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再婚
女批判の男 女として生きる~再婚~
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数ヶ月、ケンジは貴子の前に姿を表さなかった。
家にいた貴子と綾子。
外は少し暗くなった夕方。
貴子
「ケンジさん、家では、どうなんですか?」
綾子
「あなたに謝りに来た次の日ぐらいからは、部屋でひきこもるのは、やめて出てくるようになったわね…」
貴子
「もう諦めたんですかね」
その時、
ヒカルが泣き、
ミライもつられて泣き始めた。
貴子はヒカルを抱き、
綾子がミライを抱く。
貴子
「はいはい、どうしたのぅ、ミルクもあげたし、オムツもかえたでしょ~」
綾子
「ミライちゃんもどうしたの~」
ヒカル
「パ…パ…」
ミライ
「パーパ……」
一瞬、空気が止まる。
そしてまた泣き出す。
貴子
「パパって言った……」
綾子
「この子も言った……」
貴子の手が震える。
ゆっくり、
そっと、
ベビーベッドにヒカルを寝かせる。
スマホを取り出す。
画面がにじむ。
打つ。
『パパ……戻ってきて』
送信。
既読は、つかない。
部屋には、
双子の泣き声と、
夕方の静かな光だけが残る。
ケンジは部屋でぼーっとしていた。
天井を見つめたまま、何も考えないようにしていた。
スマホが震えた気がした。
気のせいかと思ったが、もう一度、短く光る。
画面を見る。
ケンジ
「貴子からだ……」
喉が乾く。
指が止まる。
しばらく、開けない。
でも、開く。
『パパ……戻ってきて』
ケンジ
「パパ……戻ってきて」
声に出して読む。
胸が詰まる。
許されたのか、わからない。
それでも。
「行きたい……」
「会いたい……」
「貴子に……ヒカルに……ミライに」
立ち上がる。
財布も、上着も、ぐちゃぐちゃのまま掴む。
階段を駆け下りる。
父が居間から顔を上げる。
「どうした」
ケンジ
「行ってくる」
それだけ。
玄関のドアを勢いよく開ける。
夜の空気が冷たい。
でも、足は止まらない。
――貴子のもとへ。
ケンジは玄関の前に立った。
インターホンを押す手が震える。
深呼吸。
それでも震える。
押した。
ピンポーン。
中から、泣き声。
ヒカルとミライの声。
足音。
ドアが開く。
泣き叫ぶヒカルとミライを抱っこした貴子。
目が合う。
一瞬だけ。
貴子
「はーい、パパが戻ってきたよ~」
ヒカルとミライをケンジに抱っこさせる。
重み。
温もり。
ケンジの腕がぎこちない。
涙が滲む。
ヒカル
「パーパ」
ミライ
「パーパ」
2人は、すっと泣き止んだ。
静かになる。
ケンジの頬を涙が伝う。
声にならない。
貴子は何も言わない。
ただ、見ている。
玄関先に、
久しぶりの家族の空気が戻る。
貴子
「とりあえず上がって…」
声は落ち着いているけど、少しだけ震えている。
綾子がそっと近づき、ヒカルとミライを代わりに抱っこする。
「おばあちゃんといようね」
ケンジは、数ヶ月ぶりの家に足を踏み入れる。
靴を脱ぐ手がぎこちない。
見慣れたはずの廊下が、少し遠い。
貴子
「お義母さん、ちょっとヒカルとミライ、お願いします」
綾子は何も聞かない。
「わかったわ」
貴子は振り向かずに言う。
「こっち来て…」
隣の部屋の襖を開ける。
ケンジも
「うん……」
と小さく返し、後ろについて入っていった。
襖が静かに閉まる。
外からは、ヒカルとミライの小さな声。
部屋の中は、静かだった。
貴子
「座って……」
ケンジ
「あ、あぁ」
畳の上に向かい合って座る。
少し距離がある。
貴子
「なんであれ以来、来なかったの?」
ケンジ、目を伏せる。
「怖かった……マスターに何回も何回も誠心誠意謝れって言われて、その時は、よし!って思った……けど、いざ行こうとすると、貴子の俺を拒絶する瞳が浮かんできて……これなかった……」
沈黙。
貴子
