オークの子を身籠りました。

もみじ

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本編

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 それから私は王都に帰ってきた。

 坑道を通って石の階段を上り、天井に突き当たると石壁を開ける。そこは城の地下聖堂、私は石棺から這い出て石畳に倒れ込む。

 疲れた、でももう少し頑張らないと。

 ヘトヘトの体に鞭打ってよろよろ歩いていく。そして秘密の通路を通り自分の部屋の隠し扉から出てくると私はそのまま床に伏した。

「姫様!」

 帰って来るや否や、ドレスを着た女性が甲高い声を上げて駆け寄ってくる。

「いつも影武者になってくれてありがとう、今日はもういいよリーネ」

「こんな疲れ切ったお姿で何を言っているんですか?ささ、お召し物をお脱ぎください。お手伝い致します」

 そう言うとリーネは私の装備を外し始めた。怠くて肩も上がらない。生きた着せ替え人形と化した私は彼女にされるがまま服を脱がされる、そして部屋のベッドに寝かされた。

「姫様、何か御用があればこのリーネめに何なりとお申し付けください」

 彼女はメイドのリーネ、専属で私の世話をしてくれている。年齢は私の1つ下、声は私似、背は私よりちょっと低いくらい、顔と髪の色は私と全然違うけどいつも変装して私に成りすましてくれている。
 リーネにはいつも我儘を聞いてもらって本当に感謝している。

「ありがとう、でも今日はこのまま寝かせてくれない?」

 私が虚ろな目を向けるとリーネは心配そうにお辞儀をして部屋を出て行った。

 ごめんねリーネ、今日はあなたに私の冒険活劇を語って聞かせる元気も無いんだ。ああ・・・きっと今頃フィールはラルクとノブに私がスティアーナだってことをバラしちゃってるんだろうな?

 私は俯せになってフカフカの枕に顔を埋める。

 はぁ~、もう皆とは会えないや。でも仕方ないよ、あの時フィールを助けるにはこうするしかなかったんだもの。悔いはない。でもお別れを言えなかったのはちょっと心残り・・・にしても疲れた・・・

 こんなに疲れたのは生まれて初めてだ。
 私は睡魔に襲われそのまま吸い込まれるように眠ってしまう。



 翌日、私は長い金髪を結い、純白のドレスを着て見飽きた面々とお茶する。

「あの人ったらいつも政治の話ばかりするのよ?飽きないのかしら」

 ホホホホホ、と貴女達が笑う。

「ねぇスティアーナ、スティアーナはどう思って?」

「えぇ、そうね・・・」

「スティアーナ?」

 え、何?ごめん聞いてなかった。

「ごめんなさいお母様、聞いていませんでした」

「もうスティアーナったら、いつも上の空だこと。丁度男の人達の愚痴を話してたところじゃないの?」

「そうね、そうでしたね」

 私は半笑いで誤魔化す。
 今前に座っているのは私の母、名をルクレツィア・フォン=アマルティア、アマルティア王国の王妃である。髪の色は私と同じく金髪で、瞳の色は妹と同じ綺麗な緋色をしている。

「妹のロギーニャにもフィアンセが出来たことだし、スティアーナもうかうかしていたら先を越されてしまうわよ」

「ええ・・・」

 フィールの顔が頭を過ぎる。今頃何してるんだろう?私が顔を出さないもんだから心配してるのかな?

 すると年端も行かない少女が私の顔をうかがった。妹のロギーニャだ。歳は私の4つ下、あどけない顔で未だウサギのぬいぐるみを手放せない甘えん坊である。

「お姉様、そう言えば来月フィアンセのアロルド皇子が来られるんじゃありませんの?」

 げっ!?

 私は手で口元を隠し、皆に悟られないよう隣に立つリーネに小声で尋ねる。

「リーネ、そうだっけ?」

「はい、この前お話しましたよね?」

 フィールのことばかり考えてすっかり忘れていた。

 アロルドは西の大国、アークス帝国の第七皇子、そして私の婚約者である。親の決めた相手だが正直私はあの人が苦手だ、なぜならコテコテの貴族厨でキザな上にナルシスト。少しでも気に食わないことがあるとすぐ権力に訴える。
 あれはプライドの高い男だ。きっと私が放置してたもんだから怒って出向いてくるのだろう。

「あら良かったじゃないの、親睦を深めるチャンスよ。国のためにせいぜい媚びておきなさい」

「はい・・・」

 私は落ち込み気味に答えた。
 はぁ~、嫌だなぁ。


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