メサイアの灯火

ハイパーキャノン

文字の大きさ
上 下
322 / 405
神世への追憶編

“超神化”

しおりを挟む
 それから更に3ヶ月程が経ち、蒼太は一層の修業に励んでいたモノの、未だに“超神化”への道筋は見えてきてはいなかった、そんな中で。

 青年はそれでも別段、焦って失敗するような事はせずに流れのままに身を任せていたのであるモノの、これは気を急くと却って足下が見えなくなり危険だと言う事を彼が熟知していたからに他ならなかった。

 勿論、精魂は入れて訓練には打ち込んでいたのだがそれとは別に蒼太が半年ほど前から日課としていた事象があったのである。

 それは“祈る”事であった、彼はもっぱらメリアリアの為に、そしてアウロラとオリヴィアの為に、“彼女達が幸せであるように”、そして“今後ますますの霊的進化を遂げられるように”と毎日のように密かに、そして真剣に偽りなき祈りを捧げていたのだ。

 祈る事は=でその人に対して真心を尽くす事であり、そしてそれは更に言うならば“愛する”と言う事と同義語であった、“自分自身を愛すると同時に相手に対して最大限の真心を尽くす”、蒼太はその大切さを知っていただけでなく、キチンと実践してもいたのであるが、それが漸くにして“叶い始めて来たかな?”と彼が感じ始めていたある日。

 遂に“彼等”はやって来た、その日も蒼太は朝から修業に邁進しており、メリアリア達が見守る中で“時空間断絶用”の結界を張り巡らせつつも“神人化”を果たす事に成功していたのであったモノの、彼が神となった直後に青年は自分達に接近して来る悪意と災いの波動の塊を感知していたのであり、その余りの強烈さに思わず背中に悪寒が奔ってしまった。

「・・・・・っ!!!」

(な、なんだ?これは。“神の体”になっている筈の僕を以てしても冷や汗が出るのが止められない・・・!!!)

 戦慄を覚えつつも青年はその場にいた全員に素早く“構えろ!!!”と指示を出した、“これから先は一瞬たりとも油断するな!!!”とそう言って。

「メリー、アウロラ。オリヴィア!!!最大火力で迎撃するんだ、これから“敵”がここに来る。それも相手は二人以上いるぞ、油断するな!!?」

「・・・・・?」

「・・・蒼太さん?」

「一体、何を言って・・・!!!」

 夫の言葉に妻達がキョトンとなって、彼に“どうしたのか?”と尋ねようとした、その時だ、周囲一帯の時空間がグニャリと歪んで天地が反転する感覚を覚え、辺りから色彩や命の息吹が消え去って行く。

 これは蒼太とメリアリアには覚えがある出来事だった、即ち彼等は皆揃って魔空間である“トワイライトゾーン”に落とされ、幽閉されてしまったのである。

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「なんだっ。これは・・・っ!!?」

 4人が警戒しつつも気配を四方に探っているとー。

「初めましてだな?ソウタ・アヤカベ。まだこんな若造だったとはな!!!」

 北の方角から強大なる魔の波動が徐々に近付いて来て、その正体が判明した時、蒼太達は思わず愕然となった、彼等から見て北にはちょっとした台地となっており、切り立った崖が広がっていたのであったがその上に赤いスーツに身を包んでいる、短髪の1人の女性が立っていたのだ。

 歳の頃は三十路半ばと言った所か、スラッとした体型で細身の長身、蒼太よりも背丈があった、顔は陸上選手のような風貌でやや頬骨が浮き出ており痩せこけているモノの、眼光はまるで此方を射抜くかのような鋭さに満ち満ちている。

「・・・・・」

「・・・・・?」

「・・・ど、どなたでしょうか?」

「私達の知り合いでは無いが、一体・・・?」

 4人が互いに顔を見合わせあっているとー?