「そう……」
ケンジ
「貴子が傷つく1番言ってはいけない言葉を言ってしまった。本当に本当に、ごめん」
畳に手をつく。
頭を下げる。
貴子はしばらく何も言わない。
貴子
「うん……わたしは、まだ許せない………でも、ヒカルとミライは、あなたを必要としてる……」
ケンジは顔を上げる。
「俺、貴子に許して貰えるように必死で頑張る……だから、だから、ヒカルとミライを貴子と一緒に育てたい」
貴子はまっすぐ見る。
「わかった……でも……次はないって思って…」
間。
外からヒカルの声。
ミライの小さな笑い声。
貴子の目が少しだけ揺れる。
「私は、あなたを一度失ったと思ってるから」
「戻ってくるなら、最初からやり直すつもりでいて」
ケンジ、深くうなずく。
「はい」
襖の向こうから、綾子の声。
「話は終わった?」
部屋の空気が、ほんの少しだけ変わる。
貴子
「はい」
襖が開く。
貴子とケンジが出てくる。
綾子がヒカルとミライを抱いている。
ヒカル
「マーマ……」
ミライ
「マーマ」
貴子の顔が一瞬でゆるむ。
「ママって言った~」
綾子
「え~、ばーばは?」
ヒカルとミライを覗き込む。
ヒカル
「ばーま」
ミライ
「パ…ば」
綾子
「惜しい~」
小さな笑いが広がる。
貴子の顔には、確かに笑顔があった。
でも――
ケンジとの間には、まだぎこちない空気が残っている。
ケンジはヒカルの手をそっと握る。
ヒカルは笑う。
その横顔を、貴子は見る。
目は合わない。
でも、
完全に他人ではない。
まだ途中。
家の中に、
少しずつ戻り始めた音があった。
綾子
「ケンジ、あなたは、今日は帰りなさい、私が泊まるから」
ケンジ
「うん……わかった」
貴子
「大丈夫です、お義母さん」
ケンジ
「え?」
貴子はケンジを見る。
少しだけ、強い目。
「あなた私が大変だった時にBAR行ったんでしょ!」
ケンジ
「あ、あぁ」
貴子
「私、今から行くから、ヒカルとミライ見てて」
ケンジ
「わかった……」
綾子
「ずっと、1人でほとんど見てたものね、息抜きしたいわよね」
少し間を置いて、
「さすがに、ケンジ1人だと心配だし少しだけ私も遅くまでいるね」
貴子
「ありがとうございます。」
綾子
「お酒はダメだからね」
貴子
「はい、わかってます」
部屋に戻る。
引き出しを開ける。
ガールズバーで働いてた時のメイク道具。
久しぶりにアイラインを引く。
少し濃い目のリップ。
クローゼットからあの頃の服を出す。
鏡を見る。
“母”ではない顔。
“貴子”の顔。
深呼吸。
リビングに戻る。
ケンジが一瞬、息をのむ。
貴子は何も言わない。
「行ってきます」
ドアが閉まる。
夜の空気。
ヒールの音。
向かう先は――
BARワンダー。
そしてBARワンダーに着いた貴子。
久しぶりに、ひとりでドアを開ける。
カラン、とベルが鳴る。
マスター
「バツイチ美人いらっしゃい」
貴子
「なによそれ~やだ~」
社長がニヤつく。
「どや?仲直りしたんか?」
爺さんはグラスを傾けながら。
「迷ってる顔しとるな……」
貴子
「え?……」
マスターが肩をすくめる。
「そっかぁ、俺とケンジどっちにするか……」
貴子
「それはないでーす」
店内に小さな笑い。
貴子はカウンターに体を預ける。
「でも……マスター、ケンジに怒ってくれたんですってね」
マスター
「なんだよ、あいつチクりやがって」
貴子は視線を落とす。
「でも、謝りにこれなかったって……」
一瞬、空気がやわらぐ。
貴子
「マスター、酔えるソフトドリンクちょうだい」
マスター
「むちゃな注文するな」
そう言って麦茶を出すマスター。
「ウイスキーだと思って飲め」
貴子
「はーい」
その時、1人の女性が入ってきた。
マスター
「いらっしゃい」
女性が貴子の横に座る。
マスターは無言でコースターを置く。
女性
「隣、失礼します、貴子さん」
貴子
「え?なんで名前知ってるんですか?」
女性は少しだけ笑う。
のぶ
