サキュバスになったオレはヤられないとレベルが上がりません

晶太郎

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0:サキュバスの始まり

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 SランクのSは悲しみSadのS。
 だって強くも無いのに、代償だけある。それは────


「銀髪で、眼がぱっちりしてて、おっぱいも大きいのが好きって言ったけど」


「…………オレがそうなりたかったわけじゃない!!!」


 ──オレが女の子になる事だった。





 世界に異界ダンジョンが現れてから百年、異界ダンジョンは人々の生活に欠かせない物になった。
 かつては常に死と隣り合わせだった探索者という職業も、異界ダンジョン管理局による安全管理と法整備が行き届いた今では、十六歳になれば誰だってなれる。
 
 そして今日はオレ、由良ゆら夏希なつきの十六歳の誕生日。
 探索者登録に大げさな儀式等はなく、1時間もかからず終わって帰宅したところ。


「これでオレも、探索者なんだ……」
 

 自室の天井に掌をかざすと、ぼんやりと紋章が浮かび上がる。
 異界ダンジョンを探索するには、はびこる魔物を倒すために魔力が必要だ。
 そのため、探索者として登録する時には掌に魔法因子を移植する。
 実感はあまりないけど、これで自分の体に魔力が巡るようになっているらしい。
 

「これが探索者補助端末ステータスフォンで、こっちがガイドと」


 スマホに似た端末と、探索者ガイドと書かれた冊子を取り出す。
 探索者ガイドによれば、この端末が探索者としての証明書になるらしい。
 
 側面のスイッチで端末を起動した。点灯した画面にはアイコンが並んでいる。
 異界ダンジョンマップ、アイテムボックス、ステータス等々と書かれているのは、アプリの様なものだろう。操作法もスマホとほとんど変わらないようだ。
 つまりこのステータスアイコンに触れれば、自分のステータスが表示される。

 ──ドキドキしてきた。
 初期ステータスなんてほとんど決まってるけど、固有スキルはその後の探索者人生を大きく左右する。
 大抵はCランクで、Bランクも学校に数人いるかいないか、Aランクならそれだけで最上位の竜滅等級スレイヤークラスになれるかもしれない。

 どうせ大したことないってわかってるけど、それでもちょっと期待してしまう。
 指先が震えだす。心臓が高鳴る。


「……来い、Aランク!!!!」


 指紋がくっきり残るぐらい思い切りアイコンを押す。表示されたステータスは──


【LV】:1
【HP】:200
【MP】:300
【筋力】:7
【体力】:7
【魔力】:50
【俊敏】:9
【魔防】:42



【固有スキル】:ランク?/種族変化・???



「なにこれ、ランクがハテナ?」


 アルファベットがある筈の部分には?が書かれ、その先にも?がある。
 意味不明の表示に困惑しながら探索者ガイドのページをめくる。
 確か、スキル表があった筈。そこを見ればこの表示の意味も……見つけた。


「なるほど。まだどの種族になるかわからないんだ。」


 種族変化スキルとは、異界ダンジョンの魔物の特性を手に入れるスキルらしい。
 変化は魔法因子が移植されてからゆっくりと進行していく。
 スキルの判定は所持者の魔力とつながった端末が行っているため、変化しきってない状態だとまだ詳細がわからないのだ。


「そう言えば、エルフっぽい探索者とか居たなぁ。」


 いつか見た有名探索者は、耳長で超がつく程美形の人だった。
 あの人は多分、種族変化・エルフのスキルを持ってたんだ。


「じゃあ、オレも……」


 あんな風な美形になって、女子からちやほやされまくり。
 チートな種族スキルでダンジョンも楽々攻略して、メディアにも毎日活躍を流されちゃって、現代の英雄みたいに言われちゃって。
 もし、そうなれたら。

「銀髪で、眼がぱっちりで……おっぱいもおっきいのが良いな。」


 昔の日本人は殆ど黒髪だったらしいけど、魔力の影響で色んな髪色の人がいる。
 もしかしたら、そんな彼女が出来ちゃったりしても夢じゃ──


「まあ、夢だよね。」


 ガイドにはこうも書かれている。
 ランクがよっぽど高くない限り、見た目が大きく変わる事は無いって。
 エルフのスキルでもランクが低ければ少し耳が尖るだけで、イケメンに成ったりはしないんだろう。ゴブリンとかスライムになっても安心ではあるけど。


「イケメンじゃなくても良いから、そこそこ強めの種族だったらなぁ。
 ……ヴァンパイアとか、ないかな」


 今は期待しすぎず、変化が起きるのを待とう。そう言い聞かせて眠った。





 でもやっぱりワクワクして、上手く眠れなくて、起きた時にはもうお昼。
 慌てて鏡の前に立って、そこで気づいたんだ。自分が女の子になっている事に。


「意味わかんないって。なんだよこれ!」

 
 女の子になる種族ってなんだ。そもそも、姿はほとんど変わらない筈なのに。
 そうして混乱してても始まらないし、この状態なら種族も分かるかもしれない。
 まずは確認だ。端末を取り出して、自分のステータスを確認する。
 やっぱり?になっていた部分に種族名が書かれている、けど。


「──嘘、冗談でしょ?」


【LV】:1
【HP】:200
【MP】:700
【筋力】:7
【体力】:7
【魔力】:233
【俊敏】:9
【魔防】:211



【固有スキル】:Sランク/種族変化・サキュバス



 Sランクの、サキュバス。それがスキルの正体だった。Sランク何てほとんど都市伝説で、そんなの存在し無いと思ってたのに。
 最強ランクの種族変化スキルで、身体がサキュバスその物になったって事!?
 顔を上げて鏡を見直す。やっぱりそこには女の子。
 自分の理想の女の子の姿になるのは、まさにサキュバスだなと思うけど。


「オレがそうなりたかったわけじゃない!!!」


 男としてそんな女の子と付き合いたかったのに、この身体じゃ……
 いやでも、レベルを上げたらスキルを制御して元の体に戻れるかもしれないし、そもそも、端末で元に戻る方法が調べられるかもしれない。
 もう一度画面を見つめれば、固有スキルの下に詳細と書いてある。
 そこを開くと、スキルのより詳しい情報が現れた。


『スキルによるバフ一覧』
・魔力系能力値が大上昇する
・MP値が大上昇する
・肉体がサキュバスに完全に・・・変化する
・魔法『レベルドレイン』を習得する


 確かに、魔力とMPが昨日よりもはるかに強くなっていた。
 女の子になる以外は、流石Sランクって感じだ。
 それよりも完全にってなんだ?もしかして、もう戻らないって事?

 情報はまだ終わりじゃない。下に、スキルによるデバフが表示されていた。


『スキルによるデバフ一覧』
・討伐による経験値の取得を無効化する
・アイテムによる経験値の取得を無効化する
・『レベルドレイン』以外による経験値の取得を無効化する




 つまり、魔物を倒してもレベルアップが出来ないという事だろう。
 絶望的にも思えるデバフだけど、意味は分かる。経験値の代わりに、レベルドレインを使って強くなればいいんだ。

 身体の変化に戸惑っていたけど、実はSランクスキルの恩恵を見て少し前向きになっていた。女の子になっちゃったけど、代わりに最強の探索者になれるかもしれないって。
 
 Sランクスキルで使える技能なんだ、レベルドレインはチートに決まってる。
 レベルドレインの文字を押すと、今度はその詳細が表示された。


『魔法:レベルドレイン』
効果:対象の経験値を吸収し、術者の経験値とする
条件:対象が異性であり、使用者に生殖本能を刺激されている場合、接触時に発動する
 


 効果は予想通り。
 でも、発動条件を見てチートかどうかなんて考えられなくなってしまった。

 
「もしかし、て……」


 異性、って事は今自分はサキュバスだから男性限定で。
 生殖本能、の意味なんて一つしかないし。
 接触、がトリガーになるならつまり。


「……えっちな事されなきゃレベルが上がらないってこと!?」
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