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第八章
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エリアスと帝城へ戻って、婚礼の儀が行われる迄の五日間、私たちは慌ただしい日々を送っていた。
私は元皇帝ベルンバルトの実子だけれど、それを公にする事はできない。
何故ならディルクと兄妹である事が知られてしまうからだ。
では、何処の誰なのか。
私の身元を確保しなければいけなかったらしく、それにはゾランが手を回してくれた。
身元の不明な人物を、大国であり強国の第一王妃に据えると言う事は出来ないからだ。
そういう事から私は、シアレパス国のムスティス・クレメンツ公爵の娘となった。
ムスティスには二人の息子がいるが、家族皆の承諾は得ていたそうで、私を養子とする事に手を貸してくれたんだ。
私とディルクが空間移動でムスティスに会いに行き、交渉の末そうして貰う事になった。
ムスティスには私たちの事情を掻い摘まんで話して、その事を理解して貰えたからだ。
これにより、シアレパス国とオルギアン帝国は強力な友好関係を築ける!と、ムスティスは凄く喜んでくれた。
いきなり娘が出来たとなれば、怪しむ者もいるだろう、と言う事で、ゾランは私を養子にした時期を十年程遡らせた。
この作業に凄く手間取っていたようだけれど、その甲斐あって、私はアシュリー・クレメンツとなった。
クレメンツ公爵の娘である私が公に知られていないのは、私は病弱でずっと部屋に引き込もっていたからだ、と言う事になった。
ディルクがシアレパス国にニコラウスの事でムスティス邸に来た時に、私と出会って恋に落ちた、と言う設定で行こう!と、ムスティスは楽しそうに話していた。
ディルクは、すぐに名前はアシュリー・アルカデルトになるからな、と私を見て微笑んで言っていた。
因みにディルクは、リドディルク・アルカデルト・オルギアンと言うらしく、現皇帝にのみ、名前の後にオルギアンと付けるのだそうだ。
大層だからいらないんだがな、って、笑っていた。
それからノエリアにも会いに行った。
この国の影の実力者にも、こちらの味方になって貰う必要があるからだそうだ。
ノエリアは私が女である、と言う事にすごく驚いていて、じゃあエリアスさんとはBLじゃなかったのねー!って残念そうに言っていた。
これまでの事情を話し、私とディルクが婚姻すると分かると、また瞳をキラキラさせて、こんな話は大好物です!と言って嬉しそうにはしゃいでいた。
婚礼の儀に、婚約者のフラヴィオと一緒に招待しようとしたら、フラヴィオとは婚約解消したのだと言う。
理由を聞くと、フラヴィオが港町ラブニルでエリアスを襲った事が後程分かった事と、彼の母親から婚約解消の書状を送りつけられた事、それに、最近のフラヴィオはフラヴィオらしくなくて、素直に話が出来ないように思えてた、と話していた。
それには私は何も言えず、ここにエリアスがいなくて良かったと思ったんだ。
他国の結婚式の場で、新たな出会いがあるかも知れないっ!て、嬉しそうに、待ち遠しそうにするノエリアと別れて、次はグリオルド国のシルヴィオ王と会う。
私の事を知っているシルヴィオ王にも、事前に話をしておく必要があったからだ。
シルヴィオ王は、ニコラウスの事でディルクに大きな借りを作ってしまったと、こちらの言い分には何も言わずに、仰せのままにと頭を下げた。
属国とは言え、対等でありたいとディルクが微笑んで右手を差し出すと、目に涙を浮かべて、両手でしっかりディルクの手を握り締めた。
その手をなかなか離してくれなくて、ディルクが段々疲れた表情になっていくのが分かって、慌てて私が焼きもちを焼くようにディルクの手を強引に奪ったのをシルヴィオ王は見て、微笑ましいと笑ってくれた。
帝城へ帰って来ても、私はする事があった。
まず、貴族としての立ち居振る舞いを、徹底的に教え込まれた。
私の存在は今は知られてはいけない為、秘密裏に動く必要があったが、そんな事は関係ないかの如く長時間拘束されて、歩き方や話し方、ドレスの捌き方や礼の仕方や食事の摂り方等、淑女としての基本を叩き込まれたが、これが本当に大変だった。
今まで定住する事なく旅をする事しかしてなかった私が、貴族の真似事をするのは本当に大変で、慣れない靴にいつもよろめいてしまうし、常にドレスでいるように言われて凄く疲れるし、言葉遣いも全て講師が逐一正してくる。
