メサイアの灯火

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神世への追憶編

第二次エルヴスヘイム事件20(アウディミアの消滅と女神達の帰還)

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 このお話は(もしよろしければ)第三部の前半部分に出て参ります“ハイラート・ミラクル”及び、同じく第三部の終盤編に収録されている“因縁との決着”と併せて御覧下さりますと、より理解がし易かろうかと思われます。
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 蒼太が命懸けでメリアリア達に施した“神人化”はその結果として信じられない程の影響と力とをメリアリア達にもたらし、また蒼太自身にも数多の恩恵を与えていた。

 その一つが傷を癒すのみならず体力・気力の完全回復だったのであり、それともう一つがー。

 “神人化”の奥義とされる“超神化”の道筋を、無言の内に彼へと指し示した事であったが、この“超神化”を果たすには“神の領域の更なる深み”に至る事は勿論なのだが、それに加えてもう一つの“性の完全なる超越”が必須条件となってくる。

 その事を果たして“鹿島の神”は蒼太に直には伝えず、ただ“時期が至れば自然に気付く”とだけ告げて彼を送り出したのであるモノの、今回の事で蒼太はある確信を持ってその事を直感したのであった。

 何故ならば。

(・・・・・っ。す、凄い。本当に凄いぞ?メリー達の“神人化”は。元からあの子達は“準神威”とも言うべき“宇宙の力”を使えていたから上手く行くとは思っていたけれど、それが此処までの効能をもたらすなんて!!!)

 そう思って蒼太はアウディミアと遙かなる空中に於いてにらみ合っているメリアリア達に視線を送るが彼女達は今、完全では無いにしても“性の超越”を果たし掛けていたのであり、“半超神化状態”とでも言うべき神況を顕現させていたのであった。

 それは取りも直さず、蒼太の持つ“男性性”とメリアリア達が内包していた“女性性”とが融合して混ざり合い、“性エネルギーの統合”が引き起こされ掛けていたからにほかならなかったが、ただし真に以て残念ながら今回のそれは極めて暫定的且つ不安定なモノであり、真の“超神化”には至らなかったのである。

(やっぱり・・・。無理矢理に“神人化”を施してもダメなんだ、何故ならば本人達に男神女神としての自覚が足りないから性意識と性エネルギーとが完全な形で発現していない。だから“性の統合と超越”とが不完全な形で終わってしまっている・・・!!!)

 “それでも”と蒼太は思った、“ここは最早、メリー達に賭けるしか無い!!!”と。

(頼むよメリー、アウロラ。オリヴィア!!!何とかアウディミアを蹴散らしてくれ。そして・・・!!!)

 “地球に再びの安らぎを・・・!!!”、そう願って止まない蒼太であったが実は彼にはもう一つだけ、心配している事があった、それは。

 “メリアリア達が神人化していられる時間的猶予がどれ程のモノになるのか皆目見当が付かない”と言うそれだったのであり尚且つ“それをアウディミアに知られる事だけは絶対に避けなくてはならない!!!”と言うモノだったのである。

 蒼太の見た所、女神化したメリアリア達と大魔女王となったアウディミアは共に9次元~10次元に位置しており、ただしメリアリア達の方が不安定ながらエネルギー出力は上回っている、と言う状況である、勝機は充分にあると言えたが、しかし。

(とにかく、今はメリー達が勝ってくれる事を祈るしか無い。どうかどうかアウディミアを倒すまで神力よ、消えないでくれよ!!?)

 “神の御加護を!!!”と改めて希う青年であったが、そんな彼の上空ではー。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「ちいいいぃぃぃぃぃぃ・・・っっっ!!!!!」

 メリアリア達とアウディミアの両者は睨み合ったまま対峙していた、女神達には全身から迸る、輝く光の波動領域が存在していてそこには魔の者共は入る事すら出来なかったが、一方の大魔女王もまた、“黒雲のオーラ”を纏っておりその為、二つの力のぶつかり合う境界線ではエーテルがプラズマ化して弾け飛び、“バチバチバチィッ!!!”と言う爆雷現象がそこかしこで巻き起こっていた、放電素子同士が衝突する事で周囲の温度は急速に高まりを見せ、摂氏数万度を軽く超える小対流圏が発生していたのである。

