4 / 16
第一章 出逢い
4
しおりを挟む
何事もなく学園は夏季休暇へと入る。
ユクシーはリオネルと共に王都の外れにある離宮にやってきていた。
ここは王族が余暇を過ごすためのもので、敷地には湖や狩りもできるように森もある保養地だ。
「すごっ……」
離宮に入り、ユクシーは天井まで緻密に作り上げられた装飾を見上げる。
「これはサリナス朝の時代の様式か…?」
「おいっ、行くぞ」
装飾に見惚れてブツブツと言っているユクシーに、リオネルが声をかける。
「も、申し訳ございません」
周囲の執事や侍女達の視線に、ユクシーは恥ずかしくなりながらもリオネルの後についた。
案内された部屋はリオネルの隣。
「え!?僕は…」
「側にお仕えする方の部屋でございます」
それを聞き、安心する。
執事に案内された部屋はリオネルのすぐ隣で、王族と同じ区域に上等な客室を与えられたのかと思ってしまった。
よく考えれば、王族の側にいる人間は大概は高位貴族なのでそれなりの部屋が与えられるのは当然なのだ。
初めて離宮なんて大層なとこにきてしまって、ユクシーは自分でもわからない以上に緊張しているようだった。
「そんなに離宮が気になるなら、後で好きに見て回れば良いだろ。時間はいくらでもある」
廊下でもキョロキョロと調度品を見ていたユクシーに、リオネルは呆れ顔だ。
「…そうですね、すみません」
こういった伝統的様式などを見るのがユクシーは好きだった。
一先ず自分にあてられた部屋に入る。
ベッドと書き物机、そして応接セットと最低限の家具が置いてある。
しかし、その家具一つ一つがまた豪華だ。
「ふふ…ベッドもフカフカだ」
さすが、王家の離宮だ。
すべてが超豪華の一級品で揃えられている。
クローゼットには、ユクシーの荷物がすでに届けられて片付けられている。
「これは……」
見たことのない、明らかにパーティ用の礼装が2着も入っている。
「兄上め……」
自分が困ることのないようにとの気遣いだろうが、リオネルに付いて夜会に出席させられる予感しかない。
今までほとんどの夜会を拒否してきたのに、兄はこれを機にユクシーを表舞台に引っ張り出す算段をしているのかもしれない。
世間を忌避している問題児二人をこれで片付けようと魂胆か。
「どうした?」
リオネルの部屋に行けば、リオネルが不思議そうにユクシーを見る。
不機嫌さが滲み出ているのかもしれない。
流石に私情を表に出すのはまずい。
「連日俺に合わせて疲れてるだろう。俺はしばらく体を動かすから、お前は部屋で休んでいろ」
ラフな格好へ着替えたリオネルは、有り余った体力を鍛錬に向けるらしい。
さすがは騎士としての力量はお墨付きな王子だ。
運動なんて好きじゃないユクシーからは理解できない人種だ。
「夕食は共にしよう。それまで寝てろ、隈できてるぞ」
フッと柔らかい笑みを浮かべたリオネルが、ユクシーの目の下を指で撫でる。
「なっ、何をするんですかっ!?」
いきなり触れられ慌てふためくユクシーを声を出して笑いながら、リオネルはさっさと部屋を出て行ってしまった。
学園にいた時は常に気を張っていたらしいリオネルは、この離宮に来て肩の力が抜けたらしい。
初めてみる年相応のリオネルの表情に、ユクシーほ自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。
いつまでも照れて直立不動でいるわけにはいかない。 部屋の隅で空気のようにいた執事に、ユクシーは振り返った。
「お見苦しいところをお見せして…」
「いえいえ。リオネル坊ちゃまと仲良くしていただいているようで嬉しく思っていたところです」
白髪の生えたこの執事カールは、リオネルを世話する執事らしい。
寮の中には行かないが、リオネルの身の回りのことを任されているのだ。
「それでは少しリオネル様のことをお伺いしても?」
お互いに仕事モードに切り替わり、リオネルに関して、またこの夏季休暇のことに関して打ち合わせを始めるのだった。
ユクシーはリオネルと共に王都の外れにある離宮にやってきていた。
ここは王族が余暇を過ごすためのもので、敷地には湖や狩りもできるように森もある保養地だ。
「すごっ……」