「私です、のぶです、今は、のぶこですけど……」
貴子はゆっくり社長の方を見る。
「売ったんだ、あの薬」
社長は肩をすくめる。
「昔の貴子ちゃんみたいにな、女批判しとったからな」
爺さんがグラスを揺らす。
「そっくりじゃったわい」
のぶ
「え?貴子さんも、もしかして」
貴子はのぶを見る。
「そう、私も元は男、女変薬で女になったの」
のぶ
「そうなんだ……」
少し間。
貴子は麦茶を持つ。
「それより、どう?女楽勝?」
のぶは小さく首を振る。
「全然……大変です」
貴子は目を細める。
「だから、あの時言ったでしょ、今を頑張る、今と向き合えば良いって」
のぶはうなずく。
「その通りでした……」
貴子は、ふいに自分の言った言葉を思い出す。
――今を頑張る。
――今と向き合う。
その言葉が、脳裏にこびりついて離れない。
今、ケンジと育児を頑張る。
戻ってきたケンジと向き合う。
……元男って言われた悔しさ、怒りしか頭になかった……
麦茶を飲み干す。
貴子
「マスターチェック」
マスター
「お代はいい、早く帰ってやりな」
貴子は笑う。
「マスターありがとう~」
のぶを見る。
「のぶさんも気づかせてくれてありがとう、女生活頑張って」
のぶは、静かにうなずく。
貴子は立ち上がる。
ドアを開ける。
カラン、とベルが鳴る。
夜の空気が頬に触れる。
ヒールの音が、迷いなく響く。
家へ向かう足取りは、さっきより軽かった。
急いで帰ってきて家についた貴子。
「ただいま」
廊下を歩く。
ケンジが小声で言う。
「しーーっ、やっと今寝たんだ、母さんが帰ってから泣き止まなくて」
貴子
「そっか……お疲れ様」
ケンジ
「本当に疲れた……」
貴子、少しだけ目を細める。
「誰かさんは、こんなに疲れる事、数ヶ月投げ出したけど……」
ケンジ
「それは本当に、ごめん」
貴子
「私の方こそ、ごめんなさい」
ケンジ
「え?」
貴子は深呼吸する。
「本当は離婚なんてしたくなかった……一緒にヒカルとミライを育てたいって思ってた……でも、元男って言われた悔しさ怒りが、それを邪魔してた」
ケンジ
「貴子……」
貴子
「あの時、謝りに来てくれた時は、喜んでた私がいた……でも、許さないって私もいた……」
ケンジ
「それは俺が1番言ってはいけない言葉を言ったから……言った瞬間、自分でも後悔した……」
貴子
「反省してるケンジと向き合おうとしなかった、ヒカルとミライの事考えずに私の気持ちを優先してた」
沈黙。
ケンジは迷いながらも、貴子をそっと抱きしめる。
拒絶はなかった。
貴子
「パパとママが仲良くないまま、育児してもダメだと思って…」
ケンジ
「貴子……もう2度と貴子を傷つけないって誓う……」
貴子
「本当に?」
ケンジ
「本当に誓う」
そっと距離が縮まる。
唇が触れそうになった瞬間――
「ぎゃあああああ」
ヒカル。
「うわあああ」
ミライ。
二人同時に泣き出す。
二人は顔を見合わせる。
貴子
「……今じゃないね」
ケンジ
「タイミング悪すぎだろ」
小さく笑う。
二人で寝室へ向かう。
“家族”として。
翌日。
ケンジは寝不足ながらも、ネクタイを締める。
「貴子いってきます」
「ヒカル~ミライ~パパ頑張ってくるよ~」
ヒカルが小さく手を動かす。
ミライはあくび。
ケンジは少し笑って、家を出た。
玄関が閉まる。
しばらくして、綾子が来る。
「どう?かわりない?」
そう声をかけた瞬間、貴子の顔を見る。
昨日とは全く違う、にこやかな表情。
綾子はすぐ気づく。
「仲直りしましたって顔に書いてあるわ」
貴子
「えっ、あ、はい、私も意地張ってた部分もあって……ご迷惑おかけしました。」
綾子
「うちのバカ息子が悪いのよ、謝らないで」
少し間。
貴子は、少し緊張した顔で言う。
「あ、あの……婚姻届の証人欄、お願いできますか?」
綾子は一瞬きょとんとして、
すぐに笑う。
「当たり前じゃないの」
その目に、うっすら涙が浮かぶ。
「でも……良かった……仲直りしてくれて……」
貴子
