メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

アウロラ・フォンティーヌ編エピローグ

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 皆様方こんにちは、ハイパーキャノンと申します。

 皆様方の御声援、御愛顧のお陰をもちまして、無事に“アウロラ・フォンティーヌ編”を終わらせる事が出来ました、誠に有り難う御座いました。

 これで蒼太君とアウロラちゃんの馴れ初めのお話しは一段落出来たかと思うのですが、今度はそれに加えてもう一つ、やっておかなければならない事が出来てきました。

 何事かと申しますと、それは一番目のメインヒロインであります、“メリアリア・カッシーニちゃんと蒼太君との具体的な馴れ初めを描くこと”です。

 例えば今回、この“アウロラ・フォンティーヌ編”の中で蒼太君はアウロラと一緒に散策をしたり、家に招待されたり、パーティーに呼ばれたり、プレゼントを渡したり、と色々な事をしている訳ですけれども当然、それらはメリアリアちゃんとの間にも為されている訳です。

 そしてそんな二人の心の交流を通しまして、蒼太君とメリアリアちゃんの絆、愛情が育まれて来た訳なのですけれども、ただ今回、第二部、第三部を書くに当たって、私はそれを些かすっ飛ばし気味にして来てしまっていたのです。

 これにつきましてはどうしてなのか、と申しますとそもそも、この第二部、第三部(どちらかと言えば第二部ですが)を執筆し始めた際に、当時完結したばかりであった第一部の世界軸線における蒼太君とメリアリアちゃんとの交流がイメージとして頭の中にあったのに加えてもう一つ、更に言ってしまいますと前作であります“インピオ”でのそれらが(つまりは主人公とヒロインの交流のイメージが)ずっと頭の中に連続してあったから、だったのですね。

 なので“この二つで散々、そう言った事は書いてきたのだから、もう今回はそこまで細かく書かなくてもいいだろう”、“第一3度目もそこから書くとなると(つまりは三回も同じ事を繰り返すとなると)読者の方々に対して、些かしつこくなりすぎるのでは無いか?”との懸念が御座いました、その為に敢えて(この第二部に関しましては)、この“アウロラ・フォンティーヌ編”のように詳しく書くことは避けていたので御座います。

 ですけれども今回の物語を通しまして、“やっぱり皆様方に対して蒼太君とメリアリアちゃんの物語もちゃんと読んでいただきたい”と考えるに至りました(そうでなければダメだ、と思いを新たにいたしました)、それ故に改めまして“メリアリア・カッシーニ編”を書かせていただきたい、と考えた次第です(特に彼女との心の交流やメリアリアちゃんが蒼太君へと恋心を、そして何より“愛情”を抱くに至った切っ掛けともうしますか、経緯と申しますか、そう言ったモノをもっと細かく正確に、かつ順序立てて精密に皆様方にお届けしたい、と考えている次第です)。

 勿論、メリアリアちゃんの魂の中には“前世からの蒼太君への愛情”、“魂同士の絆の記憶、思い”があります、それが今世においても蒼太君に対して比類無き熱烈さを抱く一因となった事は間違い御座いませんがしかし、それだけではなくて、彼女が他ならぬ蒼太君を、蒼太君だからこそ出会って恋して愛し合い、結ばれて行く、そう言う場面を書いて行けたら、と思っております。

 この“アウロラ・フォンティーヌ編”が終わったら即座に“メリアリア・カッシーニ編”に移りますのでそれまでメリアリアファンの方々は、どうぞお待ち下さいませ。

 大まかなプロットは既にもう、出来ております。

ルテティアの森での隠れんぼ
セーヌ河畔での花火大会、
サッカー観戦、
迷子の子猫を助ける話、
エトワール・イノエの古城探索、
メリアリアの誕生日会、
春の公園散策

 以上7話でございます(多くても11話程度に纏められれば、と思っております)、ちなみに今回は蒼太君が6歳~7歳、メリアリアちゃんが8歳~9歳までのお話しとなっておりますので、探検、探索はあっても冒険要素は出て参りません(ただし二人は幾つかの貴重で不思議な体験をする事になります)、皆様に幼馴染同士の描く、淡い心の交流をお届けできれば、と思っております(精一杯、努めさせていただきます)。

