エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

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第13章

第339話

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「さて、雑種とは言え、大人しく我に従えば家畜としての未来を保証しよう」

「レイナルド様を雑種呼ばわりなど許せん!!」

「ふざけるな!!」

「お前なんかに従う訳ないだろう!!」

 この日のために対し作り出した人工島で、向かい合うレイナルドたちと魔王ソフロニオ。
 レイナルドの耳を見て、ハーフだと分かると雑種呼ばわりしてきた。
 そのふざけた物言いに、レイナルドではなく他の者たちが怒りを露わにした。
 エルフ王国とは言うものの、現在純粋なエルフは建国の王であるケイのみ。
 しかし、そんなこと関係なく、流れ着いた自分たちの祖父たちに安住の地を与えてくれたケイたちの子孫には敬意を称している。
 そんな彼らを侮辱することを、国民の彼らは我慢ならなかった。

「うるさい獣共だ……」

「黙れ!! 彼らは我が国の大事な仲間だ!! 獣呼ばわりは許さん!!」

 レイナルドに代わって怒りをぶつけた獣人たちを、ソフロニオは獣呼ばわりする。
 それに対し、今度はレイナルドが怒りをぶつける。
 彼らは同じ国に住む仲間であって、家族のような者たちだ。
 そんな彼らを侮辱することが許せなかった。

「……仕方がない。痛めつけて分からせるか……」

「「「「「っっっ!?」」」」」

 自分の提案に従う様子のないレイナルドに、ソフロニオは呆れたように呟く。
 そして、呟いてすぐ、殺気と共に魔力を放出させた。

「……なんて魔力量だ」

 ソフロニオが放出させた魔力に、レイナルドたちは戦慄する。
 とんでもない程の魔力が放出されたからだ。
 その発せられる魔力量に圧され、レイナルドは嫌な汗が頬をつたい、獣人の彼らは尻尾を下げた。

「どうした? かかって来ないのか? 来ないならこちらから行くぞ?」

 獣人たちが自分へ向けた武器が僅かに震える様を見て、ソフロニオは嘲笑しながら問いかける。
 自分の殺気と魔力に、彼らが圧されているのが分かっていながらの発言だ。
 そして、ソフロニオは爪を伸ばした。
 どうやら、その爪が彼の武器のようだ。

「ハッ!!」

「っと!!」

 獣人たちに目を向けていたソフロニオに対し、レイナルドが動く。
 母である美花に、生前訓練を受けていたこともあり、レイナルドもカルロスと同じくらい刀を使った戦闘はできる。
 しかし、刀の戦闘よりもケイのように銃で魔法を放つ闘いの方が、彼の中では性格的に合っている。
 そのため、隙と見たレイナルドは、銃でソフロニオに魔力弾を放った。
 顔目がけて飛んできた攻撃に、ソフロニオは咄嗟に首を傾け回避する。

「痛えな……」

 レイナルドの攻撃を完全には回避しきれず、ソフロニオの頬を掠った。
 掠った所から血が流れたのを確認したソフロニオは、これまでの余裕の表情が消え去った。

「っ!! 傷が治った?」

「その通り。この程度の傷など何の意味も成さん」

 レイナルドの攻撃で出来た傷が、すぐに傷が治ってしまった。
 そのことに気付いたレイナルドに、ソフロニオは冷ややかな目をして答える。
 傷は治るが、痛みは感じる。
 痛みを感じさせられたことが不快に感じたのかもしれない。

『父さんの言っていた通りか……』

 父であるケイから、再生能力の高い魔族と戦った話を聞いた。
 もしかしたら、魔王も同じように再生能力を持っているかもしれないと父は考えていた。
 どうやら考えは間違いではなかったようだ。
 そうなると、かなり面倒なことになる。
 これだけの敵を相手を倒すことはかなり難しく感じたからだ。

「我に傷をつけたことを後悔させてやる!!」

 真剣な表情へと変わったソフロニオは、伸ばした左手の爪をレイナルドへと構える。
 そして、レイナルドへと向かって襲い掛かろうとした。

“ボッ!!”

「っ!? ケセランパセラン?」

 しかし、レイナルドへと襲い掛かる前に、上空から魔力弾が飛んできたため後退した。
 攻撃を回避したソフロニオは、誰が攻撃してきたのかを確認するため上空へと視線を向ける。
 すると、上空に浮かんでいたのは、弱小中の弱小と言われているケセランパセランだった。

「キュウ!!」

 その姿をいたレイナルドは、そのケセランパサランの名前を叫ぶ。
 父であるケイの従魔であるキュウだったからだ。

「ガウッ!!」

「ムッ!? ……犬?」

 上空に視線を向けたソフロニオに対し、更に魔法が飛んでくる。
 今度はペットとしてたまに見る犬の魔物が、魔法を放ってきた。
 それを躱したソフロニオは、今度はレイナルドの側に犬がいることに気付いた。

「クウ!!」

 元々は母である美花の従魔だったが、美花の死後、ケイの従魔になった柴犬のクウだ。
 念のためケイが留守番を頼んだ2匹が、ソフロニオとの戦いに参戦してきたのだ。

「お前たちはセレナやみんなの護衛を頼んだだろ?」

【みんなは子供たちに任せてある。だから大丈夫!】

「……そうか」

 魔王の出現により、西へと避難したレイナルドの妻であるセレナたちの護衛を頼んでいたのだが、この場に現れたことにレインルドは戸惑った。
 しかし、キュウの子供たちが残っていると聞いて、すぐに安心した。
 キュウの子供であるマルたちは、以前山の噴火を抑え込むことで命を落とした。
 その後、キュウは数年に1度子供を産みだしていた。
 その子供や孫たちも、キュウに似て魔法が得意な特殊なケセランパサランに成長している。
 彼らがいれば、余程の事でもない限り大丈夫だろう。

「……何だ? そのケセランパセランは……ペットか?」

「うちの家族だ!!」

 ソフロニオは、ジッとキュウのことを見つめる。
 何やら、気になった所があるのだろうか。
 そのソフロニオの問いに対し、レイナルドは強めに答える。
 キュウは父のケイとずっと共に過ごしてきた。
 それは母である美花より古い仲だ。
 生まれた時から共に過ごしているレイナルドにとっても、キュウは家族という思いしかない。
 そのため、ペット呼ばわりしたソフロニオの言葉を強めに否定した。

「弱小のケセランパセランの変異種か? 面白い……。そいつを我に寄越せ!」

「ふざけるな!! 渡すわけないだろ!!」

 ソフロニオの中では、もうペットにする気でいるのだろう。
 珍しい生物を好むソフロニオは、手招きするように話しかけてくる。
 家族であるキュウを当然渡す訳もなく、レイナルドは怒りの言葉と共に銃をソフロニオへと向けた。

「いちいち否定しおって……、まあいい、そいつも無理やり手に入れよう」

 結局、レイナルドと共にキュウを力尽くで手に入れることにしたソフロニオは、武器である両手の爪を伸ばし、戦闘態勢に入ったのだった。

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