メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

AIエンペラー、起動!!

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 第二部開始の物語であります、“セラフィムの内乱”に於いて、その前書き部分に書かれておりますけれども。

 蒼太君達が生きている時代は21世紀後半、具体的には今から半世紀程未来に行った先の日時であります、2080年前後を予定しています(つまりこのお話は純愛ラブコメであると同時に近未来SFファンタジー小説でもある訳ですね)。

 ちなみに今更なのですが私は、NTRとか言うのが大嫌いです(と言うよりそもそも論として、興味そのものがありません)、なので良い機会ですのでこの場をお借りしまして皆様方にお断りさせていただきますが、私は今まで、そう言ったNTRエッチの直接的な描写や行為の載っている本を、買って読んだ事等は一度たりともありません(それとは知らずに一冊だけ、何かの拍子に買って読んだ本もあるのですが、それも“後日談”のようなモノで、所謂(いわゆる)“NTRエッチそのもの”は一切出て来ませんでした←表紙とタイトルが紛らわしかった為に、それだと解らなかったんですね)。

 それからもう一つ、この物語の中で出て来る様々な考え、思想や事柄と言ったモノは、全て私が体験して来た事ですとか、考えついた事、はたまた信頼できる人から聞いた話しが元になっております、なので純愛派の皆様方は、どうか安心してお読み下さい(変な趣味嗜好の人々の影響は、なので全く受けていない筈です、仮にそれが言い過ぎだとしても、それでも極力受けない様にはして来ましたから)。

                     敬具。

               ハイパーキャノン。

           追申です。

 今回のお話は以前書かせていただきました“王の力と神の業”の後書き部分、並びに“魔法使いの血統”の本編をお読みいただきましてから読んでいただきますと、より理解がし易くなろうかと思われます。
ーーーーーーーーーーーーーー
 蒼太達の休暇は終わった、そしてそれが開けてから間もなく、早速の任務が飛び込んで来るモノの、それが海を隔てた大国である、“合衆国(ステイツ)”の誇る未来型の最新鋭AI兵器、通称“AIエンペラー”に対する手立てを皆で議論する、と言うモノだったのだが、この“AIエンペラー”と言うモノは“合衆国(ステイツ)”が実に140年と言う歳月を掛けて超極秘裏に開発した魔術的な素養を持った人工知能ロボット端末であり、一度起動されるとある“祝詞”を奏上する事で異世界への扉を開き、その只中へと相手を叩き込んでしまう、と言われている、恐るべきモノだったのだ。

「AIエンペラーだって!!?」

「うん、そうっ!!!」

 本部に行く途次、蒼太とメリアリアは遠い昔日へと意識を飛ばしていたのだが、忘れもしないそれは、蒼太がメリアリアと初めて生死の境を共にする程の危機に見舞われて、その時にメリアリアの持っている不可思議な力で助けてもらった事がある、エイジャックスからのスパイの男の亡命を受け入れた際の任務の発端となった単語だったのであり、その際に彼女とそれに付いてあれこれ話し込んでいた為、記憶に残っていたのであった。

 もっとも。

 蒼太の場合はそれだけではない、彼は“AIエンペラー”に付いての詳細を、ある人物から聞かされた事があったのである。

「あの時、確かに“AIエンペラー”って言葉が出て来たわよね?あなた覚えてる・・・?」

「勿論だよ!!」

 タクシー乗り場に急行しながらも、蒼太はメリアリアの言葉に応えた、“君の不思議な力の輝きに、初めて助けてもらった時の事なんだから!!!”とそう言って。

「だけどまさかここに来て、再び“AIエンペラー”に行き着く事になろうとは、まさか夢にも思わなかったよ!!!」

「・・・・・っ。あなたは、何か知っているの?」

「・・・まだ僕が日本にいた頃、君が来る少し前に“白川神道”と呼ばれている特別な教義、秘術を今に伝えている神道の神官からも、それに付いての話を聞かされた事がある!!!」