 ちなみに。

 どうして私がここまで幼馴染同士のカップリングを推すのか、と申しますと、私は知っているからです。

 何をか、と申しますと、幼稚園の頃の初恋の人と、本当に大人になってから結ばれた方の話をです。

 本当はこれは、私とは別の方の身に起きたお話になってしまいますので、これまでお話しするのは避けて来たのです。

 加えて記憶も曖昧な部分があります、二十代もなりたての頃に、会社の飲み会の席で御本人から直接、お聞きした話だからです(だから細かい所は御容赦下さい、でも大筋は覚えています)、これからするお話しは、それが嘘では無い事を確約する為に日本の神々に誓わせていただきますが、その方は幼稚園の頃に、その旦那様となられる方と出会ったそうです(出会った時に、ハッキリと感じたそうですよ、“自分は将来、この人と結婚するんだ”と言う事を)。

 それで幼稚園、小学校と一緒でずっと好きでいたそうですが(ただし一目惚れの類いでは無かったと記憶しています)、だけど、じゃあ告白はしたの?と言われれば、それはしなかったそうです(本人曰く言い出せなかった、と、側に居られるだけで幸せだった、と)。

 ところが二人は高校生の時(この辺りの記憶が曖昧です、中学からもう別だったのか、高校生から別だったのか、ハッキリと覚えておりませんがとにかく一度)、別々の学校になってしまい、離れ離れになってしまっていたのだとか←辛かった、と言ってました。

 それで進学した先の大学で再び一緒になって告白し、社会人になったのを契機に目出度く結婚、今に至る、との事でした(スキーをしている最中の、旦那さんの写真を見せていただきました、めっちゃノリノリな方でしたよ、同じ世代なら友達になれていたと思います←ちなみに旦那さんは消防士だそうです)。

 こう言う話って現実にあるんですよね(むしろだからマンガになったりするのでしょうね、100パーセント有り得ないと思われているような、それこそ本当に“虚構だけ話”だったら多分、こんなにも流行らないと思いますし、皆様方の中でも“いくら何でも無茶苦茶すぎる”ですとか“これは有り得ないだろ?”と感じられるような話しはやはり、売れないのでしょうね←一方で中には確かに、下らない妄想を爆発させて、本当に夢と現実の区別が付かなくなってしまう方々もおらっしゃられるようですけれども、基本的には人間と言うのは、奥深い所では物事の善悪真偽、有現虚無の可能性と言ったモノは感じて解っているのだと思います、“これは有り得るかも知れないな”、“あってもおかしくは無いだろう”と)。

 だから私は“幼馴染との純愛成就モノ”を書くのです(だって現実に起こり得る事ですもの)←前にチョロッと書かせていただきましたが、ゼクシィの行った調査ではおよそ全体の1%、つまり百組に一組の割合のカップルが幼馴染同士で結婚をしているそうですので、こう言う事もあるのでしょう。

 幼馴染み同士の結婚(しかも初恋の成就)、素晴らしい事じゃないですか、ロマンチックな奇跡でもありますし、それに来世では貴方にも起こるかも知れない事なんですよ?(だって現実に、起きてる人がいるんですもん、可能性は充分にあります)←まあ別にわざわざ、自分から“私は誰々とこんな形で結婚しました”等と言われる方もいらっしゃらないでしょうから、それほど有名では無いのでしょうけれども、調べてみると、結構いるんじゃないかと思いますよ、そう言う方々は。

                敬具。

          ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「さ。伯爵様、これでよろしいでしょう・・・」

「う、むうぅぅ。んん・・・!!」

「全くもう。あんなに言ったのに、無茶するからですよ・・・」

「いや、すまんな。重ね重ね。身体は全然、何ともなかったのだがな・・・」

 シャルロットに咎められつつ、ベッドに横たわっていたエリオットは苦笑交じりにそう応えるが、エドモンの診察の結果、彼は典型的な過労であって特に病状などの心配は無く、数日間安静に過ごしていれば時期に回復するだろう、との事であったのだ。

「全くもう、あなたは昔っから無茶ばっかりして!!」

「いや、すまんすまん。しかし私も知らぬ間に衰えたモノだ、今でも定期的に運動は行っているのだがな。こんなにも簡単に身体にガタが来るとは思いも寄らなかったのだよ!!」