 殆ど互角の波動法力と魔導爆力とを誇っていた彼等はしかし、数的優位性と潜在エネルギー量ではメリアリア達に軍配が挙がるモノの、全体を通しての経験値、即ち“高次な存在としての熟練度”そのものに関するならばアウディミアの方が上であった、その為。

 アウディミアはまず、三柱の女神達がその力を熟せない内に一気に勝負を決めようと、蒼太に対してやったように漆黒の激しい稲妻を招来させて彼女達に落雷させる、すると。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「くうぅぅ・・・っ!!!」

 それはメリアリア達が無意識の内に放っていた光の波動領域に阻まれて決定的なダメージを彼女達に与えられなかったがしかし、アウディミアにとってはそれで充分だった、女神達がその攻撃に気を取られている内に彼女は先ずはメリアリアに接近して己の自慢の蛮刀を彼女に向けて振り下ろしたのだ、瞬間。

 “バッチイイイィィィィィンッ!!!!!”と言う物凄い音がしてアウディミアの放った一撃がまたしてもメリアリアの波動領域表面で受け止められるが、それを見たアウディミアは思わず“チイィッ!!!”と舌打ちした、こうなる事は可能性としては理解していたモノの、実際に攻撃が受け止められたのはショックであった。

 そこで。

 アウディミアは次の手に打って出ることにした、なんと闇のオーラを鞭状に仕立て上げるとそれで光の波動領域体ごとメリアリアを縛り上げ、最後は“無廟宮”の一番高い尖塔へと思いっ切り叩き付けたのだ、しかし。

「・・・・・」

 メリアリアは無事だった、彼女の放つ光の波動領域は極めて強力な結界の役割を果たしていて闇のオーラや悪意ある攻撃等を、全く持って受け付けなかったのである。

「・・・・・っ!!!!?」

「くうううぅぅぅぅぅっ!!!!!」

 思わず歯軋りをするアウディミアに対してメリアリアは先ずは“信じられない!!!”と言う顔付きで自らの体を眺めていた、あれ程強く激突させられてもダメージ一つ無い所か寧ろ全身から“これでもか”と言う程にまで力が漲り続けて来るのである、自分を寧ろ抑えているだけで精一杯な状況であったのだ。

「・・・・・」

 そんな自分自身を見つめている内に改めて。

 メリアリアは思った、“蒼太は凄いわ!!!”と、だってこんな比類無き力を隠し持っていながらも決して驕らず、また自分自身に飲み込まれる事もせずに平然としている、自然体で居てくれるのだ、自分に果たして出来るだろうかと、そんな事を考えるが、それを。

(いけない、いけない!!!)

 と、慌てて頭(かぶり)を振って頭の片隅へと押しやっていった、今必要なのは自分を律する事以上にアウディミアを征伐する事である、少なくとも蒼太が今、この場にいたなら絶対にそう言っただろうし、それに何より。

(アイツ・・・。蒼太をあんな目に遭わせるなんて、絶対に許せない!!!)

 自身の最愛の夫を無慈悲にも痛め付けられた怒りと悲しみとがメリアリアを支配して、それが余計にアウディミアに対する腹立ちとなって噴出していった、だから。

「よくも蒼太を、あの人を」

「あんなになるまでいたぶってくれましたわね」

「覚悟は出来ているだろうな・・・」

「・・・・・っ!!?調子に乗るなよ、小娘共が!!!」

 一先ず、仲間達の元へと帰還を果たしたメリアリアは彼女達と共にアウディミアへと憤怒の眼差しを向けるが、そんなメリアリア達の怒りの視線と光のオーラの圧迫を受け続けて些か気圧されてしまっているアウディミアが苦し紛れの怒声を発するモノの、すると直後に。

 彼女の周囲に“パリパリッ”、“バリバリィッ!!!”と言う放電現象が巻き起こり、続いて先ほどのモノよりも激しい漆黒の稲妻が出現して辺り一面を覆って行くが、メリアリア達は元より、アウディミア程の次元クラスになるとわざわざ印を結んで術を顕現させなくとも、その意志を発するだけで時空間に己が波動法力や魔導爆力を展開する事が可能であった。

 勿論、ちゃんとした手順を踏んだ方が威力は大幅に跳ね上がるが先ずは小手調べを兼ねた威力偵察を“黒雲の魔女”は実行してみせたのである。

「そらあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

「・・・・・」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

 侮辱と敵意の込められたそれはしかし、最大出力で解き放たれたモノであったが結局、メリアリア達には届かなかった、その遥か手前で彼女達の放つ光の波動に掻き消されてしまい、境界面を空しく撫でるだけだったのだ。

「ならばこれはどうだあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 続いてアウディミアは両手を宙に翳して赤色の雷光を帯電させている暗雲の、それも巨大な塊を形成させるとそれをメリアリア達目掛けて投げ付けるモノのそれも全くの無駄であり、攻撃が彼女達に何らかのダメージを与える事はついに無かったのである。

「・・・・・っ。ううう、おのれえええぇぇぇぇぇっ!!!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 悔しさをそのまま露わにするアウディミアに対してメリアリア達もまた、憤りの感情をそのまま面持ちに出していた、“罪無き人々を苦しめる元凶”と言う事もあるにはあったが何よりかによりの理由としては、やはり蒼太を滅茶苦茶になるまで踏み潰した事に対する腹立たしさの方が遥かに勝っていたのであった。

 ところが。

「まだまだあああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 そんな彼女達に対して今度は、アウディミアは再び黒雲のスーパーセルを遙かな上空に出現させるとそこから巨大でトゲトゲしい魔雹を一気に降らせてその礫をメリアリア達へと叩き付けるが女神達は最早、微動だにせずにそれを黙って見つめ続けているだけだった。

「・・・・・っ。く、くそぅ、ちくしょうっ。ちくしょおおおぉぉぉぉぉーーーっっっ!!!!!」

 己が無念さを滲ませ周囲の空間へと当たり散らすアウディミアだったが、メリアリア達の我慢の矜持もそろそろ限界に達しようとしていた、“もう良いだろう”と彼女達は考える。

 アウディミアはこれまであまりにも罪無き命を殺し過ぎて来たと、神の身体となり過去も現在も未来すらも一瞬にして見渡せるようになった彼女達はいよいよその鉄槌を下す事にして、だから。

 女神達はここで今度は自分達から動く事にした、先ずはアウディミアを逃がさないようにする為に巨大な三角形の包囲網を形成する目的でそれぞれが三方に移動しては周囲に結界を張り巡らせ、しかる後に最初はオリヴィアが攻撃を開始する。

 先ずは。

 “黒雲の魔女”がそうした様に、オリヴィアもまた小手調べと神人化に体を慣らす目的でちょっとした光の輝煌弾を発生させて大魔女王と化したアウディミアに向かって解き放つモノの、それは彼女が纏わり付かせている暗闇のオーラに飲み込まれて瞬く間に四散してしまった。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「ならば次だ、はあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 続いて彼女は自らが普段から良く用いている“閃光呪文”の集束されたモノをアウディミアに対して指向し、見事に命中させるモノの、それもまた結果は同じ事であったのである。

「・・・・・」

「・・・・・」

「どうやら先ずはあの」

 “暗闇のオーラを何とかしなければならないらしいな・・・!!!”と言うオリヴィアの言葉に他の二人も頷くと、三人は“黒雲の魔女”を囲ったまま共同で自身の中の光の神力を、祈りを込めてこれ以上無い程にまで練り上げて行く。

(私の中の神の部分よ、お願い。応えて!!!)

(此処で何としてもアウディミアを止めなければ、更なる犠牲者が出てしまう!!!)

(彼女を光の輝きの中へと還す、その為に力を与えてくれ!!!)

