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ユカリ=ケンジロウとダイスは、次の日にはもう出発できるというユージーンに促されるまま、翌日、馬車に乗っていた。
ユージーンだけなら移動魔法も使えるのが、まだ自分と荷物以外を運んだことがなく、生き物を無事に運べるか自信がない、ということで馬車移動が選択される。上級魔法に関しては、慎重になりすぎるくらいでちょうどいいんです、とユージーンは自重気味に笑った。
さて、魔眼持ちが住んでいるのは隣町というから、「え、近っ」とユカリ=ケンジロウもダイスも驚いたが、ユカリ=ケンジロウのこの性質が魔眼によって判明するかもなんて考えたこともなかったのだから、近くにその人が住んでいたのを知らないというのも無理はない話である。
隣町までは馬車で1時間ほど。
緊張していたユカリ=ケンジロウには、その時間もひどく長く感じた。
「あー、ユージーンじゃんー。やっぱりだめったでしょー?」
「シエル、第一声がそれってあんまりにあんまりだと思うのですが?」
「だってだめだったでしょ。見ればわかるもの。だから言ったじゃん。君の呪いは魂に巻きついてしまっているから、解呪なんてできっこないって」
案内されたのは小さなお店だった。
扉を開けてすぐに、小柄なエルフの少年がケラケラ笑ってユージンを出迎える。
「紹介しますね、彼が魔眼の占い師、シエル。私のこの不死が呪いだと気づいた、まあ、言いたくないけど恩人のような人です」
「恩人?恩人だって?おっかしーの。ユージーン、何その紹介」
「ちょっとはあなたの好感度あげとこうという私の涙ぐましい努力ですね」
「あっはっはっは、わけわかんねー!」
お腹を抱えて笑う少年、シエルはしばらく笑って息切れしたタイミングで改めてダイスとユカリ=ケンジロウをみた。
「どーも!ユージーンの恩人…、ぷっくくく、ああごめん。シエルでーす。ええと、…そっちのお姉さんが今日のメインのお客だよね多分。んー、まあ、適当に一旦座って座ってー。そっちのテーブルがいいかな。なんか色々乗ってるけど気にしないでー」
シエルはそういうと、小さな店内の端に置いてあるテーブルセットを指差して、自分は一度店の奥へ引っ込んだ。
ユカリ=ケンジロウは、今日は女性だ。
女性の格好はしているが、この頃のユカリ=ケンジロウはそこまで化粧などがうまくなく、男性にも見える容姿をしていて何の迷いもなく「おねえさん」といわれたことに少し驚いた。
言われたままにテーブルに3人が座ると、シエルがまたやってきた。
手には、こじんまりとしてごちゃついている店内には少し不釣り合いな高そうなお盆とティーカップ。
それを丁寧とは言い難い置き方で、テーブルの空いている隙間において、シエルもそのテーブルについた。
「さて、お姉さんは何が知りたい?どうなりたい?僕に話してみてよ」
いきなりすぎる話の始まりに、ユカリ=ケンジロウは一瞬戸惑うが、ユージーンにしたような、性自認の話をシエルに告げる。
「でも、どうなりたいか、というのはわからない。…付き合い方は知りたいけれど」
「どっちかの性別になりたいわけじゃないんだね」
「え?…ええ、ええ、そうね。言われてみればそうかもしれない」
「うんうん。じゃあ、まず何から伝えようかな。ええとー、とりあえず、ユージーンのいうとおり、お姉さんの魂には二つの性別がある。どっちの色が優勢になるかっていうのは周りにある魔力とか、気温とか、天気とか、いろーんなものに影響されて、目覚めとともに決まるんだ。だから、目が覚めると同時に性別が決まるっていうお姉さんの自己認識は正しいよ」
シエルはずずず、と紅茶を飲む。
ティーカップとの違和感がすごいな、とダイスは頭の片隅で思った。
***
新キャラ登場です。
例に漏れず、変な子です。
ユージーンだけなら移動魔法も使えるのが、まだ自分と荷物以外を運んだことがなく、生き物を無事に運べるか自信がない、ということで馬車移動が選択される。上級魔法に関しては、慎重になりすぎるくらいでちょうどいいんです、とユージーンは自重気味に笑った。
さて、魔眼持ちが住んでいるのは隣町というから、「え、近っ」とユカリ=ケンジロウもダイスも驚いたが、ユカリ=ケンジロウのこの性質が魔眼によって判明するかもなんて考えたこともなかったのだから、近くにその人が住んでいたのを知らないというのも無理はない話である。
隣町までは馬車で1時間ほど。
緊張していたユカリ=ケンジロウには、その時間もひどく長く感じた。
「あー、ユージーンじゃんー。やっぱりだめったでしょー?」
「シエル、第一声がそれってあんまりにあんまりだと思うのですが?」
「だってだめだったでしょ。見ればわかるもの。だから言ったじゃん。君の呪いは魂に巻きついてしまっているから、解呪なんてできっこないって」
案内されたのは小さなお店だった。
扉を開けてすぐに、小柄なエルフの少年がケラケラ笑ってユージンを出迎える。
「紹介しますね、彼が魔眼の占い師、シエル。私のこの不死が呪いだと気づいた、まあ、言いたくないけど恩人のような人です」
「恩人?恩人だって?おっかしーの。ユージーン、何その紹介」
「ちょっとはあなたの好感度あげとこうという私の涙ぐましい努力ですね」
「あっはっはっは、わけわかんねー!」
お腹を抱えて笑う少年、シエルはしばらく笑って息切れしたタイミングで改めてダイスとユカリ=ケンジロウをみた。
「どーも!ユージーンの恩人…、ぷっくくく、ああごめん。シエルでーす。ええと、…そっちのお姉さんが今日のメインのお客だよね多分。んー、まあ、適当に一旦座って座ってー。そっちのテーブルがいいかな。なんか色々乗ってるけど気にしないでー」
シエルはそういうと、小さな店内の端に置いてあるテーブルセットを指差して、自分は一度店の奥へ引っ込んだ。
ユカリ=ケンジロウは、今日は女性だ。
女性の格好はしているが、この頃のユカリ=ケンジロウはそこまで化粧などがうまくなく、男性にも見える容姿をしていて何の迷いもなく「おねえさん」といわれたことに少し驚いた。
言われたままにテーブルに3人が座ると、シエルがまたやってきた。
手には、こじんまりとしてごちゃついている店内には少し不釣り合いな高そうなお盆とティーカップ。
それを丁寧とは言い難い置き方で、テーブルの空いている隙間において、シエルもそのテーブルについた。
「さて、お姉さんは何が知りたい?どうなりたい?僕に話してみてよ」
いきなりすぎる話の始まりに、ユカリ=ケンジロウは一瞬戸惑うが、ユージーンにしたような、性自認の話をシエルに告げる。
「でも、どうなりたいか、というのはわからない。…付き合い方は知りたいけれど」
「どっちかの性別になりたいわけじゃないんだね」
「え?…ええ、ええ、そうね。言われてみればそうかもしれない」
「うんうん。じゃあ、まず何から伝えようかな。ええとー、とりあえず、ユージーンのいうとおり、お姉さんの魂には二つの性別がある。どっちの色が優勢になるかっていうのは周りにある魔力とか、気温とか、天気とか、いろーんなものに影響されて、目覚めとともに決まるんだ。だから、目が覚めると同時に性別が決まるっていうお姉さんの自己認識は正しいよ」
シエルはずずず、と紅茶を飲む。
ティーカップとの違和感がすごいな、とダイスは頭の片隅で思った。
***
新キャラ登場です。
例に漏れず、変な子です。
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