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3 Let me think about it
「そんなことあるの?」
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テオはしばらく黙っていたが、やがて私の顔を見ながら話し始めた。
私との婚約破棄が両家に了承され、私がこの屋敷にやってきた頃。テオは夜会でアウグストとラウラを見る機会があったのだという。ラウラは綺麗な金髪の巻き毛と透き通るような蒼い瞳をもち、身体はほっそりしていてとてもか弱い乙女に見え、立派な体躯のアウグストと並んでいると絵のように美しいと周りの貴族たちは口々に褒めそやしていたそうだ。
(うん…私は…見た目は…普通…というかがっしりというか…)
私は若い頃に稀代の色男侯爵と言われた父に似て、男顔であるものの顔立ち自体はそこまで悪くないと自分では思うのだが、身長は大きくないがとにかく身体が頑丈な作りなのだ。
幼い頃から姉と妹が家にいても、兄と一緒に外で遊んでしまうくらい活発で、あの頃は貴族令嬢にあるまじきことに日焼けすらしていた。そのお陰で今でも風邪もあまりひかないくらい健康であるが、決して線は細くない。姉と妹は母に似た麗しき美人な上身体も女性らしいので、まだ幼いアウグストが自ら私を婚約者に望んだ、という流れには両親はとてつもなく驚いていたという。
ただ出会った時はまだ少女だったので、身体は姉とも妹ともそこまで大差はなかった。しかしそれから思春期をむかえ成長するにつれ、自分の理想とは別の方向に育っていく、令嬢らしからぬこの骨太な身体がコンプレックスになっていった。それでも私を選んでくれたアウグストに似合う淑女になるように内面だけは磨き上げようと必死になって励んでいたし、アウグストが私のことを貶すことも一度もなかった。
あの日、麗しきラウラ・ミュラーを連れて歩いてくるまでは。
あの一輪の花のような可憐な姿を選んだ彼を見た時、悟ったのだ。彼は紳士らしく今まで口にしていなかっただけで、本当は麗しい女性を隣に置きたかったのだ、と。彼は何よりも分かりやすく私に示した。
私の何がいけませんでしたか。
これだけお慕い申し上げておりますのに。
前世の記憶に目覚めることがなかったら、きっとそう言ってすがっていただろう。あの小説の中の、悪役令嬢のように。
「ーー大丈夫か?」
テオが気遣わしげに声をかけてきたので、私は物思いから覚めた。
いけない、自分の世界に入りすぎていた。
私が頷くと、彼は話を続ける。
「それから半年くらいは2人で一緒にいるのを夜会でよく見たんだが、段々…アウグストがエスコートをしてはくるんだが、舞踏会の最中は一緒にいなかったりすることが増えていって…ここ数年は2人で一緒にいる姿を一切見ない」
「ーーーえ?」
「俺はお前のことがあって腹が立っていたからアウグストとは全然話してなくて…、俺も今朝新聞を見てから兄に聞いた話によるとアウグストとラウラ嬢の仲は破綻したらしく……。アウグストに、新しい恋人がいるかどうかは知らないが、オイレンブルグ家としては跡取りのこともあるから、早く婚約者をと急かされているようだ」
私は息が止まるかと思うくらい驚いた。
2人の仲が破綻…?
私がストーリー通りではない行動を取ったから2人は結ばれなかったの?
突然、あの日、ラウラが私のことを鋭い目つきで睨みつけていたことを思い出した。
彼女は最初はほくそ笑んでいるようにさえ見えたのに、私が筋書き通りではない言動を取ってからはとても不機嫌そうだった。
あれはもしかして、私が思うように動かないから苛立っていたのだろうか?
私との婚約破棄が両家に了承され、私がこの屋敷にやってきた頃。テオは夜会でアウグストとラウラを見る機会があったのだという。ラウラは綺麗な金髪の巻き毛と透き通るような蒼い瞳をもち、身体はほっそりしていてとてもか弱い乙女に見え、立派な体躯のアウグストと並んでいると絵のように美しいと周りの貴族たちは口々に褒めそやしていたそうだ。
(うん…私は…見た目は…普通…というかがっしりというか…)
私は若い頃に稀代の色男侯爵と言われた父に似て、男顔であるものの顔立ち自体はそこまで悪くないと自分では思うのだが、身長は大きくないがとにかく身体が頑丈な作りなのだ。
幼い頃から姉と妹が家にいても、兄と一緒に外で遊んでしまうくらい活発で、あの頃は貴族令嬢にあるまじきことに日焼けすらしていた。そのお陰で今でも風邪もあまりひかないくらい健康であるが、決して線は細くない。姉と妹は母に似た麗しき美人な上身体も女性らしいので、まだ幼いアウグストが自ら私を婚約者に望んだ、という流れには両親はとてつもなく驚いていたという。
ただ出会った時はまだ少女だったので、身体は姉とも妹ともそこまで大差はなかった。しかしそれから思春期をむかえ成長するにつれ、自分の理想とは別の方向に育っていく、令嬢らしからぬこの骨太な身体がコンプレックスになっていった。それでも私を選んでくれたアウグストに似合う淑女になるように内面だけは磨き上げようと必死になって励んでいたし、アウグストが私のことを貶すことも一度もなかった。
あの日、麗しきラウラ・ミュラーを連れて歩いてくるまでは。
あの一輪の花のような可憐な姿を選んだ彼を見た時、悟ったのだ。彼は紳士らしく今まで口にしていなかっただけで、本当は麗しい女性を隣に置きたかったのだ、と。彼は何よりも分かりやすく私に示した。
私の何がいけませんでしたか。
これだけお慕い申し上げておりますのに。
前世の記憶に目覚めることがなかったら、きっとそう言ってすがっていただろう。あの小説の中の、悪役令嬢のように。
「ーー大丈夫か?」
テオが気遣わしげに声をかけてきたので、私は物思いから覚めた。
いけない、自分の世界に入りすぎていた。
私が頷くと、彼は話を続ける。
「それから半年くらいは2人で一緒にいるのを夜会でよく見たんだが、段々…アウグストがエスコートをしてはくるんだが、舞踏会の最中は一緒にいなかったりすることが増えていって…ここ数年は2人で一緒にいる姿を一切見ない」
「ーーーえ?」
「俺はお前のことがあって腹が立っていたからアウグストとは全然話してなくて…、俺も今朝新聞を見てから兄に聞いた話によるとアウグストとラウラ嬢の仲は破綻したらしく……。アウグストに、新しい恋人がいるかどうかは知らないが、オイレンブルグ家としては跡取りのこともあるから、早く婚約者をと急かされているようだ」
私は息が止まるかと思うくらい驚いた。
2人の仲が破綻…?
私がストーリー通りではない行動を取ったから2人は結ばれなかったの?
突然、あの日、ラウラが私のことを鋭い目つきで睨みつけていたことを思い出した。
彼女は最初はほくそ笑んでいるようにさえ見えたのに、私が筋書き通りではない言動を取ってからはとても不機嫌そうだった。
あれはもしかして、私が思うように動かないから苛立っていたのだろうか?
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☆書き上げています。
その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。
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