メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

“風”はルテティアへ・・・

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 日本を出立してから、実に12時間と25分。

 途中でただの一度も給油を行うこともせずに、蒼太達を乗せたノエルのプライベート・ジェットはようやくにして、ルテティアの郊外にある“国際空港”へと降り立った。

 蒼太もメリアリアもノエルもまた、この瞬間を心待ちにしていた、確かに快適なフライトではあったモノのやはり長時間、ずっと座りっ放しと言うのはそれはそれで些か草臥れて果ててしまう所があって、途中で何度かトイレに立ったり機内を軽く散策したりしながらも、身体をちょっとずつちょっとずつ動かすようにしていたのだ。

「・・・・・」

「・・・・・っ!!」

「はい、到着うぅぅ~っ、と・・・!!」

 プライベートジェットの出入り口を開けられる直前からもう、蒼太達は気を張っていた、下手をすればタラップを降りた瞬間に襲われるかも知れないし、それどころか顔を出した瞬間に狙撃を受けるかも知れないからだ。

「・・・・・」

「・・・・・」

(今のところ、どうやら安全なようだな・・・)

(てっきり待ち構えられているか、とも思っていたけれども・・・。相手はどうやら、この近辺にはいないみたいね・・・)

 だからとは言えども決して油断は出来ないモノの、それでも一頻り、外の様子を伺っていた蒼太とメリアリアはそれでも、取り敢えずの安全を確認した上で、ようやくにして出入り口から顔を出してはタラップを降り始めていった。

「着いたね、メリー・・・」

「うん・・・!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「“ルテティア”か・・・」

 入国手続きを終えてゲートを潜り、ジェット所有者であるノエルの窓口におけるやり取りを待つ間に蒼太がポツリと呟いた、“色々な事が、あったなぁ!!”とそう告げて。

「いつか、必ず帰って来ようと思ってはいたけれど・・・。それがまさかこんなにも、早くなるとは思わなかったよ」

「・・・・・」

「でもさメリー、本当はね?」

「・・・・・?」

 暫く二人で沈黙していた後で夫から掛けられたその言葉に、思わずキョトンとなる妻(メリアリア)に対して、蒼太が尚も語り続けた、“もっとゆっくりとしていたかったんだ”と、“君と一緒に”とそう告げて。

「だから、帰ってこられた事は、勿論とても嬉しいんだけれども・・・。同時にちょっと残念かな?」

「・・・私も!!」

 それを受けてメリアリアもまた、ちょっぴり残念そうに微笑んでは、その右手をソッと、夫の頬へと寄り添わせる。

「私もね、もっとあなたと二人っきりでいたかったわ。正直に言うとね?楽しかったの、毎日が新婚生活みたいで。だから・・・!!」

「・・・・・っ!!」

 “そうかっ!!”と告げると蒼太は穏やかな笑みを浮かべて妻を抱き寄せ、そしてそのままー。

 その唇にソッと唇を重ね合わせては一呼吸程おいた後でゆっくりとそれを離すモノの、一方で。

「・・・・・」

「・・・・・っ!!」

 そんな夫からのバードキスに真正面から応えつつも、メリアリアはそれでも“外じゃなければ、良かったのに”と少しもの悲しそうな顔を見せるが正直に言って彼女は早く蒼太に抱き締めて欲しかった。

 あの逞しい腕で自分をしっかりと抱擁し、包み込んでくれた上で、その唇をがむしゃらなまでに、強く激しく奪いに来て欲しかったのだ。

 ・・・いつも彼が、二人っきりの時にやってくれているモノみたいに。

 しかし。

(でも人前だと流石に恥ずかしいし・・・。それに気が散っちゃって、キスに集中出来ないわ。第一誰に見られているのか解らないから危ないしね!!)

 そう思い直してメリアリアはまた、一層の警戒をし始めるが兎にも角にも先ずはセイレーンの本部へと、向かわなくてはならなかった。

 そこに行って皆に今まで自分達が体験して来た物事等を、“意識共有魔法”を用いて“感覚として”知ってもらい、“擬似的に”理解してもらうのであるがこの手の魔法はまず間違いなく、どこの組織も開発、運用しているものであるらしいので恐らくは、此方が本部ビルへと着いた段階でどう言う事になるのかを、“レウルーラ”は知っている筈であった。

(確実に、とは言わないけれども・・・。そうすればもう、暫くの間はしつこく狙われずに済むかしら・・・?)

