王子様に重めに愛されてます

朔月ひろむ

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第一章 出逢い

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何事もなく学園は夏季休暇へと入る。
ユクシーはリオネルと共に王都の外れにある離宮にやってきていた。
ここは王族が余暇を過ごすためのもので、敷地には湖や狩りもできるように森もある保養地だ。
「すごっ……」
離宮に入り、ユクシーは天井まで緻密に作り上げられた装飾を見上げる。
「これはサリナス朝の時代の様式か…?」
「おいっ、行くぞ」
装飾に見惚れてブツブツと言っているユクシーに、リオネルが声をかける。
「も、申し訳ございません」
周囲の執事や侍女達の視線に、ユクシーは恥ずかしくなりながらもリオネルの後についた。
案内された部屋はリオネルの隣。
「え!?僕は…」
「側にお仕えする方の部屋でございます」
それを聞き、安心する。
執事に案内された部屋はリオネルのすぐ隣で、王族と同じ区域に上等な客室を与えられたのかと思ってしまった。
よく考えれば、王族の側にいる人間は大概は高位貴族なのでそれなりの部屋が与えられるのは当然なのだ。
初めて離宮なんて大層なとこにきてしまって、ユクシーは自分でもわからない以上に緊張しているようだった。

「そんなに離宮が気になるなら、後で好きに見て回れば良いだろ。時間はいくらでもある」
廊下でもキョロキョロと調度品を見ていたユクシーに、リオネルは呆れ顔だ。
「…そうですね、すみません」
こういった伝統的様式などを見るのがユクシーは好きだった。
一先ず自分にあてられた部屋に入る。
ベッドと書き物机、そして応接セットと最低限の家具が置いてある。
しかし、その家具一つ一つがまた豪華だ。
「ふふ…ベッドもフカフカだ」
さすが、王家の離宮だ。
すべてが超豪華の一級品で揃えられている。
クローゼットには、ユクシーの荷物がすでに届けられて片付けられている。
「これは……」
見たことのない、明らかにパーティ用の礼装が2着も入っている。
「兄上め……」
自分が困ることのないようにとの気遣いだろうが、リオネルに付いて夜会に出席させられる予感しかない。
今までほとんどの夜会を拒否してきたのに、兄はこれを機にユクシーを表舞台に引っ張り出す算段をしているのかもしれない。
世間を忌避している問題児二人をこれで片付けようと魂胆か。

「どうした?」
リオネルの部屋に行けば、リオネルが不思議そうにユクシーを見る。
不機嫌さが滲み出ているのかもしれない。
流石に私情を表に出すのはまずい。
「連日俺に合わせて疲れてるだろう。俺はしばらく体を動かすから、お前は部屋で休んでいろ」
ラフな格好へ着替えたリオネルは、有り余った体力を鍛錬に向けるらしい。
さすがは騎士としての力量はお墨付きな王子だ。
運動なんて好きじゃないユクシーからは理解できない人種だ。
「夕食は共にしよう。それまで寝てろ、隈できてるぞ」
フッと柔らかい笑みを浮かべたリオネルが、ユクシーの目の下を指で撫でる。
「なっ、何をするんですかっ!?」 
いきなり触れられ慌てふためくユクシーを声を出して笑いながら、リオネルはさっさと部屋を出て行ってしまった。
学園にいた時は常に気を張っていたらしいリオネルは、この離宮に来て肩の力が抜けたらしい。
初めてみる年相応のリオネルの表情に、ユクシーほ自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。

いつまでも照れて直立不動でいるわけにはいかない。 部屋の隅で空気のようにいた執事に、ユクシーは振り返った。
「お見苦しいところをお見せして…」
「いえいえ。リオネル坊ちゃまと仲良くしていただいているようで嬉しく思っていたところです」
白髪の生えたこの執事カールは、リオネルを世話する執事らしい。
寮の中には行かないが、リオネルの身の回りのことを任されているのだ。
「それでは少しリオネル様のことをお伺いしても?」
お互いに仕事モードに切り替わり、リオネルに関して、またこの夏季休暇のことに関して打ち合わせを始めるのだった。
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