「いつまでも、若いつもりでいるからです、あなたはもう40代なんですからね?」

「バカを言うな、まだたかが40代だぞ?男盛りでは無いか!!本当は今すぐ起きだして、早く仕事を終わらせてしまいたい所なのだがな・・・」

「それがいけないって言っているんです。エドモンからもここ二、三日の間は“必ず休養を取るように”って言われてるでしょ?」

「う、むうぅぅ・・・っ!!!」

 愛する妻からのその言葉に、エリオットは思わず呻いた、正直言って彼としてみれば、こんな所で横になっている場合等では断じて無かったのである。

 やらなければならないことは山積みであり、しかもエリオットはその全てを熟すことが出来ていたのである、だからこそ余計に口惜しく、身体が疲れてしまっている事が、まどろっこしくて仕方が無い。

「こんな程度の事で横になっていては、フォンティーヌ家当主の名が廃(すた)る!!」

「廃(すた)りはしませんよ、そんな事では!!」

 奮起しようとする夫に対してシャルロットは苦笑しつつも優しくソッと語り掛けるがその口調は彼等がまだ十代の、恋人同士だった頃から変わっていない、聞いていると安心出来る、ホッと出来るそれだった。

「あなたはね?いっつも無茶して突っ走って、ボロボロになってしまって。挙げ句に倒れての繰り返しだったじゃない?いい加減に“自分を慈しむ”と言う事をしてくれないと、後に残された私達は、どうしたら良いって言うの?」

「う、む・・・。それはな・・・」

 愛妻からもたらされた、囁くようなその一言に、それでもエリオットは答えに窮してしまった、本人はまだまだ行けるつもりであったのであるが、やはり他の人から見た場合には自分は自分の身体を明らかに、限界以上に酷使していたのかも知れなかった。

「そうか・・・、私も」

 “無理の効かない年齢になってしまったと言うことか”と妻から顔を背けては寂しそうに呟くと、まるで観念したかのように身体をベッドへと預けてグッタリとなってしまうが彼はこの時に漸く自分の身体へと向けて意識を向けて見たのであり、その結果として彼方此方が、予想以上に消耗していたのを知ったのである。

「うう、む・・・」

「これではもう、マクシムやアウロラの事は言えませんね!!」

「はあぁぁぁ・・・っ。全くだな・・・!!」

 思わずクスりと微笑む愛妻に対してエリオットは、ベッドの上で脱力しながら彼は彼で自嘲していた、確かに妻の言う通りであり、これならばマクシム達をどうこう言う資格は無い。

「今日から三日は、休養を取ってゆっくりとするよ。悪いが予定は全て、キャンセルしておいてくれ・・・!!」

「解っています、あなた。モハメドやマクシム達にも言い含めて関係者以外には口外はしないようにさせますから、どうかゆっくりとお休み下さいまし・・・」

 そう告げて、エリオットの唇にシャルロットは唇を重ねると、自身は“お飲み物をお持ちしますね?”と夫に告げてはベッドから離れて扉の方へと向けて歩き出して行こうとした、その矢先にー。

「お父様っ!!!」

「エリオット伯爵!!」

 “大丈夫ですか!?”と事情を聞かされたアウロラと蒼太が扉を執務室の扉を開けて駆け込んで来た、扉は一族の者以外には開けられないようになっていたからアウロラが開けたのであろうが、よっぽど慌てていたのだろう、開ける勢いが半端ではなかったのである。

「お父様、大丈夫ですか!?お父様!!!」

「モハメドさんから倒れられたって聞かされて。それで慌てて帰って来たんです、ご容態は、如何なのですか!!?」

「あ、あっはっはっはっは・・・っ!!!」

「本当にもう・・・っ。ごめんなさいね、二人とも!!」

「・・・・・っっっ!!!!?」

「・・・・・!!?」

 不思議そうな顔を浮かべるアウロラと蒼太の目の前で、エリオットは申し訳なさそうに笑い飛ばし、シャルロットも困ったような笑顔を見せた。

「この人はねぇ、過労だったのよ?二、三日安静にしていれば、治るんですって!!」

「い、いやぁ。本当にな?騒がせてしまって、申し訳無い・・・!!」

 と、片や苦笑、片や申し訳なさそうな顔を見せたシャルロットとエリオットに対して蒼太とアウロラは思わず深い安堵の溜息を付いて、そしてー。

「お父様!!!」

 アウロラのお説教が始まったのだが、曰く“あれ程先生とお母様から言われていたのに何故聞かなかった!!?”、“どれだけ心配したのか解っているのか!!?”、“皆にも凄い迷惑を掛けているんですよ!!?”etc.etc・・・。

