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第13章
第340話
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【ハッ!!】
「っと!」
上空から魔法を放ち、攻撃するケイの従魔であるケセランパサランのキュウ。
その魔法攻撃を躱す魔王のソフロニオ。
「ワウッ!!」
「チッ!」
特化しているため、キュウは魔法での戦闘しかできない。
それを補うのが、見た目柴犬の魔物のクウだ。
上空のキュウに視線を向けたソフロニオに対し、地上のクウが噛みつきにかかる。
その攻撃を、ソフロニオは後退することで回避した。
「ハー!!」
「グッ!? おのれ! 雑種のくせに面倒な……!」
キュウとクウの攻撃は、あくまでレイナルドの攻撃のための援護であり、あらかじめそこに来ると分かっていたレイナルドは、ソフロニオへ向かって刀を一閃する。
ソフロニオは武器である手の爪で防御しようとするが、僅かに間に合わない。
レイナルドの刀が振り切られ、ソフロニオの左手が斬り飛ばされた。
攻撃を受けて距離を取ったソフロニオは、痛みに腹を立ててレイナルドを睨みつけた。
『くそっ! このままでは勝てそうにない』
ソフロニオとの戦闘は、レイナルド、キュウ、クウが連携して動き、獣人たちが補助する形で進んでいた。
戦いにおいては有利に進めていると思える。
しかし、今さっき斬り飛ばした左手も、ソフロニオはすぐに再生してしまう。
その再生に魔力を使用しているようだが、たいして減っていないため、レイナルドは内心焦っていた。
父であるケイ並みに魔力を所持しているソフロニオ。
その魔力を削り切ろうとすると、レイナルドたちの方が先に魔力切れになってしまうのが分かってしまったからだ。
「レイナルド様!」
「どうした? ブラス」
ソフロニオに勝つにはどうするべきかを考えていると、援護をしてくれている獣人の1人が話しかけてきた。
ケイたち家族しかいなかった島に流れ着いた狼人族のルイスとアレシア。
その曾孫に当たるブラスと言う名の青年だ。
ルイスとアレシアの娘の1人であるドゥルセはカルロスと結婚しているため、彼はレイナルドとも親戚関係にある。
しかし、小さいとはいえこの島の王であるケイの一族とは、いくら親戚関係にあるとはいえ一線を引いている。
ルイスは、島に来た時から獣人たちのまとめ役だったため、その役割は子や孫へと受け継がれ、今は騎士として島の戦闘獣人たちを指揮を執る役割を担っている。
その彼の問いかけに、レイナルドは一旦思考をやめて耳を傾けた。
「奴の再生能力は異常です。もうあれをおこなうしかありません。」
「それは俺も考えているが……」
魔王が出現した時のために、ケイが作り出した封印魔法。
仲間を指揮する立場であるブラスにも、その魔法の存在は教えてある。
レイナルドがキュウとクウと共に戦っていて、有利に運んでいるというのになかなか倒せる気配がない。
今この場で、ソフロニオを殺すということができるという希望が見えてこない。
そのため、長期の期間封印することで弱体化させ、自然消滅させる選択を選ぶべきだとブラスは判断した。
実の所、その提案を受けたレイナルドも同じように考えていた。
ケイから教わった封印魔法で封印するぐらいしか勝機が見えない。
そうしたいのは山々だが、問題がある。
「封印の魔法陣を作り出すまで、あいつの相手をどうするべきか……」
封印の魔法を発動するためには、巨大魔法陣と大量の魔力が必要になる。
キュウとクウに任せて、時間を稼ごうにも無理がある。
自分が魔法陣を作り出すまでの間、どうするべきかレイナルドは考えていたのだ。
「その時間は私どもが作り出します!」
「しかし……」
「えぇ、大なり小なり犠牲が出るでしょう。しかし、我々はそれは覚悟しております!」
魔王が出た時のために、獣人の彼らも島のダンジョンを利用した訓練をおこなってきた。
そんな彼らもかなりの実力者になってはいるが、ソフロニオ相手に戦えるかは微妙だ。
彼らに時間稼ぎを任せれば、被害に遭う者も現れる可能性が高い。
そのため、レイナルドが躊躇いの言葉を呟こうとしたが、それを遮るようにブラスが話しかける。
その表情には決意のようなものが見え、他の獣人たちも同様の表情をしていた。
「我々の国のためです!」「言って下さい! レイナルド様!」
「みんな……」
どうやら覚悟ができていないのは自分だけだったようだ。
被害なく魔王を封じるなんて甘すぎる。
ここは自分が決断することが、国を助けることになるのだと理解した。
