乗り?。

待つのです!、嫌なのです!、エイリアンの映画みたいなのは冗談じゃないのです!。

ここまで考えて、私の身体の中に居る虫・・・じゃなかった呪いを殺す事ができないかなって思ったのです、魔力を食べてるのなら食べ切れないくらい魔力を押し付けたらどうなるだろう・・・って。

痛みで眠れないのですが、できるだけ眠って魔力を貯めてから例の「魔闘気プシュー!コホォォォ!ふはー!」を試してみたのです。

いつも以上に紫色の毒々しい魔闘気が出ました、弱ってる私が今出せる全力の魔闘気です、すると痛みが突然無くなったのです!。

ラオウ・・・じゃなかったカイオウ様みたいな表情でベッドから体を起こし肩や口から紫色の魔闘気をプシュー!コホォォォ!、って出しながら「勝った!、勝ったのです!、フフッ・・・・フハハハハハハ!」って一人でやっていたらお父様とお母様が部屋に入ってきたのです。

2人は私を見て少しの間フリーズした後、かわいそうな子を見るような目で言いました。

「リゼたん、どうしたのかな?」

私は両親に「呪い」に対する考察を話しました。

それを聞いたお父様とお母様は目を見開きました!。

そうなのです!、これが異世界転生して私がやりたかった事の一つなのです!。

異世界人の目を見開かせる。

転生して10年、ようやく見開かせることができたのです!。

私が得意げにしているとお父様とお母様が優しい目をして「いつものリゼたんに戻ったね、生きていてくれてありがとう!」って言われたのです!。

それから筆記用具が持てるようになって、私はこの考察を紙に纏めました、お医者様の意見を聞いたところ、私の「呪い」に対する考察は非常に興味深いものとして国王陛下に報告される事になったのです。

私みたいな魔力量の多い人間はほとんど居ないので私がやったように「呪い」に魔力を押し付けて黙らせる方法は実現できそうにないのですが、他の考察は被害者への治療法が全く見つかっていなかった王国にとって、今後の研究の手がかりとなる非常に画期的なものとして王国の医療界を震撼させたのです!。

そして私に何の相談もなく「呪いの刃の被害者であるリーゼロッテ様がその身を犠牲にして(死んでないのです!)書き上げた価値ある論文!」として大陸中に公表され、私は知らない間に「呪いで苦しむ患者の為に痛みと戦いながら最後の力を振り絞り(だから死んでない・・・)貴重な論文を書き上げた悲劇の令嬢!」「親友である王女殿下の盾になった勇気ある女の子!全王国民が泣いた!」みたいな事になってしまったのです。

更に後日、私の事が小説になったり、演劇になったり!、恥ずかしくて死にそうでした。

「そんなの聞いてない!、私は目立ちたくないのです!」

恥ずかしくてお家に引き篭もる私に追い打ちをかけるように、「娘を守ってくれた謝礼」を大量に用意して陛下が待ち構えていたのです・・・。

私は永遠に激痛に苛まれる呪いを受け、左目を失明し、杖無しでは歩けない身体となった代わりに莫大なお金と王家からの信頼を意図せず手に入れてしまったのです。
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