 “何よりも”と彼女達は最後に一際強く思い、そしてこれ以上無い程にまで真摯に願った、“最愛の夫を救うために、あの人を守り抜く為にお願い。私の中の神様!!!”と。

 そんな青年への真心と真愛(まな)に満ち溢れていた祈りの思念は何の雑意も汚恣も無くて、ただただひたすら彼の為に“今”、“この瞬間”のみに集約し尽くされたモノであり女神達の持っているピュアな心根を芯から思いっ切り打ち振るわせた、それは同時に魂そのものが底の底から振動している事を表していたのであるが、そこに自らが高めたる“純正神力”が流れ込んで一体化し、結果として非常に高貴な光の存在としての彼女達をこの世に顕現させたのである。

 それは元々のメリアリア達の次元を遥かに隔絶させて、とうとう12次元の扉を開け放ち、その“超越領域”とでも言うべき光の波動が彼女達に更なる飛躍的な“奇跡”の発示を可能とさせしめたのであった。

「・・・・・っ!!!」

(な、なにぃっ!!?バカな、この力は・・・!!!)

 その現象に気が付いて、思わず狼狽するアウディミアであったがそんな彼女に対してメリアリア達は力を合わせて三柱で同時に“光祈なる息吹”と言う超神業を放った、それは。

「ぐっぎゃあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!?な、なんだ?この光りはっ。私の全てを劈(つんざ)いて闇が消えて行く、力が抜けるうううぅぅぅぅぅっっっ!!!!!!!」

 想像を絶する程の神々しさで“黒雲の魔女”を照らし尽くしてその結果、アウディミアは持っていた“黒雲のオーラ”と魔力とを、すっかり掻き消してしまったのである。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「そ、そんなっ。バカな・・・っ!!?」

 その出来事に驚き戸惑うアウディミアであったがそんな彼女の感情や反応等何一つとして気にする事無くメリアリア達はすっかりと無力化されてしまった“黒雲の魔女”に対して追撃を開始した。

 1番手はやはり、オリヴィアだった、彼女の得意としているのはパルサー呪文であり、これは天文規模での極めて強力な“超エックス線ビーム砲”を照射するのと同義語的威力であったがその思いっ切り高次元、超光速化したモノを剣の切っ先から“黒雲の魔女”目掛けて迷わず撃ち放ったのだ。

 それは殆ど刹那の合間に行われたワンサイドゲームだった、その猛然たる光の迸りを受けたアウディミアは驚く事すら出来ぬままに遥か彼方まで吹き飛ばされ掛けるモノの、結局は途中で結界に激突して空中を空しく漂ったがそんな彼女に対して次は。

 アウロラがその中核に神力を用いた星震魔法をロッドの先端から発動させて、アウディミアを更に追い詰めて行く。

 強烈無比なる爆発が辺りに広がって行く中でギリギリ、自我を保っていたアウディミアは徐々に己の意識が薄らいで来るのを感じていた、メリアリア達の光り輝く神力の超越奔流の只中で暗闇の霊体波動は四散して行き、浄化されて煌めく粒子へと変わっていった。

 最早存在し続ける事が億劫になる程の超絶ダメージを負っていたアウディミアにとどめを刺したのがメリアリアであった、彼女は三人の中で唯一、武器を違えていてその身に剣を佩いていた、この時メリアリアが扱ったのは蒼太の愛刀、“ナレク・アレスフィア”だったが、それを用いてー。

「・・・あの人の剣。あの人の業(わざ)で逝きなさいっ!!!」

 そう言うとメリアリアは剣を引き抜き、上段に構えてそこに自らの神威である、極限にまで高次元化された白銀色に輝く絶対熱、即ち“天性の炎”を纏わせる、そうしておいてー。

「天生・極炎煌っ!!!」

 アウディミアに肉薄すると同時にそう叫んで技に命を吹き込み様に、彼女目掛けて一気呵成に振り下ろした、するとその直後にー。

「うぶあっぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーー・・・・・・・っっっっっ!!!!!!!!!!」

 強大な事この上ない程に眩いばかりの光の炎が“黒雲の魔女”の頭上に振り下ろされてその超然たる威力と波紋に“アウディミアだったモノ”は最後にそう絶叫してこの宇宙から永遠に消滅していった、後にはキラキラと輝く光の残留量子がその辺り一帯に漂い浮かび、それはやがてこの“トワイライトゾーン”の只中へと茫失していった。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 念の為にと“残心”を取っていた女神達だったがやがて完全にアウディミアの思念が消え失せたのを感じ取ると漸くにして互いにニッコリと微笑み合い、ハイタッチを交わしてそしてー。