「……くっ!! みんな頼んだ!!」
「「「「「お任せください!!」」」」」」
ソフロニオを相手にすれば、もしかしたら死人が出るかもしれない。
それでも島にいる子や孫を救うためには覚悟をしなければならないと判断したレイナルドは、苦悶の表情でみんなに時間枷を任せ、封印の魔法陣の製作に動き出した。
「あんっ? 何逃げて……」
「ハッ!!」
「っ!?」
急に走り出し、レイナルドは人工島の樹々の中へと姿を隠した。
それを見たソフロニオは、レイナルドのことを追いかけようとするが、ブラスたちはそれをさせまいと集団で襲い掛かった。
ソフロニオは槍や剣による攻撃を難なく躱したが、ブラスたちが進路を邪魔してレイナルドを追いかけることはできなくなった。
「雑魚に用は……」
【ハッ!!】
「危ねっ!」
ブラスたちが立ち塞がり、レイナルドの姿を見失ってしまった。
レイナルドを追いかけたいソフロニオは、邪魔なブラスたちを睨みつけ、右手の爪で攻撃しようと構える。
すぐに殺してしまおうと考えていたようだが、それをキュウが魔法で阻止した。
「レイナルド様の代わりに我々が相手をする!」
「覚悟しろ!」
「狼人族の力を見せてやる!」
ブラスの言葉に、仲間の者たちも勇ましくソフロニオへと声を上げる。
エルフ王国のあるアンヘル島にいる獣人のほとんどは、狼人族と呼ばれる種族だ。
肉食の狼が祖先と言われている種族で、獣人の中でも戦闘力は高い方だ。
特に集団で戦うことが得意な彼らは、魔王を目の前にしても臆することなく武器を構えた。
「……舐めんなよ。魔力の少ない獣人ごときが、我に勝てると思っているのか?」
レイナルド、キュウ、クウの連携でも負ける気はなかったというのに、それよりも劣る獣人たちが数を揃えようとたいしたことはない。
そのため、レイナルドの代わりに戦うと言われ、舐められているように思えたソフロニオは、眉間に皺を寄せて怒りの表情へと変わった。
「思わんさ……」
ソフロニオの言葉に、ブラスは聞こえない程度の大きさの声で返答する。
時間が稼げれば、レイナルドが何とかしてくれる。
その信頼があるからこそ、時間さえ稼げれば命などくれてやるという思いでいるのだ。
それは、この場にいる獣人たち皆が共通する思いで、時間稼ぎということのためだけにブラスたちは決死の覚悟でソフロニオへ向かっていったのだった。
「っと!」
上空から魔法を放ち、攻撃するケイの従魔であるケセランパサランのキュウ。
その魔法攻撃を躱す魔王のソフロニオ。
「ワウッ!!」
「チッ!」
特化しているため、キュウは魔法での戦闘しかできない。
それを補うのが、見た目柴犬の魔物のクウだ。
上空のキュウに視線を向けたソフロニオに対し、地上のクウが噛みつきにかかる。
その攻撃を、ソフロニオは後退することで回避した。
「ハー!!」
「グッ!? おのれ! 雑種のくせに面倒な……!」
キュウとクウの攻撃は、あくまでレイナルドの攻撃のための援護であり、あらかじめそこに来ると分かっていたレイナルドは、ソフロニオへ向かって刀を一閃する。
ソフロニオは武器である手の爪で防御しようとするが、僅かに間に合わない。
レイナルドの刀が振り切られ、ソフロニオの左手が斬り飛ばされた。
攻撃を受けて距離を取ったソフロニオは、痛みに腹を立ててレイナルドを睨みつけた。
『くそっ! このままでは勝てそうにない』
ソフロニオとの戦闘は、レイナルド、キュウ、クウが連携して動き、獣人たちが補助する形で進んでいた。
戦いにおいては有利に進めていると思える。
しかし、今さっき斬り飛ばした左手も、ソフロニオはすぐに再生してしまう。
その再生に魔力を使用しているようだが、たいして減っていないため、レイナルドは内心焦っていた。
父であるケイ並みに魔力を所持しているソフロニオ。
その魔力を削り切ろうとすると、レイナルドたちの方が先に魔力切れになってしまうのが分かってしまったからだ。
「レイナルド様!」
「どうした? ブラス」
ソフロニオに勝つにはどうするべきかを考えていると、援護をしてくれている獣人の1人が話しかけてきた。
ケイたち家族しかいなかった島に流れ着いた狼人族のルイスとアレシア。
その曾孫に当たるブラスと言う名の青年だ。
ルイスとアレシアの娘の1人であるドゥルセはカルロスと結婚しているため、彼はレイナルドとも親戚関係にある。
しかし、小さいとはいえこの島の王であるケイの一族とは、いくら親戚関係にあるとはいえ一線を引いている。
ルイスは、島に来た時から獣人たちのまとめ役だったため、その役割は子や孫へと受け継がれ、今は騎士として島の戦闘獣人たちを指揮を執る役割を担っている。