「全くもうっ。どうしてそんなに無茶をなさるんですか!!?」

「わ、解った解ったアウロラ。済まなかったよ、この通りだ!!!」

 とエリオットは病床の中から詫びると同時に頭を下げるが今の彼には冗談抜きでこれ位しか、怒れる愛娘に対して取るべき手段も行えるべき行動も、何一つとして存在してはいなかったのである。

「ア、アウロラ、ちょっと落ち着いて。ねっ?今伯爵様も大変だから・・・!!」

「そもそもなんですか!!?私達には無理をするなって言っておきながら、お父様だって散々に、御無理をなされているでは無いですか!!!一体、どう言う御了見なのですか!!?」

「い、いやいや。すまん、だからな、すまんて・・・」

「すまんじゃありませんっ!!!」

 アウロラが、その小さな肩を震わせながら怒りを露わにするモノの、この後凡そ一時間に渡ってアウロラの、実の父親に対する説教は続けられたのであり、それをシャルロットは苦笑して、そして蒼太は固唾を飲んで見守り続けていたのである。

「・・・・・」

 “ありましたわ、そんなことも”と、アウロラは漆黒の闇夜に染まる街に降り頻る雨を眺めつつ、思わずクスりと微笑むモノの、自分は以外と怒りっぽいのかな、等と考えて、しかし“そんな事は無いと思いますけど”と頭(かぶり)を振ってその考えを、頭の中から振り払うがもしここに蒼太がいてくれたのならば、何と言ってくれただろうか、と考えて思わず寂しくなってしまった。

 “あの人の声が聞きたい、あの人の笑顔が見たい、あの人に触れていて欲しいしこの手を握っていて欲しい”。

 彼とのことに意識を飛ばしている内にふと、気が付けば彼女の頬には涙が伝って零れ落ちて来ていた、それはポタポタと手の甲に垂れては余計に際限なく双眸を濡らして行くが、アウロラは元来、大人しい子ではあったけれども決して泣き虫などではなかったのである。

 だから例え、周囲の人間達から何か言われる事はあっても俯いて堪えるだけで、泣き出すようなこと等は、ただの一度もなかったのであるモノの、そんな彼女にも唯一の例外があった、蒼太と言う少年との邂逅がそれだったのだが、彼の温もり、彼の感触、彼の息遣い、彼の存在。

 それら全てがアウロラの胸をときめかせて高鳴らせ、そしてどうしようも無い位にまで打ち振るわせるのだ、自分自身でも例えようも無い程の、そして堪えようも無い程の暖かくて激しくて確かなる衝動が、心の底の底の底、その更に奥深い領域から迸って来ては彼女を悶絶させるのである。

 そう思って、アウロラは、泣いた。

 泣いて泣いて泣き咽び、その青空色の瞳から、玉のような思いの丈を、心の雫を何時までも何時までも滴らせ続けていったのだった。

「うえぇぇ・・・っ!!?ヒッグ、グスッ。グス・・・ッ!!」

 “そう言えば”と一頻り、嗚咽を漏らした後でアウロラは思った、“あの時も、修道院へと旅立つ際も同じ思いをしていたっけ”、と。

 その日。

 アウロラは朝から悲しくて悲しくて、とても表情は晴れなかった、それはそうだろう、住み慣れた我が家、自分の部屋、親しんできた人々に、いつも見て来た街の風景。

 それらが暫くの間は見えなくなる挙げ句に、離れ離れにさせられるのである、寂しくない訳が無かったが、その中でも格別、彼女の胸を抉ったのが蒼太と暫くの間は別れなければならない、と言う事であり、彼と直接会えなくなる事が何より辛くて堪らない、まさしく身を引き裂かれるかのような感覚を覚える出来事だったのである。

