メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

メリアリアとアウロラとオリヴィアと

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 魔法剣技特殊銃士隊“セイレーン”は国家高等秘密警察組織“ミラベル”の下部組織に位置しており原則として将来的に“ミラベル”へと入隊すべき人材を発掘、育成する事を目的として設立されていた“修練団体”としての顔も合わせ持っていた。

 その為、原則としては24時間体制での稼働が義務づけられており、特に大学生以上になると週一回の割合で夜勤等もシフトに上がってくる仕組みとなっていたのだが、そんな中においてもとりわけ、最高峰の存在である“女王位達”の任務、役割と言うものは、他のどの部署の人間達よりも苛烈かつ過酷を極めていた、毎週火曜日に催される“女王会議”を初めとして連日連夜に渡る事もある“S級任務”への参加は極々当たり前の事であり、それに加えて一旦、これに選ばれた場合には例えどんなに幼かったとしても、自身を含む親族等の“冠婚葬祭”や怪我や病気等による“医療的休養”以外を除いては必ず、いずれの時間帯においても常に突発的に招集の掛かる可能性がある“非常事態体制令旨”に応じなければならない等とてもの事、満足に気の休まる暇(いとま)等、存在してはいなかったのである。

 蒼太達がガリアに帰国して来た時もだから、そのご多分に漏れずにオリヴィア達“クイーンズ・カウンシル”は機能し続けていた訳であって、現地時間で20時を過ぎていたにも関わらずに迅速に人員を招集すると同時に蒼太とメリアリアの護衛をも、完璧に熟してみせたのだ。

 だがしかし。

 そんな一騎当千かつ、不屈の闘志とド根性とに支えられている彼等であったが肝心要の味方はと言うと、こちらは正直に言ってしまえばあまり誇れたモノでは決して無くて、例えば熱い使命感を抱いたまま、無事にミラベルへと昇格入隊を果たした連中がその後どうなるのか、と言えば本当に憂国の思いがある面々は最前線に飛ばされては果てなき戦いの渦中に巻き込まれ、最悪命を落とすケースが後を絶たずに続いていた、中央に居残る事が出来るのは戦傷等で体の自由が利かなくなった者を除いては、その大半がやる気の無い怠惰で無力な凡人か、権力争いに明け暮れるだけの場違いな屑ばかりであった。

 勿論、中には高潔な人格と立派な能力を誇っている者もいるにはいたのであるモノの、そんな得難い人材と言うのは全体の三割にも満たないごく少数派でしかなかったから、セイレーンが、即ちオリヴィア達が決死の活動を行って国を支えようとしても味方がちっとも動いてくれずに逆に足を引っ張られる事すらあったのであって、そんな事例の一つに今回の“貴族弾劾裁判”の一種である“特別解明審査会”の開催申請却下が新たに加わる事となった。

 結局。

 エリオットの決意と行動とは、単なる徒労に終わる事となった、やはり如何に手続きが簡単で最も手軽なモノだとは言えども、“証拠が無いのでは話にならない”と、手続きに行ったかどでで突っぱねられてしまったのであり、結果としてヴィクトーの拘束は失敗に終わってしまい、蒼太達セイレーンは別の手を打たざるを得ない状況下へと、追いやられてしまったのである。

「こちら蒼太、オリヴィア聞こえますか?」

「ザー、ザッ、ザザッ。・・・こえるぞ、聞こえるぞ。蒼太、配置には着いたか?」

「はいオリヴィア。こちらは抜かりなく!!」

「良いか?出立する直前を狙え、一発必中だぞ?外したならもう、チャンスは無いと思え!!」

「了解です、メリーッ!!」

「心得てるわ!!」

 夫からの問い掛けに妻(メリアリア)が応えてみせるが彼女達は今、ルテティアの第4環状区画東側にある“ヴィクトー・ヤニス・ド・フォンティーヌ”邸の出入り口、その真ん前に建っている5階建てアパートメントの屋根裏部屋に陣取っていた。

 ここからは邸内の様子が一望できて見張るには絶好のポジションであり、二人が与えられた任務を遂行する為には最も適している場所と言えたが“それ”と言うのは事実上の“最終非常手段”であって、先ずは当日、メリアリアと蒼太による狙撃を行い、彼の乗り込んだ乗用車のタイヤ及びその動力伝達部を破壊、車両が完全に停止した所で別働隊として待機しているメリアリアの親衛隊の者達が“事故を起こした当事者”として直ちに身柄を確保する段取りとなっていた。

 ここまで来るのは本当に大変な作業の連続だった、帰還して次の日には早速の活動再開と相成った蒼太とメリアリアとに先ずは急いで辞令を渡すと二人を今現在、潜入している場所である、ヴィクトー邸の隅々までをも監視する事の出来るアパートメントの屋上部屋へと配置させると同時にアウロラにも一度帰還してもらってそのまま、彼女には親衛隊の内の数名を“友人”として伴った状態でわざと今回、容疑の掛かっている叔父の元へと赴いてもらったのだ。

「近くにまで用事がありましたもので、叔父様にご挨拶に伺わせていただきました。ご機嫌よう・・・」

「やあ、アウロラ!!良く来てくれたね・・・」

 そう言って笑顔で姪っ子を迎え入れたヴィクトーだったが明らかに動揺していたのをアウロラは見逃さなかった、それと同時に。

「・・・・・っ!?」

(この感覚は・・・っ!!)

 邸宅内の何処かしらからほんの僅かに、あの家の地下の祭壇で感じた宝玉の気配を察知する事の出来た彼女はだから、今目の前にいる叔父こそが“ガイアの青石”を盗み出した張本人であると確信するモノの、如何せん現時点では証拠も何も無い上に、石の詳しい在処すらも、全く解ってはいなかったのである。

「何か解っても絶対に手を出すんじゃ無いぞ?一人で突っ走るな。ただ彼が石を持っているかどうか、また邸宅の警備システムはどうなっているのか、乗用車に細工が施されていないかどうかだけ、確認してくれればそれでいい!!」

 それが今回、オリヴィアから彼女へと厳命されていた指令でありその能力や姪っ子としての立場を考えると確かにこれは、アウロラ本人にしか成し得ない任務であった。

「叔父様はお紅茶も嗜まわれる、と聞きましたけれど・・・。これは何という品種なのですか?」

「ああ、これはね!!“ティー・フォルテ”と言うブランドなんだ、まだ最近出来たばかりのブランドなんだが、品質と味は確かだ、この私が保証する!!」

「あら、それは頼もしいですわね・・・」

 アウロラはそう言って更に二口、三口と紅茶を啜るがその仕草は流石に上品かつ流麗であって、流石に礼儀正しい見事な令嬢そのものであった。

「そう言えば叔父様、昔は良くお車に乗せて下さいましたわよね?色々な場所へと連れて行っていただきましたけれども、あのお車は今も健在なのですか?」

「あ、ああっ!!いや、あれはな。何分古くなってしまったから、もう買い換えたんだ。今はベンツに乗っている!!」

「あの・・・。もしよろしければ、一度拝見させていただいてもよろしいでしょうか・・・?」

「・・・?あ、ああ。別にそれくらいなら構わないよ、車庫に案内してあげよう!!」

 他愛の無い世間話に織り交ぜる形でアウロラが叔父に“車を見たい”とせがんでみた所、ヴィクトーはアッサリと彼女を先導しては邸宅内部に特別に設えてある車庫に向かった。

 正直に言って最初、アウロラを見た時にヴィクトーは内心でヒヤヒヤしていたのである、“まさか兄にバレたのではないか”と気が気では無かったのであるモノの、話を聞いている内に姪っ子が本当に挨拶の為だけに来たと信じてすっかり油断してしまっていたのだ。

 一方で。

 アウロラは何気ない風を装いながらも、その類い稀なる空間認識能力と魔法感知能力とで瞬く間に屋敷の警備システムを把握すると同時に案内してもらった車庫内においても油断無く車を見渡しては、特に何の防御も施されていない事を確認する。

(乗用車やタイヤには・・・。“対魔法装甲”や“特殊塗料”等は施されていないようですわね、これならばやりようはありますわ!!)

 それだけ解るとアウロラは、何食わぬ呈を装いつつも応接室へと戻っては、出て来た紅茶等を口にしながら楽しい団欒の一時を過ごした。

「どうも御馳走様でしたわ、叔父様。お紅茶、大変美味しゅう御座いました」

「いやいや良いんだよ、水くさいな。お前は可愛い姪っ子だ、またいつでも来るといいさ!!」

 帰路に就く(振りをした)アウロラを邸宅の門まで見送ると、ヴィクトーは笑顔で別れを告げるが、彼の姿が見えなくなると直ぐさまアウロラはオリヴィアに連絡を入れて事の次第を報告した。

「オリヴィア、青石の存在を確認。確かにヴィクトー邸にあると思われます。また警備システムも把握致しました、本部に帰り次第、報告します。それと車両には特にこれと言って、変わった所はありませんでしたわ!!」

