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プロローグ 静かな日常の変化
入店?
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食堂を出ると、春の暖かな日差しがキャンパスに降り注いでいた。
昼休みの時間帯は、食堂の外にも学生たちが集まり、それぞれの時間を過ごしている。芝生の上でお弁当を広げるグループ、ベンチで談笑するカップル、スマホを見つめながら一人で食事を済ませる学生――どの風景も、見慣れた大学の日常だった。
僕は特に目的もなく歩きながら、ふと、さっき食堂の窓から見えたカフェのことを思い出した。
商店街の一角に、あんな看板があっただろうか?
考えてみれば、大学へ通い始めて二年が経つのに、キャンパスの周りの店をじっくり見て回ったことはほとんどなかった。食事は大学の食堂か、近くのチェーン店で済ませることが多いし、カフェに入る習慣もない。
――新しくできた店なのかもしれない。
そう思いながら、何気なく商店街の方向へ足を向けた。
大学の敷地を出て、駅へと続く通りを歩く。
通学路でもあるこの道は、昼間でもそれなりに人通りがある。
飲食店が並び、小さな雑貨屋や古本屋も点在しているが、普段は特に気にすることもなく通り過ぎてしまう場所だった。
少し歩くと、見覚えのないカフェの看板が目に入った。
「Cafe Soleil(カフェ・ソレイユ)」
白い木製の看板に、シンプルな筆記体で店名が書かれている。その下には、小さく「Hand Drip Coffee & Homemade Sweets」の文字が添えられていた。
確かに、こんな店は以前はなかった気がする。
けれど、新しい店にしては妙に馴染んでいるような気もした。
ガラス張りの扉の向こうには、落ち着いた雰囲気の店内が広がっている。木のテーブルと椅子が並び、店の奥にはカウンター席もあるようだった。観葉植物がさりげなく配置され、暖かい色の照明が柔らかく光を灯している。
扉には「OPEN」のプレートがかかっている。
僕はしばらく立ち止まり、店の様子を眺めていた。
――入るべきか、やめるべきか。
普段の僕なら、特に気にせず通り過ぎていたはずだ。
わざわざ一人でカフェに入ることもないし、そもそもコーヒーに詳しいわけでもない。
けれど、今日はなぜか足が止まっていた。
何かに引き寄せられるような感覚。
店の中を見ると、カウンターの向こうで店員らしき女性が動いているのが見えた。
ふと、彼女が顔を上げ、僕と目が合った。
一瞬、時間が止まったような気がした。
彼女は、驚いたような表情を浮かべた後、にこりと微笑んだ。
それは、どこか懐かしさを感じさせる笑顔だった。
僕は、扉に手をかけた。
次の瞬間、カフェの扉が、静かに開いた。
昼休みの時間帯は、食堂の外にも学生たちが集まり、それぞれの時間を過ごしている。芝生の上でお弁当を広げるグループ、ベンチで談笑するカップル、スマホを見つめながら一人で食事を済ませる学生――どの風景も、見慣れた大学の日常だった。
僕は特に目的もなく歩きながら、ふと、さっき食堂の窓から見えたカフェのことを思い出した。
商店街の一角に、あんな看板があっただろうか?
考えてみれば、大学へ通い始めて二年が経つのに、キャンパスの周りの店をじっくり見て回ったことはほとんどなかった。食事は大学の食堂か、近くのチェーン店で済ませることが多いし、カフェに入る習慣もない。
――新しくできた店なのかもしれない。
そう思いながら、何気なく商店街の方向へ足を向けた。
大学の敷地を出て、駅へと続く通りを歩く。
通学路でもあるこの道は、昼間でもそれなりに人通りがある。
飲食店が並び、小さな雑貨屋や古本屋も点在しているが、普段は特に気にすることもなく通り過ぎてしまう場所だった。
少し歩くと、見覚えのないカフェの看板が目に入った。
「Cafe Soleil(カフェ・ソレイユ)」
白い木製の看板に、シンプルな筆記体で店名が書かれている。その下には、小さく「Hand Drip Coffee & Homemade Sweets」の文字が添えられていた。
確かに、こんな店は以前はなかった気がする。
けれど、新しい店にしては妙に馴染んでいるような気もした。
ガラス張りの扉の向こうには、落ち着いた雰囲気の店内が広がっている。木のテーブルと椅子が並び、店の奥にはカウンター席もあるようだった。観葉植物がさりげなく配置され、暖かい色の照明が柔らかく光を灯している。
扉には「OPEN」のプレートがかかっている。
僕はしばらく立ち止まり、店の様子を眺めていた。
――入るべきか、やめるべきか。
普段の僕なら、特に気にせず通り過ぎていたはずだ。
わざわざ一人でカフェに入ることもないし、そもそもコーヒーに詳しいわけでもない。
けれど、今日はなぜか足が止まっていた。
何かに引き寄せられるような感覚。
店の中を見ると、カウンターの向こうで店員らしき女性が動いているのが見えた。
ふと、彼女が顔を上げ、僕と目が合った。
一瞬、時間が止まったような気がした。
彼女は、驚いたような表情を浮かべた後、にこりと微笑んだ。
それは、どこか懐かしさを感じさせる笑顔だった。
僕は、扉に手をかけた。
次の瞬間、カフェの扉が、静かに開いた。
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