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ルーカス
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私は呆れた。
言った端からそうやって軟派な台詞を言うなんて…。
「あんまりそういうこと言うと、女の子に誤解されるからやめときなよ」
「いや、俺は自分からは言わないから大丈夫だ」
いや…怖い。
要はいつも相手から言われて、気が乗れば付き合ってきたってこと?まぁルーカスのヴィジュアルだとそうやって言っても真実味があるが、それはそれで罪な男だ。
「じゃあなんで私にそんな事言うわけ、あ、そうか、私が貴方のこと好きじゃないからか」
私が納得すると、ルーカスが首を横に振った。
「いや、違う。可愛いと思ったからそう言った、ただそれだけ」
「は?」
「オリヴィアに興味が湧いた」
「え?」
「あああこうやって言ったら、俺が軽いって思われるだけなのに……自分から言ったことがないから失敗しているな!」
ルーカスが自分で言って自分で傷つき、うなだれている。
「あのね、すっごい君に興味が出たの。でも俺が軽いこととか、番に心乱される姿とかバレちゃってるし、信用できないでしょ?だから、俺の誠意見せるから、とりあえず友達から付き合ってくれない?」
彼の真摯な瞳に促されて、まぁ友達なら、と頷いた。
それから数年が経ったが、姉と番の行方は杳として知れず、義兄ー今では元義兄になるわけだがーはリチャードをちゃんと可愛がって育てている。義兄の家族は彼に再婚してほしいみたいだが、彼がそれを頑として断っていると聞いた。自分にはリチャードがいるから大丈夫です、と言っているようで、一途な義兄らしい答えだ。義兄と私達家族の関係も特に悪化することなく、彼が仕事で手が回らない時など両親は喜んでリチャードを預かっているし、リチャードを迎えに来た義兄とすれ違うときは、今でもふわりとヴァニラの香りが漂う。
義兄は姉のことが心底大好きで、やはり私に番の香りを感じているとは思えない。姉が去った後も変わらず彼女を愛することの出来る義兄は素晴らしい人だとしみじみ尊敬する。そして義兄は信じられないことに、勝手なことをしでかした姉のことを最初から許していたし、また彼女の行動も理解もしている気がする。義兄といたら幸せだったと思うが、姉は番との暮らしを選んだ。いくら奔放で呆れたとはいえ、やはり姉に変わらず、だから幸せになっていてくれたらいいなと思うけれど…。
(人生って…時々…しょっぱいな)
今年から、私は上の学校に進んだ。働いてもいいなと思っていたのだが、成績がよかったため先生に薦められたのもあるし、ルーカスのアドバイスも大きかった。彼が上の学校で得たものを私に教えてくれて、すごく人生が豊かになると思うから是非行くと良い、と後押しをしてくれたのだ。
ルーカスと私は未だに恋人同士でもなんでもない。
ルーカスはあれ以来誰とも付き合っていないし、誰かに思わせぶりな態度を取ったりもしてない。女の子たちはそんな彼に告白をし続け、玉砕をしていると聞いた。私達の仲間内でも彼に告白をした友達もいたが、優しくしかしきっぱりと断られている。そんな中で彼は注意深く私に対しては特別扱いをしていて、エリーゼや親しい友人には彼の気持ちが私にあるのではないか、と思われているようだ。
エリーゼは学校を卒業すると、故郷の街へ戻ることになった。彼女のことが大好きな私は、片道2時間ばかり、やはり彼女と今までのように思い立ったらすぐに会えなくなることが寂しかった。
『私もオリヴィアと別れるのはとてもとても寂しいけど…アーヴィンがもう限界なの。ここまでよく待ってくれた、ってくらい彼は待ってくれたもの』
エリーゼは明るく笑った。彼女は私とは違い上の学校には進まず、郷里に戻って仕事を探すということだった。
『またすぐに会いましょうね』
『うん…そうね!遊びに行くわ』
『ルーカスと仲良くね』
エリーゼがいたずらっぽく笑った。
『私が言うことじゃないけど、まぁ一応番だからいいかしら。ルーカスは貴女に夢中よね。それに貴女には待つ価値がある、て彼はちゃんと分かってる』
私の顔が真っ赤になると彼女は優しく微笑んだ。
『オリヴィアは可愛いし、優しくて賢くて……きっとルーカスは貴女のような女の子をずっと夢みていたのよ、突然すれ違った番ではなくて』