「お、お義母さん……」
綾子は袖で目元を押さえ、
くるっと背を向ける。
「じゃ……私が婚姻届とってきてあげるわ」
そう言って、勢いよく出ていく。
玄関のドアが閉まる。
貴子はヒカルとミライを見る。
「パパとママ、もう一回ちゃんと家族になるよ」
ヒカルが「パ…」と声を出す。
ミライが笑う。
家の中に、少しだけ春の匂いがした。
そして市役所についた綾子。
番号札をとり、椅子に座って待つ。
電光掲示板が光る。
「7番でお待ちのお客様~」
綾子はすっと立ち上がり、窓口へ。
婚姻届を受け取る。
用紙を軽く確認し、振り返る。
近くの窓口にいたケンジを見つける。
「ケンジ」
ケンジ
「母さん、どうしたの?」
綾子
「明日休みとりなさい」
ケンジ
「え?なんだよ急に」
綾子
「いいから」
ケンジ
「そんな急に無理だよ」
綾子は奥の方を背伸びして見る。
そして大きく手を振る。
「部長さーん、ケンジの母です、佐々木ケンジ明日休みとります」
ケンジ
「ちょっと母さん」
周りが少しざわつく。
綾子は満足げにうなずき、
「じゃ、よろしく」
それだけ言って帰っていった。
上司がケンジの近くに来る。
「まぁ、受理するから申請出しとけ」
ケンジ
「は、はい、すみません」
苦笑いしながら、申請書を書く。
ペンを走らせながら、
ふと婚姻届の用紙が目に入る。
小さく、息を吐く。
そして、申請書を提出した。
仕事から帰ってきたケンジ。
「ただいま~」
リビングに入ると、綾子がいる。
ケンジ
「ちょっと母さん、今日いきなりなんだったんだよ」
綾子
「貴子さん……」
その声で、ケンジはテーブルを見る。
貴子が、そっと婚姻届を出す。
「こういうこと……」
ケンジ
「えっ?……」
目が潤む。
貴子は静かに続ける。
「ヒカルとミライがいるけど……もう一度、結婚からリセットしましょう……」
ケンジ
「貴子……」
綾子
「でも、今度貴子さんを泣かせたら実家からも追い出すからね!!」
ケンジ
「うん、俺頑張る、がむしゃらに頑張る」
貴子
「ストップ……頑張りすぎたらケンジ空回りしちゃうから」
綾子
「それもそうね、あなたは父さんに似て、頑張りすぎてブレーキ壊れちゃうんだから」
貴子
「え?お義父さんもなんですか?」
綾子
「そうよ~、綾子の為に頑張る~ケンジの為に頑張る~って」
ケンジ
「今の父さんと全然違うね」
貴子は、少し笑う。
「ケンジ1人で頑張るんじゃなくて2人で頑張りましょう、双子なんだから」
その時。
ヒカル
「マーマ」
ミライ
「パーパ」
綾子
「え~ばーばは?」
ヒカル
「ばば」
ミライ
「ばばば」
綾子
「ちょっと~あなた達~」
ケンジ
「赤ちゃん相手にムキになんなよ~」
部屋に、笑い声が広がる。
明るい空気になった。
そして翌日。
貴子とケンジは、ベビーカーを2人で仲良く押し、市役所へ向かった。
市役所に入り、番号札を受け取る。
しばらくして、
「15番でお待ちの方~」
2人で席を立ち、窓口へ。
そして、2人で提出。
「不備がないか確認しますので、こちらの番号札でお待ちください」
再び席に座る。
ヒカルがベビーカーの中で足をばたつかせる。
ミライが指をしゃぶる。
そして呼ばれる。
窓口は山田さんだった。
山田
「不備がありませんでしたので受理されました。本日はおめでとうございます」
そして、
「佐々木さん、忙しいですね、婚姻届だして妊娠届だして離婚届だして婚姻届……」
ケンジ
「うるさいな……」
山田
「貴子さん、子育て頑張ってくださいね」
貴子
「ありがとうございます」
後ろから上司が来る。
「休みの理由これか、佐々木、もう奥さん泣かせるなよ」
ケンジ
「え~なんで僕が泣かせた前提なんですか~」
貴子はケンジをチラッと見る。
「泣かせたでしょ!」
ケンジ
「は、はい、ごめんなさい」
山田
「佐々木さん、女は強いんですよ」
上司
「うちの奥さんは鬼だけどな」
山田
「あ~奥さんに言っとこう」
上司
「やめてくれ~」
