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第10章
第214話
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「善貞はどこからきたんだ?」
「官林村って所だ」
ひょんなことから知り合うことになった善貞。
話しを聞いてみると、彼は猪の魔物がこの周辺の村に被害を与え始めたことを危惧し、1人猪退治に出たらしい。
支度資金がなく、食料を用意せずに出てきてしまったと後悔していたところで、調理していたケイに遇ったのだそうだ。
その被害を受けた村が、善貞が暮らしていた官林村という所で、月和村から北に1日かかる所に存在しているらしい。
「それにしても、だいぶ繁殖してしまっているようだな……」
「これだけ猪が多いのは原因があるのか?」
「まぁ……、色々と……」
ケイが繁殖した理由を尋ねると、善貞は表情を曇らせる。
何か言いたくなさそうな事でもあるのだろうか。
ということは、善貞もこの原因に何か関係あるとでも言うのだろうか。
ただの観光に来ているケイは、重い話ならあまり深くかかわりたくない。
「冒険者の仕組みのない日向では、どうやって魔物の退治を行なっているんだ?」
何か話が嫌な方向にいきそうだったので、ケイは方向をずらすことにした。
日向の国には冒険者組合のような存在がない。
魔物が繁殖しないようにするためには、誰かが間引かないとならない。
村人や商人では、弱い魔物はともかく、今回の猪のような獰猛な魔物を相手にすることができないだろう。
「たいていはその領地を治める大名家が、所持している剣術集団を派遣して対処に当たるんだ」
「へ~……」
日向は、東西南北それと中央の5つの地域に分けられており、それぞれの地域に大名家が置かれている。
中央には、さらにこの国の皇族も住んでいて、そこが首都となっているのだそうだ。
その大名家は、有事の際への備えとして、それぞれ私設の武術団を所持している。
その中には魔物へ対処するための部隊もあるらしく、魔物の繁殖の兆候があると報告を受けた場合に派遣されるのだそうだ。
「兆候があってからの行動は遅いんじゃないか?」
「それはそうなんだが……」
報告を受けてからの行動では、間に合わない可能性もある。
そうなる前に対処した方が楽な気がする。
しかし、善貞の反応からすると、それができない理由があるのかもしれない。
「だいぶ前にはこの周辺の魔物に対処するための武家があったんだが、取り潰しにあってな……」
「ふ~ん……」
家の取り潰しとは穏やかではない。
何か問題でも起こしたのだろうか。
ただ、ケイにはそれでどうでも良いこと。
ケイは軽く返事をする。
「今は、山で分断された西側は、魔物無法地帯になっている状態だ」
今登っている緒伝山などの3つの山によって、都会の奧電とは分断されているような地理になっている。
西側にはケイも寄った反倉と月和村、それと官林という村の3つがあるが、山に近い月和と官林は魔物の被害が起きてから助けを呼ぶしかないらしい。
「それじゃあ、近くの村はどうしようもないな……」
村では戦える人間なんて少ないだろうし、繁殖を抑えることなんてできないだろう。
ここら辺は、本来たいした魔物が生息していないそうだが、このままでは猪以上の魔物が増えてしまうかもしれない。
以前のように、大名家に変わってこの周辺の魔物に対処するための武家を置くべきだ。
「反倉は交易の関係上、ケイのような冒険者が来たりするので、周辺の魔物を退治してもらう依頼ができるだろうが、月和と官林はきついな……」
反倉は大陸との交易で発展しているため賑わっていたが、月和村は農業を中心にしていた。
そのため、頼む人間もいないのでなかなか厳しいかもしれない。
「じゃあ、俺たちが猪を狩るか?」
【うんっ!】「ワンッ!」
困っているのなら助けてあげよう。
やっぱり人や物が昔の日本に近いからか、困っている人をそのままにしておくのが何だか気が引ける。
「えっ? お前たち村と関係ないだろ?」
「急ぐ旅でもないし、猪の対処は慣れている。間引くぐらい暇つぶしの範囲内だ」
ケイの言葉に、善貞が反応する。
依頼もされていないのに、魔物退治なんて何の得にもならないだろう。
しかも、猪はかなり凶暴な魔物だ。
遇った時にかなりの数の猪の死骸があったが、罠などを使って捕まえたのだろうと考えていた。
思い付きでするには危険すぎる。
善貞は止めるが、猪の退治はアンヘル島で慣れているので、ケイからしたらたいして面倒でもない。
なので、キュウとクウの運動がてら、猪の数を間引くことにした。
「……おっ? 早速来たな……」
「えっ?」
善貞と話している途中だが、ケイの探知に猪が引っかかった。
腰の銃を1丁抜き、ケイは猪のいる方角に向ける。
“パンッ!”