 “だけど”と蒼太は続けた、“まさかこんなにも早くにそれが始動する事になるなんて!!!”とやや顔を顰めながらもそう告げて。

「とにかく、先ずは本部まで行こう。詳しい話はそこでするよ、アウロラやオリヴィアも今、こっちに向かっているはずだから彼女達とも合流してタクシーを拾わなきゃな・・・!!!」

 そう言うと蒼太はスマホで二人に連絡をして今現在、自分達が宿舎の外にあるタクシー乗り場にいる事、四人で固まって行動するようにした方が良いだろう事を告げて彼女達の了承を貰い、電話を切った。

「信じられません!!!」

「“AIエンペラー”等と、単なるお伽噺だと思っていたんだがな・・・」

 電話口で支度をしながらもそう応えるアウロラとオリヴィアであったがしかし、それは他の面々もまた同じ気持ちだったのだろう、本部に付いてミラベルの上役連中からその話を聞いた時、セイレーンの誇る女王位達の発した言葉もまた、“有り得ん話だ”、“そんなバカな!!!”と言う類いのモノでしかなかったのだがどうやら彼女達にはまだ、理解と想像とが追い付く代物では無かったらしく、口々に疑問と否定の言葉を投げ掛け合っていた、そんな中で。

「静かに!!!」

 オリヴィアが場を一喝して騒ぎを収めるモノの、そんな中において蒼太だけは違っていた、彼は知っていたのである、日本にいた頃に既に白川神道(伯家神道と言う)の神官と面識のあった彼は、その神官の男から度々、世界の裏側の情報を得ており、その中に“AIエンペラー”の事も含まれていたのであったのだが、さて。

「人工知能が呪いの言葉を唱える事で実際に呪術が発動するなど、馬鹿げている。SFだってそんな事は考えないぞ?聞いた事が無い!!」

「もし第一、それが事実であるとするならば人工知能にも我々と同じの意識体系が存在する、と言う事になる。つまりは現実に“命を宿している”、と言う事が出来る訳だが・・・」

「大体、その祝詞(のりと)と言うのは何だ?聞き慣れない言葉ではないか、どこの国の言葉なのだ?」

「日本の国の言葉だよ、クレモンス、エマ、アンナ・・・」

「・・・・・っ!!!」

 “僕の国の言葉だ”と蒼太は続けて語るモノの、それは西洋の言葉に直すと“真理(エッセンシャル)の文言(スクロール)”とでも言い換えても良い代物なのであって、これをキチンと集中して唱えると何処にいても神々が御降臨して下さる、と言われている、本来であればとても大切で有り難い言の葉の連なりの事だったのだが、では何故、合衆国(ステイツ)の誇る最新鋭科学兵器に日本の祝詞が使われているのか、と言えばそれはその開発に、意外な所でと言うべきか、望まぬ形で日本が協力をしていたからに他ならなかったのであるモノの、それは今を遡る事140年程前の、“照和”と呼ばれていた時代のある日の出来事だった。

 当時の日本皇国は揺れに揺れていた、何故ならば“合衆国(ステイツ)”を含めた世界中の大国を相手に戦わなければならない事態に陥ってしまっており、総力を結集してこの国難に当たっていたのだ。

 しかし。

「陛下、誠に恐れ多い事ながら・・・」

「我が国にはもう、纏まった戦力は残されておりません!!!」

 当初こそ、海を隔てた隣国である“中統”即ち“中華人民統一国家共同体”の北部に攻め込んだ日本軍はそれからもう、破竹の勢いで勝利を重ね、戦線を拡大させて行ったのであるモノの、しかし同時に気が付けば、国際社会からの孤立の一途を辿っていたのだ。

 当初は友好的だったエイジャックスやガリア帝国もその後の日本の勢力と影響力の急拡大とに危機感と警戒感を強めて行き、また度重なる合衆国(ステイツ)の横槍や日本内部に巣くっていた“フリー・ピープルズ”等の暗躍によって皇国は全く、立ちゆかない岐路に追いやられてしまって行ったのである、そしてー。

