御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

92 お昼休憩

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 斜め前に座る男性がヴィンセントだとわかって僕は動揺する。

 髪の色と顔は変えているけれど、瞳の色はそのままだ。

 だけど、どうしてここにいるんだろう?

 そんな僕の疑問をアーサーが代弁してくれる。

「マーリン先生、こちらの方はどなたですか?」

 アーサーが自分の横に座る男性に手のひらを向けると、マーリン先生は「ホッホッ」と目を細めた。

「この学院の教師のヴィクター先生じゃ。まだ授業は始まっておらんのじゃろう?」

 マーリン先生に問われて僕とアーサーはコクリと頷く。

「まだ授業は受けていません。何を教えてくれる先生なんですか?」

 するとマーリン先生はまたも「ホッホッ」と笑ってヴィクター先生を見やる。

 すると、ヴィクター先生ことヴィンセントは軽く首を横に振った。

「何の先生かは授業を受けるまで楽しみに取っておくといいじゃろう。それよりも冷めないうちに食べなさい」

 マーリン先生に言われて僕とアーサーは中断していた食事を再開する。

 食べながらも僕はチラチラとヴィクター先生を観察する。

 小柄な老人の姿のマーリン先生に比べてヴィクター先生はどちらかといえばがっしりとした体型をしている。

 さっきのヴィンセントとオーウェンの姿を思い出しても、体型は変えていないようだ。

 もしかしたら体育会系の授業を担当しているのだろうか?

 ヴィクター先生とマーリン先生は後から来たにも関わらず、僕達よりも先に食べ終えた。

「お邪魔したのう。お先にな」

 二人は立ち上がるとトレーを持って返却口に向かった。

 二人が居なくなった途端、僕とアーサーはへにゃりと肩の力を抜く。

「やれやれ。やっぱり先生と一緒だとちょっと緊張しちゃうね」

「まだ、授業が始まったばかりだからね。でも、ヴィクター先生って一言も喋らなかったね」

 アーサーの言うようにヴィクター先生は黙々と食事をするだけで一言も発しなかった。

 マーリン先生にしてもヴィクター先生を紹介しただけで後は何も話してはいない。

 ただ食事をするだけならわざわざ僕達の隣に来る必要なんてないのにな。

 まあ、実際に授業が始まってからヴィクター先生と顔を合わせて驚くよりは、前もって存在を知っていた方が良いと判断したのだろう。

 そんな気遣いよりも教師をしない方を選択して欲しかったんだけどな。

 食べ終えるとトレーを返却口に持っていく。

「「ごちそうさまでした」」

 ちょうど近くにいた調理員さんに声をかけると、ニコッと笑顔を返された。

 食堂を出て教室に戻ると、また半数くらいの生徒しか戻っていなかった。

 時間割りを確認すると次の授業は僕達が選択していないものだった。

「次も自習ルームだな」

「…だね」 

 僕達は、立ち上がると隣の自習ルームに向かった。

 そこには既に数人のクラスメイトが座っていた。

 教室内の人数が少なかったのはそういう事だったのか、と納得する。

 こうして自習ルームにいるのと、興味のない授業に参加するのと、どっちがいいんだろう?

 ダラダラとして授業の妨げになるよりは、こうしてここで自分の好きな事をしている方がよほどマシなんだろうな。

 そう、割り切る事にして僕は書棚から本を持ってきて読み始めた。



「エド、チャイム鳴ったぞ」

 アーサーに肩を譲られて僕はハッとして顔を上げた。

 どうやら読書に集中し過ぎてチャイムが鳴ったのに気付かなかったようだ。

「ああ、ごめん」

「随分と熱心に読んでたな。そんなに面白かったのか?」

 アーサーに言われて僕はコクリと頷いた。

 前世では読書なんてマンガくらいしか読まなかったのに、こんなに読書にのめり込むとは自分でも信じられない。

 まあ、この世界にはマンガなんてないから当然かもしれないな。

 自習ルームを出て教室に戻ると、すぐに自分の席に戻った。

 これで今日の授業は終わりで、最後のホームルームの時間だ。

 チャイムの後、担任であるディクソン先生が教室に入って来た。

「今日の授業はこれで終了です。皆さん、気を付けてお帰りください。…それと、エルガーさん。ちょっと残ってもらえますか?」

 突然のディクソン先生の名指しに僕は狼狽える。

 何かやらかしてしまったのだろうか?



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