その彼の問いかけに、レイナルドは一旦思考をやめて耳を傾けた。
「奴の再生能力は異常です。もうあれをおこなうしかありません。」
「それは俺も考えているが……」
魔王が出現した時のために、ケイが作り出した封印魔法。
仲間を指揮する立場であるブラスにも、その魔法の存在は教えてある。
レイナルドがキュウとクウと共に戦っていて、有利に運んでいるというのになかなか倒せる気配がない。
今この場で、ソフロニオを殺すということができるという希望が見えてこない。
そのため、長期の期間封印することで弱体化させ、自然消滅させる選択を選ぶべきだとブラスは判断した。
実の所、その提案を受けたレイナルドも同じように考えていた。
ケイから教わった封印魔法で封印するぐらいしか勝機が見えない。
そうしたいのは山々だが、問題がある。
「封印の魔法陣を作り出すまで、あいつの相手をどうするべきか……」
封印の魔法を発動するためには、巨大魔法陣と大量の魔力が必要になる。
キュウとクウに任せて、時間を稼ごうにも無理がある。
自分が魔法陣を作り出すまでの間、どうするべきかレイナルドは考えていたのだ。
「その時間は私どもが作り出します!」
「しかし……」
「えぇ、大なり小なり犠牲が出るでしょう。しかし、我々はそれは覚悟しております!」
魔王が出た時のために、獣人の彼らも島のダンジョンを利用した訓練をおこなってきた。
そんな彼らもかなりの実力者になってはいるが、ソフロニオ相手に戦えるかは微妙だ。
彼らに時間稼ぎを任せれば、被害に遭う者も現れる可能性が高い。
そのため、レイナルドが躊躇いの言葉を呟こうとしたが、それを遮るようにブラスが話しかける。
その表情には決意のようなものが見え、他の獣人たちも同様の表情をしていた。
「我々の国のためです!」「言って下さい! レイナルド様!」
「みんな……」
どうやら覚悟ができていないのは自分だけだったようだ。
被害なく魔王を封じるなんて甘すぎる。
ここは自分が決断することが、国を助けることになるのだと理解した。
「……くっ!! みんな頼んだ!!」
「「「「「お任せください!!」」」」」」
ソフロニオを相手にすれば、もしかしたら死人が出るかもしれない。
それでも島にいる子や孫を救うためには覚悟をしなければならないと判断したレイナルドは、苦悶の表情でみんなに時間枷を任せ、封印の魔法陣の製作に動き出した。
「あんっ? 何逃げて……」
「ハッ!!」
「っ!?」
急に走り出し、レイナルドは人工島の樹々の中へと姿を隠した。
それを見たソフロニオは、レイナルドのことを追いかけようとするが、ブラスたちはそれをさせまいと集団で襲い掛かった。
ソフロニオは槍や剣による攻撃を難なく躱したが、ブラスたちが進路を邪魔してレイナルドを追いかけることはできなくなった。
「雑魚に用は……」
【ハッ!!】
「危ねっ!」
ブラスたちが立ち塞がり、レイナルドの姿を見失ってしまった。
レイナルドを追いかけたいソフロニオは、邪魔なブラスたちを睨みつけ、右手の爪で攻撃しようと構える。
すぐに殺してしまおうと考えていたようだが、それをキュウが魔法で阻止した。
「レイナルド様の代わりに我々が相手をする!」
「覚悟しろ!」
「狼人族の力を見せてやる!」
ブラスの言葉に、仲間の者たちも勇ましくソフロニオへと声を上げる。
エルフ王国のあるアンヘル島にいる獣人のほとんどは、狼人族と呼ばれる種族だ。
肉食の狼が祖先と言われている種族で、獣人の中でも戦闘力は高い方だ。
特に集団で戦うことが得意な彼らは、魔王を目の前にしても臆することなく武器を構えた。
「……舐めんなよ。魔力の少ない獣人ごときが、我に勝てると思っているのか?」
レイナルド、キュウ、クウの連携でも負ける気はなかったというのに、それよりも劣る獣人たちが数を揃えようとたいしたことはない。
そのため、レイナルドの代わりに戦うと言われ、舐められているように思えたソフロニオは、眉間に皺を寄せて怒りの表情へと変わった。
「思わんさ……」
ソフロニオの言葉に、ブラスは聞こえない程度の大きさの声で返答する。
時間が稼げれば、レイナルドが何とかしてくれる。
その信頼があるからこそ、時間さえ稼げれば命などくれてやるという思いでいるのだ。
それは、この場にいる獣人たち皆が共通する思いで、時間稼ぎということのためだけにブラスたちは決死の覚悟でソフロニオへ向かっていったのだった。
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