 ゆっくりと愛しい夫の待っている地上へと降臨していった、やがて足が地面に着くとー。

「蒼太っ、蒼太ああぁぁぁっっっ!!!!!」

「蒼太さんっ、蒼太さんっっっ!!!!!」

「蒼太、良かった。本当に・・・っっっ!!!!!」

 三人はそれぞれに夫の名を呼び、そこで自分達の闘いを見届けてくれていた青年に抱き着いては頬擦りをしたり、唇に唇を重ね合わせたりして散々なまでに甘えて来る。

「あはははっ。皆無事で良かった、しかし本当によくやってくれたよ!!!」

「自分で言うのも何だけれども本当に信じられないわ!!?力が後から後から湧き出して来て抑えているのが大変なのよ?」

「身体自体も凄い生命力に溢れていますね、それに空を飛ぶことまで出来るなんて!!!」

「それだけじゃないぞ?現在の事は勿論だが意識を向けただけでその対象の過去も未来も丸わかりになる。凄い能力だよ、これは・・・!!!」

 そう言って花嫁達が尚も女神としての力を思う存分楽しもうとしていた、その時だった。

 不意に煌びやかな光りが彼女達を覆うと同時に変身が解かれて元の状態へと戻ってしまっていたのである。

「あ、あれぇ・・・っ!!?」

「そんな・・・っ!!!」

「まだ見ていないモノがある、と言うのに・・・っ!!!」

 口々にそう言い合うメリアリア達であったがしかし、それを見ていた蒼太は“やっぱりな・・・”と納得していた、不完全な“超神化”に対する揺り戻しが来たのであり、元から不安定だった彼女達の神の身体は強制的に人のそれへと戻ってしまった訳であった。

「・・・・・」

(危ない、所だったな・・・!!!)

 “嘘でしょうっ!!?”、“信じられませんっ!!!”、“もっとなっていたかったのに・・・っ!!!”等と姦(かしま)しく喋くる三人を眺めつつも蒼太は内心でホッと胸をなで下ろしていた、もし後もう少し、アウディミアとの決着が遅ければ逆襲されていたのは此方のほうであり、間違ってもこんな凱旋気分等、味わえなかったに違いない。

(メリー達のお陰で何だか楽に勝てたような気分になっているけれど・・・。やっぱり恐ろしい相手だったんだな、“黒雲の魔女”は!!!)

 そう思い立つと蒼太は改めて花嫁達の方を見るが、と、一方の彼女達はそんな事など露知らず心底口惜しそうな表情を浮かべていた。

「蒼太!!!」

「蒼太君!!!」

「身体の具合は如何かな?婿殿・・・!!!」

 それでも蒼太がやっと安心して一息着いているとそこにはー。

 ハイ・オークの群れを撃滅して来た義父達やその夫人連中の姿があった、彼等もまた蒼太の容態が心配であったのと、自分達の娘に起こった現象が信じられずに一目散にこうして駆け付けて来たのである。

「どうやら全員無事なようだな、それは何よりだったけれども・・・。ところで敵は粗方始末したが、しかしこれからどうするね?」

「これ以上、ここにいてもやること等は何も無いと思うがなぁ・・・っ!!!」

「そうだ、早く現実世界へ帰ろうでは無いか。婿殿・・・!!!」

「そうですね!!!」

 娘達とその婿の安泰なるを確認した義父達からもたらされるそんな言葉に対して蒼太も頭を上下に振って応えるモノの確かに、これ以上この空間に留まっていてもやるべき事など何も無く、ただ単に時間を悪戯に浪費するだけである、撤収するにしくは無かった。

「帰りましょう。それにこの城はアウディミアの魔力伝導によってこの場所に形作られ、浮遊していた訳ですからそれが無くなってしまった今となっては・・・!!!」

 蒼太がそこまで言い掛けた、その時。

 突然、“ゴゴゴゴゴ・・・ッ!!!”と言う轟音と同時に城垣が崩れ始めて次元の狭間の彼方へと消失して行く。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「な、なに?これは・・・っ!!!」

