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1:サキュバスと乳
しおりを挟む「じゃあ、オレはずっとこの身体って事ですか?」
「……おそらくは、はい」
異界管理局千景市支部。探索者登録を行ったそこに戻って、職員さんに調べて貰ったけど。わかった事は悪い事ばかり。
「過去の種族変化スキルの例を確認してみたのですが、どの例においても変化は永続的で、制御できるものではなかったようです。」
まず、これからこの女の子の体で生きていかなければならない事。
当然だけど、心は男のまま。一人で暮らすならいいかもしれないけど自分は学生、学校でどう振る舞えばいいのかわからない。
トイレは?着替えは?そんな事当然探索者ガイドには書いてない。
「レベルを上げて制御できるようになったり、とか」
「ランクの高いスキル程未知の部分が多いので、可能性はあります。
特にこの種族は初めて確認されたものですから。
過去には、制御できた例は無いのですが……」
つまり、制御できる可能性は低いと言う事。
その方法を探すよりは、この身体との付き合い方を探す方が速そうだ。
……そんな簡単に割り切れ無いけど。
「オレは、もう、違う誰かとして生きていくしか──」
「い、いえ!そこは大丈夫です。
探索者補助端末が夏希様の魔力を記憶し認識していますので、それが身分証明になります。
これからも変わらず、そのまま過ごす事が出来ますよ。」
少なくとも、自分は由良夏希のまま居られるのは唯一の朗報だった。
あまり家に居ない家族と久しぶりに会って、誰なんだと追い出される事も無いし、頑張って入った学校に行けなくなることも無い様だ。
姿がまるっきり変わってしまったから、今まで通りではないけれど、自分は自分として生きていける。
「あの、最期に……このデバフってとけませんか?」
「こちらも、スキルその物の効果なので、変化と同じく恐らくは……」
「……はい」
まともな手段じゃレベルを上げられないのはもう確実か。
せめて女の子になってもSランクスキルの力で無双できたら、なんてちょっと期待してたんだけど。
流石に男としての尊厳を投げ捨ててまでレベルが欲しいとは思わない。探索者方面での活躍も駄目みたいだ。
(本当になんなんだよこのスキル……)
管理局を出て、うつむいて歩く帰り道。
探索者になってこのスキルを得て、一時はSランクの文字に心を躍らせたけど。
強くも無いのに不都合ばっかり、良いことが何もない。
ふとガラスに映る自分の姿が目に入った。
銀色の髪がきらきらして、蒼い宝石みたいな瞳が自分を見ていて。しなやかに伸びる脚が、元は小柄な自分のズボンに圧迫されて、艶やかな曲線を主張する。
たった一晩で変わった自分の体。未だに自分の物と思えなくて、不思議な気分。
だって本当に、顔も、腰付きも、張り詰めた胸のふくらみも。
自分の理想の女の子そのものだから。
「………………」
ふに。ふに。
そこに自然と伸びた手。甘い、クリームみたいなふわふわの感触。ずっと触ってられそう。
指を動かす度になんだか体温が上がって、呼吸が速くなる。
「………………んっ」
あれ、なんだ、今の声。誰の声だ。
濡れた呼吸に紛れた、蕩けた嬌声──まさか、自分の声じゃない。
そこでようやく自分が何に没頭していたか気づいて辺りを見回す。幸い誰も居ないけど、逃げるみたいに走って家へ帰った。
……散々な事ばかりだけど、これが好きにできるのはちょっといいかも。
なんて考えてる場合じゃない。
「……学校、どうしよっか。」
今日はこんなことがあって忘れてたけど、本来は学校があるんだ。
受験の時は頑張ったんだ、こんな姿になってもちゃんと行きたいと思ってる。
私立明星高校、その異界工学科は理系で女子は居ないから。この姿にどんな反応されるか、想像するとちょっと憂鬱になるけど。
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