「察しが悪いな。まあ唐突な事だから仕方が無いと言えばそれまでだが。私はリサ・メイヤーズ。ガーター騎士団の現総長でありまたの名を“キング・カイザーリン”と言う者だ・・・!!!」

「・・・・・っ!!?」

「キ、キング・カイザーリンッ!!?」

「キング・カイザーリンですってっ!!?」

「貴様があの悪名高い・・・っ!!!」

 そう叫んで改めて身構える蒼太達に対してリサ・メイヤーズはあくまでも余裕綽々だ、その表情は何処か楽しげであり、ともすれば遊んでいるようにも見て取れた。

「貴様達のお陰で部下達が全滅に等しい大損害を被ったのでな。こうして私達が自ら出向いて来てやった、と言う訳だ・・・!!!」

「貴様が、ゾルデニールの・・・!!!」

「ほうっ!!?」

 その名前を口にした蒼太に対してリサ・メイヤーズは意外そうな顔をした。

「よく知っていたな、神から聞かされたか?さすがは“伝説の大和民族”なだけはある。もっとも・・・」

 メイヤーズは叫び様、己の魔力を集約させた、“その伝説の足跡も今日、この場所で死に絶えるがな!!!”とそう言って。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「くうぅぅ・・・っ!!!」

「な、何という・・・っ!!?」

 その峻烈なる暗黒のオーラの奔流に、驚きを隠せずにいた4人であったがそんな彼等の目の前で。

 メイヤーズはレプティリアンの姿となると、有無を言わさず彼等目掛けて突っ込んで来た、するとそれに対して。

「神威・“黄雷雪花”!!!」

 神人化していた蒼太が殆ど同時に反応して術式を発動、キング・カイザーリンと化したメイヤーズに神の一撃を叩き付ける、しかし。

「・・・・・っ!!?」

「無駄だ・・・!!!」

 神威の直撃を受けた筈のメイヤーズは傷付く所か却って活き活きとしてしまっており、醜悪な笑みすら浮かべていた、そこで。

「神威・“王雷絶華”!!!」

 再び青年が神業を発動させるが結果は同じでカイザーリンは全くと言って良い程傷付かない。

「・・・・・っ!!!」

「ハハハッ!!!どうした、大和民族。その程度か?」

 カイザーリンは醜悪な笑みを浮かべつつも、尚も一歩一歩蒼太目掛けて歩を進めて来るモノの、それを見て青年は一瞬で理解した、“やはりコイツらと今の自分とでは次元が違う”と。

 だから此方の放った衝撃エネルギーは全て弾かれ、押さえ付けられて無効化されてしまうのだ、と。

「くううぅぅぅ・・・っ!!!」

「どうした大和民族よ、まさかこれで終わりではあるまいな?まだまだ奥の手が残されているのであろう?それをすべからく見せてみよ!!!」

「ならば喰らいなさい、“絶対熱”っ!!!」

「ぐおおぉぉぉ・・・っ!!?」

 苦しそうな表情を浮かべる青年とは対照的に、レプティリアンの顔付きには汚らしい自信が漲っていたモノの、それを見かねたメリアリアが咄嗟に蒼太とメイヤーズの間に割って入り、自身の奥義である“絶対熱の極意”を発動させて、自分達とレプティリアンの間に分厚くて絶対的なる究極の炎の壁を作る。

「ぐううぅぅぅ、絶対熱とは・・・っ。まさかこんなモノを扱える輩がいたとはな・・・っ!!!」

(なるほど、デュマがやられる訳だ・・・!!!)

 蒼太を煽るような口上を垂れながらも、それでも少しもキング・カイザーリンは彼等を舐めてはいなかった、むしろ冷静にその動きや戦い方、そして実力等を見極めようとしていたのである。

(絶対熱とは。これは迂闊に触れる事は出来ん、流石に時と運命の調律者の片割れと言うべきか・・・!!!)