「・・・いけない!!!」

 “皆、僕の側に集まれ!!!”と蒼太が叫ぶがすると事態をまだ飲み込め切れていないノエルとレアンドロがキョトンとした顔で“何で?”と聞き返して来る。

「訳は後で言うからっ。早くしてっ!!!」

 蒼太に再度急かされて漸くにしてノエル達もまたただ事では無い事に気が付き、急ぎ足で彼の側までやって来る。

 その時にはもう、他の面々は全員が集結し終えていた所であり彼等が一番最後となった、それを見た青年はー。

ディズロ・キャ空間ッシオーネ転位!!!」

 と叫んでその場で時空間転位の術式を発動させて、自身を含めた全員を現実世界へと退避させていったのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
 アウディミアに最後のとどめを刺す時にメリアリアちゃんが使ったのは“天生・極炎煌”と言う技です。

 これは本来ならば、“ハイラート・ミラクル”を使用した際に蒼太君が用いたモノだったのですが(ちなみにこの場を借りて言わせていただければあれは蒼太君とメリアリアちゃんとの“ハイラート・ミラクル”を果たした際の合体技です)、それを何故メリアリアちゃんも扱えたのか、と言えばそれは身も心も蒼太君と婚(くな)いで、魂の底の底までも繋がり合っていたからです。

 これは“仲の良い夫婦は互いに同調して影響を及ぼし合い、結果として行動や状態がリンクして似通って来る”=通称“ミラーリング”と言う現象に端を発するモノでして、要するに自身と相手の奥深い領域まで波動を一体化させて存在そのものを重ね合わせる事により二人で力や命、または技や精神を共有する“奇跡”です。

 実は蒼太君はそれを一度、神人化したまま使用しています(メイヨール・デュマと決着を着ける際にです)、では蒼太君はあの時に性を超越して“超神化”出来ていたのでしょうか?

 残念ながら答はある意味“YES”であり、また“NO”でもあります、何故ならば彼はあの時にはまだ“超神化”についてどうすればそれに成れるのか、と言う確固たる道筋を見出せてはいませんでした、その為に自分自身の男神としての認識が甘く、またメリアリアちゃん達も女神としてのそれが不十分だったので性意識、性エネルギーの充填が完全では無くてその結果、中途半端な“半超神化状態”が生み出されてしまっていたのです(それでも存在領域が10次元には届いていた為に、8次元の表層止まりだったデュマに対して圧倒的な力を行使する事が出来ましたが)。

 そして更に言わせていただくのならば、本来メリアリアちゃん達やアウディミアクラスの高次的存在になると、その力を充分に発揮できる専用の術式が必要になって来ますが、それが“神威”や“獄法”と呼ばれるモノであり、これを間近で発動されて直撃した場合は(互いの次元が互角ならば特にそうなのですが)如何に“光の結界”や“闇のオーラ”があっても防ぎ切れません←ただメリアリアちゃん達やアウディミアは“神威”や“獄法”を扱え無いので互いに決め手が無くなってしまい、結果として勝負が膠着状態に陥り掛けてしまったのです(反対にだから蒼太君はメイヨール・デュマとの間にあれ程熾烈な闘いを繰り広げていったのですね)。

 ちなみにあの時、蒼太君は続けて“明光・星界嘯”と“閃永・瞬絶華”と言う二つの技も用いていますがこれはそれぞれアウロラちゃん、オリヴィアちゃんとの“ハイラート・ミラクル”を果たした際の合体技です。

 それを神人化状態で使えた、と言う事は蒼太君もまた、深性無意識下に於いては自身の中に眠る“始原の神”の領域にアクセスが為され始めると同時に“男性性”と“女性性”の性意識及び性エネルギーの統合が出来掛けていた、と言う事です(“本物の超神化”までもう一歩です、頑張れ。蒼太君!!!)。

 またもう一つ、お伝えしたい事が御座います、これは蒼太君もメリアリアちゃん達もそうなのですが、“神の肉体”は人間のそれとは比べ物にならない位に頑丈です(耐久力が数十倍以上はあります)、なので作中でメリアリアちゃんが壁に激突させられても平然としていられたのには確かに、光の結界で守られていたからは勿論ですが、もう一つにはそうした理由があるのです。

 その辺りの事も追々、書かれて行くと思います。

                敬具。

          ハイパーキャノン。
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