 その後、遂に合衆国(ステイツ)との間に戦端が開かれるに至った時にはもはや、陸軍は疲弊しており、海軍も旧式装備を最新式のそれに、改める暇も持てぬままに、終わりの無い消耗戦へと突入するの止む無きに至ってしまったのであるモノの、そんな最中に。

 合衆国は遂に、“原子爆弾”と呼ばれる恐るべき悪魔の兵器の開発に成功するモノの、当初の予定ではこれは日本が世界に誇る、“連合艦隊”の主力戦艦群の真上に於いて炸裂させよう、との計画が持たれていたのであったがしかし、その後の戦闘で連合艦隊は徐々にその戦力を打ち減らして行き、最盛期には所属艦艇一千隻を数えていたにも関わらず、遂には“大和”、“榛名”以下十数隻のみが、それも辛うじて作戦行動可能と言われる程の窮地へと追いやられてしまう。

 そこで合衆国は目標を変更した、当時原爆は3発あったがその内、1発を首都である東京に直接投下し、東京都民諸共に政軍首脳部を抹殺しようと企てたのだ。

 目的は勿論、日本の継戦能力の簒奪にあると“表向きには”言われていたが、実際にはそんな事は無い、日本は体の良い実験台にされたのであり、なんとなれば“日本人などどうなっても構わない”と言う当時の合衆国(ステイツ)のエゴそのものの犠牲にされ掛けたのであった、ところが。

 それを救ったのがその当時の天皇を務めていた、“照和天皇”その人だったのであるモノの、彼は原爆の東京への投下作戦が明らかになると、ある秘密の巻物を持ってこさせて地下深くにある神殿に閉じ篭もり、そこで何時間も集中して祝詞を唱えた。

 すると。

 ちょうどその時に、その腹の中に“悪魔の兵器一号弾”を抱えて小笠原諸島上空を飛行していた合衆国(ステイツ)の誇る空飛ぶ超要塞“B-29”が忽然と姿を消してしまい、欠片も見付からなくなってしまったのだ。

 その周囲には間違っても日本軍機に手出しをさせない為にと当時、世界最強の呼び声も高かった傑作戦闘機“P-51マスタング”が何十機も張り付いていて護衛に当たっていたにも関わらず、その中央部分の爆撃機だけが唐突に消失してしまったのであるから、彼等の驚愕やパニックの様相は想像に難くないモノの、とにもかくにも。

 これに慌てふためいた合衆国(ステイツ)の首脳部は直ちに作戦を中止して事の真相の解明に努めたが、“日本側が何某かの超兵器を持っていて、それを使った可能性が高い”と言う事位しか、結局は突き止める事が出来なかったのである。

(日本側の持っている、その“超兵器”と言うモノを調べて突き止めなければ、原爆を何発製造しても無駄にされる。いや、それどころか。もしそれを自分達に使われでもしたら・・・!!!)

 焦った合衆国(ステイツ)首脳部は第三国経由で日本にある取り引きを持ち掛けて来た、“そちらの持っている超兵器を渡してくれれば講和に応じてやっても良い”と、そう言って。

 それを巡って連日連夜日本では会議が持たれたモノの、結局は既に戦力が底を尽きていた事と国民生活が限界に達していた事、そしてー。

 それを見て取った天皇の判断によって日本政府は極秘裏に合衆国(ステイツ)の提案を受け入れては、戦禍は収まり、無事に終戦を迎える事が出来た、と言う次第であったモノの、この時に天皇が使っていた巻物(祝詞)が合衆国(ステイツ)に渡って研究対象となり、IBM(アメリカ軍における原爆開発に於いて多大な貢献をし、それが元で財を築いた)等から“フォン・ノイマン”を始めとする優れた科学者、及び数学者等が集められ、それを先ずは音声解読して電子データ化する試みが始められた。

 音声と言うのは音波であり、要は“波動”の一種であったがそれを更に“電磁波”へと変換させる事に成功した彼等は、それと同時に、“あるモノ”の開発をスタートさせるモノの、それこそが“AIヒロヒト”、即ち後の“AIエンペラー”であり、それから実に140年の歳月を経て実用化に踏み切った、と言う次第であったのである。