ヒカルが笑う。
ミライもつられて笑う。
市役所の中に、明るい声が響く。
楽しい再スタートだった。
家にいた貴子と綾子。
外は少し暗くなった夕方。
貴子
「ケンジさん、家では、どうなんですか?」
綾子
「あなたに謝りに来た次の日ぐらいからは、部屋でひきこもるのは、やめて出てくるようになったわね…」
貴子
「もう諦めたんですかね」
その時、
ヒカルが泣き、
ミライもつられて泣き始めた。
貴子はヒカルを抱き、
綾子がミライを抱く。
貴子
「はいはい、どうしたのぅ、ミルクもあげたし、オムツもかえたでしょ~」
綾子
「ミライちゃんもどうしたの~」
ヒカル
「パ…パ…」
ミライ
「パーパ……」
一瞬、空気が止まる。
そしてまた泣き出す。
貴子
「パパって言った……」
綾子
「この子も言った……」
貴子の手が震える。
ゆっくり、
そっと、
ベビーベッドにヒカルを寝かせる。
スマホを取り出す。
画面がにじむ。
打つ。
『パパ……戻ってきて』
送信。
既読は、つかない。
部屋には、
双子の泣き声と、
夕方の静かな光だけが残る。
ケンジは部屋でぼーっとしていた。
天井を見つめたまま、何も考えないようにしていた。
スマホが震えた気がした。
気のせいかと思ったが、もう一度、短く光る。
画面を見る。
ケンジ
「貴子からだ……」
喉が乾く。
指が止まる。
しばらく、開けない。
でも、開く。
『パパ……戻ってきて』
ケンジ
「パパ……戻ってきて」
声に出して読む。
胸が詰まる。
許されたのか、わからない。
それでも。
「行きたい……」
「会いたい……」
「貴子に……ヒカルに……ミライに」
立ち上がる。
財布も、上着も、ぐちゃぐちゃのまま掴む。
階段を駆け下りる。
父が居間から顔を上げる。
「どうした」
ケンジ
「行ってくる」
それだけ。
玄関のドアを勢いよく開ける。
夜の空気が冷たい。
でも、足は止まらない。
――貴子のもとへ。
ケンジは玄関の前に立った。
インターホンを押す手が震える。
深呼吸。
それでも震える。
押した。
ピンポーン。
中から、泣き声。
ヒカルとミライの声。
足音。
ドアが開く。
泣き叫ぶヒカルとミライを抱っこした貴子。
目が合う。
一瞬だけ。
貴子
「はーい、パパが戻ってきたよ~」
ヒカルとミライをケンジに抱っこさせる。
重み。
温もり。
ケンジの腕がぎこちない。
涙が滲む。
ヒカル
「パーパ」
ミライ
「パーパ」
2人は、すっと泣き止んだ。
静かになる。
ケンジの頬を涙が伝う。
声にならない。
貴子は何も言わない。
ただ、見ている。
玄関先に、
久しぶりの家族の空気が戻る。
貴子
「とりあえず上がって…」
声は落ち着いているけど、少しだけ震えている。
綾子がそっと近づき、ヒカルとミライを代わりに抱っこする。
「おばあちゃんといようね」
ケンジは、数ヶ月ぶりの家に足を踏み入れる。
靴を脱ぐ手がぎこちない。
見慣れたはずの廊下が、少し遠い。
貴子
「お義母さん、ちょっとヒカルとミライ、お願いします」
綾子は何も聞かない。
「わかったわ」
貴子は振り向かずに言う。
「こっち来て…」
隣の部屋の襖を開ける。
ケンジも
「うん……」
と小さく返し、後ろについて入っていった。
襖が静かに閉まる。
外からは、ヒカルとミライの小さな声。
部屋の中は、静かだった。
貴子
「座って……」
ケンジ
「あ、あぁ」
畳の上に向かい合って座る。
少し距離がある。
貴子
「なんであれ以来、来なかったの?」
ケンジ、目を伏せる。
「怖かった……マスターに何回も何回も誠心誠意謝れって言われて、その時は、よし!って思った……けど、いざ行こうとすると、貴子の俺を拒絶する瞳が浮かんできて……これなかった……」
沈黙。
貴子
「そう……」
ケンジ
「貴子が傷つく1番言ってはいけない言葉を言ってしまった。本当に本当に、ごめん」
畳に手をつく。
頭を下げる。
貴子はしばらく何も言わない。
貴子
