46 / 215
幼少期
46 二回目の稽古
しおりを挟む
翌日から僕は屋敷の周囲を走る事を日課に入れた。
義父様も義母様も門から外に出なければ走っても良いと許可をくれた。
屋敷を一周するのなんて簡単だと思っていたが、これが結構運動不足の僕にはきつかった。
いや、だいたいこの屋敷が広すぎるんだよ。
男爵の身分でこれだけの屋敷を持っているんなら、もっと上の爵位の人はどれだけの土地を所有しているんだろう?
そういえばお茶会で訪れたテイラー伯爵家だってほんの一部しか見ていないけれど、かなり大きなお屋敷だったもんね。
上には上がいるって事だね。
アンソニーさんは週二回僕に剣を教えてくれる事になった。
二回目に来てくれた時には約束してくれたとおり、本物の剣を持ってきてくれた。
「これが今、私が使っている剣です」
そう言ってアンソニーさんは腰に下げた剣を鞘からズラリと抜いて見せてくれた。
「うわぁー」
本物の剣の迫力に僕はドキドキする。
前世でも日本刀を見た事はあるが、それは博物館に展示されてあるものでガラス越しにしか見られなかった。
あの『ただの展示品』にしか見えなかった日本刀よりは、今目の前にあって触れる事が出来る剣の方が格段上だ。
「持ってみますか?」
アンソニーさんに聞かれて僕は満面の笑みでコクコクと頷く。
アンソニーさんの口から「フッ」と漏れたけれど、表情は相変わらず変わっていない。
それでも笑ったらしい事は何となく感じられた。
「こちらの柄を両手で握ってください。くれぐれも刃を触らないように…」
アンソニーさんが僕の方に柄を差し出してくれる。
僕が両手で柄を握ると、アンソニーさんがゆっくりと手を離した。
アンソニーさんが手を離すと剣の重さがズシリと僕の手に伝わってくる。
思っていたよりも軽いけれど、いざこれを振り回して敵と戦うとなると相当な体力がいるだろう。
僕にはまだまだ扱える代物ではない。
「凄いですね。でも、僕にはまだまだ持つのは早そうです」
「木剣に慣れたら次は子供用の模造剣を持って来ましょう。何事も順序というものがありますからね」
「はい」
アンソニーさんは僕の手から剣を受け取ると、鞘の中に収めた。
稽古を終えた頃に義母様が僕達の所にやって来た。
「お疲れ様。喉が渇いたでしょう? 一緒にお茶にしましょう」
そう告げると義母様は先に屋敷の中へと戻っていく。
その義母様を見送るアンソニーの目がやけに優しげに見えるのは僕の気の所為だろうか?
もしかしてアンソニーさんって義母様の事が好きなのかな?
義父様とも幼なじみって言っていたから、もしかしたらよくある三角関係だったのかな?
でも、実際に義母様を取り合ったのなら、今こんな風に何のわだかまりもなく接する事は出来ないと思うから、アンソニーさんの気持ちは義父様も義母様も知らない?事なのかもしれない。
僕だって今更そんな話を持ち出して三人の関係を壊したくはないので黙っておく。
それにはっきりそうだと決まっているわけではない。
僕が受けた印象だけで、本当は違うかもしれないからだ。
三人には三人で築いてきた関係があるんだから、部外者がどうこう言う事じゃないよね。
義母様の後について屋敷の中に入ると、サンルームにお茶の用意がしてあった。
そこのベビーベッドにクリスが寝かされている。
アンソニーさんがベッドの中を覗き込むと、クリスは初めて見る顔にキョトンとしていた。
「こちらがクリス様ですか。どちらかと言うとセレナ様によく似ていらっしゃいますね」
「あら、アンソニーもそう思う? でもあんまりそれを言うとダニエルがむくれるから黙っておいてね」
クスクスと笑う義母様にアンソニーは生真面目な顔で頷いている。
うーん。
やっぱりさっきの優しげな視線は僕の勘違いなのかな?