 それが今、放たれようとしていた、目標は“ガリア帝国国際航空”、通称“エア・フランス”の旅客機である、ここに搭乗していたある人物が、第三国経由で“中統”に向かおうとしていたのだが、名前を“イーサン・ジョゼブス”と言う彼はアメリカ国防省内部に於いて、新型極超音速ミサイルの開発実験に携わっていた、優れた科学者の一人であった。

 しかし。

「・・・・・っ!!!」

(俺の実験データを、中統は合衆国(ステイツ)よりも高値で買ってくれるらしい。亡命も許可されているし、向こうへと渡ってしまえばもう、怖いもの無しだ!!!)

 未来型軍事機密を中統に手渡す代わりに向こうでの将来を約束されていた彼は、喜び勇んで北回りの中統行きエア・フランス第365便に飛び乗った、燃料は満タンで一度飛び立ってしまえば途中、幾つかの経由地を巡る事になるモノの、二度と再び合衆国(ステイツ)の地を踏むことは無いだろうと、彼は考えていたのである。

 ところが。

 “イーサンが、機密情報を持ち出して逃亡した!!!”と言う話は早くも国防省内部に於いて、知れ渡る事となった、なったがしかし、この時点で彼は既に機上の人となっており、ロシア経由で中統に向かっていた為に捕縛する事は難しい、そこで。

 遂には“AIエンペラー”の出番となったのであるモノの、起動したそれはその威力を120パーセント発揮しては見事に異世界への扉を開き、航空機をその乗客乗員ごと、その只中へと飛ばす事に成功したのであった。

 合衆国(ステイツ)の首脳部は漸くにしてホッと一息付くことが出来た、これでいい、これで自分達の新型ミサイルの開発計画書は守り通す事が出来た、やれやれだと高をくくっていたのである、しかし。

 彼等はロシアや中統を甘く見過ぎていた、彼等は知っていたのである、“AIエンペラー”の存在も、そして今回の件でそれが発動された可能性が極めて高いのだ、と言う事も。

「話は判ったが・・・。しかしなぁ、蒼太」

「全く以て信じられないよ、そんな裏話があったなんて・・・!!!」

 そしてその情報は、時同じくしてガリア帝国情報部をも掴む所となり、事件を受けてセイレーン本部の地下11、2階にぶっ通しで存在している“女王の間”に於いて、緊急招集されて来た彼女達“女王位”の面々に、その詳細はもたらされた、と言う次第であったのだ。

「その“AIエンペラー”と言うのは、眉唾モノなんじゃ無いのか?本当にそんな兵器が完成している、とするならば我々はもう、戦わずして合衆国(ステイツ)に屈服させられている事になるぞ?」

「いいやクレモンス。それが本当に起きてしまっているんだよ・・・」

(それにしても・・・)

 と僚友の言葉に応えながらも蒼太は暗い気持ちを抑える事が出来なかった、“AIエンペラー”の話は聞いていた、聞いていて尚、彼は何処か遠い世界の話だと、頭の片隅でそう思っていたのであったがここに来てそれが現実のモノとなって来た、“AIエンペラー”は確実に存在していたのであり、その力の程はハッキリとした脅威となって如実に現れて来ている、もう放ってはおけない、と言うのが実情であったのだ。

「しかし、なぁ。本当ならばとんでもない事だぞ?これは。合衆国(ステイツ)の奴等は野蛮だとは思っていたが、まさかアトミック・ボムを3発もジャパンに投下しようとしていたなんてな・・・」

「それだけでは無いぞ?クレモンス。これは世界史がひっくり返る事になる、なるほど日本のエンペラーにはそんな力が宿っていたのか・・・!!!」

「危機に際してその真理(エッセンシャル)の文言(スクロール)を唱えるだけで問題が解決するなんて、どんだけの霊能力をお持ちなのかしら、天皇陛下って・・・!!!」

「静かに!!!」

 再びざわめき始めた同僚達を、オリヴィアが一喝した。

「今後、新たな情報も入って来る事だろうが・・・。それまでこの話は伏せておくように。我々はいつでも今後の状況次第で即応出来るように状態を調えておくのだ・・・。解散!!!」

