男批判の女 男として生きる~今を頑張る~

不思議な爺さん

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見てしまった夜

のぞむくん……

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そして閉店時間になった。

店内の照明が少し落とされ、グラスの音がゆっくり止まっていく。

美和
「ママ~、のぞむくんお借りしま~す」

楽しそうに手を振る。

ママ
「はーい、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」

冗談めかして笑う。

のぞむ
「ちょっとママ~」

少し困ったように笑いながらも、どこか照れている。

美和
「焼くのは可愛そうだから弱火で煮ます~」

のぞむ
「ちょっと~~~」

店内に軽い笑いが広がる。

そして2人は店を出た。

ドアが閉まる音が、やけに静かに響く。

ノゾミ
「のぶこちゃん、どうしたの?手が止まってるよ」

のぶこは、気づかないうちに同じグラスを拭いたまま動きを止めていた。

のぶこ
「ごめんさい」

慌てて片付けを再開する。

笑顔は作っているけれど、目は少しだけ曇っている。

遠くから、美和の笑い声がまだ聞こえる気がした。

そして3人で片付けを終わらせ店を出た。

夜風が冷たく、のぶこの頬を撫でる。

胸の奥が、じんわりと重いまま。

夜道を歩く、のぞむと美和。

ネオンが途切れ、少し暗くなった通り。
ヒールの音が静かに響く。

美和
「ちょっと、そこの公園のベンチで話さない?」

のぞむ
「あ、あぁ、いいよ」

胸の奥が、少しざわつく。

そして公園に向かいベンチに座る。

夜風がひんやりしているのに、距離が近いせいで体温は妙に熱い。

美和
「昨日さ、いっぱい一緒に居てくれるって約束したよね?」

のぞむ
「あ、うん…」

あの時は、おさまれって気持ちいっぱいで軽く返事したんだった…

言葉が喉に引っかかる。

美和
「じゃあさ、今からホテル行こ」

のぞむ
「え??そ、それは」

一気に鼓動が速くなる。

美和
「だってさぁ、昨日さぁ」

と太ももから上に美和の手が動く。

のぞむ
「ちょ、ちょっと美和さん」

逃げるようで、逃げきれない距離。

じわじわ反応してしまう、のぞむ。

美和
「だいぶ反応してたでしょ?」

と、そのまま手は膨らみへ。

のぞむ
「だ、ダメだよ、美和さん」

声は弱い。
でも必死。

美和
「私の事、嫌いだから?」

のぞむ
「い、いや、そうじゃないけど…」

美和
「じゃ、じゃあ、Hな目で私を見てたの?」

と演技で涙をながす。

のぞむ
「いや、あの、そうじゃなくて魅力的だから…」

正直な言葉が、ぽろっと落ちる。

美和
「じゃ、行こうよ」

と、のぞむの手を引っ張り夜道を再び歩き出した。

引かれるまま数歩進む。

でも、のぞむの足はどこか重かった。

ホテルの前に着いた2人。

ネオンが静かに点滅している。
人通りは少ない。夜の空気は少し冷たい。

美和
「行こ」

自然に腕を絡める。

のぞむ
「え、でも」

足が一瞬止まる。

美和
「やっぱり嫌いなんだ」

と涙ぐむ。

その表情は、弱さと計算が混ざっている。

のぞむ
「いや、違うよ」

焦りが声に出る。

美和
「じゃあ、いいでしょ?」

距離がさらに近づく。

のぞむ
「あ、うん」

小さな返事。

自分の意思なのか、流されたのか、わからないまま。

2人は入って行った。

自動ドアが静かに閉まる。

その瞬間。

少し離れた街灯の影に、立ち止まっていた人影。

のぶこだった。

仕事帰り、たまたま通っただけ。

でも、はっきり見えた。

絡む腕。
止まらなかった足。
迷いながらも、入っていく背中。

「のぞむくん………」

声にならない声。

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

目の奥が熱くなる。

涙が、ぽろっと落ちる。

自分は何も言えなかった。
何も伝えていなかった。

なのに、勝手に期待していた。

のぶこは、静かに背を向ける。

ネオンの光が滲む。

そして涙を流し帰って行った。

夜風が、やけに冷たかった。


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