離宮に入り、ユクシーは天井まで緻密に作り上げられた装飾を見上げる。
「これはサリナス朝の時代の様式か…?」
「おいっ、行くぞ」
装飾に見惚れてブツブツと言っているユクシーに、リオネルが声をかける。
「も、申し訳ございません」
周囲の執事や侍女達の視線に、ユクシーは恥ずかしくなりながらもリオネルの後についた。
案内された部屋はリオネルの隣。
「え!?僕は…」
「側にお仕えする方の部屋でございます」
それを聞き、安心する。
執事に案内された部屋はリオネルのすぐ隣で、王族と同じ区域に上等な客室を与えられたのかと思ってしまった。
よく考えれば、王族の側にいる人間は大概は高位貴族なのでそれなりの部屋が与えられるのは当然なのだ。
初めて離宮なんて大層なとこにきてしまって、ユクシーは自分でもわからない以上に緊張しているようだった。
「そんなに離宮が気になるなら、後で好きに見て回れば良いだろ。時間はいくらでもある」
廊下でもキョロキョロと調度品を見ていたユクシーに、リオネルは呆れ顔だ。
「…そうですね、すみません」
こういった伝統的様式などを見るのがユクシーは好きだった。
一先ず自分にあてられた部屋に入る。
ベッドと書き物机、そして応接セットと最低限の家具が置いてある。
しかし、その家具一つ一つがまた豪華だ。
「ふふ…ベッドもフカフカだ」
さすが、王家の離宮だ。
すべてが超豪華の一級品で揃えられている。
クローゼットには、ユクシーの荷物がすでに届けられて片付けられている。
「これは……」
見たことのない、明らかにパーティ用の礼装が2着も入っている。
「兄上め……」
自分が困ることのないようにとの気遣いだろうが、リオネルに付いて夜会に出席させられる予感しかない。
今までほとんどの夜会を拒否してきたのに、兄はこれを機にユクシーを表舞台に引っ張り出す算段をしているのかもしれない。
世間を忌避している問題児二人をこれで片付けようと魂胆か。
「どうした?」
リオネルの部屋に行けば、リオネルが不思議そうにユクシーを見る。
不機嫌さが滲み出ているのかもしれない。
流石に私情を表に出すのはまずい。
「連日俺に合わせて疲れてるだろう。俺はしばらく体を動かすから、お前は部屋で休んでいろ」
ラフな格好へ着替えたリオネルは、有り余った体力を鍛錬に向けるらしい。
さすがは騎士としての力量はお墨付きな王子だ。
運動なんて好きじゃないユクシーからは理解できない人種だ。
「夕食は共にしよう。それまで寝てろ、隈できてるぞ」
フッと柔らかい笑みを浮かべたリオネルが、ユクシーの目の下を指で撫でる。
「なっ、何をするんですかっ!?」
いきなり触れられ慌てふためくユクシーを声を出して笑いながら、リオネルはさっさと部屋を出て行ってしまった。
学園にいた時は常に気を張っていたらしいリオネルは、この離宮に来て肩の力が抜けたらしい。
初めてみる年相応のリオネルの表情に、ユクシーほ自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。
いつまでも照れて直立不動でいるわけにはいかない。 部屋の隅で空気のようにいた執事に、ユクシーは振り返った。
「お見苦しいところをお見せして…」
「いえいえ。リオネル坊ちゃまと仲良くしていただいているようで嬉しく思っていたところです」
白髪の生えたこの執事カールは、リオネルを世話する執事らしい。
寮の中には行かないが、リオネルの身の回りのことを任されているのだ。
「それでは少しリオネル様のことをお伺いしても?」
お互いに仕事モードに切り替わり、リオネルに関して、またこの夏季休暇のことに関して打ち合わせを始めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
かわいい王子の残像
芽吹鹿
BL
王子の家庭教師を務めるアリア・マキュベリー男爵の思い出語り。天使のようにかわいい幼い王子が成長するにつれて立派な男になっていく。その育成に10年間を尽くして貢献した家庭教師が、最終的に主に押し倒されちゃう話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる