おとぎ ~花魁候補の少女がやってきて、突然はじまる江戸ライフ~

菱沼あゆ

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祈り

おとぎ、コンビニに行く

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 学校の昼休み。

 渉とメガネはそれぞれで作った柳の歯ブラシを見せ合い、二人並んで歯を磨いていた。

 通りかかった菜々子がそれに気づき、

「あっ、ずるいっ」
と叫ぶ。

「私も欲しい、それっ」

「ほら」
と渉とメガネがそれぞれ予備の歯ブラシを差し出した。

「絶対、お前いるって言うと思って」
と渉が言い、

「そもそもこれ、平原の家の柳だしな」
とメガネが言った。

「ありがとう」
と言いながらも、菜々子はそれらを受け取ることを躊躇する。

 チラチラと辺りをうかがいながら言った。

「……イケメン二人から、歯ブラシもらうなんて。
 他の女生徒から嫉妬されたりしないかしら?」

 渉は自らが作った不恰好な歯ブラシを見ながら言う。

「……すると思うか?」

「ま、私もおかしな人認定されるだけね」
と言って、菜々子はそれを受け取り、三人で並んで歯を磨いた。

「思ったより悪くないな」

「そんなに汚れがとれてる感じしないけど。
 思ったよりちゃんと歯ブラシ」
と感想を述べ合う。



 渉が家に帰ると、またカメが来ていた。

 生まれた時代が近いせいか(?)、おとぎとカメは話が合うようだった。

 カメがデイサービスでもらったという譜面を見ながら、二人でまた演奏している。

 それを渉が眺めていると、冷蔵庫の前にしゃがんでいた穂乃果が、

「あ~、牛乳も切れてた~。
 昨日、試作するのに使っちゃったから。

 渉、コンビニ行って、牛乳と、ついでにパン買ってきて」
と言い出した。

 穂乃果は家でも新しい料理の研究をしているので。
 ふと思いついて作り、家のご飯の材料がなくなることもしばしばだ。

「わかった。
 行ってくる」
と渉が言うと、和室から顔を覗けたおとぎが、

「私も行こう。
 カメばあちゃんを送るついでに」
と言ってきた。

 まあ、コンビニに行ってみたいんだろうな、と思い、連れていくことにする。


 
「ほう。
 これがコンビニか。

 そういえば、そこここにあるのう、こんな建物が」

 カメを送ったあと、近くのコンビニ行くと、おとぎはその小さな建物を見上げ、そう言った。

「この狭い中に、いろんな商品がぎっしり詰まってるんだ」
「木戸番小屋みたいだなあ」

「木戸番小屋?」

「江戸の町は、安全のために、町ごとに木戸で仕切られているんだ。
 夜にはその木戸は閉められる。

 その木戸の番をするものがいるのが、木戸番小屋じゃ」

「そうなのか」

「木戸番の賃金は安いから、木戸番はそこでいろんなものを売っている。
 草履とか鼻紙とか、安い一文菓子とかのう」

「ほんとにコンビニみたいだな」
 
 店内に入ったおとぎは、
「なんとっ。
 ここも百円ショップのようにいろんなものがあるなっ」
と言う。

「まあ、百円ショップよりずいぶん高いけど。
 何時まででも開いてるから便利かな」

 そう言いながら、渉は、
「ほう、これはすごいの」
と言いながら、真剣にコンビニの中を眺めているおとぎを観察していた。




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