 カイザーリンがそんな事を考えているとー。

 次の瞬間、自身の体が青く輝く波動に包まれたかと思いきや一気に遙かなる上空へと吹き飛ばされて行き、その周囲には反重力粒子曲線でコーティングされている亜空間フィールドが出現していた。

「・・・なんだ?」

(なんだか知らんが拙そうだな。ここは一途、逃げるとするか・・・!!!)

 そう判断したカイザーリンだったが、尚遅かった、亜空間フィールド内から逃れようとする彼女の前に極めて強力な磁気を持つ超小型の“高速回転マグネター”が顕現しており、それが一気に弾けたかと思うとー。

「・・・・・っ!!?」

 周囲10キロ四方のエリアに凄絶無比なる大爆発が巻き起こってその衝撃波や熱波、爆風がカイザーリンに容赦なく襲い掛かっていったのである。

「ぐわあああぁぁぁぁぁーーー・・・・・っっっ!!!!!!!」

 カイザーリンから悲鳴とも絶叫とも取れる声が挙がるがこの現象の正体はアウロラの必殺技である星震魔法であって、カイザーリンはその中心部近くに捕らえられては炸裂したマグネターの余波をまともに受けてしまったのだ、しかもその上ー。

 そんな彼女に対して追い打ちを掛けるかのように比類無き集束エネルギー波が疾走して行くモノの、その正体はオリヴィアが決め手としている超X線ビームを叩き付ける“パルサー呪文”であった、それらの連撃を立て続けに浴び続けてさしものカイザーリンも著しく消耗し、また多大なるダメージを負わされる事となった。

「ぐううぅぅぅ・・・っ!!!」

 やがて爆煙が晴れてカイザーリンが姿を現した時には、その痛々しい姿に蒼太を除いた誰もが思わず一瞬、息を呑んだ、全身は至る所が焼け焦げて出血しており、右腕と左足とが千切れ掛けている、とてものことこれ以上の戦闘が行えるような状態では無かったのであった。

 しかし。

「はあはあ・・・っ!!?ふっ、くっくっく・・・っ。あーっはっはっはっは・・・っ!!!」

 そんなボロボロの状態にも関わらずにカイザーリンは呵々大笑していた、まだまだ余裕がある、とでも言いたげな態度にメリアリアやアウロラ、オリヴィアが怪訝そうな面持ちとなって彼女を見つめる。

「勝負は着いた、とでも言いたげだな・・・?」

「・・・いいや」

 するとそんなカイザーリンを様子見していた蒼太が初めて口を開いた、“ここはトワイライトゾーンの中だ”とそう告げて。

「あなた・・・?」

「思い返してごらんよ、メリー。前にカインとメイルの二人組をこの中で相手にした時の事を・・・!!!」

 そう言われてメリアリアはハッとなった、そうだった、この中では奴等悪鬼魔物共は幾らでも傷を癒やせるし、また体力や気力も回復し放題なのだった。

 ・・・ただし。

「それをやる、と言う事は自分が自分で居られなくなる、と言う事でもある。カイザーリン、貴様はそれを覚悟しているのか?」

「勿論、覚悟しているとも!!!」

 するとそんな青年の言葉にカイザーリンは不敵な笑みを崩さずに応える。

「どの道我等は最早、理外の存在よ。早かれ遅かれ消えゆくのみだが・・・。その前にせめてこの手の届く範囲の宇宙を破滅させてやる、人間共を霊的に堕落させた上でな!!!」

「・・・その為にガドラを呼びだそうと言うのか?無駄な足掻きだ、第一ガドラが貴様らの呼び掛けに応じる程に素直で理解のある存在だとは到底、思えないがな!!!」

「ふん、あのお方は今や力の大半を失って苦しんでおられる。元に戻る為ならなんでもやるさ。それよりも・・・」

 そこまで話していたカイザーリンは一気に周囲に魔力と瘴気とを呼び集めるとそれを口を含めた全身から吸収していった、するとー。

 なんとみるみる内に彼女の傷が回復して行き、しまいにはすっかり元通りの五体満足な状態にまで復元してしまったのだ。

「・・・・・」

「・・・・・」

「ああ・・・っ!!!」

「そ、そんな・・・っ!!!」

 これある事を知っていた蒼太とメリアリアはともかく、トワイライトゾーン内部での本格的な戦闘が今回初めてなアウロラとオリヴィアは驚愕すると同時に苦しそうに呻いた、せっかく隙を見て連続攻撃を仕掛けた、と言うのにこれでは元の木阿弥では無いか。