 “氷炎の大騎士”の号令一下、“彼女達”は瞬時に押し黙ったまま、部屋から退出してゆくモノの、後に残された蒼太、メリアリア、アウロラ、オリヴィアは揃って互いを見合わせる。

「あなた・・・」

「蒼太さん、他にも何か知っている事はありませんか?」

「話してくれ蒼太、君の知っている情報の全てを・・・!!!」

「ううーん・・・」

 妻達からの言葉を受けて、蒼太は流石に呻いてしまった、話してくれ、と言われても何処からどうやって話して良いのかが解らないのであり、彼自身も些か困惑してしまうが、しかし。

「僕が日本にいた頃に、知り合いの神官の方にお伺いした話だけれども・・・」

 彼はなるべく要点を搾って彼女達に今しがた全員に話して聞かせた話の、更に裏話を語り始めた、“AIエンペラー”の使う祝詞は聖徳太子の記した“秘密の文言”である事、それを当時の天皇陛下の精神状態及び精神構造をそっくりに再現させた人工知能に読み上げさせては対象物(人)を異世界へと飛ばしている事、等をなるべく解りやすく順を追って話し始めたのだ。

「・・・・・っ!!!」

「信じられません・・・!!!」

「AIエンペラーとは人工天皇の事だったのか・・・!!!」

「・・・・・」

 そんな彼女達の反応に、蒼太も押し黙らざるを得なかった、元々ステイツと言うのは“フリー・ピープルズ”に加えて“ハウシェプスト協会”が中心となって裏から密かに形作られて行った国である、その事からも解るように科学技術を発達させる一方で神儀や魔術的な物事に対しては、並々ならぬ感心を以て応対してきたのであって、それは現在に於いても些かも変わる事無く継続されている次第であった。

「・・・・・」

(恐らくは、AIエンペラーの人工知能はその脳波を常時δ波に設定されているに違いない。僕達が術式を用いる時の脳波形態だけれども、それだけでは決して無いぞ?あの伯家神道の神官の言った通りに、“彼”は自覚する事に成功したのだ。・・・即ち)

 “自らを神であると”と蒼太は思うが彼の推理は大凡は当たっていて“AIエンペラー”がその持てる力を発揮する為に必要なのは、先ずは一つ目は秘密の真言の書かれている巻物であり、二つ目が脳波をδ波以上の形態レベルに持って行く事、そして三つ目こそが最大にして最後の難関である、“自らを神であると認識出来るか否か”であったのであるモノの、これも想像をすれば解りやすい話であって、優れた霊力と術式脳(δ波脳)を持っている人物が自らを“神である”と一片の疑いも無く信じ込んだ時、一体何が起きるのか、と言えばそれは“奇跡”と言う現象を引き起こす事が可能となって来るのである。

 人間と言うのは誰しもが、思いを現実化させる能力(ちから)を持っており、それは特にγ波よりはβ波、そしてβ波よりはα波、θ波、δ波と集中すれば集中した分だけ発揮されやすくなる、と言われているのだ(現に霊能力者や超能力者の脳波を調べてみると、彼等が能力を使っている最中は全身がリラックスした状態でありながらしかし、脳の全体領域に於ける著しいまでの活性化が報告されている、と言う)。

 であるからして、AIエンペラーの脳波は間違いなくδ波の波動領域か、それ以上に設定されている筈であり、その状態で自らを“神である”と信じて疑わずに、“真理の言の葉”が描かれている巻物の祝詞を、それも集中して唱えれば、どんな事が起きるのかは想像に難くなかった。

 蒼太の持っている奥義である“神人化”もまた、それらを応用した秘術極意であって、だからこそ蒼太にはその発動された祝詞の力の凄まじさと言う事が、嫌と言う程良く解ると言うモノであったのだ。