「本部ビルについた後で、キチンと皆に“意識共有魔法”を使う事が出来れば、恐らくは、だけども一旦はあの連中も、手を引くんじゃないかな・・・!!」

 するとそんな彼女の心中を見透かしたかのように蒼太もまた、そう言葉を掛けて来てくれるがそんな夫に頷くとメリアリアは二人で共同で周囲にくまなく気を張り巡らせ、何が起きても良いようにと身構え続けていたのである。

「おっ待たせぇ~(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」

 と、そこへ事態を全く把握していないかのようなテンションと風呈で、いつものノエルが現れた、キャリーバッグを片手で引っ張ったままで、脳天気な笑顔を浮かべている。

「ごめんさいねぇ~、ちょっとお待たせしちゃったかしら~(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)」

「・・・いいえ。あの、まあ、なんと言うか」

「変わりが無さそうで、何よりだわ。ノエル・・・!!」

「あははははは~っ!!!なんたって私は天下無敵のノエル様だもんねーっ。余程の事が無い限りかはこのテンションは変わらないのよ~っ(≧∇≦)b(≧∇≦)b(≧∇≦)b」

「・・・あ、ああ。そう」

「良かったわね、ノエル・・・!!」

 こんな緊迫した状態であるにも関わらずに、尚も明るく捲し立てて来るこの年上ハーフの天然美女に、二人は若干ドン引きしつつもそれでも何とかそう応えると、ノエルを連れて急いでその場を後にした。

 先ずは空港でタクシーを捕まえてから本部ビルの近くである、“ルテティア第5環状区画”へと赴かなくてはならなかったが、その前に一先ず、メリアリアのスマートフォンからオリヴィアのそれへと向けて連絡を入れる事にした、“自分達が今、ルテティアにいる事”、“これからタクシーに乗り込む事”、“本部周辺の警戒等を厳重にして欲しい事”等を。

「そうか!!」

 “もう着いたのか!!”と電話口の向こう側では彼女にしては珍しく、オリヴィアがやや興奮気味な口調でそう告げるが、本人がそこまで感情を露わにするのはそう滅多にある事では決して無くて、どうやら相当なまでに喜んでくれているのが伝わって来ていた。

「了解した、猫の子一匹通さん!!」

 そう言うとオリヴィアは通信を切るモノのその直後に。

 蒼太達はタクシーに乗り込むと、凡そ1時間近く掛けてルテティアの政治経済中心地区である“第5環状区画”へと到達した。

 その出入り口に当たる“ルテティア国営鉄道”のターミナル駅、“ガリア帝国ルテティア駅”のタクシー降り場でお代を払うと乗車して来た車を降りるとそこにはー。

「・・・・・っ!!」

「ああ・・・っ!!」

「蒼太さんっ!!」

「蒼太っ!!」

 なんとオリヴィアやエマ、クレモンスを始めとするセイレーンの面々や、かつての幼馴染達が数名が顔を揃えて待っていてくれたのだ。

「メリアリアッ!!」

「蒼太・・・っ!!」

「蒼太っ!!」

「うおおぉぉぉいっ、ちょっと。マジかよっ!?」

 その場にいた全員が、信じられないモノをみるかのような、それでいてとても嬉しそうな笑みを浮かべ始める。

 特に蒼太には感慨深いモノがあったがどの顔も懐かしくてよく見てみると確かに、子供の頃の雰囲気がそのまま残ってはいた。

 しかし。

「みんな・・・っ!!」

「ただいま、みんな・・・っ!!」

「うおぉぉぉい、蒼太っ!!」

「蒼太じゃんかっ!!お前、マジで生きてたんか!?」

「本気でビックリもんなんだけど!!ってかそんな話、聞いた事ねーよ、マジで!!」

「メリアリアッ、よく無事で!!」

「心配してたんだぞ!?連絡入れろよっ!!」

「って言うかあの女の子、ガチのマジであんただったんだね!?驚いちゃった!!」

「あはははっ。ごめんね、ごめんなさい、みんなっ!!!」

「凄い懐かしいなぁっ、アダン、レオン、ヒューゴッ!!みんな凄く強そうだ、それに凄く立派になった!!」

 久方振りの旧友達、戦友達との邂逅に、警戒しつつも思わず相好を崩す二人であったが“はて?”と蒼太もメリアリアも思った、どれだけ目を凝らしてみてもあと、この場にいるべき二人の姿が見当たらない、即ちアンリとアウロラである。

「アンリとアウロラは、如何したんですか?」

「蒼太が生きている事を知って、あんなに喜んでいたのに・・・!!」

 と二人は当たり前の疑問をオリヴィアに投げ掛けると彼女は流石に申し訳無さそうに些か身を屈めて見せた。

「いや、済まないね。何しろ君達がこんなに早くに帰還してくれるとは思っていなかったモノだから、彼女達には別件で任務を与えてしまっていたんだ。何故ならばあの時点でもう、飛行場等には見張りが張り付いてしまっているだろうし・・・。となれば後は、船でしか帰還のしようがないと、考えるだろうと踏んだのでね」

「・・・・・」

「任務・・・?」

 メリアリアのその言葉にオリヴィアが頷くモノの彼女が言う所によるとアウロラは実家絡みのいざこざがあり、何でも“フォンティーヌ家の根幹に関わる大切な家宝の宝玉を盗まれてしまい、それを取り返して欲しい”との依頼が極秘裏に、上部組織である“ミラベル”を通して持ち込まれたそうなのである。

 事が事なのでとてもの事“余人には任せられない”と言うフォンティーヌ家当主であるエリオットたっての要望があり、その為一族である“アウロラ”へと白羽の矢が立った、と言う訳であった。

「そう言う訳で彼女は今、実家に帰っている所だ。・・・“親衛隊”を引き連れてな」

「・・・・・?」

「“親衛隊”・・・?」

 その言葉を聞かされても意味が解らず蒼太もメリアリアも思わず首を傾げるモノの、オリヴィアからの説明によれば、これは半年ほど前から運用が開始されたシステムであり基本、1人の女王に対して6人の人格、実力共に非常なまでに高潔、高レベルな女性隊員が付き従う事になっていた。

「1人に付き6人と言う事は・・・」

「48人ね?親衛隊の女の子達だけで・・・」

 蒼太の言葉にメリアリアが応えるモノのまさしくその通りであり、そこに現在いる8名からなる“女王位”を加えた“56人”が事実上のセイレーンにおける、“基幹戦力”となる訳であった。

「彼女達全員で、その“奪われてしまった家宝”の行方を追っている・・・。期限は1ヶ月間。それでもし、どうにもならないようであれば応援がてらに誰かを行かせる事になるが・・・」

「私だろう?基本的には」

「貴女は・・・っ!?」

「クレモンス・・・っ!!」

 ズイッと前に出て来た身長170cm前後の女性の姿に蒼太達が若干の驚きを持って応えるモノの、黒に近いブラウンのショートボブと同色の、焦げ茶色の瞳に面持ちはややきつめの美人顔。

 無地の白Tにシンプルなデニムパンツを履きこなしているまさに、“ザ・春のパリジェンヌ”な出で立ちの一人のレディの姿があった。

「多分、私が行くことになると思うよ?そんなに時間が経過した後の“時空粒子”の変動をキャッチ、分析出来るのって多分、私だけだろうし・・・。それにアウロラとは1年に3、4回程度のペースだったけれども任務で組んだ事もあるからね。そっち方面でも連携はしやすいだろう・・・」

「ふむ・・・」

 そう頷くとオリヴィアは少し、考え込むような素振りを見せた、どうやら彼女の中でもまだ裁定は決まってはいないらしくて些か迷っているような感覚を受ける。

「アウロラの事もそうですが・・・」

 蒼太が続けた、“アンリは如何したんですか?”と、するとオリヴィアが、また説明をしてくれたモノの、此方も実家絡みの案件を抱えているらしくて2週間は帰って来ない、との事だったのだ。

「詳しくは、言えないのだが・・・。なんでも“遠縁に当たる男”と言うのが会いに来たらしくてな、その者の素性を確認する任務を与えているのだ」

「・・・・・?」

「そんなの別に、私達の出る程のモノでは・・・」

「いいや、それがな」

 とオリヴィアが付け加えるモノのこの男、どうにも発音に“エイジャックス訛り”があると言うのだ。

「ただでさえ、“M16”や“レウルーラ”の動きが活発化している時期だ。用心にしくはない・・・。ましてや彼の実家は“ノルマンディー公”の血を引いている、ここまで話せば解るだろう?」