「しかしまさか驚いたぞ?ガドラ様の事を知っていただけでなく、我等の企てにまで理解が及んでいたとはな。それに・・・」

「・・・・・」

「絶対熱に星震、パルサーとはな。宇宙の力を地上においてこれ程までに扱える者がいようとは。流石の私でも堪えきれずにダメージを負ってしまったわ・・・」

 “だが!!!”とカイザーリンは反駁した、“貴様らの手の内はもう読めた”とそう叫んで。

「特にソウタ・アヤカベ。貴様はどうやらそれ以上の神人化はまだ会得してはいないようだしな・・・。まさに此方にとっては好都合だ!!!」

 カイザーリンがそう言い終える前に既にして蒼太は剣を構えて彼女に突進していった、神人化している彼には十数秒間程先の未来が今、この瞬間において同時進行的に知覚する事が出来るのでありその能力を最大限に駆使した結果、カイザーリンが自身に吶喊して来る事を悟った為に機先を制する形で此方側から突っ込んだのだ。

「・・・奥義。創世・神龍波!!!」

「ぐはぁっ!!!」

 そう言って彼が自身の修めたる大津国流剣術の極意を発動させると神威そのものは通じなかったが攻撃は通す事が出来た、復元した彼女の右腕を改めて切り飛ばす事に成功したのである。

 もっともこれは蒼太自身の力と言うよりも聖剣の持っている力に依る所が非常に大きく、彼としては忸怩じくじたる思いがあったのであるモノの、しかし今は他に有効な手段は無くて蒼太は自身の愛刀に全てを託す事にした、そんな折。

「妻達に誠意を尽くせ?蒼太・・・」

 アルヴィン・ノアの声が頭の中に響いて来た、“妻達に向き合え”と、そうすれば必ずや道は開かれる、と。

(・・・ノア博士、僕はこの半年間祈り抜いて来ました。勿論あなたに言われたから、と言うのもありますけれども、だけどそれだけではありません。僕だって妻達に真心を尽くしたかったからです!!!)

(妻達を信じろ、蒼太。“愛について”はともかくとしても、君はまだ“愛し合う”事の本質を体現し切ってはいないのだ・・・!!!)

 そんなやり取りが一瞬で行われ、蒼太が戸惑いつつも尚も剣を構えてカイザーリンに向き合うが、しかし。

「ぐああぁぁぁ・・・っ!!?くはははっ、残念だったなっ!!!」

 そう言って忽ちの内に右腕を元に戻すとカイザーリンは今度は蒼太に対して反撃に転じた、その殺意と暴虐の波動は凄まじく、さしもの蒼太も吹き飛ばされてしまう。

「くはははっ。ほらほらどうしたぁっ!!?ソウタ・アヤカベ。防戦一方じゃないかっ、花嫁達の方がまだ幾許かは骨があったぞ!!!」

 そう叫び様にカイザーリンは両手で連撃を繰り出して来る。

 分厚くて巨大な光のオーラを放っている上に、更に神の衣を纏っている彼には通常の攻撃は通用しないがカイザーリンはそれを易々と貫通させて彼に五、六発程の手刀や拳を命中させて来た。

