転生した貴族令嬢は、辺境の森で魔女となる

椎名さえら

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1 Prologue

「お前なんかと誰が」

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「今日を限りにお前との婚約関係は抹消する」

国随一の権力を持つオイレンブルグ公爵家の夜会にて。

それまで楽しげにさざめいていた群衆が突然水を打ったように静かになった。

その中心にいるのはーーー私、ユリアーナ・ラムスドルフ。社交界では一応それなりの名の通った侯爵令嬢である。

目の前で顔を真っ赤にして私を睨みつけている公爵嫡男ーーアウグスト・オイレンブルグは、私の幼い頃からの家によって決められた婚約者でもある。アウグストの後ろから、震えながらものぞいているのは、ラウラ・ミュラー。
ラウラは男爵令嬢で、この2人が私に向かって歩いてきた時点で、突然の既視感に襲われ、目眩がしていたくらいだ。



と。よりにもよってこのお話は、自分がヒロインだと信じていたら、実はそうではなくて悪役令嬢として追い払われるパターンであった。

「お前みたいな冷たい心の女にはもううんざりだ。私には爵位がなくても本当の愛情を知っている女と結婚する権利がある」

親に決められた婚約者だったからということでもなく、公爵嫡男という地位にあっても召使にも公平で優しい貴方のこと、私はちゃんと好きだったんですけど、貴方の中では私はただの「心が冷たい女」だったんですね…。図らずも慕っていた男に投げつけられたナイフのような鋭い言葉に思わず唇が震えてしまって、ぎゅっと噛み締める。ふとアウグストの後ろに立っているラウラを見るとーー彼女の唇は私とは裏腹に

(…ラウラ…ここで笑うのね、貴方は)

私は侯爵令嬢としての矜持をなんとかかき集め、心を奮い立たせると、なるべく毅然とした声を出すように努力する。

「ーーーアウグスト様、短慮はなさいませんように。
ラムスドルフ家への申し入れを希望致します」

彼は私の冷静な言葉に促され、少し我に返ったようだ。もともとは優しすぎるほどに優しい人なのだ。

「ーーあ、ああ。すまない。こんな公衆の面前で私もどうかしていたな」

時が止まっていた周りの群衆たちがその言葉を皮切りに動きを取り戻す。
私がもう一度ラウラを見るとーーー彼女は明らかに悔しそうに眉をひそめていた。そのことに。まるで、彼女がアウグストを操っているかのようなそんな印象を与えた。

(思い出さなくては…小説の粗筋を…)

とりあえず今日のところはもうこれで十分だ。私はもうひどく傷ついていた。
立ちすくんでいる2人に、侯爵令嬢として無礼にならないように会釈をすると、私は踵を返して夜会の会場を後にした。
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