オークの子を身籠りました。

もみじ

文字の大きさ
27 / 31
本編

26

しおりを挟む
「ラ、ラルクさん!?私はリーネです」

 は?

 抱きしめた相手の顔を見るとそこには赤の他人がいた。

 あれ?確かにレフィの声が聞こえたような気がしたんだけど・・・腹部に激痛が走る。

「うっ!」

 ラルクは刺された腹を抑えてうずくまった。

「無理しないで下さい、また傷口が開いてしまいますよ」

 リーネはラルクの肩を掴んで彼女をそっとベッドに寝かせた。

 ラルクにはあの後の記憶がない、どうやら気を失ってしまったようである。まああれだけ出血していたのだから無理も無い、現に今だって貧血で頭がくらくらする。

 ラルクはベットに転がって天井を見上げた。

 今頃レフィはオーク達に犯されてるに違いない。そう思うと胸が張り裂けそうになる。すぐに助けに行ってやりたい、でもこの体では無理だ。悔しさで自然と奥歯に力が入る。

 リーネはそんなラルクを心配した。

「ラルクさん、まだお腹が痛むのですか?」

「ああ、痛てぇよ。思いっきりぶっ刺されたからな。それよりも何で刺したあんたがあたしの看病してんだよ?」

「デュナス王子の計らいです、あの方から全てを聞きました。私はロギーニャ様に良いように利用されていたと。騙されたとはいえラルクさんには申し訳ないことをしました。どうかこのリーネめに償わせて下さい」

「いや・・・まあ、姫をさらったあたしにも非はあるけどさ。つうかお前の声レフィに似てるな、目瞑ってたら全然分からねぇよ?」

「一応これでもスティアーナ様の影武者ですから、壁越しなら国王様も欺けます」

「きっと今頃本物のレフィはオーク共に酷い目に合わされてる、くそ!・・・こんな体じゃなければすぐにでも飛んで行って助けに行くのに」

「それでしたらご心配なく、丁度今、デュナス様がスティアーナ様の救出部隊を募っているところです。騎士と民兵を合わせた大部隊でオークの里を撃ち滅ぼしに行くと」

「本当か!?だったらあたしも志願する!」

 ラルクは再び起き上がる。

「ラルクさん!その体では無理です、大人しく寝ていて下さい」

「うっせぇ!あたしは何が何でもレフィを助けに行く、そう約束したんだ」

 ラルクはリーネの制止を振り切って部屋を飛び出した。





 今、王国は未曾有みぞうの危機に直面している。来訪していた他国の皇子、アロルドが殺された。やったのはオーク、しかしそれで相手国が引き下がる訳がない。アークス帝国は領土野心に燃える戦争大国だ、ただでさえ諸外国にいちゃもんをつけては戦争を吹っ掛けているのにその皇子が他国で死んだとあれば黙ってはいないだろう。せめてやったオークの首を差し出さねば戦争は免れない。オクタビウス王は気が気ではなかった。

「父上、お呼びでしょうか?」

「おぉ、デュナス、それで部隊の編成はどうか?」

「はい、着々と進んでおります。我が軍に加え、賞金稼ぎ、有志の民兵を加えた大部隊、例えオークと言えどこの数に押し切られては一溜りもないでしょう。残る問題はスティアーナをどうやって無傷で救い出すか」

「えぇ~い!あのアバズレ娘のことなどどうでも良い。あの黒いオークの首が欲しいのだ、でなければこの国は終わりだぞ!!」

 デュナスは小さくため息をつく。父は浅はかだ、皇子を殺したオークの首を差し出せば帝国が大人しく引き下がると思っている。まあ今の自分達にはそうする他無いのだが、それでも帝国との戦争は想定しておくべきである。だが小心者の王にはそれが出来ない、アマルティアがアークスに戦争で勝てるなんてこれっぽっちも思っていない、もっともその通りなのだが仮にも王なのだから娘を取り返して戦争にも勝つくらいの威勢は欲しいものである。

 そろそろ見限り時か、最早父に王としてこの国を引っ張っていく資格はない。そうデュナスが思うと突然、バタン!と扉が開いた。

 何事か!?

 王とデュナスが見る。

「レフィの兄ちゃんはいるか?」

 何とも不躾な輩が入って来た。

 リーネはラルクを羽交い絞めにする。

「何やってるんですかラルクさん!やめて下さい、王様の御前ですよ?」

「知るかそんなもん。あぁ~いたいた」

 ラルクはデュナスに手を振った。野心に燃えていたデュナスの頭がたちまちこんがらがる。

 王は眉間にしわを寄せて言った。

「何だ貴様は?衛兵、その無礼者をひっ捕らえよ!」

 衛兵がラルクを取り囲む。

「お待ちください父上」

「どうしたデュナス、まさか知り合いか?」

「はい、あれは私の女です」

!?」

 ラルクと王の言葉が重なる。
 待て待て待て!いつあたしが王子の女になった?とラルクは心の中で思った。そして

「お前何言ってんだ!?」

 そう言いかけるとリーネがラルクの口を塞ぐ。

 王は指を差しながら、

「お、お、お、女、女だと!?お前と言う奴は、今まで散々婚約破棄してきたくせに、またこんなどこの馬の骨とも知らない女に惚れて、これで何人目だと思っている?」

「はて、何人目でしょうか?」

 王は顔を真っ赤にして言う。

「111人目だ!恥を知れぇ!!」


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...