「うぐううぅぅぅ・・・っ!!?」

「くはははっ。そらそらどうした、“時と運命の調律者”ともあろう者が、動きが止まって見えるぞ!!?」

 “貴様が死んだら”とカイザーリンは声高々と宣言した、“体から魂を引き摺り出して残さず貪り食ってやろう”と。

「貴様の魂はさぞや美味だろうて。デュマの弔い合戦じゃ!!!」

「・・・・・っ!!?巫山戯ふざけるなっ!!!」

 尚も続く執拗なカイザーリンの高速機動戦術に対して蒼太も巧みな体捌きや剣の刃の部分を真正面から用いる事で必死に応戦するモノの、何しろ彼女の攻撃は鋭く、重い。

 命中してしまった場合は勿論、一発一発を防ぐ毎に骨が軋んで筋肉が弛んだ、しかし。

「てりゃああぁぁぁっ!!!」

「ぬぐおおおぉぉぉぉぉっ!!!!?」

 蒼太も蒼太でやられっ放しでは決して無かった、彼もまた常軌を逸する程にまで頑健で力強く、また逞しかったのである。

 彼はその勇気とパワーとを存分に発揮してレプティリアンの向けて来る殺意や獰猛さを跳ね返しつつも聖剣を素早く的確に操ってはカイザーリンに対して強く激しく打ち込んで一歩も引かなかった。

「メリー、援護してくれっ。絶対熱を貸して欲しいっ!!!」

「任せてっ!!!」

 打ち合いが数十合に及んだ時に、先に動いたのは蒼太だった、メリアリアに頼んで絶対熱の炎を顕現させてはそれを身に纏わり付かせて共鳴させ、己の新たなる力とした。

 それはノア博士に言われたからとか、そんな理由では断じて無かった、“こうしなければならない”と言う蒼太の直感だったのである。

「天生・極炎煌っ!!!」

「ぐわあああぁぁぁぁぁっ!!!!?」

 堪らずカイザーリンが呻いて蹌踉よろけ、一旦彼から距離を取るが花嫁の助力を得た青年の攻撃は余りにも鋭利で凄まじく、かつ徹底的なモノだった、カイザーリンは防御に回した左腕ごと腹を切り裂かれて狼狽する。

「アウロラ、オリヴィアッ。君達の力、俺に貸せっ!!!」

「蒼太さんっ!!!」

「任せろっ!!!」

 続いて蒼太から援助要請を受けた二人はそれぞれに星震魔法の法力とパルサー呪文の呪力とを彼へと分け与えるが、蒼太はそれらも剣に纏わせて自分自身の力に変え、カイザーリンに対する追撃に用いたのである。

「明光・星界嘯っ!!!」

「閃永・瞬絶華っ!!!」

「うっぎゃあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 二人の力を自身のそれと合わせた攻撃に、遂にカイザーリンはそれまで以上に大きく蹌踉よろけて体勢を崩した、やるなら今だが奴は分厚くて強力な闇の波動力場に守られておりこのままでは止めを刺すことが出来ない。

 そこで。

「メリー、アウロラ。オリヴィアッ!!!君達の力をもう1度僕に貸してくれっ!!!」

「解ったわっ!!!」

「はいですっ!!!」

「心得たっ!!!」

 三人はそう頷くと再びそれぞれの奥義、極意を発動させてはその力を夫に対して貸し与えていった、ここで負ければ蒼太は魂を貪り食われてしまうのである、それだけは絶対に避けさせなければならなかった。

(あなたお願い、必ず勝って。私達の為じゃない、他ならないあなた自身の為に!!!)

(愛してるわ蒼太、誰よりも何よりも。どうかどうか無事でいて?私の所へ帰って来て!!!)

「・・・・・っ!!!」

(これは・・・っ。皆の思い、願いか?メリーの、アウロラの、オリヴィアの祈りの思念が心に流れ込んで来る・・・っ!!!)

 メリアリア達の蒼太に対するこれ以上無い程にまで真摯で真面目な念意は彼女達の真愛まなを揺さ振り起こさせて人間としてのメリアリアの、アウロラの、そしてオリヴィアの意識をそれぞれ己の中に眠っていた神の部分と直結させた、それは殆ど刹那の合間に引き起こされて来た出来事であったのであるモノの、それほどまでに確かで熱い気持ちを彼女達は自身の夫に抱き続けていたのである。

 それは即ち、それだけ凄絶な迄に彼等が相手を求めて一つに重なり合い、交わり合って来た、と言う証であり、そしてそれ故に絶対的で強固な絆で夫婦同士が結ばれている、と言う事に他ならなかったが、そんな彼女達からの波動法力を受け取った時に。

 蒼太はそこに目一杯にまで込められていた花嫁達の真心を、自分に対する何処までも一途で真っ直ぐで純粋なる愛情までをも感じ取り、思わず心が暖かくなるのを覚えていたのだが、蒼太がそうであったように彼女達もまた自分達の夫の為にと普段から深い祈りを捧げてくれていたのであり、彼の幸せと健やかなる事を願い、密かに心を砕き続けてくれていたのであるモノの、それはお互いのお互いに対する愛の光りの共鳴であり、無限反復に他ならなかった。

 それだけではない、神人化している蒼太に対して宇宙の力を発動させていた彼女達の力と思いは文字通り神のレベルで混じり合い、その結果として男性性と女性性とによる高次元領域での統合が果たされてはそれら2つを超越する事に、青年は無意識的に成功したのだ、その瞬間に。

「・・・・・っ!!?」

(な、なんだ?何が起こった!!!)

 蒼太の体自体が突如として眩い光を放ち始めてその余りの輝きの強さにカイザーリンは目を開けている事が出来なくなってしまった。

 その間も青年のオーラ波動はどんどんその強さを増して行き、遂にはトワイライトゾーンに充満していた魔力と瘴気とを根刮ぎ浄化し尽くしてしまったのである。

「ぐわあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!?」

(バ、バカなっ。まさかこれは“超神化”っ!!?有り得ない、夫ですら。ゾルデニール様ですら成し遂げられなかった事を!!!如何に伝説の大和民族とは言えども、この土壇場で・・・)

 光りのオーラに身を焼かれつつもカイザーリンが内心で驚愕しているとー。

 程なくして青年の発光が落ち着きを取り戻し、元の状態へと舞い戻るモノの、このカイザーリンはハッキリと感じていたのだ、中身がそれまでの蒼太とはまるで別物である、と言う事に。

 そして同時に悟ったのである、今目の前にいる青年は自分とは最早、次元が違う存在なのだ、と。

「・・・・・っ。ソ、ソウタ・アヤカベ。貴様は一体、何者だ?」

「・・・僕は“有りて有る者”だ、キング・カイザーリン!!!」

 それだけ言うとー。

 蒼太は再び剣を構えて彼女に吶喊して行った。
ーーーーーーーーーーーーーー
 今回は蒼太君がメリアリアちゃん達と真に“愛し合う”事により“高次元領域において”性別を超越するお話でした(そうしなければ“超神化”出来ませんから)。

 些か駆け足気味になってしまいまして申し訳無く思っておりますが、あともう少しで完結ですので大目に見てやって下さいませ。

 ちなみに皆様方、私は今回、ちょっとした気付きを得る事が出来ました、それは“自分自身を最大限に愛すると同時に他人様に真心を尽くす為にはどうすれば良いのだろうか?”と言う悩みに対する回答です。

 実は私、それまでこの二つって“両立出来るのかな?”とずっと疑問に思っていたのですが、実は出来たのです(自分になんら犠牲や無理を強いる事無く他人を愛する方法があったのです)。

 その答えをお話の中に挿入してみました、もしよろしかったら探して見て下さいね。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:568pt お気に入り:713

こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

BL / 連載中 24h.ポイント:1,208pt お気に入り:783

おっさんが願うもの

BL / 連載中 24h.ポイント:12,909pt お気に入り:318

桜天女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:326pt お気に入り:0

みんなの憧れの女騎士様と一線超えまして!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:104

EDGE LIFE

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:468pt お気に入り:20

【R18】彼等の愛は狂気を纏っている

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:168

親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

BL / 完結 24h.ポイント:447pt お気に入り:20

処理中です...