「・・・・・」

「なるほど・・・」

 二人が思わず頷くモノの要するにかつての家を追われたモノがエイジャックスにおいて保護されていた、その子孫が送り返されて来たが勿論、ただという訳では無く、そこには何某かの目論みなり、狙いがあって然るべきだろう、とオリヴィア達“女王位”達や“ミラベル上層部”は踏んだのである。

「それで彼を・・・?」

「うむ、こちらも本人たっての希望でね。“実家の中を不用意に嗅ぎ回されたくない”のだそうだ・・・」

「・・・・・」

「なるほどね・・・」

 オリヴィアからの話を聞いて、二人は思わず納得してしまうモノの、それに加えて蒼太は思わず“アイツらしいな”と心の中で笑ってしまっていた、小さな頃から悪戯っ子であり色々と面倒事を引き起こしては教師陣からよく注意を受けている少年だった彼はその実、本当に人が困るような事だけは決して言ったりやったりしなかったし、あれで以外と情に深い所もあった彼はだから、あんまり居心地は良いものでは無かったにせよそれでも、実家に対して義理立てして見せたのだろう、多分。

(最初で最後の恩返し、そんな所だろう?アンリ・・・)

 心の中で今は遠方の空の下、任務に励む友にそう声を掛けると何処かでアンリがフッと笑った気がした。

「まあ、二人の事はおいておいて、だ。兎にも角にもよく無事で、よくこれ程早くに帰って来てくれた!!早速聞かせてくれ、君達の話を・・・」

「はい、オリヴィア!!・・・えーと」

「その前に、ちょっと紹介しなくちゃならない人がいるのよね・・・」

 そう言うと二人は後ろを振り返るが、するとそこにはメリアリアよりもやや背の高い、ゆるふわウェーブのピンク髪ロングヘアをした、優しさと人懐っこさとに満ち溢れていた美人顔の女性が立っていた。

「あはははは~、こんちには~っ(*^▽^*)(*^▽^*)(*^▽^*)」

「・・・・・」

「・・・以前、報告と言うか、相談に乗っていただいたと思うんですけど・・・。その中にあった“ミネオラ・ノエル・キサラギ”です」

「彼女は凄い才媛なのよ!?こう見えても7ヶ国語はペラペラに話すし、それに“TOEIC”は938点、“TOEFL”に至っては120点満点。その上“S情報セキュリティCスペシャリスト”の資格まで持っているの!!」

「・・・・・!!」

「ほう・・・?」

 とそれを聞いてエマやクレモンス達から思わず感嘆の声が漏れるが、すると外国語や計算、パソコン関係の電子機器には強い筈であり、ある意味自分達にとっては喉から手が出る程に、欲しくて欲しくて堪らない存在である、と言う事になる。

 挙げ句に私生児とは言えどもルクセンブルク大公家の血を引いていると言う、その辺りも確かに、オリヴィアを始めとする“セイレーン”、及び“ミラベル上層部”から保護するべき対象と映っていてもおかしくないが、果たして。

「御紹介いただきまして、大変光栄で御座います、プリンセス・ミネオラ。私、魔法技剣技殊銃士隊“セイレーン”の総隊長を務めさせていただいております“オリヴィア・フェデラー”と申します、どうぞ以後お見知り置きを・・・」

「ええ、こちらこそ。よろしくねぇ~、オリヴィア~(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」

「・・・・・っ!?」

「・・・・・っ!!」

 と、この真面目な堅物が服を着て歩いているような存在であるオリヴィアを目の前にしても、些かも動じないいつもの姿そのもののノエルを目の当たりにして蒼太もメリアリアも流石に面食らってしまっていた、“頼むから大人しく真面目にしてくれ”と、心の底から希(こいねが)っていた二人であったがそんな彼等の緊張と忍耐は、次のオリヴィアの言葉でようやく正式に報われる事となった。

「今朝にまで及ぶ“上層部朝議”の結果、ガリア帝国国防部並びに国家高等秘密警察組織“ミラベル”、及び魔法剣技特殊銃士隊“セイレーン”は貴女の身柄を保護する事に決定致しました」

「・・・・・っ!?」

(や、やった。やったのか!?)