「プギャッ!!」
こっちに向かって来ていた猪が、悲鳴を上げて横に倒れる。
その脳天には、ケイの銃から発射された弾丸によって穴が開いている。
「……い、今の魔闘術……!?」
「んっ? そうだが?」
善貞は、ケイが銃の引き金を引く前、魔闘術を発動したことに驚いたようだ。
亡くなった美花から聞いた話だと、大陸には少ないが、日向だと魔闘術を使える人間がまあまあいるらしいと聞いていた。
なので、そんな驚く事かと思い、ケイはなんてことないように答える。
「頼む! 俺に魔闘術を教えてくれ!」
「……えっ?」
刀を差しているし、猪の退治に1人で来るくらいだから、ケイは善貞も魔闘術を使えるのかと思っていた。
しかし、どうやら使えないようだ。
自分の方がよっぽど無茶してることに気付かないのだろうか。
そんな善貞の頼みに戸惑うケイだった。
「官林村って所だ」
ひょんなことから知り合うことになった善貞。
話しを聞いてみると、彼は猪の魔物がこの周辺の村に被害を与え始めたことを危惧し、1人猪退治に出たらしい。
支度資金がなく、食料を用意せずに出てきてしまったと後悔していたところで、調理していたケイに遇ったのだそうだ。
その被害を受けた村が、善貞が暮らしていた官林村という所で、月和村から北に1日かかる所に存在しているらしい。
「それにしても、だいぶ繁殖してしまっているようだな……」
「これだけ猪が多いのは原因があるのか?」
「まぁ……、色々と……」
ケイが繁殖した理由を尋ねると、善貞は表情を曇らせる。
何か言いたくなさそうな事でもあるのだろうか。
ということは、善貞もこの原因に何か関係あるとでも言うのだろうか。
ただの観光に来ているケイは、重い話ならあまり深くかかわりたくない。
「冒険者の仕組みのない日向では、どうやって魔物の退治を行なっているんだ?」
何か話が嫌な方向にいきそうだったので、ケイは方向をずらすことにした。
日向の国には冒険者組合のような存在がない。
魔物が繁殖しないようにするためには、誰かが間引かないとならない。
村人や商人では、弱い魔物はともかく、今回の猪のような獰猛な魔物を相手にすることができないだろう。
「たいていはその領地を治める大名家が、所持している剣術集団を派遣して対処に当たるんだ」
「へ~……」
日向は、東西南北それと中央の5つの地域に分けられており、それぞれの地域に大名家が置かれている。
中央には、さらにこの国の皇族も住んでいて、そこが首都となっているのだそうだ。
その大名家は、有事の際への備えとして、それぞれ私設の武術団を所持している。
その中には魔物へ対処するための部隊もあるらしく、魔物の繁殖の兆候があると報告を受けた場合に派遣されるのだそうだ。
「兆候があってからの行動は遅いんじゃないか?」
「それはそうなんだが……」
報告を受けてからの行動では、間に合わない可能性もある。
そうなる前に対処した方が楽な気がする。
しかし、善貞の反応からすると、それができない理由があるのかもしれない。
「だいぶ前にはこの周辺の魔物に対処するための武家があったんだが、取り潰しにあってな……」
「ふ~ん……」
家の取り潰しとは穏やかではない。
何か問題でも起こしたのだろうか。
ただ、ケイにはそれでどうでも良いこと。
ケイは軽く返事をする。
「今は、山で分断された西側は、魔物無法地帯になっている状態だ」
今登っている緒伝山などの3つの山によって、都会の奧電とは分断されているような地理になっている。
西側にはケイも寄った反倉と月和村、それと官林という村の3つがあるが、山に近い月和と官林は魔物の被害が起きてから助けを呼ぶしかないらしい。
「それじゃあ、近くの村はどうしようもないな……」
村では戦える人間なんて少ないだろうし、繁殖を抑えることなんてできないだろう。
ここら辺は、本来たいした魔物が生息していないそうだが、このままでは猪以上の魔物が増えてしまうかもしれない。
以前のように、大名家に変わってこの周辺の魔物に対処するための武家を置くべきだ。
「反倉は交易の関係上、ケイのような冒険者が来たりするので、周辺の魔物を退治してもらう依頼ができるだろうが、月和と官林はきついな……」
反倉は大陸との交易で発展しているため賑わっていたが、月和村は農業を中心にしていた。
そのため、頼む人間もいないのでなかなか厳しいかもしれない。
「じゃあ、俺たちが猪を狩るか?」
【うんっ!】「ワンッ!」
困っているのなら助けてあげよう。
やっぱり人や物が昔の日本に近いからか、困っている人をそのままにしておくのが何だか気が引ける。
「えっ? お前たち村と関係ないだろ?」
「急ぐ旅でもないし、猪の対処は慣れている。間引くぐらい暇つぶしの範囲内だ」
ケイの言葉に、善貞が反応する。
依頼もされていないのに、魔物退治なんて何の得にもならないだろう。
しかも、猪はかなり凶暴な魔物だ。
遇った時にかなりの数の猪の死骸があったが、罠などを使って捕まえたのだろうと考えていた。
思い付きでするには危険すぎる。
善貞は止めるが、猪の退治はアンヘル島で慣れているので、ケイからしたらたいして面倒でもない。
なので、キュウとクウの運動がてら、猪の数を間引くことにした。
「……おっ? 早速来たな……」
「えっ?」
善貞と話している途中だが、ケイの探知に猪が引っかかった。
腰の銃を1丁抜き、ケイは猪のいる方角に向ける。
“パンッ!”
「プギャッ!!」
こっちに向かって来ていた猪が、悲鳴を上げて横に倒れる。
その脳天には、ケイの銃から発射された弾丸によって穴が開いている。
「……い、今の魔闘術……!?」
「んっ? そうだが?」
善貞は、ケイが銃の引き金を引く前、魔闘術を発動したことに驚いたようだ。
亡くなった美花から聞いた話だと、大陸には少ないが、日向だと魔闘術を使える人間がまあまあいるらしいと聞いていた。
なので、そんな驚く事かと思い、ケイはなんてことないように答える。
「頼む! 俺に魔闘術を教えてくれ!」
「……えっ?」
刀を差しているし、猪の退治に1人で来るくらいだから、ケイは善貞も魔闘術を使えるのかと思っていた。
しかし、どうやら使えないようだ。
自分の方がよっぽど無茶してることに気付かないのだろうか。
そんな善貞の頼みに戸惑うケイだった。
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