「うん……わたしは、まだ許せない………でも、ヒカルとミライは、あなたを必要としてる……」
ケンジは顔を上げる。
「俺、貴子に許して貰えるように必死で頑張る……だから、だから、ヒカルとミライを貴子と一緒に育てたい」
貴子はまっすぐ見る。
「わかった……でも……次はないって思って…」
間。
外からヒカルの声。
ミライの小さな笑い声。
貴子の目が少しだけ揺れる。
「私は、あなたを一度失ったと思ってるから」
「戻ってくるなら、最初からやり直すつもりでいて」
ケンジ、深くうなずく。
「はい」
襖の向こうから、綾子の声。
「話は終わった?」
部屋の空気が、ほんの少しだけ変わる。
貴子
「はい」
襖が開く。
貴子とケンジが出てくる。
綾子がヒカルとミライを抱いている。
ヒカル
「マーマ……」
ミライ
「マーマ」
貴子の顔が一瞬でゆるむ。
「ママって言った~」
綾子
「え~、ばーばは?」
ヒカルとミライを覗き込む。
ヒカル
「ばーま」
ミライ
「パ…ば」
綾子
「惜しい~」
小さな笑いが広がる。
貴子の顔には、確かに笑顔があった。
でも――
ケンジとの間には、まだぎこちない空気が残っている。
ケンジはヒカルの手をそっと握る。
ヒカルは笑う。
その横顔を、貴子は見る。
目は合わない。
でも、
完全に他人ではない。
まだ途中。
家の中に、
少しずつ戻り始めた音があった。
綾子
「ケンジ、あなたは、今日は帰りなさい、私が泊まるから」
ケンジ
「うん……わかった」
貴子
「大丈夫です、お義母さん」
ケンジ
「え?」
貴子はケンジを見る。
少しだけ、強い目。
「あなた私が大変だった時にBAR行ったんでしょ!」
ケンジ
「あ、あぁ」
貴子
「私、今から行くから、ヒカルとミライ見てて」
ケンジ
「わかった……」
綾子
「ずっと、1人でほとんど見てたものね、息抜きしたいわよね」
少し間を置いて、
「さすがに、ケンジ1人だと心配だし少しだけ私も遅くまでいるね」
貴子
「ありがとうございます。」
綾子
「お酒はダメだからね」
貴子
「はい、わかってます」
部屋に戻る。
引き出しを開ける。
ガールズバーで働いてた時のメイク道具。
久しぶりにアイラインを引く。
少し濃い目のリップ。
クローゼットからあの頃の服を出す。
鏡を見る。
“母”ではない顔。
“貴子”の顔。
深呼吸。
リビングに戻る。
ケンジが一瞬、息をのむ。
貴子は何も言わない。
「行ってきます」
ドアが閉まる。
夜の空気。
ヒールの音。
向かう先は――
BARワンダー。
そしてBARワンダーに着いた貴子。
久しぶりに、ひとりでドアを開ける。
カラン、とベルが鳴る。
マスター
「バツイチ美人いらっしゃい」
貴子
「なによそれ~やだ~」
社長がニヤつく。
「どや?仲直りしたんか?」
爺さんはグラスを傾けながら。
「迷ってる顔しとるな……」
貴子
「え?……」
マスターが肩をすくめる。
「そっかぁ、俺とケンジどっちにするか……」
貴子
「それはないでーす」
店内に小さな笑い。
貴子はカウンターに体を預ける。
「でも……マスター、ケンジに怒ってくれたんですってね」
マスター
「なんだよ、あいつチクりやがって」
貴子は視線を落とす。
「でも、謝りにこれなかったって……」
一瞬、空気がやわらぐ。
貴子
「マスター、酔えるソフトドリンクちょうだい」
マスター
「むちゃな注文するな」
そう言って麦茶を出すマスター。
「ウイスキーだと思って飲め」
貴子
「はーい」
その時、1人の女性が入ってきた。
マスター
「いらっしゃい」
女性が貴子の横に座る。
マスターは無言でコースターを置く。
女性
「隣、失礼します、貴子さん」
貴子
「え?なんで名前知ってるんですか?」
女性は少しだけ笑う。
のぶ
「私です、のぶです、今は、のぶこですけど……」
貴子はゆっくり社長の方を見る。
「売ったんだ、あの薬」
社長は肩をすくめる。
「昔の貴子ちゃんみたいにな、女批判しとったからな」
爺さんがグラスを揺らす。
「そっくりじゃったわい」
のぶ
「え?貴子さんも、もしかして」
貴子はのぶを見る。
「そう、私も元は男、女変薬で女になったの」
のぶ
「そうなんだ……」
少し間。
貴子は麦茶を持つ。
「それより、どう?女楽勝?」
のぶは小さく首を振る。
「全然……大変です」
貴子は目を細める。
「だから、あの時言ったでしょ、今を頑張る、今と向き合えば良いって」
のぶはうなずく。
「その通りでした……」
貴子は、ふいに自分の言った言葉を思い出す。
――今を頑張る。
――今と向き合う。
その言葉が、脳裏にこびりついて離れない。
今、ケンジと育児を頑張る。
戻ってきたケンジと向き合う。
……元男って言われた悔しさ、怒りしか頭になかった……
麦茶を飲み干す。
貴子
「マスターチェック」
マスター
「お代はいい、早く帰ってやりな」
貴子は笑う。
「マスターありがとう~」
のぶを見る。
「のぶさんも気づかせてくれてありがとう、女生活頑張って」
のぶは、静かにうなずく。
貴子は立ち上がる。
ドアを開ける。
カラン、とベルが鳴る。
夜の空気が頬に触れる。
ヒールの音が、迷いなく響く。
家へ向かう足取りは、さっきより軽かった。
急いで帰ってきて家についた貴子。
「ただいま」
廊下を歩く。
ケンジが小声で言う。
「しーーっ、やっと今寝たんだ、母さんが帰ってから泣き止まなくて」
貴子
「そっか……お疲れ様」
ケンジ
「本当に疲れた……」
貴子、少しだけ目を細める。
「誰かさんは、こんなに疲れる事、数ヶ月投げ出したけど……」
ケンジ
「それは本当に、ごめん」
貴子
「私の方こそ、ごめんなさい」
ケンジ
「え?」
貴子は深呼吸する。
「本当は離婚なんてしたくなかった……一緒にヒカルとミライを育てたいって思ってた……でも、元男って言われた悔しさ怒りが、それを邪魔してた」
ケンジ
「貴子……」
貴子
「あの時、謝りに来てくれた時は、喜んでた私がいた……でも、許さないって私もいた……」
ケンジ
「それは俺が1番言ってはいけない言葉を言ったから……言った瞬間、自分でも後悔した……」
貴子
「反省してるケンジと向き合おうとしなかった、ヒカルとミライの事考えずに私の気持ちを優先してた」
沈黙。
ケンジは迷いながらも、貴子をそっと抱きしめる。
拒絶はなかった。
貴子
「パパとママが仲良くないまま、育児してもダメだと思って…」
ケンジ
「貴子……もう2度と貴子を傷つけないって誓う……」
貴子
「本当に?」
ケンジ
「本当に誓う」
そっと距離が縮まる。
唇が触れそうになった瞬間――
「ぎゃあああああ」
ヒカル。
「うわあああ」
ミライ。
二人同時に泣き出す。
二人は顔を見合わせる。
貴子
「……今じゃないね」
ケンジ
「タイミング悪すぎだろ」
小さく笑う。
二人で寝室へ向かう。
“家族”として。
翌日。
ケンジは寝不足ながらも、ネクタイを締める。
「貴子いってきます」
「ヒカル~ミライ~パパ頑張ってくるよ~」
ヒカルが小さく手を動かす。
ミライはあくび。
ケンジは少し笑って、家を出た。
玄関が閉まる。
しばらくして、綾子が来る。
「どう?かわりない?」
そう声をかけた瞬間、貴子の顔を見る。
昨日とは全く違う、にこやかな表情。
綾子はすぐ気づく。
「仲直りしましたって顔に書いてあるわ」
貴子
「えっ、あ、はい、私も意地張ってた部分もあって……ご迷惑おかけしました。」
綾子
「うちのバカ息子が悪いのよ、謝らないで」
少し間。
貴子は、少し緊張した顔で言う。
「あ、あの……婚姻届の証人欄、お願いできますか?」
綾子は一瞬きょとんとして、
すぐに笑う。
「当たり前じゃないの」
その目に、うっすら涙が浮かぶ。
「でも……良かった……仲直りしてくれて……」
貴子
「お、お義母さん……」
綾子は袖で目元を押さえ、
くるっと背を向ける。
「じゃ……私が婚姻届とってきてあげるわ」
そう言って、勢いよく出ていく。
玄関のドアが閉まる。
貴子はヒカルとミライを見る。