「・・・・・っ!!」

(よ、良かったあぁぁぁ~・・・っ!!)

「あははは~、ありがとー。オリヴィア、今後ともヨロシクねぇ~っ(≧∇≦)b(≧∇≦)b(≧∇≦)b」

「おめでとう、ノエルさんっ!!」

「良かったわね、本当に!!」

 事の成り行きをハラハラしながら見守っていた蒼太とメリアリアはそう言ってノエルに心からの祝福を送った、正直に言って断られたらどうしようと思っていた、これでもノエルは友達だし、色々と世話になった身でもある、もしそういう事態にでもなれば、悲しすぎて目も当てられない状況になっていただろう。

「ただし、プリンセス」

 とオリヴィアが付け加えて来たがそれによると“保護をするのは今日から数えて向こう3年の間でありそれ以降は此方は何も関与しない事”、“その間にこの国から一歩でも外に出たなら被保護者としての資格を無くす事”、“喋ってもらえる範囲で御自身の事を話してもらう事”。

「以上、この3点は守っていただきます。宜しいですか?」

「はーい、全然いいでーす。・・・でもオリヴィア。私、あの・・・」

「・・・・・?」

「言ったと思うけれども生まれが特殊なんだ~、だからあの国の影の部分とかに関しては、何にも知らないのよ?それでも良いの?」

「構いません」

 オリヴィアはキッパリと言い切った、“知っている事を可能な範囲で教えて下さればそれでいい”とそう告げて。

「・・・例えば。高度に暗号化されている筈の我々の通信をどうやって傍受し、解析したのか、とかね」

「・・・・・」

(ははあ、成る程ね・・・!!)

 その話を聞いた時に、ノエルはようやく合点が行くと同時にホッとしていた、要するにオリヴィア達は“秘密保持”に関する危機感を強めており、それについての質問をしたいのだろうと踏んだのである。

 だから。

「私は別に、構わないわ」

 ノエルは安堵の溜息をつくと同時に大きく頷いて見せた、“それくらいで構わないのならば、幾らでも話してあげる”とそう言って。

「・・・決まりだな」

 ノエルからの回答に、満足したような表情で頷くと、オリヴィアは“では姫、セイレーンにご案内致します”とそう告げて、先頭に立って歩き始めた。

 その後を仲間達は、真ん中に蒼太とメリアリア、そしてノエルを置いた形で周囲を警戒しつつ、本部ビルへと向けてやや足早に歩を進めて行くモノの、ここからそこまでは、そう遠い距離では無くて、精々、子供の足でも10分掛かるか、掛からないかだ、このペースで行けば5分と掛からずに到達する事が出来るだろう。

「君達にも、明日から早速任務に復帰してもらう。そのつもりでいてくれたまえ」

「了解です、オリヴィア」

「解っているわ・・・」

 “氷炎の大騎士”からのその言葉に良い意味で緊張していた蒼太とメリアリアは思わず、更に身が引き締まる思いがした。

「それから三人の宿舎だがな。姫様には本部ビルにある、“貴賓室”を使っていただくことにして。二人の部屋ももう今日から入室出来る事になっている、報告が終わったなら今日はもう、帰って良いから二人とも後は各々の部屋で休みたまえ。ちなみに規則は覚えているな?」

「承知していますけど、オリヴィア・・・」

「少し、お話したい事があるんだけれども・・・。良いかしら?」

「・・・・・?なんだ、構わんぞ。ただ申し訳ないのだけれども後にしてくれないか?取り敢えず今はまずは、本部に着いて君達からの報告を聞きたいのでな」

「了解しました!!」

「解ったわ、オリヴィア!!」

 そう応えると、周辺の空間へと向けて神経を張り巡らせながらも二人は目と目を合わせてニッコリと微笑み合った、これでようやく本当の夫婦になる為の、第一歩が踏み出す事が出来る。

 後は時期を見て言うべき人に今回の“婚約”の件を告げなくてはならないのだが、当然、まずは直属の上司でもあり先達でもあるオリヴィアに報告を入れなければならない。

 彼女の事だから、そうすれば後は各種手続きに関する事を教えてくれる筈である、それに則って役所に提出するべき書類を提出し、受理してもらわなくてはならなかった。
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