本当に落ち着かない。
それから婚礼の儀の練習。
それはディルクに時間が出来た時に一緒に行う感じで、ディルクも毎日する事が多いみたいで大変そうだった。
それでも私と会える時間が嬉しいと、ディルクはいつも笑ってくれていた。
あれからエリアスも忙しいらしく、なかなか会えずにいる。
ウルにはたまに昼食で一緒になる位で、ウルに会うと気が緩んで息抜きができる。
疲れてそうな私を見て、貴族って大変なんやなぁ、って、私の頭をナデナデしてくれる。
今はウルが私の癒しになってくれているんだ。
夜はディルクの部屋で眠る。
毎夜、私たちは一つになる。
お互いを離さないように、心地良さに身を委ねながらしっかり補うように抱き合って、それから眠りにつく。
こんなに心が、体が満たされる事は今までなかった。
本当にずっとそばにいて離れられなくなってしまいそうだ……
婚礼の儀の二日前、母に会った。
ベルンバルトの部屋の別室で、私とディルク、エリアスで母に会った。
母は私たちに腕輪を差し出した。
それは三つあって、前の腕輪と少し感じが違った。
割れた二つの腕輪と母が作り出した腕輪を掛け合わせて、錬金術で合成し、新たに作り出したそうだ。
効果は勿論能力制御で、青い石も埋め込まれていた。
ただ、前と違ったのは、腕輪をつけていても、自分の能力を使いたい時に使える事が出来るようになった、と言うことだった。
これには私たちは驚いて、特にディルクが喜んでいた。
それに、いつでも取り外しが可能になっている。
早速、左手首に着けてみる。
けれど、着けても特に何かに抑えつけられているような感じではなかった。
本当に抑制されているのか分からなかったので、お茶を持ってきたメイドの腕を、右手でそっと触ってみた。
けれど、彼女の過去も未来も、何も見えなかった。
ちゃんと能力抑制の効果はあった、と言う事がこれで分かって、エリアスは嬉しそうに腕輪を暫くの間撫でていた。
母が錬金術で割れた二つの腕輪を調べた時に、この対になった腕輪を着けた者同士が愛し合っていた場合、その効力は必要なしと判断され割れる、と言う事が分かったんだそうだ。
それを聞いた私とエリアスは思わず見つめ合ってしまい、それにディルクが割って入るように私を抱き寄せた。
その後、父親である元皇帝ベルンバルトに、結婚の報告をする。
ベルンバルトは何も言わず、私をじっと見据える。
その目の恐怖に、思わず震えそうになるけれど、ディルクが支えてくれて、何とか平静を保っていられるようになった。
母がベルンバルトに添うような感じで横に座ると、顔を背けて一言、「好きにするといい。」と告げた。
ディルクは深く礼をし、それに続いて私も礼をして、部屋を後にした。
その後、ディルクは仕事があるからと、執務室に戻って行き、私とエリアスとウルの三人で昼食を摂る事になった。
「こうやって三人で飯食うの、久しぶりだな。」
「ホンマやなぁ。兄ちゃも最近あんまりおらへんし、姉ちゃも忙しそうやし。」
「そうね、色々する事が多くって。全てにおいてマナーを学びなさいって言われて、食事もずっと指導されながらなの。大変なんだから。」
「……アシュリー……」
「なに……なんか……むっちゃ女の子の話し方やん……」
「え?そうかな……普段から話し方を変えなさいって言われてるから気をつけているんだけど、変……か…な?」
「あ、いや、慣れねぇけど、変とかじゃねぇ!なんか……令嬢って感じがする……」
「うん。ドレス姿も様になってるし、なんか姉ちゃって感じがせぇへん。」
「それは……良いこと?悪いこと?どっちなの?」
「悪くねぇ!アシュリーに悪い所はねぇし、俺は全部のアシュリーが好きだから、どんなアシュリーでも問題ねぇ!今の感じは……すっげぇ綺麗だ……」
「なに兄ちゃ赤なってんねん。そうやな、今の姉ちゃは綺麗やし、普段の姉ちゃは格好いいし可愛いし、アタシも全部の姉ちゃが好きやで!」
「ありがとう……凄く……嬉しい……」
「あ、アタシもな、式で着るドレス作って貰ってんねん!明日できるねんて!すっごい楽しみやわー!」
「なんか、俺もオルギアン帝国のSランク冒険者の正装ってのがあるみてぇで、それ着さされんだよ。色々面倒だよな。」
「エリアスにも色々して貰ってて……大変だよね……ごめんなさい……」
「あ、いや、そんなんじゃねぇ!俺は仕事貰えて良かったって思ってんだ!今までSランク冒険者として、オルギアン帝国に貢献出来てなかったからな!」
「そうやで!男は働いてナンボやで!働かん男には何の価値もあらへんやん!」
「出た!ウル節!それがねぇとウルじゃねぇからな!」
「なんやウル節って!」
「ふふ……やっぱりこうやって三人でいるの、楽しいね……凄く癒される。」
「姉ちゃ、疲れてそうやもんな。」
「で、ウルはこれからどうすんだ?母ちゃんとここに残るのか?」
「多分そうなると思うねん。最近はお母さん、外にも出歩ける様になったし、私もそばにいてるし、なんやかんやでここでの暮らしに慣れてるみたいやから、今更リフレイム島に帰りたいとか思ってないみたい。」
「そうなんだな。」
「ディルクがね、ウルにさせたい事があるって言ってたの。」
「え?なに?なんやろ?」
「また話しがあると思うから、直接聞くと良いよ。」
「そうなんやー。分かった。また聞いてみる。」
「…………」
「ん?なぁに?エリアス?」
「え……あ!いや、なんでもねぇっ!」
「兄ちゃ、見惚れてたんやな!まぁ、しゃあないな。今の姉ちゃの女子力は半端ないからな!」
「あ、いや……まぁ、そうなんだけど……この数日で、こんなに変わるんだなって思ってな……」
「それはアタシも思ったわー。まぁ、前からそこら辺にいる街の人の感じとはなんか違ったんやけど、こうして見ると、やっぱり高貴な出の人やったんやぁーって思うわー。」
「え!ウルまでそんな事、言わないで……恥ずかしくなっちゃう……」
「姉ちゃ……可愛すぎやで……見てみ?兄ちゃが直視出来てないやろ?」
「え?」
エリアスが口を手で覆って、横を向いてる。
そんな感じが、なんだか久し振りだな……
食事が終わって、ウルはエリザベートの元へと行った。
また指導を受けに私も部屋を出ようとしたところで、後ろからエリアスに抱き締められる。
「……エリアス?」
「少し……充電させてくれ……」
「……うん……」
しばらくそうしてから、エリアスはゆっくりと私を離して、「ありがとな。」って言って頬に口づけをして出て行った。
抱き締められた時に感じた温もりの跡に、自分の手で覆うようにして触れる。
その余韻に浸ってから、私もすべき事の為に部屋を出た。
それから二日後
婚礼の儀は行われた。
私は元皇帝ベルンバルトの実子だけれど、それを公にする事はできない。
何故ならディルクと兄妹である事が知られてしまうからだ。
では、何処の誰なのか。
私の身元を確保しなければいけなかったらしく、それにはゾランが手を回してくれた。
身元の不明な人物を、大国であり強国の第一王妃に据えると言う事は出来ないからだ。
そういう事から私は、シアレパス国のムスティス・クレメンツ公爵の娘となった。
ムスティスには二人の息子がいるが、家族皆の承諾は得ていたそうで、私を養子とする事に手を貸してくれたんだ。
私とディルクが空間移動でムスティスに会いに行き、交渉の末そうして貰う事になった。
ムスティスには私たちの事情を掻い摘まんで話して、その事を理解して貰えたからだ。
これにより、シアレパス国とオルギアン帝国は強力な友好関係を築ける!と、ムスティスは凄く喜んでくれた。
いきなり娘が出来たとなれば、怪しむ者もいるだろう、と言う事で、ゾランは私を養子にした時期を十年程遡らせた。
この作業に凄く手間取っていたようだけれど、その甲斐あって、私はアシュリー・クレメンツとなった。
クレメンツ公爵の娘である私が公に知られていないのは、私は病弱でずっと部屋に引き込もっていたからだ、と言う事になった。
ディルクがシアレパス国にニコラウスの事でムスティス邸に来た時に、私と出会って恋に落ちた、と言う設定で行こう!と、ムスティスは楽しそうに話していた。
ディルクは、すぐに名前はアシュリー・アルカデルトになるからな、と私を見て微笑んで言っていた。
因みにディルクは、リドディルク・アルカデルト・オルギアンと言うらしく、現皇帝にのみ、名前の後にオルギアンと付けるのだそうだ。
大層だからいらないんだがな、って、笑っていた。
それからノエリアにも会いに行った。
この国の影の実力者にも、こちらの味方になって貰う必要があるからだそうだ。
ノエリアは私が女である、と言う事にすごく驚いていて、じゃあエリアスさんとはBLじゃなかったのねー!って残念そうに言っていた。
これまでの事情を話し、私とディルクが婚姻すると分かると、また瞳をキラキラさせて、こんな話は大好物です!と言って嬉しそうにはしゃいでいた。
婚礼の儀に、婚約者のフラヴィオと一緒に招待しようとしたら、フラヴィオとは婚約解消したのだと言う。
理由を聞くと、フラヴィオが港町ラブニルでエリアスを襲った事が後程分かった事と、彼の母親から婚約解消の書状を送りつけられた事、それに、最近のフラヴィオはフラヴィオらしくなくて、素直に話が出来ないように思えてた、と話していた。
それには私は何も言えず、ここにエリアスがいなくて良かったと思ったんだ。
他国の結婚式の場で、新たな出会いがあるかも知れないっ!て、嬉しそうに、待ち遠しそうにするノエリアと別れて、次はグリオルド国のシルヴィオ王と会う。
私の事を知っているシルヴィオ王にも、事前に話をしておく必要があったからだ。
シルヴィオ王は、ニコラウスの事でディルクに大きな借りを作ってしまったと、こちらの言い分には何も言わずに、仰せのままにと頭を下げた。
属国とは言え、対等でありたいとディルクが微笑んで右手を差し出すと、目に涙を浮かべて、両手でしっかりディルクの手を握り締めた。
その手をなかなか離してくれなくて、ディルクが段々疲れた表情になっていくのが分かって、慌てて私が焼きもちを焼くようにディルクの手を強引に奪ったのをシルヴィオ王は見て、微笑ましいと笑ってくれた。
帝城へ帰って来ても、私はする事があった。
まず、貴族としての立ち居振る舞いを、徹底的に教え込まれた。
私の存在は今は知られてはいけない為、秘密裏に動く必要があったが、そんな事は関係ないかの如く長時間拘束されて、歩き方や話し方、ドレスの捌き方や礼の仕方や食事の摂り方等、淑女としての基本を叩き込まれたが、これが本当に大変だった。
今まで定住する事なく旅をする事しかしてなかった私が、貴族の真似事をするのは本当に大変で、慣れない靴にいつもよろめいてしまうし、常にドレスでいるように言われて凄く疲れるし、言葉遣いも全て講師が逐一正してくる。
本当に落ち着かない。
それから婚礼の儀の練習。
それはディルクに時間が出来た時に一緒に行う感じで、ディルクも毎日する事が多いみたいで大変そうだった。
それでも私と会える時間が嬉しいと、ディルクはいつも笑ってくれていた。
あれからエリアスも忙しいらしく、なかなか会えずにいる。
ウルにはたまに昼食で一緒になる位で、ウルに会うと気が緩んで息抜きができる。
疲れてそうな私を見て、貴族って大変なんやなぁ、って、私の頭をナデナデしてくれる。
今はウルが私の癒しになってくれているんだ。
夜はディルクの部屋で眠る。
毎夜、私たちは一つになる。
お互いを離さないように、心地良さに身を委ねながらしっかり補うように抱き合って、それから眠りにつく。
こんなに心が、体が満たされる事は今までなかった。
本当にずっとそばにいて離れられなくなってしまいそうだ……
婚礼の儀の二日前、母に会った。
ベルンバルトの部屋の別室で、私とディルク、エリアスで母に会った。
母は私たちに腕輪を差し出した。
それは三つあって、前の腕輪と少し感じが違った。
割れた二つの腕輪と母が作り出した腕輪を掛け合わせて、錬金術で合成し、新たに作り出したそうだ。
効果は勿論能力制御で、青い石も埋め込まれていた。
ただ、前と違ったのは、腕輪をつけていても、自分の能力を使いたい時に使える事が出来るようになった、と言うことだった。
これには私たちは驚いて、特にディルクが喜んでいた。
それに、いつでも取り外しが可能になっている。
早速、左手首に着けてみる。
けれど、着けても特に何かに抑えつけられているような感じではなかった。
本当に抑制されているのか分からなかったので、お茶を持ってきたメイドの腕を、右手でそっと触ってみた。
けれど、彼女の過去も未来も、何も見えなかった。
ちゃんと能力抑制の効果はあった、と言う事がこれで分かって、エリアスは嬉しそうに腕輪を暫くの間撫でていた。
母が錬金術で割れた二つの腕輪を調べた時に、この対になった腕輪を着けた者同士が愛し合っていた場合、その効力は必要なしと判断され割れる、と言う事が分かったんだそうだ。
それを聞いた私とエリアスは思わず見つめ合ってしまい、それにディルクが割って入るように私を抱き寄せた。
その後、父親である元皇帝ベルンバルトに、結婚の報告をする。
