【完結】魔力不足はえっちで解決!師匠、俺それ望んでねぇから!

名もなき萌えの探求者

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 翌朝、連れて行きたいところがある、とユージーンが言った。

「どこ?」
「シエル、という占い師のところですね」

 ユージーンが出した名前にシアが大きく目を見開く。

「おや、ご存知でしたか?」
「う、うん」
「ユカリから聞いたんですかね。まあ、とにかく、一度君の出生について調べてみようかと思いまして」

 手がかりが孤児院の前に捨てられていた、ということしかないなら、とりあえず魂を見てもらってシアの種族だけでも調べてみよう、というのがユージーンの考えだった。
 そう説明されて、シアは小さく「それ、怖い」と漏らした。
 自分が捨て子だったという事実は、大人になったって消えはしない。
 どうして自分が捨てられたのか、無意識に考えないようにしていたことを、突然確かめようと言われても、どう向き合えば良いかわからない。
 けれど、シアはシアでシエルに会ってみたいという気持ちがあったから、ぐっと唇を噛んで「でも、行く」と続けた。
 ユージーンは、少し心配そうに眉を寄せたが、行くという言葉に込められた強さに、何も言わずに頷いた。




「どうやって行くの?師匠」
「普通に転移魔法ですね。初めて行く場所なので、私が使います。さっき手紙だけ送ったら、『おっけー、いつでもどーぞ』って返事がきたので…、シアくんさえ良いなら今からでもいけますが」

 シアの出生は調べるべきだと思ったから提案したし、それは間違えてないと思っているが、シアの心情への配慮が足りなかったとユージーンは心の中で反省していた。
 他者への思いやりなんてものは、家族とも同級生たちとも関係性が希薄だったユージーンは長く持ってこなかった。
 ダイスやユカリにあったときからなんとか積み重ねてきたとはいえ、今だって得意ではない。 
 他者の感情に鈍感なわけではない。
 けれど、それに配慮するという部分が苦手なのだ。

(けれど、シアくんを不用意に悲しませるのは、いただけませんね)

 そろそろ、ユージーンだって自分の中にあるこの感情が何なのか、というのはわかっている。わかっているからこそ、みないふりをする。
 師匠として、可愛がっているだけだと、そんな言葉で蓋をする。

「俺なら大丈夫、今から行こ」

 シアがそう笑う。それをみてユージーンはいつものように笑顔を貼り付けから、「では」と言って魔法を発動させた。

 ユージーンが転移魔法が展開されている様子に、シアは綺麗だな、と思う。
 同じ魔法を使っていても、魔力の流れ方が自分のそれよりユージーンのほうがずっと美しい。
 魔力の流れを見ることができるようになってから、シアはいつだって、自分の師匠の魔法の流れに見惚れてしまう。

(俺もいつか、師匠みたいに)

 いつだって、絶対口には出さない目標を、またこっそりと心の中でつぶやいた。


***
今日は短めです。
ユージーンは不死になる前から「魔術」への興味が強すぎて他者への興味が薄い傾向にありました。
性行為に抵抗はないけれど、自分からしたいなんて思ったのは、実はシアが初めてです。
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