「良くやってくれた、アウロラ。早速エリオット伯爵にも報告して差し上げてくれ」

「はい、あの。それは良いのですけれど・・・」

「・・・どうした?」

「蒼太さんには、いつになったら会えるのですか!?もう私の任務は終了いたしましたよね?自由行動を取ってもよろしいのではありませんか!?」

「・・・・・っ。まだだ、アウロラ!!」

「そんな!!それでは・・・」

「蒼太達は今、極秘裏に潜入任務を申しつけてある、それを味方にとは言えども教える訳にはいかん!!」

「しかし・・・!!」

「もう少しだけ、待ってくれ。アウロラ・・・!!」

 “これでも君の任務は大分省略されただろう?”とオリヴィアが続けるモノの確かに、本来1ヶ月は帰れない、とされていたのを早ければここ5日以内でケリの着くそれに変更してもらったのだ、嬉しく無い筈は無いモノの、しかし。

(ああっ!!早く蒼太さんに会いたい!!会って抱き締めたい、全身で感じたい、あの人の体、あの人の温もり、あの人の鼓動を・・・!!)

「・・・・・」

 アウロラは、心の底からそう思っていた、蒼太に会って今度こそ、自身の心の丈を伝え、その上で今度という今度こそ彼のお嫁さんにしてもらうんだと、そんな事ばかり考えていた、しかし。

(やはり言えん。既に蒼太とメリアリアとが婚約している等と・・・!!)

 スマートフォンの向こうで胸踊らせているであろうアウロラの事を思うとオリヴィアは些かに心が痛むがあの後。

 兎にも角にも一度、寮に入って荷物を運び込ませようとした折に、蒼太が半ば無理矢理に彼女に報告して来たのである、“自分はメリーと婚約をした”と。

「指輪を渡して、僕の方からプロポーズしたんです。ねっ?メリー・・・」

「ええっ!!」

 そんな夫からの言葉に、メリアリアもまた頬を赤らめながらも応えるモノの、その表情は“幸せで幸せで堪らない”とでも言わんばかりのそれだった。

「蒼太が、指輪を私ながら私に告げてくれたの。“僕と結婚して下さい”って。私、嬉しくておかしくなりそうなのっ!!!」

 “幸せ過ぎて恐い!!”とメリアリアは皆に告げるがその瞳は喜びに若干、潤みを帯びて来ており、その青空色の瞳は大好きな蒼太の事をもっと良く見ようと瞳孔が開いていた為に、普段よりも多くの光を反射してキラキラと輝いていた。

「蒼太、ああ蒼太!!」

 そう叫んでメリアリアは、人前だと言うのも憚らずに目の前の夫に抱き着いてみせるモノの正直、それを見た時のオリヴィア以下女王位達は些か面食らってしまっていた、あのメリアリアが、責任感の極めて強い孤高の戦士な筈の彼女がこんな乙女のような顔をするのかと、恋する少女のような仕草を見せるのかと、思わず我が目を疑ってしまったのである。

「オリヴィア、認めて下さい。皆も!!」

「私達、真剣に愛し合っているのっ!!」

 互いに身を寄せ合い、手と手を取り合いつつも懸命に訴え掛ける二人の気迫に押されるかのようにして、その場にいた者達は誰もが、そうオリヴィアさえもが頷かざるを得なかったモノの、彼女は最後に“待て”、とだけ言い置いた、“君達の気持ちは良く解った、だから暫く待ってくれ”とそう告げて。

 心なしかその瞳には、そしてその表情には何処かしら寂しげな光が見えたがそれはそうだろう、彼女だとて“ガイア・マキナ”では蒼太の妻の一人だったのだから。

 五人もの子供を為している上にその世話に育児にと追い立てられつつも、更に同時に実際の戦場においても常に、夫と共にありつづけて来た公私に渡る“戦友同士”であったのだから。

 だからもしかしたなら、そう、本当にもしかしたのならば、だったのであるがこの世界線での彼女もまた、蒼太に対して何らかの、淡い恋心を抱いていなかったと言う保証は無かった。

 熱く煮え滾る思いを秘めつつ、自身の事を見つめ続けてくれていたのかも知れなかったのだがしかし、それでも彼は他ならぬメリアリアを選んだのである、そうだ、誰でも無いメリアリアだけを選び抜いたのであって、そしてそれを謝るつもりは毛頭無い。

 ・・・例え心の中ではオリヴィアに対して申し訳ないと思っていたのだとしても。

 それ程までに彼はメリアリアを愛していた、そしてメリアリアもまた、そんな彼をずっと一途に愛し続けてくれていたのだ、それを裏切るつもりは無いし、これからも変えるつもりは全く無かった。

