オークの子を身籠りました。

もみじ

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本編

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 私はルゥアの誘いに乗って彼と共にこっそり洞窟を抜け出した。幸いアルトとその他大勢のオークは狩りに出かけていて誰にも見つかることなく意外とあっさり外へ出れてしまう。
 そこは薄い霧のかかった森の中、怪鳥がさえずり、時折草木がガサガサと揺れて私の心拍を急激に上げる。一言で言えば薄気味悪い。
 どっちが北でどっちが南?昨日どの方角から来たのかも分からない。方向感覚が完全にマヒした状態で私はルゥアの後をただただついて行く。すると・・・

 グォ・・・?

 森のくまさんとバッタリ出くわした。

 デビルベア、血の涙でも流しているかのような顔の紋様が特徴で体長7mにも達する巨大モンスターだ。気性は荒くその爪は命を刈り取る形をしている。危険度Sランク、上級冒険者が束になってやっと倒せるレベルの相手である。デビルベアのつぶらな瞳に睨まれて私達はその場に固まった。

「ルゥア、絶対に目を反らしちゃだめだよ。クマを刺激しないようゆっくり、ゆっくりと後退して行こう」

「何言ってるんだいお姉ちゃん、戦うんだよ!」

 そう言ってルゥアは私に剣を押しつけた・・・て、何言ってるのこの子!戦うって私が?それおかしくない?無理無理無理!私は顔をブンブン横に振る。

「ビビってる場合じゃないよ、それでも騎士かい?」

「都合の良い時だけ騎士扱いするな!あなたが戦いなさいよ、男でしょ!?」

「悪いけど僕は知略を巡らせるのが専門で戦闘は領分じゃないんだ」

 豚のくせに何が知略専門だ!妊婦をクマと戦わせるなんて一体どういう神経してるのよ?豚なら豚らしく「僕が奴の餌になってるうちに逃げるんだ!」くらいのことは言いなさいよ。そしたらちょっとは惚れてあげるのに。
 
 こうしている間にもデビルベアの顔がどんどん不機嫌になっていく。やばい、もうクマさんはブチ切れ寸前だ。


 ガオオオオオッ!!!


 と、けたたましい雄叫びが上がり、私とルゥアは二人揃って「うわぁぁぁぁ!!!」と大きな悲鳴を上げた。

 ドカッ!

 鈍い音が鳴る。巨大な棍棒がデビルベアの頭蓋を砕きその巨体が地面に倒れる。これは天の助けか?本当は見つかってはならないのにこの時ばかりはルゥアと手を合わせて神に感謝する。

「アルトォォォ~!(泣」

「こんなところで何をしているんだスティアーナ?」

 逃げようとしたなんて口が裂けても言えない。

「えっと、その・・・散歩、そう散歩してたの!」

 隣でルゥアがウンウン頷く。

「おいルゥア、妊婦に無茶させるなよ。もし今生まれたらどうする気だ?」

 妊娠してまだ一ヶ月、いくらなんでもそれはない。つうかアルトどんだけ妊婦にうといのよ!?

「安心して兄さん、人間は妊娠してから大体9ヵ月前後で出産する、今この場で産むってことはないと思うよ」

「ところで二人とも、仮に私が出産したとして誰が赤ん坊を取り上げるつもり?」

「そりゃルゥアがやってくれるに決まってるだろ」

「ちょっと待って兄さん、いくら僕が天才でも流石に人間の赤ん坊の介助は出来ないよ?そもそもやったことないし」

「待て待て待て、俺様はお前を当てにしてたんだぞ、今更それはないんじゃないか?」

 待て待て待て、それはこっちの台詞だ!ただでさえ気持ちが不安定なのに、さらに不安にさせるようなことぶっこまないでよ!!何?あなた達エッチは上手いのにその後のことはド素人か??

「とにかく戻るぞスティアーナ、この森は妊婦には危険過ぎる」

 戻ってたまるか!今、私は剣を持っている、こんな好機はない。私はすかさずルゥアの後ろに回り込み剣をその喉笛に突きつけた。

「動くな!一歩でも動いたらこの子オークの首をかっ切る!」

 なんか悪役っぽい?上等!このままあの薄暗い洞窟で獣同然に赤ん坊を産むくらいなら何だってしてやる!!


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