私はやはり彼女が大好きだ。
言った端からそうやって軟派な台詞を言うなんて…。
「あんまりそういうこと言うと、女の子に誤解されるからやめときなよ」
「いや、俺は自分からは言わないから大丈夫だ」
いや…怖い。
要はいつも相手から言われて、気が乗れば付き合ってきたってこと?まぁルーカスのヴィジュアルだとそうやって言っても真実味があるが、それはそれで罪な男だ。
「じゃあなんで私にそんな事言うわけ、あ、そうか、私が貴方のこと好きじゃないからか」
私が納得すると、ルーカスが首を横に振った。
「いや、違う。可愛いと思ったからそう言った、ただそれだけ」
「は?」
「オリヴィアに興味が湧いた」
「え?」
「あああこうやって言ったら、俺が軽いって思われるだけなのに……自分から言ったことがないから失敗しているな!」
ルーカスが自分で言って自分で傷つき、うなだれている。
「あのね、すっごい君に興味が出たの。でも俺が軽いこととか、番に心乱される姿とかバレちゃってるし、信用できないでしょ?だから、俺の誠意見せるから、とりあえず友達から付き合ってくれない?」
彼の真摯な瞳に促されて、まぁ友達なら、と頷いた。
それから数年が経ったが、姉と番の行方は杳として知れず、義兄ー今では元義兄になるわけだがーはリチャードをちゃんと可愛がって育てている。義兄の家族は彼に再婚してほしいみたいだが、彼がそれを頑として断っていると聞いた。自分にはリチャードがいるから大丈夫です、と言っているようで、一途な義兄らしい答えだ。義兄と私達家族の関係も特に悪化することなく、彼が仕事で手が回らない時など両親は喜んでリチャードを預かっているし、リチャードを迎えに来た義兄とすれ違うときは、今でもふわりとヴァニラの香りが漂う。
義兄は姉のことが心底大好きで、やはり私に番の香りを感じているとは思えない。姉が去った後も変わらず彼女を愛することの出来る義兄は素晴らしい人だとしみじみ尊敬する。そして義兄は信じられないことに、勝手なことをしでかした姉のことを最初から許していたし、また彼女の行動も理解もしている気がする。義兄といたら幸せだったと思うが、姉は番との暮らしを選んだ。いくら奔放で呆れたとはいえ、やはり姉に変わらず、だから幸せになっていてくれたらいいなと思うけれど…。
(人生って…時々…しょっぱいな)
今年から、私は上の学校に進んだ。働いてもいいなと思っていたのだが、成績がよかったため先生に薦められたのもあるし、ルーカスのアドバイスも大きかった。彼が上の学校で得たものを私に教えてくれて、すごく人生が豊かになると思うから是非行くと良い、と後押しをしてくれたのだ。
ルーカスと私は未だに恋人同士でもなんでもない。
ルーカスはあれ以来誰とも付き合っていないし、誰かに思わせぶりな態度を取ったりもしてない。女の子たちはそんな彼に告白をし続け、玉砕をしていると聞いた。私達の仲間内でも彼に告白をした友達もいたが、優しくしかしきっぱりと断られている。そんな中で彼は注意深く私に対しては特別扱いをしていて、エリーゼや親しい友人には彼の気持ちが私にあるのではないか、と思われているようだ。
エリーゼは学校を卒業すると、故郷の街へ戻ることになった。彼女のことが大好きな私は、片道2時間ばかり、やはり彼女と今までのように思い立ったらすぐに会えなくなることが寂しかった。
『私もオリヴィアと別れるのはとてもとても寂しいけど…アーヴィンがもう限界なの。ここまでよく待ってくれた、ってくらい彼は待ってくれたもの』
エリーゼは明るく笑った。彼女は私とは違い上の学校には進まず、郷里に戻って仕事を探すということだった。
『またすぐに会いましょうね』
『うん…そうね!遊びに行くわ』
『ルーカスと仲良くね』
エリーゼがいたずらっぽく笑った。
『私が言うことじゃないけど、まぁ一応番だからいいかしら。ルーカスは貴女に夢中よね。それに貴女には待つ価値がある、て彼はちゃんと分かってる』
私の顔が真っ赤になると彼女は優しく微笑んだ。
『オリヴィアは可愛いし、優しくて賢くて……きっとルーカスは貴女のような女の子をずっと夢みていたのよ、突然すれ違った番ではなくて』
私はやはり彼女が大好きだ。
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