「蒼太さん・・・」

「うん」

「私、もう行きますね・・・」

「うん」

「毎日電話して、良いですか・・・?」

「うん」

「・・・・・っ!!!!!」

 出発の日。

 その日は土曜日であり、道路は行き交う自動車で朝から大変、混雑していた。

 その日、蒼太は本当は学校であったモノの、休んでアウロラの事を、見送りに来てくれていたのだった。

 アウロラにはそれがとっても嬉しかった、彼とは正味、十二、三日の間しか一緒にいなかった訳だけれども、それでもその間に掛け替えの無い程の、大切な思い出がいっぱいいっぱい出来たのである。

 そうだ、今や彼等は立派な“幼馴染”同士であり、太い信頼関係で結ばれている友人同士だった、いいや、アウロラにとっては更に一歩踏み込んだ、何ものにも代え難い程に眩しい己の運命の片翼。

 即ち“思い人”、その人そのモノであったのである。

 だから。

 アウロラは殆ど反射的に、蒼太にガバッと抱き着いた、堪らなくなってしまったのだが、その時はもうグイグイと、身体を擦り付けたりはしなかったモノのそれでも全身をグクッと押し付けたままでただただひたすら彼の感触を、その匂いを、その温もりを感じ続けていたのである。

 一頻り、それが済むとー。

 アウロラは身体を離して蒼太の顔を見つめるモノの、その時の彼女はもう、大粒の涙を流していた、出来れば時間がここで止まって巻き戻ってくれたら良いのに、とすら思った、そうしたら自分は蒼太と別れなくて済む、自分は蒼太とずっと一緒にいられると、そう思って止まなかったが、しかし。

「お嬢様、そろそろ御仕度下さいませ・・・」

「・・・・・」

 無情にも時は刻み続けて、遂に彼女が出立する時が来てしまうが、その時。

 意を決したように、何かを弾かれたかのようにアウロラは蒼太に告げた。

「蒼太さん!!」

「うん?」

「私、決めました!!」

「・・・・・?」

「私、あなたのお嫁さんになりますっ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「!?!?!?!?!?」

 “私をあなたのお嫁さんにして下さいっ!!!”とアウロラは更に続けて言った、“私と結婚して下さいっ!!!”とそう告げて。

「・・・・・っ。えっ?え、えっ!!?」

「私、待ってますから。ううん、必ず帰って来ますからっ。あなたの元へと、必ずっ!!!そうしたら・・・っ!!!」

「お嬢様っ!!!」

「いけませんっ!!!」

「お時間で御座います!!」

「蒼太さん、蒼太さんっ!!!」

 もはや猶予の無くなった時刻と、そして突然為された蒼太への言葉に使用人達は困惑すると同時に焦燥し、アウロラを半ば無理矢理に、車中へと押し込むようにすると、次の瞬間車を急発進させて、ルテティアのフォンティーヌの屋敷を、そして蒼太の元を後にさせたのであった。

「・・・・・っっっ!!!!!」

 “全くもうっ!!!”とその時の事を思い出して、アウロラは思わずプクーッと頬を膨らませるモノの、確かに人前で、急にあんな事を言ってしまった自分も自分ではあったけれども、彼等も彼等である、もう少しで蒼太の返事が聞けたと言うのに、将来に関する確約を、あの場で勝ち得たかも知れないと言うのに。

(そうしたなら、メリアリアさんとの事も、ここまで拗れずに済んでおりましたのにっ。みんなみんな、イジワルですわっ!!!)

 とアウロラは思い出したら段々腹が立ってきた、爺や達には感謝しているモノの、あの一件だけはどうにもこうにもいただけなかった、どうしてああも肝心要な部分で足を引っ張ってくれたのか。

(全くもうっ、今からでも処罰でも与えましょうからしらっ!!!よくも私と蒼太さんの仲を邪魔してくれましたわねぇ~っ!!!!!)

 思わず“キーッ!!”となりそうなアウロラだったがしかし、同時にもう一つ、気になる事があって、思考がそちらへと集中して行く。

 自分達が“カインの子供達”と呼ばれている存在と戦っていた最中の事だ、最終版で自分達が溜め込んでしまったエネルギー波の荒れ狂う奔流を、蒼太が宇宙(おおぞら)へと向けて打ち放ち、守ってくれた時の事である。

(あの時。蒼太さんが血だらけになって、それを見た私に起こった事は一体・・・?)

