七竈

菱沼あゆ

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トイレの霊

職員室

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「先生、プリント集めてきました」

 職員室に入った七月は槻田の机まで行き、そう呼びかける。

 振り返ろうとした彼の目の前に、ばさり、と投げ落とすようにプリントの束を置いた。

 お前な、という顔で槻田が見上げる。

 なんとなく落ち着かないのだ。

 こういう場所で彼を見るのが。

 まあ、教師だから職員室に居て当たり前なのだが。

 夜遅くに訪ねてきてピサを食べ、英嗣と罵り合って帰っていったこいつは、本当になにしに来たんだ、と思っていた。

 あれ以来、お互い本心を口にすることもなく、ただ時間だけが過ぎている。

 まだ警察に戻らなくていいのか、と思いながら、何も言わないその顔を見ていたが、ふと、視線をスライドさせる。

 槻田の後ろを通った教師の服装が佐竹のそれと似ていたからだ。

 あれから出逢えないが、どうしているのだろう。

 訊きたいことはたくさんあるのに、とまた思う。

 そして、片隅にある東が使っていた机を見た。

 元々、それがあった場所には、今は槻田の机が据わっている。

 どのクラスの担任かで、机の場所が変わるようだった。

 中身を動かす方が面倒くさいので、みんな、机を抱えて移動しているらしい。

「お前ら、またなんか悪いこと企んでないか?」
と言った槻田を見下ろした。

 ようやく、口を開いたと思ったら、そんな話か、と思う。

「どうして、そう思うんです?」

「演劇部の部長がなんか浮かれてたからだ」

 そう言いながら、槻田は机の上に並べて立てられている本やファイルの隙間から、バインダーを取り出していた。

 弥生め、と思いながら、
「ちょっと新しい霊を覗きに行くだけですよ」
と答える。

 槻田は顔をしかめた。

 なんでわざわざ、霊に関わりに行くんだ、と思っているようだった。

「英嗣は?」
と小声で訊いてくる。

「居るんじゃない?」
と自分も声を落とすと、いつもの口調に戻って答える。

「私には見えないけど。

 そうね。
 いざとなったら、英嗣さんが居るわね」
と言うと、嫌そうな顔をする。

 そのまま居ると、小言が増しそうなので、
「じゃあ、先生、失礼します」
と少し大きめの声で言い、背を向けた。

 プライベートな話は此処までという意思表示だった。

 そのあと、槻田がどんな顔をしていたのか。

 もう振り返らなかったので、わからないままだ。

 


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