「今はまだ、この事は他の誰にも言うな?時が時だからな・・・。それととにかく、寮の規則は守ってもらう。君達の、その・・・。個人的な交際をどうこう言うつもりは無いが、それにしたってまだ、正式に結婚している訳では無いのだ、婚前ではあるのだから、もう少し自重するようにな・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 それについて二人は敢えて、“解った”とは言わなかった、むしろ絶対に嫌だった、“自分達がまだ、正式には結ばれていない”とでも言われているみたいで何だかとても腹立たしくもあり、そして同じくらいに悲しい気持ちでいっぱいであったのだ。

「特にアウロラには言わないでくれ。あの子は蒼太、君の事を本当に愛しているのだ、メリアリアの事を尊敬もしている。だから頼む、今はまだ、お願いだから・・・!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

(オリヴィア・・・!!)

 そんな氷炎の大騎士の見せる態度に蒼太もメリアリアも些かに驚愕してしまっていた、あのオリヴィアが自分達に頭を下げている、それも今回は気のせいなんかではない、あんなにも辛く悲しそうに、申し訳なさそうにして。

 それは正直に言って蒼太とメリアリアを悲しい気持ちにさせてしまった、特にメリアリアはそうだった、“ガイア・マキナ”での自分達を知らない彼女はだから、それ故にオリヴィアの蒼太への気持ちを知らずにおり、その結果として姉のように慕っていた、この年上の“氷炎の大騎士”の見せた態度にちょっとしたショックを受けてしまっていたのである。

 そんなにも自分達が結婚する事が悲しくてどうしようも無い事なのか、受け入れがたい事なのか、祝ってはくれないのかと、そう思うとメリアリア自身もとても悲しい気持ちになってしまったモノの、それと同時に。

 “絶対に自分は蒼太を諦めない”と思った、それだけは本当に、固く固く心に誓った、・・・例え戦友や周りの誰かが何を言おうと、そして何を思おうとだ。

(絶対に引き下がらないわ、蒼太は私が守る!!)

 それがメリアリアの思いであり、それだけが彼女の全てであった、と言って良かった、そしてそれは蒼太もまた同様であり、そんな二人は、だからー。

 互いに見つめ合い、頷き合うと無反応を決め込んでしまう。

「すまない、本来であれば祝福すべき事なのだろうが、言葉が上手く見つけられない、もう少しだけ、時間をくれ・・・。そして頼むから、今はまだ、アウロラにだけは言わないでやって欲しい、あの子はきっとショックを受ける事だろう、下手をするならば、生きる屍となってしまうかもしれん。君達だってそれは望む事では無いだろう?この件が終わるまでで良い、頼む!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

 オリヴィアから発せられたその言葉に、二人はもう一度見つめ合い、頷き合うとそれぞれに“その件に付きましては了解しました”、“そこだけは解ったわ、オリヴィア”と異口同音な言葉を口にする。

「この件が終わるまでは、誰にも口外致しません」

「本当は悲しくて嫌だけど・・・。別にアウロラを苦しめたい訳では無いもんね!!」

 そう言いつつもメリアリアはしかし、“この人の事は渡さない、絶対に”とでも言わんばかりにその腕に両の腕でしがみ付き、その身をググッと蒼太の肉体へと擦り寄せるようにするモノの、それだけこの時のオリヴィアの見せた反応は予想外なモノだったのであり、そして彼女としては些か、腹に据えかねたモノでもあったのである。

(あのオリヴィアが・・・?)

(信じられん!!)

 もっともー。

 それはエマやクレモンスと言った、セイレーンに所属している“女王位”にその名を連ねる面々においても同様な事だったらしく、皆一様に戸惑いを隠せないでいたモノのやはり、それでもメリアリア達の受けたそれに比べるのならば心の水面にそれ程の起伏をもたらすモノでは無かった事と、結局の所は他人事であった事からその凹凸もさほど間をおく事も無く、元の平静なる凪いだ状態を取り戻していったのだった。

 一方で。

 メリアリア達もまたメリアリア達で、それで冷静さを失ってしまうような人物達では、間違っても無かったのであって、己自身が暴発する事の無きようにと、湧き上がって来るいたたまれなさとある種の憤りの想念を受け流しつつもそのまま“自身の荷物を運び込む為に”と言っては皆に挨拶を済ませると寮へと向けて出立して行ったのだがやはり、オリヴィアやアウロラとの事で余りにも気分が晴れずに悶々としてしまっていたため、その日は急遽予定を変更させて寮では無い、別の場所へと行き先を変える事としたのである。