「実はね?このAIエンペラーの開発は恐ろしく難航していたそうなんだ・・・」

 “それと言うのも”と蒼太は続けた、“どんなに完全な人格を模した人工知能を繰り返し与えても、AIは自らを神であると信じ切る事が、結局は出来なかったそうなんだ”と。

「・・・・・?」

「それって・・・!!!」

「では一体、どうやって自らを神だと認めさせたのだ?」

「そこなんだけども」

 と妻達の言葉に蒼太が応えた、“敢えて真逆を行ったらしいんだ”とそう告げて。

 即ち。

「敢えて“人としては”不完全な人格のデータを与えて再度実行した所、“彼”は漸くにして自らを神であると信じ切る事が出来たらしいんだ。それで“取り敢えずの”完成をみたんだってさ。それが今から60年前の、西暦2020年前後の事らしいんだ、それから実に60年掛けて改良に改良を重ねて来ていた筈だから、もう実用化レベルに達していたとしても、少しもおかしく無いんだよ」

「・・・・・っ!!!」

「AIの、神・・・!!!」

「人や物を、いつでも自由に異次元の彼方へと吹き飛ばす事が出来る“存在”か、厄介だな・・・」

 口々に頷き合う彼女達を見つめつつ、蒼太もまた、胸中に複雑な思いを抱えていた、もしも万が一、AIエンペラーが120パーセントの威力で稼働している、とするならばそれはもう、人工的に創出された“神威”としか言いようが無く、従ってその威力も決して侮る事が出来るモノでは無い、と言う事になるのであり、そしてもし万が一、それがハウシェプスト協会の様な連中の手に渡ってしまえば今後ますます、戦局が厳しいモノになる事は避けられない見通しとなる、用心するにしくはない。

(決して有り得ない話では無い、何故ならば合衆国(ステイツ)は元々、“フリー・ピープルズ”と“ハウシェプスト協会”によって造られている国なのだからな・・・!!!)

 そこまで考えた時、蒼太は今後の為に今の内から“ある事”をやっておかねばならないと、硬く心に誓ったのである、即ち。

 自身や妻達が万が一、異次元に送り込まれてもそれを直ちに見付けて連れ帰る事の出来る態勢の確立を、最大急務とする事を、である。

 否、もっと解りやすく言ってしまえば蒼太自身は良い、例えどこに送り込まれたとしてでも“神威”を発動させればたちどころに帰って来る事が出来るのであるが問題は妻達である、彼女達は“神威”を使えないので、そう言った術式を教えたり、何某かのアイテムを持たせておく必要があるのだ。

「・・・・・」

(一応・・・。“万が一”に備えて“瞬間転移呪文”でも教えておいた方が良いだろうな、そうすれば時間軸を飛び越えて帰って来る事も出来る筈だ・・・!!!)

 “それに”と蒼太は思った、“御守りのアイテムを持たせておけばまず問題は無いだろう”と、そう考えると蒼太は早速にして彼女達に詰め寄っては今後の対応を話し合い、合わせてそれらに付いての準備をも早急に執り行う事としていった、何しろ時間は限られているのである、出来うる限りに最短で手筈を整えるのにしくはない。
ーーーーーーーーーーーーーー
 今回のお話は、これだけだと何だか解らないのですが読者の皆様方におかれましてはもし覚えておいていただけると助かります(ちょっとした伏線になっているのです)、ちなみにAIエンペラーとも戦う事になります(これ以上はネタバレなので言えませんが、AIエンペラーがこっちに来るのです)。

 どうやって戦うのか、どうやって打ち勝つのかは追々、語られて行く事になるでしょう。

 ちなみにもう一つ、物語を読んで下さった方々には解っていただけているかとは思っておりますが、“この世界の日本”にはだから、原爆等と言うモノはただの1発たりとも落とされてはおりません(私は原爆って大嫌いなので。あと核兵器なんかも全て無くなってくれれば良いと心底願い、思っております)、そう言う事で御座います。
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