令嬢ショートストーリー詰め合わせ

みるく

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官能小説のような*1

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私が昔読んだネット小説の世界に転生したのだと気付いたのは、15歳の時。

王道パターンで行くならば、頭をぶつけてとか、頭痛が!とかあるでしょう?
私の場合はね、夢。

前世の記憶の夢。
高校の頃に虐めにあって、引きこもり。
最後は自殺してしまった夢。

目が覚めた時それはもうびっくりしたわ。
だって、普通人気乙女ゲームとかあるでしょう?
なんで一般投稿の小説?!
いや、まぁ結構楽しんで読んでいたからそれはいいの。
なんで主人公や悪役令嬢でなくモブ!

自分がモブと気付いたのは小説で見た事がないから。
小説と気付いたのも奇跡に近い。
自殺する前に読んだからかな。
国や王子の名前が同じだったから気づいた。



ちなみに今世は
アーレルスマイヤー男爵令嬢エラとして生まれ25年が経った。
今世も絶賛引きこもりだ。
理由は前世と似たようなもの。
幼い心には辛い出来事だった。

だけど不思議と死にたいとは思わない。
何故なら今は生きがいがあるから、その生きがいとは



「ベラ先生。今回の新作【公爵様と侍女】の売れ行きも上々です!」
「そうでしょうね。」

謎の官能小説作家ベラ
それが今の生きがい。
引きこもりのせいで両親も嫁がせることを諦めたようで、せめて自分で稼げる物を探しなさいと言われていたが、まさかこんな事になるとは思って無かったことでしょう。
もはや諦めている両親には申し訳ないが、10歳の弟がこの家を継ぐ頃には出ていくつもりだからもう少しだけ家に居座るつもりだ。
あ。でも外出は出来るようになった。
ネタ探しの為ならお忍び外出も厭わない。


前世の記憶を思い出したときに一緒に思い出したのは必要以上の性知識。
アニメ・漫画ヲタクだった私は同人誌やラノベありとあらゆるものに手を出した。
大体そういうものに触れていればセットで付いてくるのはエロ。

ネット小説を投稿できるサイトで2次創作物を出していた記憶もある。
それを駆使して、この世界の恥ずかしがり屋の乙女の為に作った官能小説が思いの外好評で、あっという間に人気作家となってしまった。
前世共に経験がないのに人気になれるとはチョロい・・・

ちなみに、男爵家とはいえ令嬢なので作家として表舞台に出た事はない。
出るつもりもない。


「次回作も楽しみにしておりますよ!」
「ええ、任せなさい。」

失礼します。
と元気よく出て行ったのは、私の書いた小説を製本して売り出している業者だ。
彼は口が硬い。
いい本にさえ出会えればいいのだ。と本人が言っていた。

さすがに男爵家に入れるわけには行かないので、屋敷の直ぐ近くに家を借りてそこで会うようにしている。



「はぁ。任せなさいとは言ってみたものの・・・全然思い浮かばないのよね。」
スランプ。
その言葉が私の頭の中に過ぎる。
バリバリと書いていた小説のお話もそろそろネタが尽きてきた。
そもそも未経験の身体だ。
本来の良さもわからないのだ。

「こう。都合よくいい男がもらって行ってくれないかしら。」
今世の身体はかなり魅力的だ
大きな胸、引き締まったくびれ
大きな目は少し垂れ気味で唇は紅をさしたような魅惑の赤。
これを使わずして何を使うのか。
だが、この行き遅れた処女をもらってくれる人間がいるのか・・・

「はぁー・・・」
「何ため息ついてるんだ?エラ」
「あら?ジャンじゃない。ノックもせずに入ってこないでちょうだい。」

ジャン・アーレルスマイヤー
私の従兄弟だ。
ジャンは私の5歳下で幼い頃から一緒に過ごしているから実質弟のようなものだ。
もちろん私が官能小説を書いてると知っている。
「いや、ノックしたけど。」
「あら、そう。」
ふぅ。とため息をつく。

「で?魅惑の作家ベラ様は何を悩んでるんだ?」
「・・・実はね、全然小説が進まなくてね。」
「へぇ、エラでもそんな事あるんだな。」
「何よそれ、未経験者なんだからネタも尽きるわよ。」
「へーって!!!えええええ!!!」
ジャンは目をガッと開いて大きな声を上げる。
「な、なに!?びっくりしたじゃない!」

ガシッとジャンに両肩を掴まれ近距離まで顔を寄せられた。
「・・・・・未経験って。あんな小説書いておいて未経験だと?」
あら、読んでくれてるのね。
てか、知らなかったっけ?
「あら?あれだけ引きこもっていたのよ。あるわけ無いじゃない。」
「て、事は・・・処女、なのか?」
掴まれてる手がプルプルと震えてる、なに?笑いたいっていうの?
「そうよ!笑いたければ笑えば!処女の行き遅れ女が官能小説書いてるなんて笑いもんっ!!!!!?」


突然喋られなくなった。
ジャンの唇が私の唇を塞いでいるから。
「ん!んん!」
ドンドンとジャンの胸を叩いてやっと離れた
「はぁ、はぁ。・・・ジャン、いったいこれはどういう事。」
冗談にしてはキツすぎる。
何しろキスもした事がなかったのだ、拗らせた喪女に情けをかけてやったつもりだろうか。
「エラ、俺は・・お前が色んな男との経験で書いているのかとばかり思ってたんだ。 俺の入る隙はないと。」
「入る隙ってなに?あなたは私の弟のような」
「俺は!お前を姉と思ったことなんて一度もない。 俺は、お前を女としてみてる。」
耳まで赤いジャンに、キュンとしてしまった。

あれ?キュンって何。
たしかに、ジャンは顔も良いし身体つきも悪くない。
従兄弟は結婚出来るし、ジャンの両親はお父様の弟。
「いざとなったら従兄弟と結婚もありか?」と思っていた時期もあった。
が、今まで弟だと思っていたのに急に男として見れるもんでもない

うーん。と思っているとジャンがまたジリジリと近寄ってきた。
「エラ。今すぐ俺を男として見てほしいとは言わないから・・・だから。」
「ストップ!」
またキスされそうになって止めた。

止めたものの何も考えてなかった。
あ!
「ねぇジャン。そんなすぐに男として見られないの。だけどね、私の為に協力、してくれないかしら。」
「協力・・?」
そうよ、身体つきも悪くない。
私を好きな男。
まさに煮詰まってる今、小説の為の努力は惜しまない!
ジャンには申し訳ないけれど協力してもらうわ。


「ねぇ、ジャン。・・・脱いで?」
「っ!! そういうことか。」
「話が早くて助かるわ!」
着ていた上の服を脱いでいくジャン。
あら。思っていたよりも・・・
「ジャン、貴方身体鍛えた?」
以前見た時よりもずっとガッシリしてる。
「エラが・・・ヒョロヒョロは唆らないって、言ったから」
ジロジロと見られて恥ずかしそうに答える。
・・・可愛い
何故か胸の奥がキュンと切なくなる。
「これ、下も、脱ぐのか・・・」
資料としては重要よね。
「そうね、お願いしようかしら。」
渋々ズボンをずらす。
あ。
「ジャン・・・貴方」
「っ!い、言うな!!」
すっかり下着の中が苦しそうじゃない?
「ちょっと、どうなってるか見せて!」
「わっ!ぁ。ちょっとエラ!!」
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