 そこで二人は徹底的なまでに愛し合う事としたのであるが、そんな彼等が向かった先と言うのは蒼太が昔住んでいたら彼の自宅に他ならなかった、蒼太がセイレーンに入隊した事で国から特別に保護をしてもらえていたそこは庭などもキチンと手入れが為されており、また家自体もまだまだ耐使用年数に達していなかった事もあって屋崩れ等も起こさずにその景観も保たれていたのだ。

 二人はそこでこれ以上無い位にまで熱く激しく交わり合った、例の“時の涙滴”を発動させては実に1ヶ月間もの期間に渡って決してお互いを決して離す事無く些かも結合を解くこともせずに、ただひたすらに相手を求めて抱き締め続け、何もかもを超越してしまうほどにまで深く鋭く貪り合ったが続けた。

 そしてそんなお互いのお互いに対する激情と愛欲とを存分なまでにぶつけ合い、受け止め合ってようやくにして寮へと戻って荷物を運び、一昼夜明けた二人を待っていたモノと言うのがペアを組んでの“見張りの任務”だったと言うわけである。

 二人はオリヴィアの心遣いに感謝すると同時にやはり、“自分達を祝福してくれていたのだ”と思い至ってようやく安堵の溜息を漏らすが一方で、アウロラの事を考えると確かに、ちょっとした緊張が心と体に走るのもまた事実であった。

(でも言わなきゃ。ハッキリとキッチリと伝えなきゃな・・・!!)

(直ぐには難しいかも知れないけれども・・・。でもアウロラにだって、ちゃんとお祝いして欲しいもんね!!)

 そんな事を考えながらも二人は任務に励んでいたのであるが、一方でそんな事など露知らないアウロラは、蒼太に出会える日を今か今かと待ちわび続けていたのだった。

(蒼太さんにあったら何を話そうかしら!!聞いてもらいたいこととか、いっぱいあるのにっ。ああ、私ったら、きっと上手く喋れなくなってしまうのに違いないわ、だってあの人の顔を見たら私、私・・・っ!!!)

 メリアリアに負けないくらいに何処までも一途で情熱的な少女であった彼女はだから、その時が来るのを夢にまで見ながらも、胸躍らせていたのであるが、そんな彼女達の思惑を他所に事態は思わぬ急展開を迎える事となった、即ち。

 ヴィクトーの外出が寸での所で急遽、取り止めになったのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
 何だかこのお話しだけ見ていると、アウロラが(オリヴィアもですけど)悲劇のヒロインと化してしまうような印象を受けてしまわれる方もいらっしゃられるでしょうけれども(皆様方も心配なされていらっしゃられるでしょうけれども)、それは全くの杞憂です(そんな話は書きません、書きたくもありませんし、何よりアウロラが可哀想過ぎます)。

 なのでハッキリと断言させていただきますけれどもメリアリアは元よりアウロラにもまた、悲劇は絶対に訪れません(傷付く事もありません)、二人とも幸せいっぱい超絶ラブラブ状態のままで、ちゃんと蒼太君と結ばれます(この段階でオチはどうするのか、どう言った流れで二人と結ばれるのか、と言う事に付きましてはもう既に、頭の中で物語は出来上がっています、後は細かい所を詰めて書いて行くだけになっておりますので、どうかもう暫くの間だけ、様子を見ていて下さいませ)、なお今回の蒼太君とメリアリアちゃんのエッチシーンに付きましてはもう少し書き進めた後で“回想シーン”と言う形で詳しい描写、内容を入れさせていただきます(ちなみにここから本格的に“巨大化エッチ”と“分身エッチ”が入ります)、こちらももう暫くお待ち下さいませ。

 それとアウロラとのエッチシーンなのですが、現段階ではやはり、いきなり“子宮姦”は難しい為に彼女とは普通のエッチしか出来ない運びとなります(アウロラとの“子宮姦”はこの後の“ハーレムルート”をご期待下さいませ)。

 あともう一つだけ、皆様方にどうしてものお願いが御座います。

 それと言うのはオリヴィアの事なのですが、彼女もまた、花嫁の列に加えてあげる事を認めてあげていただきたいのです(このままですとメリアリア、アウロラが花嫁として選ばれているのに、即ち“重婚”や“ハーレム”が許されているのに彼女だけがその中に入る事を許されていない、と言う状態が出来上がってしまう事になります、それを避けたいのです)、読者の皆様方お願い致します、どうかもう一度の我が儘をお許し下さい、どうかよろしくお願い申し上げます。

                 敬具。

           ハイパーキャノン。
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