 あの時アウロラは一瞬、何が何だか解らなくなって、だけど刹那の後には理解が追い付いて来て、蒼太が死んでしまうと思った、自分の一番大切な人が、自分を守って自分のせいでボロボロになって死んで行くのである、そんなのは絶対に嫌だったのだ。

(絶対に助ける、蒼太さんを!!!)

 そう思うと同時にアウロラはあの時、何故だかそれを確信していた、“自分にはそれが出来る”と、自分の一番深い部分でハッキリと感じ取っていたのである、そしてー。

 蒼太さんを死なさせはしない、それはダメだ、絶対にダメだ、この人だけは助けるんだー。

 その思いに、それだけに集中し尽くしていったのであるがその結果、彼女は全てを置き去りにした、感覚も音も時間さえもー。

 あの時、彼女はその全てを超越していたのである、そしてその上で。

 一瞬とも無限とも付かない時間の間にただただひたすら蒼太を思い、この人を助けたい、救いたい、自分の命の輝きを、例え分け与えたとしてもー。

 そう思った、ただ本当にそれだけの、損得も感情も利己愛すらも、何もかもをもかなぐり捨てて、純粋なまでの祈りの思念の塊、それそのものと化したのである、その瞬間にー。

 奇跡は起きた、自らの奥の底の底の底、“霊性なる根源”より迸りし“確かなる輝き”は蒼太を癒して助けて支え、その肉体に力を戻して魂を現世へと見事に繋ぎ止めたのである。

 しかし。

(あれは、私一人だけの力では無かった、あの時、私はー)

 とアウロラは自分の他にもう一人、蒼太を助けて救って見せた女性の姿を思い浮かべていた、即ち。

 彼女の大事な親友にして尊敬すべき先輩にして命の恩人にして、そしてー。

 恋敵である女王位の一人、“メリアリア・カッシーニ”である。

(・・・あの時。メリアリアさんも同じ光を、“奇跡の輝き”を放っていた、あれが放てるほどに真剣で真摯な思いを、メリアリアさんは蒼太さんに持っている、と言う事なのでしょうか?)

 “だとしても!!”とアウロラは頭(かぶり)を振った、“負けません!!”とそう思って。

(蒼太さんは私の、私だけの男性(ひと)なんですっ。例え相手がメリアリアさんでも絶対に負けませんからっ!!!)

 そう意識すると俄然、ファイトが湧いてきた、“こんな所で泣き崩れている場合では無い”、“一刻も早く寮に戻って蒼太さんに会いに行かなくてはならない!!”とアウロラは決意を新たにしては、今後取るべき蒼太へのモーションの数々に付いて思考を巡らせ始めていった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 “全くもうっ!!!”とその時の事を思い出して、アウロラは思わずプクーッと頬を膨らませるモノの、確かに人前で、急にあんな事を言ってしまった自分も自分ではあったけれども、彼等も彼等である、もう少しで蒼太の返事が聞けたと言うのに、将来に関する確約を、あの場で勝ち得たかも知れないと言うのに。

 アウロラは思い出したら段々腹が立ってきた、爺や達には感謝しているモノの、あの一件だけはどうにもこうにもいただけなかった、どうしてああも肝心要な部分で足を引っ張ってくれたのか。

 もしあの時、アウロラが蒼太に告白していたら(告白と言うよりもプロポーズをしていたのならば)、アウロラは玉砕しておりました(つまり爺や達は彼女を助けたんですね、でもそんな事が解るのは神様じゃなきゃ無理ですよね?ちょっと理不尽な気もしますけど・・・)。

 また蒼太君を助けたメリアリアとアウロラの、あの奇跡の光の事なのですけれども、あれは一人でも十二分に蒼太君を救ってあげられたんです(それだけの凄まじいまでの力と神聖さとを、彼女達は持っているんですよ、ただアウロラは一人だけの力では無い、と感じたようです←そしてメリアリアちゃんも同様に思っている訳ですが、やがて二人は気付きます、“一人でも蒼太を助けられた”と、そしてまた彼女達の戦いが始まるのです、しかも今度はオリヴィアもそこに加わりますので三つ巴の激戦となります)。
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