「パパとママ、もう一回ちゃんと家族になるよ」
ヒカルが「パ…」と声を出す。
ミライが笑う。
家の中に、少しだけ春の匂いがした。
そして市役所についた綾子。
番号札をとり、椅子に座って待つ。
電光掲示板が光る。
「7番でお待ちのお客様~」
綾子はすっと立ち上がり、窓口へ。
婚姻届を受け取る。
用紙を軽く確認し、振り返る。
近くの窓口にいたケンジを見つける。
「ケンジ」
ケンジ
「母さん、どうしたの?」
綾子
「明日休みとりなさい」
ケンジ
「え?なんだよ急に」
綾子
「いいから」
ケンジ
「そんな急に無理だよ」
綾子は奥の方を背伸びして見る。
そして大きく手を振る。
「部長さーん、ケンジの母です、佐々木ケンジ明日休みとります」
ケンジ
「ちょっと母さん」
周りが少しざわつく。
綾子は満足げにうなずき、
「じゃ、よろしく」
それだけ言って帰っていった。
上司がケンジの近くに来る。
「まぁ、受理するから申請出しとけ」
ケンジ
「は、はい、すみません」
苦笑いしながら、申請書を書く。
ペンを走らせながら、
ふと婚姻届の用紙が目に入る。
小さく、息を吐く。
そして、申請書を提出した。
仕事から帰ってきたケンジ。
「ただいま~」
リビングに入ると、綾子がいる。
ケンジ
「ちょっと母さん、今日いきなりなんだったんだよ」
綾子
「貴子さん……」
その声で、ケンジはテーブルを見る。
貴子が、そっと婚姻届を出す。
「こういうこと……」
ケンジ
「えっ?……」
目が潤む。
貴子は静かに続ける。
「ヒカルとミライがいるけど……もう一度、結婚からリセットしましょう……」
ケンジ
「貴子……」
綾子
「でも、今度貴子さんを泣かせたら実家からも追い出すからね!!」
ケンジ
「うん、俺頑張る、がむしゃらに頑張る」
貴子
「ストップ……頑張りすぎたらケンジ空回りしちゃうから」
綾子
「それもそうね、あなたは父さんに似て、頑張りすぎてブレーキ壊れちゃうんだから」
貴子
「え?お義父さんもなんですか?」
綾子
「そうよ~、綾子の為に頑張る~ケンジの為に頑張る~って」
ケンジ
「今の父さんと全然違うね」
貴子は、少し笑う。
「ケンジ1人で頑張るんじゃなくて2人で頑張りましょう、双子なんだから」
その時。
ヒカル
「マーマ」
ミライ
「パーパ」
綾子
「え~ばーばは?」
ヒカル
「ばば」
ミライ
「ばばば」
綾子
「ちょっと~あなた達~」
ケンジ
「赤ちゃん相手にムキになんなよ~」
部屋に、笑い声が広がる。
明るい空気になった。
そして翌日。
貴子とケンジは、ベビーカーを2人で仲良く押し、市役所へ向かった。
市役所に入り、番号札を受け取る。
しばらくして、
「15番でお待ちの方~」
2人で席を立ち、窓口へ。
そして、2人で提出。
「不備がないか確認しますので、こちらの番号札でお待ちください」
再び席に座る。
ヒカルがベビーカーの中で足をばたつかせる。
ミライが指をしゃぶる。
そして呼ばれる。
窓口は山田さんだった。
山田
「不備がありませんでしたので受理されました。本日はおめでとうございます」
そして、
「佐々木さん、忙しいですね、婚姻届だして妊娠届だして離婚届だして婚姻届……」
ケンジ
「うるさいな……」
山田
「貴子さん、子育て頑張ってくださいね」
貴子
「ありがとうございます」
後ろから上司が来る。
「休みの理由これか、佐々木、もう奥さん泣かせるなよ」
ケンジ
「え~なんで僕が泣かせた前提なんですか~」
貴子はケンジをチラッと見る。
「泣かせたでしょ!」
ケンジ
「は、はい、ごめんなさい」
山田
「佐々木さん、女は強いんですよ」
上司
「うちの奥さんは鬼だけどな」
山田
「あ~奥さんに言っとこう」
上司
「やめてくれ~」
ヒカルが笑う。
ミライもつられて笑う。
市役所の中に、明るい声が響く。
楽しい再スタートだった。
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