ベルンバルトは何も言わず、私をじっと見据える。
その目の恐怖に、思わず震えそうになるけれど、ディルクが支えてくれて、何とか平静を保っていられるようになった。
母がベルンバルトに添うような感じで横に座ると、顔を背けて一言、「好きにするといい。」と告げた。
ディルクは深く礼をし、それに続いて私も礼をして、部屋を後にした。
その後、ディルクは仕事があるからと、執務室に戻って行き、私とエリアスとウルの三人で昼食を摂る事になった。
「こうやって三人で飯食うの、久しぶりだな。」
「ホンマやなぁ。兄ちゃも最近あんまりおらへんし、姉ちゃも忙しそうやし。」
「そうね、色々する事が多くって。全てにおいてマナーを学びなさいって言われて、食事もずっと指導されながらなの。大変なんだから。」
「……アシュリー……」
「なに……なんか……むっちゃ女の子の話し方やん……」
「え?そうかな……普段から話し方を変えなさいって言われてるから気をつけているんだけど、変……か…な?」
「あ、いや、慣れねぇけど、変とかじゃねぇ!なんか……令嬢って感じがする……」
「うん。ドレス姿も様になってるし、なんか姉ちゃって感じがせぇへん。」
「それは……良いこと?悪いこと?どっちなの?」
「悪くねぇ!アシュリーに悪い所はねぇし、俺は全部のアシュリーが好きだから、どんなアシュリーでも問題ねぇ!今の感じは……すっげぇ綺麗だ……」
「なに兄ちゃ赤なってんねん。そうやな、今の姉ちゃは綺麗やし、普段の姉ちゃは格好いいし可愛いし、アタシも全部の姉ちゃが好きやで!」
「ありがとう……凄く……嬉しい……」
「あ、アタシもな、式で着るドレス作って貰ってんねん!明日できるねんて!すっごい楽しみやわー!」
「なんか、俺もオルギアン帝国のSランク冒険者の正装ってのがあるみてぇで、それ着さされんだよ。色々面倒だよな。」
「エリアスにも色々して貰ってて……大変だよね……ごめんなさい……」
「あ、いや、そんなんじゃねぇ!俺は仕事貰えて良かったって思ってんだ!今までSランク冒険者として、オルギアン帝国に貢献出来てなかったからな!」
「そうやで!男は働いてナンボやで!働かん男には何の価値もあらへんやん!」
「出た!ウル節!それがねぇとウルじゃねぇからな!」
「なんやウル節って!」
「ふふ……やっぱりこうやって三人でいるの、楽しいね……凄く癒される。」
「姉ちゃ、疲れてそうやもんな。」
「で、ウルはこれからどうすんだ?母ちゃんとここに残るのか?」
「多分そうなると思うねん。最近はお母さん、外にも出歩ける様になったし、私もそばにいてるし、なんやかんやでここでの暮らしに慣れてるみたいやから、今更リフレイム島に帰りたいとか思ってないみたい。」
「そうなんだな。」
「ディルクがね、ウルにさせたい事があるって言ってたの。」
「え?なに?なんやろ?」
「また話しがあると思うから、直接聞くと良いよ。」
「そうなんやー。分かった。また聞いてみる。」
「…………」
「ん?なぁに?エリアス?」
「え……あ!いや、なんでもねぇっ!」
「兄ちゃ、見惚れてたんやな!まぁ、しゃあないな。今の姉ちゃの女子力は半端ないからな!」
「あ、いや……まぁ、そうなんだけど……この数日で、こんなに変わるんだなって思ってな……」
「それはアタシも思ったわー。まぁ、前からそこら辺にいる街の人の感じとはなんか違ったんやけど、こうして見ると、やっぱり高貴な出の人やったんやぁーって思うわー。」
「え!ウルまでそんな事、言わないで……恥ずかしくなっちゃう……」
「姉ちゃ……可愛すぎやで……見てみ?兄ちゃが直視出来てないやろ?」
「え?」
エリアスが口を手で覆って、横を向いてる。
そんな感じが、なんだか久し振りだな……
食事が終わって、ウルはエリザベートの元へと行った。
また指導を受けに私も部屋を出ようとしたところで、後ろからエリアスに抱き締められる。
「……エリアス?」
「少し……充電させてくれ……」
「……うん……」
しばらくそうしてから、エリアスはゆっくりと私を離して、「ありがとな。」って言って頬に口づけをして出て行った。
抱き締められた時に感じた温もりの跡に、自分の手で覆うようにして触れる。
その余韻に浸ってから、私もすべき事の為に部屋を出た。
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