義父様も義母様も門から外に出なければ走っても良いと許可をくれた。
屋敷を一周するのなんて簡単だと思っていたが、これが結構運動不足の僕にはきつかった。
いや、だいたいこの屋敷が広すぎるんだよ。
男爵の身分でこれだけの屋敷を持っているんなら、もっと上の爵位の人はどれだけの土地を所有しているんだろう?
そういえばお茶会で訪れたテイラー伯爵家だってほんの一部しか見ていないけれど、かなり大きなお屋敷だったもんね。
上には上がいるって事だね。
アンソニーさんは週二回僕に剣を教えてくれる事になった。
二回目に来てくれた時には約束してくれたとおり、本物の剣を持ってきてくれた。
「これが今、私が使っている剣です」
そう言ってアンソニーさんは腰に下げた剣を鞘からズラリと抜いて見せてくれた。
「うわぁー」
本物の剣の迫力に僕はドキドキする。
前世でも日本刀を見た事はあるが、それは博物館に展示されてあるものでガラス越しにしか見られなかった。
あの『ただの展示品』にしか見えなかった日本刀よりは、今目の前にあって触れる事が出来る剣の方が格段上だ。
「持ってみますか?」
アンソニーさんに聞かれて僕は満面の笑みでコクコクと頷く。
アンソニーさんの口から「フッ」と漏れたけれど、表情は相変わらず変わっていない。
それでも笑ったらしい事は何となく感じられた。
「こちらの柄を両手で握ってください。くれぐれも刃を触らないように…」
アンソニーさんが僕の方に柄を差し出してくれる。
僕が両手で柄を握ると、アンソニーさんがゆっくりと手を離した。
アンソニーさんが手を離すと剣の重さがズシリと僕の手に伝わってくる。
思っていたよりも軽いけれど、いざこれを振り回して敵と戦うとなると相当な体力がいるだろう。
僕にはまだまだ扱える代物ではない。
「凄いですね。でも、僕にはまだまだ持つのは早そうです」
「木剣に慣れたら次は子供用の模造剣を持って来ましょう。何事も順序というものがありますからね」
「はい」
アンソニーさんは僕の手から剣を受け取ると、鞘の中に収めた。
稽古を終えた頃に義母様が僕達の所にやって来た。
「お疲れ様。喉が渇いたでしょう? 一緒にお茶にしましょう」
そう告げると義母様は先に屋敷の中へと戻っていく。
その義母様を見送るアンソニーの目がやけに優しげに見えるのは僕の気の所為だろうか?
もしかしてアンソニーさんって義母様の事が好きなのかな?
義父様とも幼なじみって言っていたから、もしかしたらよくある三角関係だったのかな?
でも、実際に義母様を取り合ったのなら、今こんな風に何のわだかまりもなく接する事は出来ないと思うから、アンソニーさんの気持ちは義父様も義母様も知らない?事なのかもしれない。
僕だって今更そんな話を持ち出して三人の関係を壊したくはないので黙っておく。
それにはっきりそうだと決まっているわけではない。
僕が受けた印象だけで、本当は違うかもしれないからだ。
三人には三人で築いてきた関係があるんだから、部外者がどうこう言う事じゃないよね。
義母様の後について屋敷の中に入ると、サンルームにお茶の用意がしてあった。
そこのベビーベッドにクリスが寝かされている。
アンソニーさんがベッドの中を覗き込むと、クリスは初めて見る顔にキョトンとしていた。
「こちらがクリス様ですか。どちらかと言うとセレナ様によく似ていらっしゃいますね」
「あら、アンソニーもそう思う? でもあんまりそれを言うとダニエルがむくれるから黙っておいてね」
クスクスと笑う義母様にアンソニーは生真面目な顔で頷いている。
うーん。
やっぱりさっきの優しげな視線は僕の勘違いなのかな?
370
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる