12 / 52
12 朝食
しおりを挟む
鳥の囀りが聞こえて目を開けたが、ほの明るい中で見覚えのない天井が目に入って飛び起きた。
そこは豪華な掛け布団がかけられ四方は幕で覆われている天蓋付きのベッドの上だった。
自分で幕を下ろした覚えはないから、私が寝た後で誰かが下ろしてくれたのだろう。
翌朝、目が覚めたら元の世界に…
なんて淡い期待を抱いていたが、現実は甘くないようだ。
「アリス様、お目覚めですか? 幕を開けても宜しいでしょうか?」
私が起きた事がわかったようで、幕越しに声がかかる。
「あ、お願いします」
サッと幕が開けられて朝の光がベッドに降り注ぐ。
昨日の夜、この部屋に入って来た時には気付かなかったけれど、窓の向こうに木が植えてあり、時折鳥が飛び交っているのが見えた。
敷地内にこんな林があるなんて、どれだけこの屋敷は広いのかしら?
「アリス様。洗顔用のお湯をお持ちいたしました」
ベッド脇のサイドテーブルにお湯を入れた洗面器が置かれた。
ベッドに腰掛けた状態で顔を洗うと、サッとタオルを差し出された。
「ありがとう」
受け取って顔を拭くと、侍女長のポリーさんがニコリと微笑んだ。
「アリス様。お召し替えをしても宜しいですか? 奥様が朝食をご一緒に、と申されてます」
え?
もしかしてガブリエラさんを待たせてしまっている?
「お、お願いします」
ベッドから下りると、私より先に侍女の方が寝間着のボタンを外し、昨日とは違うドレスを着せてくれた。
背中のボタンが恨めしい。
せめてファスナーならば、自分で脱ぎ着が出来るのに…。
そう言えば制服のスカートの脇に短いファスナーが使われていたっけ。
あれを見せたら同じ物が出来るかしら?
そんな事を考えている間に着付けは終わり、ドレッサーの前に座らされて髪を梳かれた。
以前の黒髪よりも今の紫がかったシルバーブロンドの方が自分の顔にしっくりくる。
何だろう?
今までの姿は偽りで、ようやく本来の自分を取り戻したような気分になる。
支度が終わると侍女長に連れられて、食堂へと案内される。
食堂では既にガブリエラさんが座って私を待っていた。
「おはよう、アリス。よく眠れたかしら?」
「おはようございます、ガブリエラ様。お陰様でよく眠れました。お待たせして申し訳ありません」
私が謝罪するとガブリエラさんは満足そうに頷いた。
「気にしなくていいのよ。昨日は色々あって疲れていたのでしょう。よく眠れたのなら良かったわ」
そこで私は向かいの席にエイブラムさんがいない事に気が付いた。
「あの、エイブラム様は?」
「あの子は既に王宮に向かったわ。昨日の報告をしないといけないんですって。ちょっとやり過ぎたらしいから、もしかしたらお説教かしらね」
ガブリエラさんはそう言ってクスクス笑うけれど、私はそれを聞いて青くなった。
そもそも私が襲われなければ、エイブラムさんもあの男達を斬り殺さずに済んだはずだ。
私を助けた事でエイブラムさんが何か罰せられたりするのだろうか?
もしそうならば、決してエイブラムさんが悪いわけではないと、釈明した方がいいのだろうか?
「あの、エイブラム様は何か罰を受けたりするのですか? エイブラム様はただ、私を助けてくれただけで、何も悪くありません。そりゃあ、ちょっとやり過ぎかとは…」
弁明しようとしたが、最後の方は語尾が怪しくなった。
私の気持ちを察してくれたようでガブリエラさんはニッコリと微笑んだ。
「いいのよ、アリス。元々あの集団には討伐依頼が出されていたの。だから生死の有無は問われないわ。それに下手に情けをかけるとエイブラムの方がやられてしまうわ」
そう言われて私はハッとした。
確かにあの連中も剣を携えていた。
私を襲う事で油断をしていたが、普通に対峙したら、三対一でエイブラムさんが不利だ。
あの連中にエイブラムさんが傷付けられなくて良かったと思う。
食事も済んでお茶を入れて貰っていると、私のお茶を注いだ侍女がポットをワゴンの上に載せようとしたところ、ポットが傾いて床に落ちそうになった。
あっ、駄目!
気が付くとポットは宙に浮いた状態からワゴンの上へと戻っていった。
誰もがポカンとする中、ガブリエラさんがポツリと呟いた。
「アリス、今のはあなたが?」
えっ、嘘!
私がやったの?
そこは豪華な掛け布団がかけられ四方は幕で覆われている天蓋付きのベッドの上だった。
自分で幕を下ろした覚えはないから、私が寝た後で誰かが下ろしてくれたのだろう。
翌朝、目が覚めたら元の世界に…
なんて淡い期待を抱いていたが、現実は甘くないようだ。
「アリス様、お目覚めですか? 幕を開けても宜しいでしょうか?」
私が起きた事がわかったようで、幕越しに声がかかる。
「あ、お願いします」
サッと幕が開けられて朝の光がベッドに降り注ぐ。
昨日の夜、この部屋に入って来た時には気付かなかったけれど、窓の向こうに木が植えてあり、時折鳥が飛び交っているのが見えた。
敷地内にこんな林があるなんて、どれだけこの屋敷は広いのかしら?
「アリス様。洗顔用のお湯をお持ちいたしました」
ベッド脇のサイドテーブルにお湯を入れた洗面器が置かれた。
ベッドに腰掛けた状態で顔を洗うと、サッとタオルを差し出された。
「ありがとう」
受け取って顔を拭くと、侍女長のポリーさんがニコリと微笑んだ。
「アリス様。お召し替えをしても宜しいですか? 奥様が朝食をご一緒に、と申されてます」
え?
もしかしてガブリエラさんを待たせてしまっている?
「お、お願いします」
ベッドから下りると、私より先に侍女の方が寝間着のボタンを外し、昨日とは違うドレスを着せてくれた。
背中のボタンが恨めしい。
せめてファスナーならば、自分で脱ぎ着が出来るのに…。
そう言えば制服のスカートの脇に短いファスナーが使われていたっけ。
あれを見せたら同じ物が出来るかしら?
そんな事を考えている間に着付けは終わり、ドレッサーの前に座らされて髪を梳かれた。
以前の黒髪よりも今の紫がかったシルバーブロンドの方が自分の顔にしっくりくる。
何だろう?
今までの姿は偽りで、ようやく本来の自分を取り戻したような気分になる。
支度が終わると侍女長に連れられて、食堂へと案内される。
食堂では既にガブリエラさんが座って私を待っていた。
「おはよう、アリス。よく眠れたかしら?」
「おはようございます、ガブリエラ様。お陰様でよく眠れました。お待たせして申し訳ありません」
私が謝罪するとガブリエラさんは満足そうに頷いた。
「気にしなくていいのよ。昨日は色々あって疲れていたのでしょう。よく眠れたのなら良かったわ」
そこで私は向かいの席にエイブラムさんがいない事に気が付いた。
「あの、エイブラム様は?」
「あの子は既に王宮に向かったわ。昨日の報告をしないといけないんですって。ちょっとやり過ぎたらしいから、もしかしたらお説教かしらね」
ガブリエラさんはそう言ってクスクス笑うけれど、私はそれを聞いて青くなった。
そもそも私が襲われなければ、エイブラムさんもあの男達を斬り殺さずに済んだはずだ。
私を助けた事でエイブラムさんが何か罰せられたりするのだろうか?
もしそうならば、決してエイブラムさんが悪いわけではないと、釈明した方がいいのだろうか?
「あの、エイブラム様は何か罰を受けたりするのですか? エイブラム様はただ、私を助けてくれただけで、何も悪くありません。そりゃあ、ちょっとやり過ぎかとは…」
弁明しようとしたが、最後の方は語尾が怪しくなった。
私の気持ちを察してくれたようでガブリエラさんはニッコリと微笑んだ。
「いいのよ、アリス。元々あの集団には討伐依頼が出されていたの。だから生死の有無は問われないわ。それに下手に情けをかけるとエイブラムの方がやられてしまうわ」
そう言われて私はハッとした。
確かにあの連中も剣を携えていた。
私を襲う事で油断をしていたが、普通に対峙したら、三対一でエイブラムさんが不利だ。
あの連中にエイブラムさんが傷付けられなくて良かったと思う。
食事も済んでお茶を入れて貰っていると、私のお茶を注いだ侍女がポットをワゴンの上に載せようとしたところ、ポットが傾いて床に落ちそうになった。
あっ、駄目!
気が付くとポットは宙に浮いた状態からワゴンの上へと戻っていった。
誰もがポカンとする中、ガブリエラさんがポツリと呟いた。
「アリス、今のはあなたが?」
えっ、嘘!
私がやったの?
10
あなたにおすすめの小説
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
秋月一花
恋愛
旅芸人のひとりとして踊り子をしながら各地を巡っていたアナベルは、十五年前に一度だけ会ったことのあるレアルテキ王国の国王、エルヴィスに偶然出会う。
「君の力を借りたい」
あまりにも真剣なその表情に、アナベルは詳しい話を聞くことにした。
そして、その内容を聞いて彼女はエルヴィスに協力することを約束する。
こうして踊り子のアナベルは、エルヴィスの寵姫として王宮へ入ることになった。
目的はたったひとつ。
――王妃イレインから、すべてを奪うこと。
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。
屋月 トム伽
恋愛
戦が終わり王都に帰還していた英雄騎士様、ノクサス・リヴァディオ様。
ある日、ノクサス様の使者が私、ダリア・ルヴェルのもとにやって来た。
近々、借金のかたにある伯爵家へと妾にあがるはずだったのに、何故かノクサス様のお世話にあがって欲しいとお願いされる。
困惑する中、お世話にあがることになったが、ノクサス様は、記憶喪失中だった。
ノクサス様との思い出を語ってくださいと言われても、初対面なのですけど……。
★あらすじは時々追加します。
★小説家になろう様にも投稿中
★無断転載禁止!!
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる